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第二章 ローレライとロバ耳王子と陰謀と
19、ハッピーエンドは遠い
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昼食の時間も終わり、ちょっと眠くなってしまう授業の時間も終わりに近くなった頃。
辺りが僕の大好きな夕陽色に染まる中、僕は先生に頼まれて、エリオットと一緒に教材を準備室へと返しに行っていた。
エリオットとふざけながら教材を運んでいたが、違う先生に取っ捕まって、エリオットは途中退場していった。
どうやら、エリオットはこの間の抜き打ちで行われた小テストで赤点だったらしく。その先生はおかんむり。
鬼の形相を浮かべる先生を前に逃げられる筈はなく。僕はエリオットの分まで一人で運ぶハメになった。
なんとか、準備室までエリオットの分まで運び、体力が尽きて座り込む。
もういっその事、シルビオに寮まで運んでもらうかと自身の尊厳を捨てて、回収を待つ。
だけど、案外待ってる時は中々来ないもので、ぼんやりと窓から外を眺めていると、グルグル眼鏡先輩が通っていくのが見えた。
首脳会議前からずっと見掛けていなかったグルグル眼鏡先輩。
グルグル眼鏡先輩という存在と新聞部(同好会)を知ってても、誰もどの学年でどのクラスかは知らない。名前すら知らない。
「先輩っ!!」
窓を開けて、そう呼び掛けるがグルグル眼鏡先輩は気付かず、言ってしまう。
グルグル眼鏡先輩を追いかけて、窓を飛び越え……る事は体力が尽きているので出来ないので、置いてあった台を使って、よたよたと窓をくぐる。
グルグル眼鏡先輩の後ろ姿を追い、よろよろと走る。
グルグル眼鏡先輩は細い校舎裏の道を通って進んでいく。そんなグルグル眼鏡先輩を追っているとやがて、古びた講堂に入っていった。
続いて入ると、キラキラと赤や黄色や色鮮やかな光が降り注ぐ。見上げると講堂の壁には何人もの女神様が描かれたステンドグラスが嵌め込まれていて、その美しさに目を奪われた。
女神様が描かれたステンドグラスの壁の前には描かれた女神の一人の像が鎮座していて、その女神の像に背を預けるようにグルグル眼鏡先輩が腰掛けていた。
グルグル眼鏡先輩は僕をその瓶底眼鏡越しから見つめていた。
「《ミューズの恋歌》。主人公エレンは幼少期の孤児時代に嵐の夜に聞いたローレライの歌に憧れて、メロディしか分からないローレライの歌の歌詞を求めてミューズ学園に転入してくる」
挨拶もなしに突如始まった語りに、流石、グルグル眼鏡先輩だと苦笑し、今まで何処に行っていたのか聞こうと口を開こうとした。
しかし、いつに無く、真剣な眼差しに射抜かれて、言葉が霧散する。
何時もと雰囲気が違う。
ピンッと空気が張り詰めていて、緊張する。
「1年目は帝国ルート、同盟国ルート、敵国ルートからルートを選び、様々なハプニングやイベントでそのルートの攻略対象と仲を深める。2年目からは更に誰を攻略するかでルート分岐するものの、大まかな流れは一緒」
トントンッとグルグル眼鏡先輩が自身の右頬を示す。
その動作にふと、エレンが料理中に出来たという右頬の切り傷を思い出す。
……まさか。
「その大まかな流れの一つに首脳会議というイベントがある。エレンはミューズ学園の代表として各国の王をもてなす為に夜会で歌を披露する。本来なら選んだ攻略対象が主人公を庇うイベントが起きる。……だが、攻略対象の誰もエレンを庇いに出て来なかった。さて、これが何を意味していると思います?」
そう問われて、気まずそうにしていた皇子と誤魔化し笑いを浮かべるエレンの姿を思い出し、口を強く結ぶ。
そんな僕を何処か嘲るような目でグルグル眼鏡先輩は見つめ、ため息を付いた。
「物語はエレンが攻略対象を選ばなくても進んでいく。どんな物語にも大きな試練は付きもの。攻略対象と共にではないと乗り越えられない大きな試練に今のエレンがぶつかったらどうなるのでしょうね」
このまま物語が終盤を迎えたらエレンはどうなるのか?
ブワリッと嫌な予感がして、鳥肌が立つ。
あの右頬の傷は切り傷だった。
つまり、エレンは剣を向けられて…。
剣を突きつけるような危ない相手が物語のハッピーエンドを拒む敵で……。
「私の言いたい事は一つです。本来であれば、そろそろこの講堂で攻略対象とにゃんにゃんし始める筈なのですが、誰も来ません。どうしてでしょうね!? ラニ氏!!」
フッといきなり、張り詰めていた空気が溶け、いつも通りのグルグル眼鏡先輩が何時もの口調で訳の分からないクレームを付けて来て、目が点になる。
え? 今のその話で行き着く先がそこなの!?
「私はここ最近、ずっとこの講堂でワクワクしながら壁になる為に待ってたのですよ!! なのに誰も来ないっ!!」
「…………」
「この世界が前世でやったゲームの世界だって知った時に一番楽しみにしてたのにっ…。ド畜生ッ!!!」
「…ま、まさか、ここ最近居なかったのはこの講堂で張り込みしてたからって言わないよね」
「ザッツライト! 空気が読めない癖してよく分かってるじゃないですか。さあ! 私のワクワクを返せッ。私が昼夜問わず、アンパン片手に寝ずに見張ってたあの…、あの時間を返せ!!」
「ドン引きだよ。居なかった理由ソレ!?」
地団駄踏みながらグルグル眼鏡先輩は安定の逆ギレをし始めた。
やっと、落ち着いたのはそこから20分後。
聞きたかったファルハ王と第一王子との因縁とグルグル眼鏡先輩の名前と学年と組を聞いたのだけれど…。
「は? そんなの知りませんよ。ゲームなのだから主要人物以外掘り下げませんよ」
「そ、そんな…」
「後、私の名前も学年も組もノーコメントです。教えたら最後、ラニ氏は絶対、私のクラスに突撃してきて私の平和なモブ生活を壊すに決まってるので、ノォーコメント!!」
僕が知りたい事は知らなかった上に、僕に素性を明かす事を拒絶した。
ひ、酷い…。名前くらい教えてくれてもいいじゃないか!!
辺りが僕の大好きな夕陽色に染まる中、僕は先生に頼まれて、エリオットと一緒に教材を準備室へと返しに行っていた。
エリオットとふざけながら教材を運んでいたが、違う先生に取っ捕まって、エリオットは途中退場していった。
どうやら、エリオットはこの間の抜き打ちで行われた小テストで赤点だったらしく。その先生はおかんむり。
鬼の形相を浮かべる先生を前に逃げられる筈はなく。僕はエリオットの分まで一人で運ぶハメになった。
なんとか、準備室までエリオットの分まで運び、体力が尽きて座り込む。
もういっその事、シルビオに寮まで運んでもらうかと自身の尊厳を捨てて、回収を待つ。
だけど、案外待ってる時は中々来ないもので、ぼんやりと窓から外を眺めていると、グルグル眼鏡先輩が通っていくのが見えた。
首脳会議前からずっと見掛けていなかったグルグル眼鏡先輩。
グルグル眼鏡先輩という存在と新聞部(同好会)を知ってても、誰もどの学年でどのクラスかは知らない。名前すら知らない。
「先輩っ!!」
窓を開けて、そう呼び掛けるがグルグル眼鏡先輩は気付かず、言ってしまう。
グルグル眼鏡先輩を追いかけて、窓を飛び越え……る事は体力が尽きているので出来ないので、置いてあった台を使って、よたよたと窓をくぐる。
グルグル眼鏡先輩の後ろ姿を追い、よろよろと走る。
グルグル眼鏡先輩は細い校舎裏の道を通って進んでいく。そんなグルグル眼鏡先輩を追っているとやがて、古びた講堂に入っていった。
続いて入ると、キラキラと赤や黄色や色鮮やかな光が降り注ぐ。見上げると講堂の壁には何人もの女神様が描かれたステンドグラスが嵌め込まれていて、その美しさに目を奪われた。
女神様が描かれたステンドグラスの壁の前には描かれた女神の一人の像が鎮座していて、その女神の像に背を預けるようにグルグル眼鏡先輩が腰掛けていた。
グルグル眼鏡先輩は僕をその瓶底眼鏡越しから見つめていた。
「《ミューズの恋歌》。主人公エレンは幼少期の孤児時代に嵐の夜に聞いたローレライの歌に憧れて、メロディしか分からないローレライの歌の歌詞を求めてミューズ学園に転入してくる」
挨拶もなしに突如始まった語りに、流石、グルグル眼鏡先輩だと苦笑し、今まで何処に行っていたのか聞こうと口を開こうとした。
しかし、いつに無く、真剣な眼差しに射抜かれて、言葉が霧散する。
何時もと雰囲気が違う。
ピンッと空気が張り詰めていて、緊張する。
「1年目は帝国ルート、同盟国ルート、敵国ルートからルートを選び、様々なハプニングやイベントでそのルートの攻略対象と仲を深める。2年目からは更に誰を攻略するかでルート分岐するものの、大まかな流れは一緒」
トントンッとグルグル眼鏡先輩が自身の右頬を示す。
その動作にふと、エレンが料理中に出来たという右頬の切り傷を思い出す。
……まさか。
「その大まかな流れの一つに首脳会議というイベントがある。エレンはミューズ学園の代表として各国の王をもてなす為に夜会で歌を披露する。本来なら選んだ攻略対象が主人公を庇うイベントが起きる。……だが、攻略対象の誰もエレンを庇いに出て来なかった。さて、これが何を意味していると思います?」
そう問われて、気まずそうにしていた皇子と誤魔化し笑いを浮かべるエレンの姿を思い出し、口を強く結ぶ。
そんな僕を何処か嘲るような目でグルグル眼鏡先輩は見つめ、ため息を付いた。
「物語はエレンが攻略対象を選ばなくても進んでいく。どんな物語にも大きな試練は付きもの。攻略対象と共にではないと乗り越えられない大きな試練に今のエレンがぶつかったらどうなるのでしょうね」
このまま物語が終盤を迎えたらエレンはどうなるのか?
ブワリッと嫌な予感がして、鳥肌が立つ。
あの右頬の傷は切り傷だった。
つまり、エレンは剣を向けられて…。
剣を突きつけるような危ない相手が物語のハッピーエンドを拒む敵で……。
「私の言いたい事は一つです。本来であれば、そろそろこの講堂で攻略対象とにゃんにゃんし始める筈なのですが、誰も来ません。どうしてでしょうね!? ラニ氏!!」
フッといきなり、張り詰めていた空気が溶け、いつも通りのグルグル眼鏡先輩が何時もの口調で訳の分からないクレームを付けて来て、目が点になる。
え? 今のその話で行き着く先がそこなの!?
「私はここ最近、ずっとこの講堂でワクワクしながら壁になる為に待ってたのですよ!! なのに誰も来ないっ!!」
「…………」
「この世界が前世でやったゲームの世界だって知った時に一番楽しみにしてたのにっ…。ド畜生ッ!!!」
「…ま、まさか、ここ最近居なかったのはこの講堂で張り込みしてたからって言わないよね」
「ザッツライト! 空気が読めない癖してよく分かってるじゃないですか。さあ! 私のワクワクを返せッ。私が昼夜問わず、アンパン片手に寝ずに見張ってたあの…、あの時間を返せ!!」
「ドン引きだよ。居なかった理由ソレ!?」
地団駄踏みながらグルグル眼鏡先輩は安定の逆ギレをし始めた。
やっと、落ち着いたのはそこから20分後。
聞きたかったファルハ王と第一王子との因縁とグルグル眼鏡先輩の名前と学年と組を聞いたのだけれど…。
「は? そんなの知りませんよ。ゲームなのだから主要人物以外掘り下げませんよ」
「そ、そんな…」
「後、私の名前も学年も組もノーコメントです。教えたら最後、ラニ氏は絶対、私のクラスに突撃してきて私の平和なモブ生活を壊すに決まってるので、ノォーコメント!!」
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