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第二章 ローレライとロバ耳王子と陰謀と
34、目を見ろっ!目をっ!!
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「大丈夫…だよね」
ジェルマンにロバ耳がバレ掛けた。
頭の中で皇子が「阿呆」と、心底呆れた表情で、言ってくる所まで想像して、思わず、あははと誤魔化し笑いを浮かべる。
時刻はもう良い子は寝る時間で、部屋の窓の外は真っ暗。
窓ガラスに映る引き攣った笑みを浮かべる自分に更に苦笑して、僕は考えるのを放棄した。
「…大丈夫。なんとかなるよ。多分」
無事な右腕でギュッとジェシルを抱き締めて、ころんっとベッドに転がる。
寝転がりながら空いているもう一つのベッドに視線をやり、寂しいなと思わず眉を下げる。
あの空きベッドはライモンド先生のベッド。
僕は崖から落ちてからライモンド先生と2人部屋なんだ。
何時もならこの時間はライモンド先生と話しながら眠気が来るのを待つんだけど、今日はライモンド先生が緊急の職員会議でいない。
すぐに帰ってくるって言ってたけど、長引いているのか1時間しても帰ってこない。
「寂しいねー、ジェシル」
そうジェシルに話しかけるが、ジェシルは言葉を返さない。
いつも通り、モッフモフなお人形だ。
なんとなく、寝れなくてジェシルと一緒に天井を眺め……。
コンコンコンっ。
天井のシミの数でも数えようかと思っていた最中、ノックする音が響いた。
コンコンコンコンッ!!
次第にノック音は大きくなり、僕を急かす。
ノック音は扉からではなく、何故か窓の方からする。
窓の方を見たいけど、窓から僕のベッドは少しだけ遠く、その上、片手だと身体を起こしにくい。
ゴンゴンゴンゴンッ!!!
「ちょ…、ちょっと、待ってよ!?」
そんなに急ぎなのか。
さっさと開けろと言わんばかりに誰かが窓が割れんばかりにノックしてる。
やっとの思いで立ち上がり、窓まで来るとそこに居たのは……。
「リュ…、リュビオ!?」
合宿当日に気絶したまま一途?な婚約者の元へ連れて行かれた筈のリュビオが立っていた。
髪は乱れ、目は赤く、ワイシャツ1枚羽織っただけの何処となく危ない雰囲気のあるリュビオが暗い中、1人立っていた。
「どうしたの…」
ガチャリッと窓を開けるとリュビオは「やっとか」と言いたげな顔で窓から部屋に入ってきた。
床につけたリュビオの足は裸足で何故かズボンもパンツも履いてなく、本当にワイシャツだけ。
「本当にどうしたの!?」
「服を私に寄越しなさい」
「もしかして暑いからって裸で湖を泳いで服無くしたの? 流石に夜の湖の水は冷たいよ。昼間もそこそこ冷たかったから寒…」
「服を寄越せ」
「目が、目が据わってるよ。本当に何があったの…」
夜分に窓から人の部屋に侵入して服を寄越せしか言わない追い剥ぎリュビオ。
僕から替えのズボンを受け取るとすらりと白い脚を通して、顔を顰めた。
「足が短い」
「違うもんっ! 2年後には絶対、リュビオより足も身長も伸びてるもんっ!!」
好意に対して、とても失礼な事をサラッと口にするリュビオに憤慨して、貸したズボンを奪い取り、ブランケットを投げ付けた。
リュビオは僕のブランケットを身体に巻き、とてもゆっくりとゆっくりと、腰を気遣う老人のようにベッドに座った。
座る瞬間に、チラリと見えた内腿に赤い痕がいっぱいあったのはなんだろう? 蚊??
疑問に思いつつもポスンッとリュビオの隣に座り、リュビオをマジマジと見る。
よく見ると首元から胸元まで赤い痕が付いていて、手首と足首に縄で縛られたような痕がっ……。
「痛そう…」
スンッと鼻を鳴らし、リュビオの手首に触れる。
「んっ…ぁ。ちょっ、なんですか!? 大体、なんで貴方、自室に居ないんですかっ。私がどれだけ貴方を探し彷徨ったと…」
「痛いよね…。待ってて。確か、替えの包帯が引き出しに…」
「か、替えの包帯?」
ぴょんっとベッドから飛び降りて、包帯の入っているチェストの引き出しを開ける。
お目当ての包帯を取り出して、リュビオの前に腰を下ろすが、そこで大事な事に気付いた。
「片手じゃ、包帯巻けないっ…」
眉を下げ、「どうしよう」とリュビオを見上げると、リュビオは目を見開き、驚愕していて、僕と目が合うと声を荒げた。
「なんです、その怪我は!? 左腕がっ。頭、頭まで…。シルビオは何をやっている? 国際問題じゃないですかっ!」
頭を痛そうに抑えるリュビオを前に、申し訳なくて「ごめんなさい」と素直に謝る。
しかし、謝ったのに更に不機嫌になった顔でこちらを睨んで溜息をついた。
「ああもうっ、違う! 優先順位が違う。…怪我は大丈夫ですか? とにかく、私の事は良いから座ってください。自分で巻けますから」
バツが悪そうに眼鏡の下からチラリとこちらを見て、眉間を抑える。
「貴方には怒ってないですよ。そんな大怪我したくてするものではないでしょう。……後処理が面倒臭いですが」
「うん…。最後のが本音だね!」
安定のリュビオにニッコリしながら隣にぴったりと座る。リュビオはそんな僕を見て、不本意だと言わんばかりの顔で自身で包帯を巻き始めた。
「いいですか。後処理はやってあげましょう。だから、今日、私を匿いなさい」
「か、匿う? 誰から?? それよりもそんな怪我してるなら一緒だった婚約者さんに連絡した方が…」
「…………」
「…え? まさか、その婚約者から逃げてるとか言わないよね」
スッと僕の問いに目を逸らすシルビオに、僕は今、現在進行形でとても面倒な事に巻き込まれていると確信した。
ー え? それでなんで僕なの??
しかもさっきの僕を探してたって言ってたよね。
ハナから僕を巻き込むつもりだったの? なんで!?
ジェルマンにロバ耳がバレ掛けた。
頭の中で皇子が「阿呆」と、心底呆れた表情で、言ってくる所まで想像して、思わず、あははと誤魔化し笑いを浮かべる。
時刻はもう良い子は寝る時間で、部屋の窓の外は真っ暗。
窓ガラスに映る引き攣った笑みを浮かべる自分に更に苦笑して、僕は考えるのを放棄した。
「…大丈夫。なんとかなるよ。多分」
無事な右腕でギュッとジェシルを抱き締めて、ころんっとベッドに転がる。
寝転がりながら空いているもう一つのベッドに視線をやり、寂しいなと思わず眉を下げる。
あの空きベッドはライモンド先生のベッド。
僕は崖から落ちてからライモンド先生と2人部屋なんだ。
何時もならこの時間はライモンド先生と話しながら眠気が来るのを待つんだけど、今日はライモンド先生が緊急の職員会議でいない。
すぐに帰ってくるって言ってたけど、長引いているのか1時間しても帰ってこない。
「寂しいねー、ジェシル」
そうジェシルに話しかけるが、ジェシルは言葉を返さない。
いつも通り、モッフモフなお人形だ。
なんとなく、寝れなくてジェシルと一緒に天井を眺め……。
コンコンコンっ。
天井のシミの数でも数えようかと思っていた最中、ノックする音が響いた。
コンコンコンコンッ!!
次第にノック音は大きくなり、僕を急かす。
ノック音は扉からではなく、何故か窓の方からする。
窓の方を見たいけど、窓から僕のベッドは少しだけ遠く、その上、片手だと身体を起こしにくい。
ゴンゴンゴンゴンッ!!!
「ちょ…、ちょっと、待ってよ!?」
そんなに急ぎなのか。
さっさと開けろと言わんばかりに誰かが窓が割れんばかりにノックしてる。
やっとの思いで立ち上がり、窓まで来るとそこに居たのは……。
「リュ…、リュビオ!?」
合宿当日に気絶したまま一途?な婚約者の元へ連れて行かれた筈のリュビオが立っていた。
髪は乱れ、目は赤く、ワイシャツ1枚羽織っただけの何処となく危ない雰囲気のあるリュビオが暗い中、1人立っていた。
「どうしたの…」
ガチャリッと窓を開けるとリュビオは「やっとか」と言いたげな顔で窓から部屋に入ってきた。
床につけたリュビオの足は裸足で何故かズボンもパンツも履いてなく、本当にワイシャツだけ。
「本当にどうしたの!?」
「服を私に寄越しなさい」
「もしかして暑いからって裸で湖を泳いで服無くしたの? 流石に夜の湖の水は冷たいよ。昼間もそこそこ冷たかったから寒…」
「服を寄越せ」
「目が、目が据わってるよ。本当に何があったの…」
夜分に窓から人の部屋に侵入して服を寄越せしか言わない追い剥ぎリュビオ。
僕から替えのズボンを受け取るとすらりと白い脚を通して、顔を顰めた。
「足が短い」
「違うもんっ! 2年後には絶対、リュビオより足も身長も伸びてるもんっ!!」
好意に対して、とても失礼な事をサラッと口にするリュビオに憤慨して、貸したズボンを奪い取り、ブランケットを投げ付けた。
リュビオは僕のブランケットを身体に巻き、とてもゆっくりとゆっくりと、腰を気遣う老人のようにベッドに座った。
座る瞬間に、チラリと見えた内腿に赤い痕がいっぱいあったのはなんだろう? 蚊??
疑問に思いつつもポスンッとリュビオの隣に座り、リュビオをマジマジと見る。
よく見ると首元から胸元まで赤い痕が付いていて、手首と足首に縄で縛られたような痕がっ……。
「痛そう…」
スンッと鼻を鳴らし、リュビオの手首に触れる。
「んっ…ぁ。ちょっ、なんですか!? 大体、なんで貴方、自室に居ないんですかっ。私がどれだけ貴方を探し彷徨ったと…」
「痛いよね…。待ってて。確か、替えの包帯が引き出しに…」
「か、替えの包帯?」
ぴょんっとベッドから飛び降りて、包帯の入っているチェストの引き出しを開ける。
お目当ての包帯を取り出して、リュビオの前に腰を下ろすが、そこで大事な事に気付いた。
「片手じゃ、包帯巻けないっ…」
眉を下げ、「どうしよう」とリュビオを見上げると、リュビオは目を見開き、驚愕していて、僕と目が合うと声を荒げた。
「なんです、その怪我は!? 左腕がっ。頭、頭まで…。シルビオは何をやっている? 国際問題じゃないですかっ!」
頭を痛そうに抑えるリュビオを前に、申し訳なくて「ごめんなさい」と素直に謝る。
しかし、謝ったのに更に不機嫌になった顔でこちらを睨んで溜息をついた。
「ああもうっ、違う! 優先順位が違う。…怪我は大丈夫ですか? とにかく、私の事は良いから座ってください。自分で巻けますから」
バツが悪そうに眼鏡の下からチラリとこちらを見て、眉間を抑える。
「貴方には怒ってないですよ。そんな大怪我したくてするものではないでしょう。……後処理が面倒臭いですが」
「うん…。最後のが本音だね!」
安定のリュビオにニッコリしながら隣にぴったりと座る。リュビオはそんな僕を見て、不本意だと言わんばかりの顔で自身で包帯を巻き始めた。
「いいですか。後処理はやってあげましょう。だから、今日、私を匿いなさい」
「か、匿う? 誰から?? それよりもそんな怪我してるなら一緒だった婚約者さんに連絡した方が…」
「…………」
「…え? まさか、その婚約者から逃げてるとか言わないよね」
スッと僕の問いに目を逸らすシルビオに、僕は今、現在進行形でとても面倒な事に巻き込まれていると確信した。
ー え? それでなんで僕なの??
しかもさっきの僕を探してたって言ってたよね。
ハナから僕を巻き込むつもりだったの? なんで!?
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