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第二章 ローレライとロバ耳王子と陰謀と
18、ドジも突き抜けるとひたすら怖い
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「また鬼ごっこですか…」
食堂には何時ものメンバーがもう集まって、食事を始めていた。
毎回、我関せずのリュビオが僕達を見て、ドン引きしつつもサンドイッチを口に運ぶ。
皇子はちゃっかりエレンの隣に座りつつも話し掛けるまでは至らなかったようで僕が来た瞬間、ちょっと嬉しそうに口角を上げてすます。
早く座れと言わんばかりにチラチラとエレンの膝を見ている。
「ふ、ふんっ。今日は遅かったな」
「…………」
「…なんだ。その哀れみの目は。シルビオに小脇に抱えられた状態でよくそんな目を向けられるな!?」
奥手過ぎる皇子はサッと見なかった事にして、バシバシッと自身の膝を叩いて座るようにアピールしてくるエレンの膝に下ろされるのを諦めて待つ。
だが、シルビオは僕を普通にエレンの隣の席に座らせると僕の隣に腰掛けた。
「な、何故…」
「ごめんねー、エレン。俺、これ以上、ラニラニに嫌われる訳には行かないから」
「お、俺の癒しが…」
珍しく僕の主張を呑んで一人で座らせてくれたシルビオに途轍もない違和感をヒシヒシと感じてシルビオを見やる。
ニコニコと感情の読めない笑顔を浮かべるシルビオの動向が僕には理解できない。
ー 何を…、何を企んでいる!?
ゴクリッと固唾を飲み、じっと見ていると、にっこりと笑みを浮かべて、僕の皿に自身が食べようとしていた鳥の香草焼きを半分置く。
「何故?」
「んー? ラニラニの魚のムニエルが美味しそうだから俺のとちょっと交換して、分けて貰おうかなーと」
「えっ、分けっこ?」
「…は? シルビオ、貴方どうしたんですか!? そんな行儀が悪い事貴方が率先してす……」
「えー!! 俺もやりたいっ。ラニちゃん。お兄さんとも分けっこしよ!」
ガタッと立ち上がり、狐につままれたような顔でシルビオを見るリュビオ。
エレンはそんなリュビオの言葉を遮り、シルビオの提案にノリノリで自身のポークソテーをわけてくる。
皇子は皇子でシルビオの行動に驚きを隠せないみたいだったけど、何気なくエレンの所にそっと自身の料理を分けていた。
ー 分けっこ!
モアナではごく普通にやっていたその言葉を頭で反復して、うずうずする。
レーヴ帝国に来てから分けっこしようなんて言われた事は一度もない。
シルビオと分けっこして、エレンとも分けっこして。僕があまりにも鼻歌歌って喜ぶから皇子まで分けっこしてくれた。
お皿の中はお魚や豚や鳥と賑やかで、違う味が楽しめてとても楽しい。
「…シルビオ。貴方、ラニ王子の機嫌を取って何考えてるんですか」
「何って単純に仲良くなろーとしてるだけぢゃん」
「嘘つけ、腹黒。私は騙されませんよ!!」
「……ちょっと、黙ろうか。リュビちゃん」
何やらシルビオの手のひらの上で踊らされてる気もしなくはないが、それでも嬉しい事は単純に嬉しい。
ふんふんっと鼻歌を歌いながら、鳥の香草焼きを切り分けて、口に運ぶ。
エレンが食べるのも忘れて肘をついて、ニマニマと嬉しそうにこちらを見てるのが若干食べづらいが、今更なので気にせず食べる。
だが、いつも通りの光景なのに首脳会議から今日まで用事でいなかったエレンの右頬にスッと赤い一本の傷が見え、首をかしげる。
「あれ? その傷どうしたの?」
そう問いかけるとエレンは愛想笑いを浮かべ、エレンに聞いたのにバツが悪そうに何故か皇子が口を開く。
「それは…」
「これはねっ! 急に料理がしたくなってついてしまったんだ」
しかし、皇子の言葉を遮り、エレンが喋り出す。
いや、料理でどうやって頬に傷が付くの?
「え? りょ、料理?」
「うん。ちょっと包丁でお野菜を切ろうとしたら思ったより固くてね。勢いをつけて切ろうと振り上げたら頬に当たっちゃった」
「包丁を振り上げた!?」
恐ろしい。
誤魔化し笑いを浮かべるエレンに笑い事じゃないと冷や汗をかく。
エレンがドジっ子なのは初めて会った時から知ってたけど、まさかここまでとは……。
「エレン…」
「何? ラニちゃん」
「何か食べたいものがある時は僕に言って。僕が作るからエレンは包丁握っちゃダメだよ…」
予想以上のドジぶりに本気でエレンが心配になってきた。
料理で流血沙汰なんて怖すぎる。
とても真剣に僕はエレンを心配しているというのにエレンは僕の言葉に「ラニちゃんの料理…」と何度も呟いて放心状態。
むぅっと頬を膨らまし、分かってなさそうなエレンにずいっと顔を寄せる。
僕より背の高いエレンを見上げながら再度忠告する。
「僕が料理作ってあげるから包丁は触っちゃダメ。約束だよ?」
言い終わったその瞬間、ピュッと音を立てて、宙に赤い雫が舞った。
エレンが顔を真っ赤にしてドクドクと流血する鼻を抑えていた。
「エレン!?」
何故、流血沙汰を止めようとしたのに血が流れるのか?
何が起こったのか分からないけど、取り敢えず、エレンの鼻血を止めようとエレンに触れようとしてヒョイッと抱き上げられる。
何事!?と見上げるとシルビオがちょっと不機嫌そうに僕を抱き上げていて、足で僕の椅子を自身の方へ寄せると僕を椅子に座らせた。
鼻血を出すエレンを前に皇子はあたふたしつつ、自身のハンカチを渡し、リュビオも自身のハンカチを追加で渡してた。
そんなカオスな状況でシルビオはまるで何も起こってないかのように平静に話題を僕に振る。
「ラニラニは料理出来るの?」
「え…。う、うん。料理は生きるのに必要だって、一通りは教えてもらってるし。漁師の息子だから魚を三枚に下ろすのは得意だよ」
「ラニちゃんが俺に料理を作ってくれる上に、可愛いお願いと上目遣いの破壊力。えっ? これは夢?? それとも、俺、あの日の夜会で死んだ?? ここは天国???」
「エ、エレン! ここは現世だぞ!!お、俺だって、トーストくらいはやってやらん事もないんだぞ!?」
「まだ死んでないですよ!? 私だって、サラダくらいは作れますよ」
「そっかー。ラニラニは料理出来るんだ。凄いね。オニーサンも作ってもらおうかなー?」
……ガン無視だ。
隣は無茶苦茶騒いでいるのにガン無視。
気にせず、僕があげたお魚のムニエルを食べながら話題を広げていた。
食堂には何時ものメンバーがもう集まって、食事を始めていた。
毎回、我関せずのリュビオが僕達を見て、ドン引きしつつもサンドイッチを口に運ぶ。
皇子はちゃっかりエレンの隣に座りつつも話し掛けるまでは至らなかったようで僕が来た瞬間、ちょっと嬉しそうに口角を上げてすます。
早く座れと言わんばかりにチラチラとエレンの膝を見ている。
「ふ、ふんっ。今日は遅かったな」
「…………」
「…なんだ。その哀れみの目は。シルビオに小脇に抱えられた状態でよくそんな目を向けられるな!?」
奥手過ぎる皇子はサッと見なかった事にして、バシバシッと自身の膝を叩いて座るようにアピールしてくるエレンの膝に下ろされるのを諦めて待つ。
だが、シルビオは僕を普通にエレンの隣の席に座らせると僕の隣に腰掛けた。
「な、何故…」
「ごめんねー、エレン。俺、これ以上、ラニラニに嫌われる訳には行かないから」
「お、俺の癒しが…」
珍しく僕の主張を呑んで一人で座らせてくれたシルビオに途轍もない違和感をヒシヒシと感じてシルビオを見やる。
ニコニコと感情の読めない笑顔を浮かべるシルビオの動向が僕には理解できない。
ー 何を…、何を企んでいる!?
ゴクリッと固唾を飲み、じっと見ていると、にっこりと笑みを浮かべて、僕の皿に自身が食べようとしていた鳥の香草焼きを半分置く。
「何故?」
「んー? ラニラニの魚のムニエルが美味しそうだから俺のとちょっと交換して、分けて貰おうかなーと」
「えっ、分けっこ?」
「…は? シルビオ、貴方どうしたんですか!? そんな行儀が悪い事貴方が率先してす……」
「えー!! 俺もやりたいっ。ラニちゃん。お兄さんとも分けっこしよ!」
ガタッと立ち上がり、狐につままれたような顔でシルビオを見るリュビオ。
エレンはそんなリュビオの言葉を遮り、シルビオの提案にノリノリで自身のポークソテーをわけてくる。
皇子は皇子でシルビオの行動に驚きを隠せないみたいだったけど、何気なくエレンの所にそっと自身の料理を分けていた。
ー 分けっこ!
モアナではごく普通にやっていたその言葉を頭で反復して、うずうずする。
レーヴ帝国に来てから分けっこしようなんて言われた事は一度もない。
シルビオと分けっこして、エレンとも分けっこして。僕があまりにも鼻歌歌って喜ぶから皇子まで分けっこしてくれた。
お皿の中はお魚や豚や鳥と賑やかで、違う味が楽しめてとても楽しい。
「…シルビオ。貴方、ラニ王子の機嫌を取って何考えてるんですか」
「何って単純に仲良くなろーとしてるだけぢゃん」
「嘘つけ、腹黒。私は騙されませんよ!!」
「……ちょっと、黙ろうか。リュビちゃん」
何やらシルビオの手のひらの上で踊らされてる気もしなくはないが、それでも嬉しい事は単純に嬉しい。
ふんふんっと鼻歌を歌いながら、鳥の香草焼きを切り分けて、口に運ぶ。
エレンが食べるのも忘れて肘をついて、ニマニマと嬉しそうにこちらを見てるのが若干食べづらいが、今更なので気にせず食べる。
だが、いつも通りの光景なのに首脳会議から今日まで用事でいなかったエレンの右頬にスッと赤い一本の傷が見え、首をかしげる。
「あれ? その傷どうしたの?」
そう問いかけるとエレンは愛想笑いを浮かべ、エレンに聞いたのにバツが悪そうに何故か皇子が口を開く。
「それは…」
「これはねっ! 急に料理がしたくなってついてしまったんだ」
しかし、皇子の言葉を遮り、エレンが喋り出す。
いや、料理でどうやって頬に傷が付くの?
「え? りょ、料理?」
「うん。ちょっと包丁でお野菜を切ろうとしたら思ったより固くてね。勢いをつけて切ろうと振り上げたら頬に当たっちゃった」
「包丁を振り上げた!?」
恐ろしい。
誤魔化し笑いを浮かべるエレンに笑い事じゃないと冷や汗をかく。
エレンがドジっ子なのは初めて会った時から知ってたけど、まさかここまでとは……。
「エレン…」
「何? ラニちゃん」
「何か食べたいものがある時は僕に言って。僕が作るからエレンは包丁握っちゃダメだよ…」
予想以上のドジぶりに本気でエレンが心配になってきた。
料理で流血沙汰なんて怖すぎる。
とても真剣に僕はエレンを心配しているというのにエレンは僕の言葉に「ラニちゃんの料理…」と何度も呟いて放心状態。
むぅっと頬を膨らまし、分かってなさそうなエレンにずいっと顔を寄せる。
僕より背の高いエレンを見上げながら再度忠告する。
「僕が料理作ってあげるから包丁は触っちゃダメ。約束だよ?」
言い終わったその瞬間、ピュッと音を立てて、宙に赤い雫が舞った。
エレンが顔を真っ赤にしてドクドクと流血する鼻を抑えていた。
「エレン!?」
何故、流血沙汰を止めようとしたのに血が流れるのか?
何が起こったのか分からないけど、取り敢えず、エレンの鼻血を止めようとエレンに触れようとしてヒョイッと抱き上げられる。
何事!?と見上げるとシルビオがちょっと不機嫌そうに僕を抱き上げていて、足で僕の椅子を自身の方へ寄せると僕を椅子に座らせた。
鼻血を出すエレンを前に皇子はあたふたしつつ、自身のハンカチを渡し、リュビオも自身のハンカチを追加で渡してた。
そんなカオスな状況でシルビオはまるで何も起こってないかのように平静に話題を僕に振る。
「ラニラニは料理出来るの?」
「え…。う、うん。料理は生きるのに必要だって、一通りは教えてもらってるし。漁師の息子だから魚を三枚に下ろすのは得意だよ」
「ラニちゃんが俺に料理を作ってくれる上に、可愛いお願いと上目遣いの破壊力。えっ? これは夢?? それとも、俺、あの日の夜会で死んだ?? ここは天国???」
「エ、エレン! ここは現世だぞ!!お、俺だって、トーストくらいはやってやらん事もないんだぞ!?」
「まだ死んでないですよ!? 私だって、サラダくらいは作れますよ」
「そっかー。ラニラニは料理出来るんだ。凄いね。オニーサンも作ってもらおうかなー?」
……ガン無視だ。
隣は無茶苦茶騒いでいるのにガン無視。
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