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第二章 ローレライとロバ耳王子と陰謀と
37、大人への第一歩は何時だって親にも知られたくない
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春が過ぎると夏が来て。
夏が過ぎると秋が来る。
秋は寒いけど意外と好きな季節で、秋は僕の好きな色に溢れてる。
青かった葉は秋が深まる度に黄色から朱へと色付いていく。
まるで世界の全てが夕陽色に包まれた様なその美しさに常夏しか知らなかった僕は初めて見た紅葉に感動したものだ。
「でも、やっぱ、寒い」
見事な外の紅葉をベッドから眺めながらブルリッと震える。
やっと怪我も治り、自由になった腕で名一杯身体を摩るが、寒い。主に下半身が。
「……なんだろう。こう…、ブランケットの中が、じめっと冷たいっ…」
なんで、こんな冷たいんだろう?
疑問に思いブランケットをめくると、そこには見たくない現実が目の前に広がっていた。
「嘘…でしょ…」
それはロバ耳が生えた以上の衝撃だった。
「どうしよう…。どうしよう!?」
ワタワタと慌てて、目の前の現実に半ば、半狂乱で向き合う。
不味い。これは絶対、誰にも知られたくない。皇子達にも絶対に隠し通さなければ。
まだ時刻は明け方前。
老人並みに朝の早い皇子も流石にこの時間は後数秒は来ない……筈!?
そうと決まれば隠蔽だ。
これは墓場まで持っていくと頷いた瞬間。
「おい、起きろ…って、…ん? なんだ。珍しく起きてるじゃないかっ!」
一番今、聞きたくない声が部屋に轟いた。
吊り目気味のキツい目を少し和らげて、僕がもう起きている事に珍しく素直に喜ぶ皇子。
「フィルっちの教育の賜物ぢゃん。良かったね、フィルっち」
そして、その隣ではここ最近、必ず僕の隣を死守し、前以上に監視の目が(警護ともいう)厳しくなったシルビオの姿もあった。
「うっ…」
「なんだ。その心底嫌そうな顔は? 折角、自力で早く起きられたのだから後は着替えて、朝食までの時間は復習あるのみだ。…支度してやれ」
「「「はい」」」
「待って! 待って!? 今日は朝きちんと起きられたから自分で用意したいなー…なんて」
「王族が使用人から仕事を奪うな。仕事を与えるのもまた王族の仕事のうちだ」
とっても朝からやる気に満ち溢れている皇子は僕の制止も聞かず、なんなら皇子よりも知られたくない侍女さん達をいつもの様に勝手に僕の部屋に入れる。
ニッコニッコ笑顔の優しい侍女さんが今は悪魔に見える。
ギュッとブランケットを握り、怯えているとシルビオがいつもの様にお世話をしようとする侍女さんを制止して、心配そうな装いで僕の前で膝をついた。
「どしたの、ラニラニ? 何か困った事でもあったのカナ?」
「…………」
「…ん? お前、何かあったのか?? 何かあったのなら行ってみろ。助けてやらん事もないんだからな!」
「……………」
「黙ってたら分からんだろうがっ!」
突如。始まった心配を装ったシルビオの詰問に無言で拒否したら、余計なお節介にお節介を重ねた皇子が、僕が死んでも離したくないブランケットを奪って剥いだ。
慌ててブランケットを奪い返して、隠そうとしたが時すでに遅し。
見せたくなかったものがシルビオと王子の眼下に晒される。
「ッ!?」
「………お前」
「ラニラニ…」
「うぅ。うぅぅぅっ…」
2人の眼下に晒されたのはしっとりと濡れたシーツとズボン。
2人は悪いと思ったのか、気まずそうに目を逸らした。
「まぁ…。しょうがない」
「そうだね。誰でもある事だからラニラニ」
「要らないよ、そんな優しさッ。笑えばいいでしょ! 14歳になっておねしょなんて恥ずかしいって!!」
「「……は?」」
だから嫌だったのにと真っ赤になった顔を覆って俯くと、2人は揃って「何言ってんだ」と言わんばかりに困惑した。
「いや…。これは生理現象でだな」
「いーよ。そんな、慰めッ」
「いや、だから、男なら誰でもあり得る事で…」
「いないよっ! 大人の男の人でおねしょしてる人なんてッ」
情けなさと恥ずかしさでワッと泣く僕を前に皇子が目に見えて慌てる。
シルビオは暫し僕の痴態を前に顎に手を当て暫く熟考すると、侍女を外に出して、僕を後ろから抱き込むようにベッドに座った。
そしてなんの躊躇もなく、ちょっとベタッとする僕のおねしょを指で掬った。
「ラニラニはまだだったんだね。精通」
シルビオの指に付いたベタッとした液体が少し糸を引く。
優しい顔でそう諭すように告げられた言葉とその光景に思わず涙が引っ込む。
「え"? このおねしょみたいなのがそうなの!?」
「うん。おめでとう。大人への第一歩ダネ」
今日はお祝いだネと、新たなる大人としての門出をシルビオはにこやかに祝ってくれたが、僕はやっぱり現実を見たくなくて顔を覆った。
それはそれで恥ずかしい。
夏が過ぎると秋が来る。
秋は寒いけど意外と好きな季節で、秋は僕の好きな色に溢れてる。
青かった葉は秋が深まる度に黄色から朱へと色付いていく。
まるで世界の全てが夕陽色に包まれた様なその美しさに常夏しか知らなかった僕は初めて見た紅葉に感動したものだ。
「でも、やっぱ、寒い」
見事な外の紅葉をベッドから眺めながらブルリッと震える。
やっと怪我も治り、自由になった腕で名一杯身体を摩るが、寒い。主に下半身が。
「……なんだろう。こう…、ブランケットの中が、じめっと冷たいっ…」
なんで、こんな冷たいんだろう?
疑問に思いブランケットをめくると、そこには見たくない現実が目の前に広がっていた。
「嘘…でしょ…」
それはロバ耳が生えた以上の衝撃だった。
「どうしよう…。どうしよう!?」
ワタワタと慌てて、目の前の現実に半ば、半狂乱で向き合う。
不味い。これは絶対、誰にも知られたくない。皇子達にも絶対に隠し通さなければ。
まだ時刻は明け方前。
老人並みに朝の早い皇子も流石にこの時間は後数秒は来ない……筈!?
そうと決まれば隠蔽だ。
これは墓場まで持っていくと頷いた瞬間。
「おい、起きろ…って、…ん? なんだ。珍しく起きてるじゃないかっ!」
一番今、聞きたくない声が部屋に轟いた。
吊り目気味のキツい目を少し和らげて、僕がもう起きている事に珍しく素直に喜ぶ皇子。
「フィルっちの教育の賜物ぢゃん。良かったね、フィルっち」
そして、その隣ではここ最近、必ず僕の隣を死守し、前以上に監視の目が(警護ともいう)厳しくなったシルビオの姿もあった。
「うっ…」
「なんだ。その心底嫌そうな顔は? 折角、自力で早く起きられたのだから後は着替えて、朝食までの時間は復習あるのみだ。…支度してやれ」
「「「はい」」」
「待って! 待って!? 今日は朝きちんと起きられたから自分で用意したいなー…なんて」
「王族が使用人から仕事を奪うな。仕事を与えるのもまた王族の仕事のうちだ」
とっても朝からやる気に満ち溢れている皇子は僕の制止も聞かず、なんなら皇子よりも知られたくない侍女さん達をいつもの様に勝手に僕の部屋に入れる。
ニッコニッコ笑顔の優しい侍女さんが今は悪魔に見える。
ギュッとブランケットを握り、怯えているとシルビオがいつもの様にお世話をしようとする侍女さんを制止して、心配そうな装いで僕の前で膝をついた。
「どしたの、ラニラニ? 何か困った事でもあったのカナ?」
「…………」
「…ん? お前、何かあったのか?? 何かあったのなら行ってみろ。助けてやらん事もないんだからな!」
「……………」
「黙ってたら分からんだろうがっ!」
突如。始まった心配を装ったシルビオの詰問に無言で拒否したら、余計なお節介にお節介を重ねた皇子が、僕が死んでも離したくないブランケットを奪って剥いだ。
慌ててブランケットを奪い返して、隠そうとしたが時すでに遅し。
見せたくなかったものがシルビオと王子の眼下に晒される。
「ッ!?」
「………お前」
「ラニラニ…」
「うぅ。うぅぅぅっ…」
2人の眼下に晒されたのはしっとりと濡れたシーツとズボン。
2人は悪いと思ったのか、気まずそうに目を逸らした。
「まぁ…。しょうがない」
「そうだね。誰でもある事だからラニラニ」
「要らないよ、そんな優しさッ。笑えばいいでしょ! 14歳になっておねしょなんて恥ずかしいって!!」
「「……は?」」
だから嫌だったのにと真っ赤になった顔を覆って俯くと、2人は揃って「何言ってんだ」と言わんばかりに困惑した。
「いや…。これは生理現象でだな」
「いーよ。そんな、慰めッ」
「いや、だから、男なら誰でもあり得る事で…」
「いないよっ! 大人の男の人でおねしょしてる人なんてッ」
情けなさと恥ずかしさでワッと泣く僕を前に皇子が目に見えて慌てる。
シルビオは暫し僕の痴態を前に顎に手を当て暫く熟考すると、侍女を外に出して、僕を後ろから抱き込むようにベッドに座った。
そしてなんの躊躇もなく、ちょっとベタッとする僕のおねしょを指で掬った。
「ラニラニはまだだったんだね。精通」
シルビオの指に付いたベタッとした液体が少し糸を引く。
優しい顔でそう諭すように告げられた言葉とその光景に思わず涙が引っ込む。
「え"? このおねしょみたいなのがそうなの!?」
「うん。おめでとう。大人への第一歩ダネ」
今日はお祝いだネと、新たなる大人としての門出をシルビオはにこやかに祝ってくれたが、僕はやっぱり現実を見たくなくて顔を覆った。
それはそれで恥ずかしい。
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