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第二章 ローレライとロバ耳王子と陰謀と
15、大切なもの全て(フィルバート視点)
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「……それで、ラニ王子は無事に見つかったのだな」
長いため息を吐き、皇帝がテーブルに顔を伏せる。
苦笑と安堵を浮かべて同盟国の王達が、ぐでっと背もたれにもたれかかった。
「城で迷子…。レヴァと違う方向性で大物だな」
「アイツは無駄に行動範囲広かったもんな…。レーヴの帝都を誰よりも知り尽くしてたし」
「何度アイツに置いてかれた俺達が帝都で迷子になった事か…」
首脳会議は途中から脱線してラニの伯父であるモアナ王国第一王子レヴァとの昔話に花が咲き、昨日の夜会での緊迫感から一転して和やかだ。
和平交渉は交渉する前から決裂。
それ所か。
宣戦布告までされてしまい、首脳会議の議題が増えてしまった。
王も側近も皆、厚くなった資料をちらりと見て、スッと明後日の方向へと目を逸らす。
「やー。ねー、どうしようかね…」
「「「………………」」」
ジトッと王達全員の視線が皇帝に向く。皇帝はテーブルに伏せた顔が上げられない状態の様子。
ここはいち皇子として、何か声を掛けなくてはならないだろうかと隣で悶々と考えていたが、第二皇子にツンツンと肩を突かれ、振り返る。
「フィル。おそらく、ここから停滞すると思うから、その間にラニ王子の様子を見に行ってくれないかな?」
「勿論、承ります。……あの、兄上。父上は大丈夫でしょうか?」
「うーん。大丈夫じゃなくてもサフィールさんがどうにかしてくれるだろうし。最悪、僕が取り仕切るよ」
「そう…ですか」
同盟各国の王達がいるこの場を取り仕切る。
そう言って見せる兄上はやはり、俺よりも優れていて、ペラペラと王達が見る事を拒否した資料さえ、淡々と読み、頭に叩き込んで行く。
その姿と昨日の皇帝のファルハの王に立ち向かっていったあの姿を思い出し、ため息を吐く。
兄上はそんな俺を資料を見ながら横目で見て、苦笑を浮かべた。
「フィル。ラニ王子のフォローだって大事な仕事だ。僕はフィルを信頼して任せているんだよ」
「ですが…、俺は兄上や昨日の父上のようには俺……」
「それは年の功だよ、フィル。場数の違いで、役目の違いだ。フィルにはフィルにしか出来ない事がある。お前はよくやってるよ」
そう兄上は微笑み、兄上の手が優しく頭を撫でる。
優しい兄上は何時だって驕る事はなく、俺よりも視野が広い。俺よりも俺の出来る事を理解して導いてくれる。
キュッと口を結び、情けないと叫びたくなる俺が出てこないように奥に追いやり、ゆっくりと息を吐く。
もう少し上手く立ち回れたら、もう少し自分が客観的に見えたらとぐちぐちと無い物ねだりをする自分を抑え込んだ。
会議室から出て、ラニのいる離宮に向けて渡り廊下を歩く。
ラニのいる離宮は王宮の中でも奥めいた所にあり、会議室からは30分ほど歩いて掛かる。
王宮の城門や夜会の会場となったホールからは1時間程掛かる。
薔薇の庭園を突っ切ると少し時間を短縮出来るが、薔薇の庭園自体が複雑な作りで道を失いやすい。
渡り廊下から薔薇の庭園を迂回して馬で移動するのがセオリーだ。
だから間違ってもラニのように薔薇の庭園を突っ切るような真似はしない。
ー お子様のやる事は突拍子もないな、本当
怒るシルビオを前にべそをかきながら病床に伏せっていたラニを思い出して頭が痛くなる。
頰は熱で何時もより真っ赤で、ハフハフと苦しそうな息遣いなのに泣きじゃくるからあまりに憐れに思い、怒るシルビオを止めたが、それも正直、正しかったのか分からない。
シルビオの判断は何時だって正しい。
確かにラニの護衛はシルビオが適任で、四六時中護るなら同じ学年で同じクラスにいた方がいいのかもしれない。
だが、王族や貴族が通い、その為に警備も強固な学園内でも常に一緒である必要性は俺には分からない。
「だーっ!もうっ、止めだ。止めっ!!うじうじしたってしょうがないだろっ」
自身に喝を入れ、スタスタと早足で渡り廊下を歩く。
エレンが頰に怪我を負ってしまった事もラニの事も、もう終わった事だ。
今更、何も出来ない。
大切なのはこれから何をするかだ。
そう無理矢理前を向いて渡り廊下を進むと前から黒い集団が歩いてくるのが見えた。
黒い装束に身を纏った彼等は異様な空気を纏っており、あの特徴的な三日月のように峰が反った剣を腰に帯剣している。
ー ファルハ人…
まだ居たのかという苦々しい気持ちが迫り上がってくる。
護衛の黒装束達が囲うように護る中、その王は我が物顔で堂々と廊下の真ん中を歩いている。
相手は敵国でも王。
俺が避けるべきなのかと内心ため息をついて横に避ける。そんな俺にファルハの王は一瞥もせず、通り過ぎていく。
会ってしまったのだから挨拶でもと胸に当てた手をグッと握り、苛立ちでひくつく表情をなんとか抑え込む。
無礼にも程がある。
だが、相手は敵国の王。
宣戦布告をしてきた相手。
一言物申せば、まだ消せる戦の火種を燃え上がらせてしまうかもしれない。
ー 落ち着け、俺
理性を掻き集めて、落ち着かせようと深く息を吸う。
ふと、香の匂いがして、はたと顔を上げると黒装束の護衛の中の一人に違和感を覚えた。
黒装束の護衛は皆、肩までつく黒い布で頭を覆い、目から下の顔の半分も黒い布で覆われている。
布の合間から見えるファルハ人特有の鳶色の瞳も皆同じ。
だが、一人だけ。
たった一人だけ、肌の色が違う。
ファルハ人特有の浅黒い肌ではなく、黒装束から白い肌がチラリと見える。
『ラニラニを攫おうとしたファルハ人の一人は白い肌のファルハの女だったらしいよ』
その白い肌の黒装束の護衛の姿にシルビオから受けた報告が思い起こされる。
苦々しい口調でラニの護衛だった者の前でそう報告してきたシルビオは怒りを孕んだ紫紺の瞳で彼等を睨んでいた。
固唾を飲み、黙って下を向く彼等から目を逸らすと何時も通りのシルビオの顔に戻り、『ファルハ王国からの奴隷名簿』に視線を落とす。
『間違いなくこの女が誘拐未遂の首謀者だろうね。…しかも、厄介にも一人だけ逃げ果せてる。彼女はまた仕掛けてくるだろうね』
『…ファルハにモアナの王族が留学している情報が漏れてるのか?』
『分からない。でも、漏れているのであれば、あの血みどろ王なら強硬手段で来ると思う。だけど、彼女は分かって行動している気がする。ラニラニがモアナの王子だって』
分かっていて、敢えて、自身の主人に報告しない。
使い捨ての奴隷達と違い、ただの駒とは思えない動きをする腹の読めない混血のファルハ人。
ー コイツだ…
この白い肌のファルハ人が女なのかも確認できない。
だが、直感がそう告げて、手を伸ばした。
肩を掴むとソイツは止まったが、掴んだ後で「しまった」と後悔した。
ー いや、掴んでどうする!?
俺がここで喚いた所で、こちらが不利になるだけで、寧ろこのまま行かせて、暗部あたりに尾行させた方が幾分実りがあった。
だが、胸の辺りからふつふつと怒りが湧いて来て、今すぐ手を離したい理性とは裏腹に肩を掴んだ手に力を込める。
もし、ライモンドが助けていなかったらラニはどうなっていたか。
あの目に見えたものが全て輝いて見えているように屈託なく咲く大輪の笑みも。
好奇心旺盛の癖にすぐ人の後ろに隠れたがり、頼るように俺の服の裾を掴むあの小さな手も。
全て失う所だったかもしれない。
もう二度と会えなくなる所だったかもしれない。
「何かようか、クソガキ」
国のいざこざにアイツを巻き込むなと口を開きかけて、唇を噛み、強く結んだ。他国の皇子相手を簡単に軽んじる不遜な王の声に言いたい事も言えない悔しさを噛み殺し、平静を装う。
おそらく、この王はまだ遺恨のあるモアナの王族がこの国にいる事を知らない。
だからこれ以上波風立てず、大人しく去るべき………だった。
「貴殿は自国の民が奴隷として身を売っている事をどのようにお考えか?」
レーヴ帝国の皇族として感情を殺すべきだった。
それなのにこの口はぶわりっと燃え上がる怒りを噴き出す。
「レーヴ帝国内で今まさにこの瞬間も貴殿の民が奴隷として売られ、非道な扱いを受けている。もう二度と故郷の土を踏めぬかもしれないっ。貴殿はそんな彼等をどうお思いか?」
王族としての責務。
父や兄達の大きな背中。
傷付いたエレン。その奴隷の所為で怖い目にあったラニ。
全ての出来事、感情がごっちゃ混ぜになり、言葉を紡ぐ。
怒りの感情が乗った目でファルハの王を見るが、鼻で嗤うその姿にただ落胆する。
「ハッ。まだ乳臭いガキのヒーローごっこだな」
「なっ!」
「素晴らしい事ではないか。我が民は自ら己が環境から這い上がろうとしたまで。貴様の言葉は飢えも貧しさも知らぬ者の戯言だ。そこまで憐れむのなら貴様が手を差し伸べればいいだろ?」
ギラギラと肉食獣のように怪しく光る鳶色の瞳に気圧され、ゴクリッと息を呑む。
そんな俺を見て、嘲笑うとトドメの言葉を吐き、ゆるりと去っていく。
「大体、貴様らが買わねば良いだけの話だろう」
その言葉に反論出来ずに唇を噛んだ。
長いため息を吐き、皇帝がテーブルに顔を伏せる。
苦笑と安堵を浮かべて同盟国の王達が、ぐでっと背もたれにもたれかかった。
「城で迷子…。レヴァと違う方向性で大物だな」
「アイツは無駄に行動範囲広かったもんな…。レーヴの帝都を誰よりも知り尽くしてたし」
「何度アイツに置いてかれた俺達が帝都で迷子になった事か…」
首脳会議は途中から脱線してラニの伯父であるモアナ王国第一王子レヴァとの昔話に花が咲き、昨日の夜会での緊迫感から一転して和やかだ。
和平交渉は交渉する前から決裂。
それ所か。
宣戦布告までされてしまい、首脳会議の議題が増えてしまった。
王も側近も皆、厚くなった資料をちらりと見て、スッと明後日の方向へと目を逸らす。
「やー。ねー、どうしようかね…」
「「「………………」」」
ジトッと王達全員の視線が皇帝に向く。皇帝はテーブルに伏せた顔が上げられない状態の様子。
ここはいち皇子として、何か声を掛けなくてはならないだろうかと隣で悶々と考えていたが、第二皇子にツンツンと肩を突かれ、振り返る。
「フィル。おそらく、ここから停滞すると思うから、その間にラニ王子の様子を見に行ってくれないかな?」
「勿論、承ります。……あの、兄上。父上は大丈夫でしょうか?」
「うーん。大丈夫じゃなくてもサフィールさんがどうにかしてくれるだろうし。最悪、僕が取り仕切るよ」
「そう…ですか」
同盟各国の王達がいるこの場を取り仕切る。
そう言って見せる兄上はやはり、俺よりも優れていて、ペラペラと王達が見る事を拒否した資料さえ、淡々と読み、頭に叩き込んで行く。
その姿と昨日の皇帝のファルハの王に立ち向かっていったあの姿を思い出し、ため息を吐く。
兄上はそんな俺を資料を見ながら横目で見て、苦笑を浮かべた。
「フィル。ラニ王子のフォローだって大事な仕事だ。僕はフィルを信頼して任せているんだよ」
「ですが…、俺は兄上や昨日の父上のようには俺……」
「それは年の功だよ、フィル。場数の違いで、役目の違いだ。フィルにはフィルにしか出来ない事がある。お前はよくやってるよ」
そう兄上は微笑み、兄上の手が優しく頭を撫でる。
優しい兄上は何時だって驕る事はなく、俺よりも視野が広い。俺よりも俺の出来る事を理解して導いてくれる。
キュッと口を結び、情けないと叫びたくなる俺が出てこないように奥に追いやり、ゆっくりと息を吐く。
もう少し上手く立ち回れたら、もう少し自分が客観的に見えたらとぐちぐちと無い物ねだりをする自分を抑え込んだ。
会議室から出て、ラニのいる離宮に向けて渡り廊下を歩く。
ラニのいる離宮は王宮の中でも奥めいた所にあり、会議室からは30分ほど歩いて掛かる。
王宮の城門や夜会の会場となったホールからは1時間程掛かる。
薔薇の庭園を突っ切ると少し時間を短縮出来るが、薔薇の庭園自体が複雑な作りで道を失いやすい。
渡り廊下から薔薇の庭園を迂回して馬で移動するのがセオリーだ。
だから間違ってもラニのように薔薇の庭園を突っ切るような真似はしない。
ー お子様のやる事は突拍子もないな、本当
怒るシルビオを前にべそをかきながら病床に伏せっていたラニを思い出して頭が痛くなる。
頰は熱で何時もより真っ赤で、ハフハフと苦しそうな息遣いなのに泣きじゃくるからあまりに憐れに思い、怒るシルビオを止めたが、それも正直、正しかったのか分からない。
シルビオの判断は何時だって正しい。
確かにラニの護衛はシルビオが適任で、四六時中護るなら同じ学年で同じクラスにいた方がいいのかもしれない。
だが、王族や貴族が通い、その為に警備も強固な学園内でも常に一緒である必要性は俺には分からない。
「だーっ!もうっ、止めだ。止めっ!!うじうじしたってしょうがないだろっ」
自身に喝を入れ、スタスタと早足で渡り廊下を歩く。
エレンが頰に怪我を負ってしまった事もラニの事も、もう終わった事だ。
今更、何も出来ない。
大切なのはこれから何をするかだ。
そう無理矢理前を向いて渡り廊下を進むと前から黒い集団が歩いてくるのが見えた。
黒い装束に身を纏った彼等は異様な空気を纏っており、あの特徴的な三日月のように峰が反った剣を腰に帯剣している。
ー ファルハ人…
まだ居たのかという苦々しい気持ちが迫り上がってくる。
護衛の黒装束達が囲うように護る中、その王は我が物顔で堂々と廊下の真ん中を歩いている。
相手は敵国でも王。
俺が避けるべきなのかと内心ため息をついて横に避ける。そんな俺にファルハの王は一瞥もせず、通り過ぎていく。
会ってしまったのだから挨拶でもと胸に当てた手をグッと握り、苛立ちでひくつく表情をなんとか抑え込む。
無礼にも程がある。
だが、相手は敵国の王。
宣戦布告をしてきた相手。
一言物申せば、まだ消せる戦の火種を燃え上がらせてしまうかもしれない。
ー 落ち着け、俺
理性を掻き集めて、落ち着かせようと深く息を吸う。
ふと、香の匂いがして、はたと顔を上げると黒装束の護衛の中の一人に違和感を覚えた。
黒装束の護衛は皆、肩までつく黒い布で頭を覆い、目から下の顔の半分も黒い布で覆われている。
布の合間から見えるファルハ人特有の鳶色の瞳も皆同じ。
だが、一人だけ。
たった一人だけ、肌の色が違う。
ファルハ人特有の浅黒い肌ではなく、黒装束から白い肌がチラリと見える。
『ラニラニを攫おうとしたファルハ人の一人は白い肌のファルハの女だったらしいよ』
その白い肌の黒装束の護衛の姿にシルビオから受けた報告が思い起こされる。
苦々しい口調でラニの護衛だった者の前でそう報告してきたシルビオは怒りを孕んだ紫紺の瞳で彼等を睨んでいた。
固唾を飲み、黙って下を向く彼等から目を逸らすと何時も通りのシルビオの顔に戻り、『ファルハ王国からの奴隷名簿』に視線を落とす。
『間違いなくこの女が誘拐未遂の首謀者だろうね。…しかも、厄介にも一人だけ逃げ果せてる。彼女はまた仕掛けてくるだろうね』
『…ファルハにモアナの王族が留学している情報が漏れてるのか?』
『分からない。でも、漏れているのであれば、あの血みどろ王なら強硬手段で来ると思う。だけど、彼女は分かって行動している気がする。ラニラニがモアナの王子だって』
分かっていて、敢えて、自身の主人に報告しない。
使い捨ての奴隷達と違い、ただの駒とは思えない動きをする腹の読めない混血のファルハ人。
ー コイツだ…
この白い肌のファルハ人が女なのかも確認できない。
だが、直感がそう告げて、手を伸ばした。
肩を掴むとソイツは止まったが、掴んだ後で「しまった」と後悔した。
ー いや、掴んでどうする!?
俺がここで喚いた所で、こちらが不利になるだけで、寧ろこのまま行かせて、暗部あたりに尾行させた方が幾分実りがあった。
だが、胸の辺りからふつふつと怒りが湧いて来て、今すぐ手を離したい理性とは裏腹に肩を掴んだ手に力を込める。
もし、ライモンドが助けていなかったらラニはどうなっていたか。
あの目に見えたものが全て輝いて見えているように屈託なく咲く大輪の笑みも。
好奇心旺盛の癖にすぐ人の後ろに隠れたがり、頼るように俺の服の裾を掴むあの小さな手も。
全て失う所だったかもしれない。
もう二度と会えなくなる所だったかもしれない。
「何かようか、クソガキ」
国のいざこざにアイツを巻き込むなと口を開きかけて、唇を噛み、強く結んだ。他国の皇子相手を簡単に軽んじる不遜な王の声に言いたい事も言えない悔しさを噛み殺し、平静を装う。
おそらく、この王はまだ遺恨のあるモアナの王族がこの国にいる事を知らない。
だからこれ以上波風立てず、大人しく去るべき………だった。
「貴殿は自国の民が奴隷として身を売っている事をどのようにお考えか?」
レーヴ帝国の皇族として感情を殺すべきだった。
それなのにこの口はぶわりっと燃え上がる怒りを噴き出す。
「レーヴ帝国内で今まさにこの瞬間も貴殿の民が奴隷として売られ、非道な扱いを受けている。もう二度と故郷の土を踏めぬかもしれないっ。貴殿はそんな彼等をどうお思いか?」
王族としての責務。
父や兄達の大きな背中。
傷付いたエレン。その奴隷の所為で怖い目にあったラニ。
全ての出来事、感情がごっちゃ混ぜになり、言葉を紡ぐ。
怒りの感情が乗った目でファルハの王を見るが、鼻で嗤うその姿にただ落胆する。
「ハッ。まだ乳臭いガキのヒーローごっこだな」
「なっ!」
「素晴らしい事ではないか。我が民は自ら己が環境から這い上がろうとしたまで。貴様の言葉は飢えも貧しさも知らぬ者の戯言だ。そこまで憐れむのなら貴様が手を差し伸べればいいだろ?」
ギラギラと肉食獣のように怪しく光る鳶色の瞳に気圧され、ゴクリッと息を呑む。
そんな俺を見て、嘲笑うとトドメの言葉を吐き、ゆるりと去っていく。
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その言葉に反論出来ずに唇を噛んだ。
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