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第二章 ローレライとロバ耳王子と陰謀と
5、鳶色の瞳
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挨拶をするのは式典用に城壁に設けられたバルコニー。
周りは何時もは馬車が行き交う大通りだが、挨拶式典の為に通行止めして、人だかりができている。
「「ラニ。逸れんなよ」」
「ラニ。逸れないでね」
「「「ラニ様。逸れないようもう少し寄ってください」」」
「ねぇ…。なんで、君たちの中では僕だけ迷子になる設定なの!? ならないよっ。僕はならないもんっ!!」
シルビオもそうだが、みんな、僕を幼い子供と同等だと思ってる節がある。
酷い話だ。僕は遠いモアナから1人でレーヴ帝国まで旅してきたというのにっ…。
憤慨しつつも騎士のお兄さんの服の裾を掴むとみんな苦笑する。
違う。
これだけ大規模な人混みは初めてなんだよ。モアナの人口並みの密度でなんか怖い。
なんであんなに密集しててぶつかって転ける人とかいないんだろ…。
ー レーヴの人は特殊な能力でもあるのかな?
恐ろしい程の人口密度に怒りも忘れ、戦々恐々しながら人混みに入るとラッパの音が響く。
そのラッパの音に合わせてまた花火が上がった。
呼応するように歓声が上がり、マントをひらめかせ、王達がバルコニーへと姿を現した。
昨日も会った筈なのにバルコニーに勢揃いした王達の光景は圧巻で、強固な同盟の絆を感じる。
首脳会議前の段取り決めでも同盟の行く末を真剣に考える王達。
その堂々とした佇まいでレーヴの民に手を振る姿が素直にカッコイイと思った。
純粋に感動していると、皇帝の後ろで第二皇子と一緒に国民に手を振る皇子が見えた。
何時もより着飾り、民に自信に溢れた笑顔で手を振る皇子は何時もより数倍王子らしく、若い街娘達が見惚れてしまう程。
僕も思わず惚けてしまったが、なんか面白くない。
何時もそうしてれば、エレンも自然と堕ちるんじゃないかと思いもしたが、やっぱりしっくり来ない。
皇子がこっちを見ないかなと大きく手を振る。
でもやっぱり、人が多くて気付いてもらえないのでぴょんぴょんと跳びながら手を振りアピールする。
するとたまたまこちらを見た第二皇子と目が合った。
まるで幼子を見るかのような慈愛の笑みを浮かべた第二皇子は、隣に立ち民衆に手を振って応える皇子の肩をツンツンと突き、僕を指差した。
皇子は僕を見つめると一瞬固まり、「お前は一体何をやっているんだ」と言わんばかりに困惑していたが、それを無視して手を振り続ける。
だけど、少しすると真っ赤になった顔を一回伏せて、ツンッとすました顔で手を振りかえした。
広角は嬉しそうにちょっと上がっていた。
よしっ。何時も通りのツンデレだ。
キラッキラ王子様じゃなくて、何時もの不器用な皇子だ。安心安心。
「ファルハの王はまだ来てないのね」
何時も通りの皇子にちょっとホッとして鼻歌を歌っていると、ふと人混みの中で誰かがボソリッと呟いた。
「ああ。遅れてくるそうだ」
「流石、蛮族の国の王。礼儀も知らないのね」
そのヒソヒソと聞こえてくる声にコホンッとコンスタンチェが咳払いする。
聞こえてきたあまり良いとは言えないお話はコンスタンチェの咳払いした後は途端に聞こえなくなった。
コンスタンチェを見やると「本当にしょうもないわね」と肩をすくめた。
「蛮族の国?」
「そうね。あまり、気持ちの良い表現ではないけど、そう言われても仕方がない事も事実よ」
コンスタンチェがチラリと路地裏に目を向ける。
すると路地裏の奥にギラリと光る鳶色の瞳が何個も見え、浅黒い肌にボロボロの服を着たファルハ人が居た。
「ファルハ王国は奴隷産出国。王推奨で犯罪を犯した者が奴隷に落ちたり、貧困層が口減らしで子供を売ったり、様々な理由で奴隷になったファルハの人達が闇ルート国内外で売り付けられているわ。最近までは奴隷にする為にレーヴ人を攫うなんて事もありましたわね」
「奴隷…」
まるで野生の獣のように、こちらを品定めする様に、ギラギラと光る眼光のあの人達が奴隷。
奴隷というものは言葉しか知らないけど、僕が想像する奴隷とは全く違う。
奴隷として人としての尊厳を奪われている筈なのに、彼らの眼は野心に染まっているように見えた。
胸の辺りがザワザワする。
ルトゥフと会った時もだが、あの鳶色の目を見ていると妙に感情が揺れる。
まるで喉に魚の小骨がつっかえた時のような違和感。
「なんでだろ?」
ぼんやりと考えていると挨拶式典が終わって集まっていた人達が帰ろうと動き始めた。
その動く人の波の中、「きゃっ」という悲鳴が聞こえて振り向くと、女の人が人に押されて倒れていた。
「お姉さん大丈夫?」
手を差し伸べるとお姉さんは「ありがとう」と手を取り、立とうとしたが転けた時に足を挫いたようで1人では立っていられない様子。
「御免なさい…。あそこの道の奥にベンチがあるから、そこまで歩くの手伝ってもらえる?」
「うん。分かった。あの道の奥だね」
ちょっと離れるねとみんなに声を掛けようとしたが、人波に揉まれて気付けばみんなが居ない。
これは迷子認定されてしまう。
やだな。後で探さないと。
「あっちだよね」
「そうよ」
迷子という不名誉なレッテルは嫌だけど怪我人最優先。
お姉さんの怪我が悪化しないように座らせてあげる事を優先してお姉さんに肩をかす。
僕の肩に身体を預けた瞬間、ずっと俯いてて見えなかったお姉さんの顔が見え、目を見開いた。
周りは何時もは馬車が行き交う大通りだが、挨拶式典の為に通行止めして、人だかりができている。
「「ラニ。逸れんなよ」」
「ラニ。逸れないでね」
「「「ラニ様。逸れないようもう少し寄ってください」」」
「ねぇ…。なんで、君たちの中では僕だけ迷子になる設定なの!? ならないよっ。僕はならないもんっ!!」
シルビオもそうだが、みんな、僕を幼い子供と同等だと思ってる節がある。
酷い話だ。僕は遠いモアナから1人でレーヴ帝国まで旅してきたというのにっ…。
憤慨しつつも騎士のお兄さんの服の裾を掴むとみんな苦笑する。
違う。
これだけ大規模な人混みは初めてなんだよ。モアナの人口並みの密度でなんか怖い。
なんであんなに密集しててぶつかって転ける人とかいないんだろ…。
ー レーヴの人は特殊な能力でもあるのかな?
恐ろしい程の人口密度に怒りも忘れ、戦々恐々しながら人混みに入るとラッパの音が響く。
そのラッパの音に合わせてまた花火が上がった。
呼応するように歓声が上がり、マントをひらめかせ、王達がバルコニーへと姿を現した。
昨日も会った筈なのにバルコニーに勢揃いした王達の光景は圧巻で、強固な同盟の絆を感じる。
首脳会議前の段取り決めでも同盟の行く末を真剣に考える王達。
その堂々とした佇まいでレーヴの民に手を振る姿が素直にカッコイイと思った。
純粋に感動していると、皇帝の後ろで第二皇子と一緒に国民に手を振る皇子が見えた。
何時もより着飾り、民に自信に溢れた笑顔で手を振る皇子は何時もより数倍王子らしく、若い街娘達が見惚れてしまう程。
僕も思わず惚けてしまったが、なんか面白くない。
何時もそうしてれば、エレンも自然と堕ちるんじゃないかと思いもしたが、やっぱりしっくり来ない。
皇子がこっちを見ないかなと大きく手を振る。
でもやっぱり、人が多くて気付いてもらえないのでぴょんぴょんと跳びながら手を振りアピールする。
するとたまたまこちらを見た第二皇子と目が合った。
まるで幼子を見るかのような慈愛の笑みを浮かべた第二皇子は、隣に立ち民衆に手を振って応える皇子の肩をツンツンと突き、僕を指差した。
皇子は僕を見つめると一瞬固まり、「お前は一体何をやっているんだ」と言わんばかりに困惑していたが、それを無視して手を振り続ける。
だけど、少しすると真っ赤になった顔を一回伏せて、ツンッとすました顔で手を振りかえした。
広角は嬉しそうにちょっと上がっていた。
よしっ。何時も通りのツンデレだ。
キラッキラ王子様じゃなくて、何時もの不器用な皇子だ。安心安心。
「ファルハの王はまだ来てないのね」
何時も通りの皇子にちょっとホッとして鼻歌を歌っていると、ふと人混みの中で誰かがボソリッと呟いた。
「ああ。遅れてくるそうだ」
「流石、蛮族の国の王。礼儀も知らないのね」
そのヒソヒソと聞こえてくる声にコホンッとコンスタンチェが咳払いする。
聞こえてきたあまり良いとは言えないお話はコンスタンチェの咳払いした後は途端に聞こえなくなった。
コンスタンチェを見やると「本当にしょうもないわね」と肩をすくめた。
「蛮族の国?」
「そうね。あまり、気持ちの良い表現ではないけど、そう言われても仕方がない事も事実よ」
コンスタンチェがチラリと路地裏に目を向ける。
すると路地裏の奥にギラリと光る鳶色の瞳が何個も見え、浅黒い肌にボロボロの服を着たファルハ人が居た。
「ファルハ王国は奴隷産出国。王推奨で犯罪を犯した者が奴隷に落ちたり、貧困層が口減らしで子供を売ったり、様々な理由で奴隷になったファルハの人達が闇ルート国内外で売り付けられているわ。最近までは奴隷にする為にレーヴ人を攫うなんて事もありましたわね」
「奴隷…」
まるで野生の獣のように、こちらを品定めする様に、ギラギラと光る眼光のあの人達が奴隷。
奴隷というものは言葉しか知らないけど、僕が想像する奴隷とは全く違う。
奴隷として人としての尊厳を奪われている筈なのに、彼らの眼は野心に染まっているように見えた。
胸の辺りがザワザワする。
ルトゥフと会った時もだが、あの鳶色の目を見ていると妙に感情が揺れる。
まるで喉に魚の小骨がつっかえた時のような違和感。
「なんでだろ?」
ぼんやりと考えていると挨拶式典が終わって集まっていた人達が帰ろうと動き始めた。
その動く人の波の中、「きゃっ」という悲鳴が聞こえて振り向くと、女の人が人に押されて倒れていた。
「お姉さん大丈夫?」
手を差し伸べるとお姉さんは「ありがとう」と手を取り、立とうとしたが転けた時に足を挫いたようで1人では立っていられない様子。
「御免なさい…。あそこの道の奥にベンチがあるから、そこまで歩くの手伝ってもらえる?」
「うん。分かった。あの道の奥だね」
ちょっと離れるねとみんなに声を掛けようとしたが、人波に揉まれて気付けばみんなが居ない。
これは迷子認定されてしまう。
やだな。後で探さないと。
「あっちだよね」
「そうよ」
迷子という不名誉なレッテルは嫌だけど怪我人最優先。
お姉さんの怪我が悪化しないように座らせてあげる事を優先してお姉さんに肩をかす。
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