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第二章 ローレライとロバ耳王子と陰謀と
20、夏合宿という名の地獄
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夏。それはレーヴ帝国で唯一暑い季節。
制服も分厚いコートを脱ぎ捨て、半袖のシャツへと変わり、女の子達はうなじが見えるほど髪を結い上げ、男達はバッサリと髪を切る。
季節の変わり目は気分の変わり目。
季節の変わり目はイメチェンの季節。
かくいう僕も例外では無く……。
「よしっ。バッサリ行こう」
散髪用のハサミを頭上に掲げて、ふんふんっと鼻歌を歌う。
肩よりも下まで伸びた髪を一束掴み、いざ切らんとハサミを開く。
「お、おい。何やっている!?」
切ろうとした瞬間、当たり前の如く、僕の部屋に入ってきた皇子が何故か僕に問いかける。
「何やってるも何も髪を切るんだよ。バッサリね!」
「お前な…。髪が長いからヘアアレンジでそのロバ耳をカモフラージュ出来てるんだぞ。バッサリ行くな阿呆」
「僕が髪を伸ばしている理由はね。この国は夏以外寒いから首を守る為に伸ばしているんだ。…僕は寒いのは嫌だけど、暑苦しいのはもっとヤダ」
「髪をアップにすればいいだろ!! 切るな。ヘアアレンジのレパートリーが減る」
「…………どう、バッサリ切ろうかな」
「おいっ、コラ!! スルーするなッ」
僕の髪型は僕が決める。
僕は昨日髪をバッサリ切ったエリオットみたいにカッコいい髪型を目指す。ワイルドでかっこいい男になるんだ。
皇子の存在を無かった事にして、今度こそ髪を切ろうとするが、今度は何時の間にかに現れたシルビオが横から手を伸ばして、僕からハサミを取り上げる。
「ラニラニ。取り敢えず、やめようか」
「なんで? なんで、僕はダメなの!? 今年の夏の勉強合宿に向けて、イメチェンしようと思ったのにッ。令嬢のコンスタンチェだって、『今年の流行はショートヘアに決まりね』って、長かった髪をバッサリ、肩まで切ってたよ!!」
「……コンスタンチェって、兄上の婚約者のコンスタンチェだよな」
「………ラニラニ。それについては第二皇子に直々にお叱りして頂くとして、これは没収」
「なんでさ!?」
この後、僕は皇子にショートにするなら馬鹿みたいにデカいリボンでロバ耳をフォローするしかないと脅されて、泣く泣くイメチェンを諦めた。
◇
「解せぬ」
むぅっと頬を膨らませて、ガタゴトと揺れる馬車の中、切る事を許されず、編み込まれてお団子にされた頭をいじる。
「それは俺のセリフだよ…」
隣では悲壮の表情を浮かべたエリオットが何時もは全く帯剣してない剣を腰に差し、自身と対面して座るシルビオを見やる。
「俺…、見習いなんすけど」
ついでに僕の対面には皇子が鎮座し、左横には何時もより楽しそうな表情のリュビオが座っている。
何故、この面子で馬車に乗っているかと問われれば、これからミューズ学園毎年恒例の夏の勉強合宿に向かうから。
夏の勉強合宿は全学年合同で行われる校外学習。
レーヴ北部にあるミューズ学園別館を拠点として2週間、課外学習課せられている。
また、親睦会も兼ねていて、肝試しやチェス大会など毎度、イベントもあったりする。
去年は肝試しで本物のお化けが出たり、道中一部の生徒達が山賊に襲われたり、猫化したりなど、超常現象や事件がサラッと起こる恐ろしい恒例《イベント》だ。
僕は勿論、皇子達と校外学習中、一緒にいる事を拒絶した。
攻略対象である皇子達と一緒の場合、その《イベント》に巻き込まれるに決まってるからね。でも、髪型と一緒で却下だ。
僕はおおいに拗ねた。
拗ねて、馬車に乗る事を最後の最後まで拒絶した。
だが、横で何故かシルビオに皇子と同じ馬車に投げ込まれたエリオットの姿に呆気に取られて、気付いたら僕も馬車に乗せられていたんだ…。
「なんで見習いの俺までフィルバート殿下と同じ馬車なんすか!? しかも、合宿に持ってく気もなかった俺の剣をなんで先輩が持ってんすか…」
エリオットは狼狽えて、吠える。
乗せられた当初は何が起こったのか分からず、その上、皇子(王族)が居たので何も言えず縮こまっていた。だが、もう限界だったらしい。
エリオットは元々、馬車を用意できない生徒用に用意した学園の馬車に乗って、合宿先に行く筈だった。
平民出で騎士見習いであるエリオットにとって、皇子は雲の上の存在。
何故、自分がこの状況にぶち込まれたのか分からないのだろう。
ついでにそれについては僕も分かんない。
「俺は見習いなので、学園用の馬車n……」
「エリオット・ルー。お前は今日付けで見習いを卒業し、正式に騎士に任命する」
「は?」
この馬車から一刻も早く降りたい。
そんなエリオットの想いを遮って、シルビオの口から出たのはエリオットの昇格という吉報。
だが、エリオットは嬉しそうじゃない。むしろ、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「いや…。学生は学問優先なんで、学生で騎士なんて先輩以外いないですし。俺は、剣の腕も平凡で勉強も落第しないようにひっs…」
「お前は以前、父上、いや、騎士団長から早期昇格の打診を受けて、そうやって断ったそうだね?」
何故かお断りしようと必死なエリオット。
だが、その必死な想いも遮られて、シルビオがにっこりとそう問いかける。いや、正確に言えば問いただす…か。目が笑ってない。
「エリオット・ルー。お前は確かに剣の腕は平凡に見える。毎回、先輩騎士達との手合わせ時も、同期との訓練も平均より下」
「そ、そうっすよね! ほら、俺はまだ見習いでいるべっ…」
「しかし、騎士の中で一種の遊びとして、武器倉庫の掃除の押し付けを掛けた手合わせでは全勝…らしいね?」
「……。…みんな、遊びだから手を抜いてるだけっすよ」
あはは…と、シルビオの追求に愛想笑いを浮かべるエリオット。目が完全に泳いでいる。
「ああ、それとテストで赤点だらけなんだってね。でも、1年間のテストを比較してみるとギリギリ進級できるように全教科きっちり交互に赤点で取ってるようにしか見えないんだよね」
「…………」
スッとシルビオからエリオットに渡された紙を覗く。その紙には1年時に所得した科目のテスト結果が小テストの結果まで月毎に記されていた。
まるで模様のように赤点の赤字が几帳面に交互に並んでいて、一つの芸術作品のようだった。
ー あ、クロだ…
それは誰が見ても言い逃れが出来ないと分かる決定的証拠だった。
突きつけられた証拠を前にエリオットは狂ったように笑った。
まるで悪事がバレた時の悪役のようなその姿にそこまでして君は騎士になりたくないのか。
じゃあ、なんで騎士団に所属してるの。…と、僕と皇子は切に思った。
だが、僕等は突っ込まない。
…というより、なんか、二人の世界が形成されてるので突っ込み辛い。
しこたま狂ったように笑ったエリオットは溜息をついた。
心底嫌そうな顔で盛大に溜息をついた。
…ねぇ、そんなに嫌ならなんで騎士になったの。
「ははっ…。で、先輩は俺を騎士にして何をさせる気っすか?」
「騎士団は有能な人材を遊ばせておく程、暇じゃないからね。俺の補佐役としてお前にはラニ王子の護衛の任についてもらう」
「え…、ぼ、僕?」
「…ラニの護衛は友達なんで苦じゃないんすけど。補佐役って、…ははっ。まさか、先輩が俺の直属の上司って事っすか」
「そうだね。王族直属の護衛騎士として、将来的にはフィルバート殿下の護衛も俺の部下として遂行してもらう」
見習い騎士からまさかの王族直属の護衛騎士という将来は約束されたと言っていい程の大出世。
しかし、エリオットの絶望の仕方は凄かった。
おそらく、立っていたら膝から崩れ落ちていたんじゃないかってくらい絶望している。
「フィルバート殿下至上主義の腹黒鬼畜が未来永劫直属の上司…だと?」
「…よく本人を前にしてそれを言えたな」
「随分と良い部下じゃないですか。よく貴方の事を分かってる」
「リュビちゃん…。随分と今日は機嫌が良いみたいだね。俺に暴言をうっかり吐けるくらいには」
「ふふんっ。合宿先では休みの日でも合宿地にいる事が規則ですからね! 休みの日にアイツに呼び出される事がない。合宿最高!!」
「ああ、聞いてない? リュビちゃんだけ合宿中はホテルでの学習だってさ」
「……は?」
項垂れ落ち込むエリオット。
先程まではエリオットとシルビオの独断劇場だったのにリュビオが余計な一言で、矛先がリュビオに向いた。
「何…故?」
「君の婚約者はある意味一途だからねー。片時も離したくなかったんじゃない?」
リュビオの片時も離れたくない一途な婚約者。
そんな熱烈な人がリュビオの婚約者なのかとリュビオを見やる。
するとリュビオは照れて顔を赤くする所か、真っ青にして揺れる馬車の中、立ち上がった。
そして、馬車のドアノブに手を掛け……。手を掛け?!
「待って待って待ってッ!!! 馬車、まだ動いてるよ、リュビオ!!」
「この手を離しなさい。ラニ王子ッ。私は急用が出来ましたので、失礼します。」
「だから、馬車動いてるって!! 落ちたら下手したら死ぬよ!?」
「それでも構いませんよッ!! どうせ、行くのは地獄ですッ。2週間掛けて地獄を味わうくらいなら一瞬の地獄の方がまだマシ…」
「ねぇ!? 何?? 今から行く合宿には何が待っているというのッ!!?」
完全にヤケを起こして馬車から飛び降りようとするリュビオの手をドアノブから引き剥がそうと格闘しつつも、僕は慄く。
リュビオが地獄と称する合宿という《イベント》という存在に…。
灰になったエリオットに、場の状況について行けず、ワタワタする皇子。
発狂するリュビオを危ないという理由で絞め落とすシルビオに、そんなシルビオと合宿に怯える僕。
カオスな空気の中、馬車は目的地へと向かっていく。
行きたくないけど、向かっていく…。
制服も分厚いコートを脱ぎ捨て、半袖のシャツへと変わり、女の子達はうなじが見えるほど髪を結い上げ、男達はバッサリと髪を切る。
季節の変わり目は気分の変わり目。
季節の変わり目はイメチェンの季節。
かくいう僕も例外では無く……。
「よしっ。バッサリ行こう」
散髪用のハサミを頭上に掲げて、ふんふんっと鼻歌を歌う。
肩よりも下まで伸びた髪を一束掴み、いざ切らんとハサミを開く。
「お、おい。何やっている!?」
切ろうとした瞬間、当たり前の如く、僕の部屋に入ってきた皇子が何故か僕に問いかける。
「何やってるも何も髪を切るんだよ。バッサリね!」
「お前な…。髪が長いからヘアアレンジでそのロバ耳をカモフラージュ出来てるんだぞ。バッサリ行くな阿呆」
「僕が髪を伸ばしている理由はね。この国は夏以外寒いから首を守る為に伸ばしているんだ。…僕は寒いのは嫌だけど、暑苦しいのはもっとヤダ」
「髪をアップにすればいいだろ!! 切るな。ヘアアレンジのレパートリーが減る」
「…………どう、バッサリ切ろうかな」
「おいっ、コラ!! スルーするなッ」
僕の髪型は僕が決める。
僕は昨日髪をバッサリ切ったエリオットみたいにカッコいい髪型を目指す。ワイルドでかっこいい男になるんだ。
皇子の存在を無かった事にして、今度こそ髪を切ろうとするが、今度は何時の間にかに現れたシルビオが横から手を伸ばして、僕からハサミを取り上げる。
「ラニラニ。取り敢えず、やめようか」
「なんで? なんで、僕はダメなの!? 今年の夏の勉強合宿に向けて、イメチェンしようと思ったのにッ。令嬢のコンスタンチェだって、『今年の流行はショートヘアに決まりね』って、長かった髪をバッサリ、肩まで切ってたよ!!」
「……コンスタンチェって、兄上の婚約者のコンスタンチェだよな」
「………ラニラニ。それについては第二皇子に直々にお叱りして頂くとして、これは没収」
「なんでさ!?」
この後、僕は皇子にショートにするなら馬鹿みたいにデカいリボンでロバ耳をフォローするしかないと脅されて、泣く泣くイメチェンを諦めた。
◇
「解せぬ」
むぅっと頬を膨らませて、ガタゴトと揺れる馬車の中、切る事を許されず、編み込まれてお団子にされた頭をいじる。
「それは俺のセリフだよ…」
隣では悲壮の表情を浮かべたエリオットが何時もは全く帯剣してない剣を腰に差し、自身と対面して座るシルビオを見やる。
「俺…、見習いなんすけど」
ついでに僕の対面には皇子が鎮座し、左横には何時もより楽しそうな表情のリュビオが座っている。
何故、この面子で馬車に乗っているかと問われれば、これからミューズ学園毎年恒例の夏の勉強合宿に向かうから。
夏の勉強合宿は全学年合同で行われる校外学習。
レーヴ北部にあるミューズ学園別館を拠点として2週間、課外学習課せられている。
また、親睦会も兼ねていて、肝試しやチェス大会など毎度、イベントもあったりする。
去年は肝試しで本物のお化けが出たり、道中一部の生徒達が山賊に襲われたり、猫化したりなど、超常現象や事件がサラッと起こる恐ろしい恒例《イベント》だ。
僕は勿論、皇子達と校外学習中、一緒にいる事を拒絶した。
攻略対象である皇子達と一緒の場合、その《イベント》に巻き込まれるに決まってるからね。でも、髪型と一緒で却下だ。
僕はおおいに拗ねた。
拗ねて、馬車に乗る事を最後の最後まで拒絶した。
だが、横で何故かシルビオに皇子と同じ馬車に投げ込まれたエリオットの姿に呆気に取られて、気付いたら僕も馬車に乗せられていたんだ…。
「なんで見習いの俺までフィルバート殿下と同じ馬車なんすか!? しかも、合宿に持ってく気もなかった俺の剣をなんで先輩が持ってんすか…」
エリオットは狼狽えて、吠える。
乗せられた当初は何が起こったのか分からず、その上、皇子(王族)が居たので何も言えず縮こまっていた。だが、もう限界だったらしい。
エリオットは元々、馬車を用意できない生徒用に用意した学園の馬車に乗って、合宿先に行く筈だった。
平民出で騎士見習いであるエリオットにとって、皇子は雲の上の存在。
何故、自分がこの状況にぶち込まれたのか分からないのだろう。
ついでにそれについては僕も分かんない。
「俺は見習いなので、学園用の馬車n……」
「エリオット・ルー。お前は今日付けで見習いを卒業し、正式に騎士に任命する」
「は?」
この馬車から一刻も早く降りたい。
そんなエリオットの想いを遮って、シルビオの口から出たのはエリオットの昇格という吉報。
だが、エリオットは嬉しそうじゃない。むしろ、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「いや…。学生は学問優先なんで、学生で騎士なんて先輩以外いないですし。俺は、剣の腕も平凡で勉強も落第しないようにひっs…」
「お前は以前、父上、いや、騎士団長から早期昇格の打診を受けて、そうやって断ったそうだね?」
何故かお断りしようと必死なエリオット。
だが、その必死な想いも遮られて、シルビオがにっこりとそう問いかける。いや、正確に言えば問いただす…か。目が笑ってない。
「エリオット・ルー。お前は確かに剣の腕は平凡に見える。毎回、先輩騎士達との手合わせ時も、同期との訓練も平均より下」
「そ、そうっすよね! ほら、俺はまだ見習いでいるべっ…」
「しかし、騎士の中で一種の遊びとして、武器倉庫の掃除の押し付けを掛けた手合わせでは全勝…らしいね?」
「……。…みんな、遊びだから手を抜いてるだけっすよ」
あはは…と、シルビオの追求に愛想笑いを浮かべるエリオット。目が完全に泳いでいる。
「ああ、それとテストで赤点だらけなんだってね。でも、1年間のテストを比較してみるとギリギリ進級できるように全教科きっちり交互に赤点で取ってるようにしか見えないんだよね」
「…………」
スッとシルビオからエリオットに渡された紙を覗く。その紙には1年時に所得した科目のテスト結果が小テストの結果まで月毎に記されていた。
まるで模様のように赤点の赤字が几帳面に交互に並んでいて、一つの芸術作品のようだった。
ー あ、クロだ…
それは誰が見ても言い逃れが出来ないと分かる決定的証拠だった。
突きつけられた証拠を前にエリオットは狂ったように笑った。
まるで悪事がバレた時の悪役のようなその姿にそこまでして君は騎士になりたくないのか。
じゃあ、なんで騎士団に所属してるの。…と、僕と皇子は切に思った。
だが、僕等は突っ込まない。
…というより、なんか、二人の世界が形成されてるので突っ込み辛い。
しこたま狂ったように笑ったエリオットは溜息をついた。
心底嫌そうな顔で盛大に溜息をついた。
…ねぇ、そんなに嫌ならなんで騎士になったの。
「ははっ…。で、先輩は俺を騎士にして何をさせる気っすか?」
「騎士団は有能な人材を遊ばせておく程、暇じゃないからね。俺の補佐役としてお前にはラニ王子の護衛の任についてもらう」
「え…、ぼ、僕?」
「…ラニの護衛は友達なんで苦じゃないんすけど。補佐役って、…ははっ。まさか、先輩が俺の直属の上司って事っすか」
「そうだね。王族直属の護衛騎士として、将来的にはフィルバート殿下の護衛も俺の部下として遂行してもらう」
見習い騎士からまさかの王族直属の護衛騎士という将来は約束されたと言っていい程の大出世。
しかし、エリオットの絶望の仕方は凄かった。
おそらく、立っていたら膝から崩れ落ちていたんじゃないかってくらい絶望している。
「フィルバート殿下至上主義の腹黒鬼畜が未来永劫直属の上司…だと?」
「…よく本人を前にしてそれを言えたな」
「随分と良い部下じゃないですか。よく貴方の事を分かってる」
「リュビちゃん…。随分と今日は機嫌が良いみたいだね。俺に暴言をうっかり吐けるくらいには」
「ふふんっ。合宿先では休みの日でも合宿地にいる事が規則ですからね! 休みの日にアイツに呼び出される事がない。合宿最高!!」
「ああ、聞いてない? リュビちゃんだけ合宿中はホテルでの学習だってさ」
「……は?」
項垂れ落ち込むエリオット。
先程まではエリオットとシルビオの独断劇場だったのにリュビオが余計な一言で、矛先がリュビオに向いた。
「何…故?」
「君の婚約者はある意味一途だからねー。片時も離したくなかったんじゃない?」
リュビオの片時も離れたくない一途な婚約者。
そんな熱烈な人がリュビオの婚約者なのかとリュビオを見やる。
するとリュビオは照れて顔を赤くする所か、真っ青にして揺れる馬車の中、立ち上がった。
そして、馬車のドアノブに手を掛け……。手を掛け?!
「待って待って待ってッ!!! 馬車、まだ動いてるよ、リュビオ!!」
「この手を離しなさい。ラニ王子ッ。私は急用が出来ましたので、失礼します。」
「だから、馬車動いてるって!! 落ちたら下手したら死ぬよ!?」
「それでも構いませんよッ!! どうせ、行くのは地獄ですッ。2週間掛けて地獄を味わうくらいなら一瞬の地獄の方がまだマシ…」
「ねぇ!? 何?? 今から行く合宿には何が待っているというのッ!!?」
完全にヤケを起こして馬車から飛び降りようとするリュビオの手をドアノブから引き剥がそうと格闘しつつも、僕は慄く。
リュビオが地獄と称する合宿という《イベント》という存在に…。
灰になったエリオットに、場の状況について行けず、ワタワタする皇子。
発狂するリュビオを危ないという理由で絞め落とすシルビオに、そんなシルビオと合宿に怯える僕。
カオスな空気の中、馬車は目的地へと向かっていく。
行きたくないけど、向かっていく…。
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