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終章 ロバ耳王子と16歳と約束と
2、ねぇ!? シルビオは連れて帰ってッ
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拝啓、お国大王、第一王子、お父さん、お母さん。
お久しぶりです。
ラニです。
今年の4月で16歳になりました。
この間は新しい正装とお手紙と仕送りありがとうございます。
成長痛も治まり、最近は身体の節々が痛い事はありません。
正装も十分過ぎる程、ぴったり身体にあってます。
以前のお手紙でお母さんと伯母さん達が僕の為と自身達の夢の衣装を全て組み込んであの正装を作ってくれたと。
そしめ、もし、身体に合わなかったら更にグレードアップしたのを製作中だと第一王子の手紙から知りました。
作らなくて大丈夫です。
とてもぴったりしっくり身体に合ってます。
強いて云うなら何故、もう少しシンプルに男らしい衣装にしてくれなかっ……いや、もういいです。
本当に今ので充分なので本当に作らなくて大丈夫です。はい。
背も伸び、フィルバート皇子のマナー講座も去年及第点で卒業しました。
以前、第一王子の手紙で声変わりはしたかと来てましたが、してません。
声変わりってどうすればいいんでしょうね?
以前成長痛で診てくれたお医者さんの話では声は牛乳ではどうにもならないそうです。
僕は元気にやってます。
みんなもいつも通り元気でいて下さい。
P.S. 本当に追加の正装は要らないのであしからず!
ラニより
◇
「ふぅ…、これでよし」
モアナへ送る手紙を大満足の内容で書き終わって、ホクホクした気持ちで、封蝋を垂らす。
雑貨店でこの前見つけて、ほぼ悪ノリで買った狸のような猿のような謎の生物の印をくりくりと押した。
誕生日プレゼントを皇子改めフィルが買ってくれると云うので「じゃあ、封蝋使ってみたい」と云う話になって買ってもらった封蝋と封蝋印2つ。
本当は封蝋とこの狸のような猿のような封蝋印だけ買ってもらう筈だったのだが、「お前。それを自分の家族以外の手紙に使ったらしばく」と脅され、なんかお洒落な封蝋印をもう一つぶつくさ言いながら買ってくれた。
そして、実際にこの前、フィルのお兄さんの第二皇子エラルドさんへの返信の手紙にこの猿か狸か分からない謎の生物の封蝋印を押して出してしまったのが即刻バレて頭を叩かれたという逸話のある逸品だ。
だが、僕はこの封蝋印はお洒落な方よりユーモアがあって好きだ。
きっとかっこいい大人はユーモアがある方がいいに決まってる。
フンフンッと鼻歌を歌って、侍女のお姉さんにお手紙をお願いすると、フィルが僕の部屋に(無断で)置かれたテーブルでコーヒーを飲みながらジトッとした目でこちらを見てる。
「おい…。またそれか」
その隣ではフィルの隣でも遠慮をしなくなったエリオットがパリパリとクッキーを食べて、まぁまぁとフィルをなだめる。
「良いじゃないっすか。ポン吉、俺、笑えて好きっすよ。ふざけた存在なのにあの無駄に神妙な顔付きしてる所が腹抱えて笑える」
「手紙で笑いをとってどうする。手紙というのは相手に自身の近況を伝える連絡手段だろう」
「……殿下は上司かなんかと文通してるんすか?」
「……………」
「いや、うん。そうっすね…。俺と文通します?」
「うん…。僕もいっぱい、フィルに手紙を書くよ」
「やめろ。俺をこれ以上惨めにするな」
僕の狸か猿か分からない生物(エリオット命名、ポン吉)に難癖をつけていた筈なのにいつの間にかにフィルの悲しい手紙事情になり、なんか悲しくなる。
トントンッと自身の腕を指で叩き、壁にもたれ掛かってこちらを見ているシルビオの無言の圧を僕達はスッと見なかった事にして、僕達は本来の目的に舵を取る。
「さて。今回の議題はフィルがエレンに告白してまたしてもフラれた件ですっ!」
僕は議長らしく、ダンッとテーブルを叩く。
エリオットは「よっ! 待ってました」と拍手をして、フィルとシルビオはスッと明後日の方向を2人して見つめた。戻ってこいっ!
「僕は何故、フラれたのか原因を突き詰めて、次に繋げたい。次こそは打倒エレンっ!」
「打倒…。単純に悪印象が抜けきってないだけじゃね? 我らがフィルバート殿下は壊滅的にアプローチが下手すぎる」
「おい、エリオット・ルー。フィルバート殿下に不敬だとはおもわn…」
「やはりか…。まだ告白するには早かったのか」
「…うん。そっか。早過ぎたんだね。よし、次っ!」
「そうだな。もう2、3度振られたんだ。何度振られようが怖くない」
「そうっすね。ガンガン行こうぜ!」
「………ここまで身にならない作戦会議なんてあるんだネ」
呆れ顔のシルビオをまたスッと見なかった事にして、僕達は議論を飛ばす。
どうすれば、モテるか。
どうすれば意中の相手が落とせるのか。
「アレ…じゃないっすか? こうっ…、出来る男アピールすればいいんじゃないっすか? こう……、両手でペン回しするとか??」
「それは出来る男なの?」
「ただの曲芸師だろ。……出来る男っていうのは……こう、さり気なく気を遣えるという。アレだな。アレ、……さり気なく、車道側を歩いて」
「それは…確かに出来る男ではあるっすけど」
「それ、一緒にお出かけ出来る立場になってからだよね…。出来る男っていえば、………出来る男って何だろ??」
しかし、話は平行線だ。
しょうがないのだ。
僕等の中に誰一人、恋愛経験者がいないんだっ…。
チラリと助けを求めてシルビオを見る。
しかし、シルビオはニッコリと微笑むだけで助言はしてくれない。
だが、それも仕方ない。
だって、シルビオはフィルバートの恋に応援的ではない。
寧ろ、グルグル眼鏡先輩の話だとシルビオにとって、最初エレンはフィルバートに近付く羽虫と一緒らしい。
そして、下手すりゃ、フィルを差し置いて、主人公(エレン)とゴールインするのだ。
そう寧ろ、敵サイドなのだ。
ライモンド先生が消えてから1年と数ヶ月。
僕は大人になって、今度こそライモンド先生の抱えているものをきちんと受け止めるべく、大人しく社交界で人生経験を積んでいる。
そして、同時にエレンがバッドエンドに行かないように軌道修正してる。
フィルとくっ付けようとしてるのは完全に僕のエゴだが、それが知ったことか。
しょうがないでしょ。
友達として気に入っちゃったんだから。
という事で、僕とついでにエリオット(時々ケニー)はフィルの恋の助っ人をしてる。
「恋って難しいなー」
しかし、全くどうして良いのか、分からない。
グルグル眼鏡先輩に一度相談した事もあるが、「これ以上引っ掻き回すな」という忠告しか返って来なかった。
相変わらず酷いと思いつつも、あったかいココアを飲みながらポスンッとベッドに座る。
前はとても大きく感じていたベッドも今では丁度いい。
その柔らかさともう夜遅い事もあり、ちょっとうとうとしてくる。
「はい。会議はオシマイ。ラニラニ、眠いんでしょ? 歯磨きして寝よっか」
そうシルビオによって、会議を強制終了させられた。
ココアを僕の手から取るとシルビオがニッコリ顔に「やめないなら。俺が君の歯を磨いて強制入眠させる」と書いてあるので、恐れ慄き、歯を磨きに洗面台に走る。
最近のシルビオは本気でそういう事をやる。
実際に歯を心ゆくまで磨かれた上に身体中のあらゆる睡眠のツボ。足のツボや、首のツボに、腕のツボ、ヘソの下の下っ腹をのツボをくりくりと押され、痛さと気持ちよさに僕は泣かされた。
アレはとても恐ろしい体験だった。
下手したら癖になりそうな大人な体験だった(ただのマッサージ)。
「あー。解散かー」
「まぁ、しょうがないな。俺もベッドで楽譜を読みながら寝るか」
「勤勉っすね。今度の音楽祭の楽譜っすか?」
「ああ。そうだ。……おやすみ、ラニ。シルビオ」
「2人ともおやすみー」
「やすみー。ラニ……と、ついでにシルビオ先輩」
「あれ? シルビオは帰んないの? ねぇ!? なんで2人ともナチュラルにシルビオを僕の部屋に置いて帰るの!?」
あんなに3人で熱く論争を交わしたというのに、ナチュラルに居座ろうとするシルビオを見なかった事にして、そそくさと帰っていった。
お久しぶりです。
ラニです。
今年の4月で16歳になりました。
この間は新しい正装とお手紙と仕送りありがとうございます。
成長痛も治まり、最近は身体の節々が痛い事はありません。
正装も十分過ぎる程、ぴったり身体にあってます。
以前のお手紙でお母さんと伯母さん達が僕の為と自身達の夢の衣装を全て組み込んであの正装を作ってくれたと。
そしめ、もし、身体に合わなかったら更にグレードアップしたのを製作中だと第一王子の手紙から知りました。
作らなくて大丈夫です。
とてもぴったりしっくり身体に合ってます。
強いて云うなら何故、もう少しシンプルに男らしい衣装にしてくれなかっ……いや、もういいです。
本当に今ので充分なので本当に作らなくて大丈夫です。はい。
背も伸び、フィルバート皇子のマナー講座も去年及第点で卒業しました。
以前、第一王子の手紙で声変わりはしたかと来てましたが、してません。
声変わりってどうすればいいんでしょうね?
以前成長痛で診てくれたお医者さんの話では声は牛乳ではどうにもならないそうです。
僕は元気にやってます。
みんなもいつも通り元気でいて下さい。
P.S. 本当に追加の正装は要らないのであしからず!
ラニより
◇
「ふぅ…、これでよし」
モアナへ送る手紙を大満足の内容で書き終わって、ホクホクした気持ちで、封蝋を垂らす。
雑貨店でこの前見つけて、ほぼ悪ノリで買った狸のような猿のような謎の生物の印をくりくりと押した。
誕生日プレゼントを皇子改めフィルが買ってくれると云うので「じゃあ、封蝋使ってみたい」と云う話になって買ってもらった封蝋と封蝋印2つ。
本当は封蝋とこの狸のような猿のような封蝋印だけ買ってもらう筈だったのだが、「お前。それを自分の家族以外の手紙に使ったらしばく」と脅され、なんかお洒落な封蝋印をもう一つぶつくさ言いながら買ってくれた。
そして、実際にこの前、フィルのお兄さんの第二皇子エラルドさんへの返信の手紙にこの猿か狸か分からない謎の生物の封蝋印を押して出してしまったのが即刻バレて頭を叩かれたという逸話のある逸品だ。
だが、僕はこの封蝋印はお洒落な方よりユーモアがあって好きだ。
きっとかっこいい大人はユーモアがある方がいいに決まってる。
フンフンッと鼻歌を歌って、侍女のお姉さんにお手紙をお願いすると、フィルが僕の部屋に(無断で)置かれたテーブルでコーヒーを飲みながらジトッとした目でこちらを見てる。
「おい…。またそれか」
その隣ではフィルの隣でも遠慮をしなくなったエリオットがパリパリとクッキーを食べて、まぁまぁとフィルをなだめる。
「良いじゃないっすか。ポン吉、俺、笑えて好きっすよ。ふざけた存在なのにあの無駄に神妙な顔付きしてる所が腹抱えて笑える」
「手紙で笑いをとってどうする。手紙というのは相手に自身の近況を伝える連絡手段だろう」
「……殿下は上司かなんかと文通してるんすか?」
「……………」
「いや、うん。そうっすね…。俺と文通します?」
「うん…。僕もいっぱい、フィルに手紙を書くよ」
「やめろ。俺をこれ以上惨めにするな」
僕の狸か猿か分からない生物(エリオット命名、ポン吉)に難癖をつけていた筈なのにいつの間にかにフィルの悲しい手紙事情になり、なんか悲しくなる。
トントンッと自身の腕を指で叩き、壁にもたれ掛かってこちらを見ているシルビオの無言の圧を僕達はスッと見なかった事にして、僕達は本来の目的に舵を取る。
「さて。今回の議題はフィルがエレンに告白してまたしてもフラれた件ですっ!」
僕は議長らしく、ダンッとテーブルを叩く。
エリオットは「よっ! 待ってました」と拍手をして、フィルとシルビオはスッと明後日の方向を2人して見つめた。戻ってこいっ!
「僕は何故、フラれたのか原因を突き詰めて、次に繋げたい。次こそは打倒エレンっ!」
「打倒…。単純に悪印象が抜けきってないだけじゃね? 我らがフィルバート殿下は壊滅的にアプローチが下手すぎる」
「おい、エリオット・ルー。フィルバート殿下に不敬だとはおもわn…」
「やはりか…。まだ告白するには早かったのか」
「…うん。そっか。早過ぎたんだね。よし、次っ!」
「そうだな。もう2、3度振られたんだ。何度振られようが怖くない」
「そうっすね。ガンガン行こうぜ!」
「………ここまで身にならない作戦会議なんてあるんだネ」
呆れ顔のシルビオをまたスッと見なかった事にして、僕達は議論を飛ばす。
どうすれば、モテるか。
どうすれば意中の相手が落とせるのか。
「アレ…じゃないっすか? こうっ…、出来る男アピールすればいいんじゃないっすか? こう……、両手でペン回しするとか??」
「それは出来る男なの?」
「ただの曲芸師だろ。……出来る男っていうのは……こう、さり気なく気を遣えるという。アレだな。アレ、……さり気なく、車道側を歩いて」
「それは…確かに出来る男ではあるっすけど」
「それ、一緒にお出かけ出来る立場になってからだよね…。出来る男っていえば、………出来る男って何だろ??」
しかし、話は平行線だ。
しょうがないのだ。
僕等の中に誰一人、恋愛経験者がいないんだっ…。
チラリと助けを求めてシルビオを見る。
しかし、シルビオはニッコリと微笑むだけで助言はしてくれない。
だが、それも仕方ない。
だって、シルビオはフィルバートの恋に応援的ではない。
寧ろ、グルグル眼鏡先輩の話だとシルビオにとって、最初エレンはフィルバートに近付く羽虫と一緒らしい。
そして、下手すりゃ、フィルを差し置いて、主人公(エレン)とゴールインするのだ。
そう寧ろ、敵サイドなのだ。
ライモンド先生が消えてから1年と数ヶ月。
僕は大人になって、今度こそライモンド先生の抱えているものをきちんと受け止めるべく、大人しく社交界で人生経験を積んでいる。
そして、同時にエレンがバッドエンドに行かないように軌道修正してる。
フィルとくっ付けようとしてるのは完全に僕のエゴだが、それが知ったことか。
しょうがないでしょ。
友達として気に入っちゃったんだから。
という事で、僕とついでにエリオット(時々ケニー)はフィルの恋の助っ人をしてる。
「恋って難しいなー」
しかし、全くどうして良いのか、分からない。
グルグル眼鏡先輩に一度相談した事もあるが、「これ以上引っ掻き回すな」という忠告しか返って来なかった。
相変わらず酷いと思いつつも、あったかいココアを飲みながらポスンッとベッドに座る。
前はとても大きく感じていたベッドも今では丁度いい。
その柔らかさともう夜遅い事もあり、ちょっとうとうとしてくる。
「はい。会議はオシマイ。ラニラニ、眠いんでしょ? 歯磨きして寝よっか」
そうシルビオによって、会議を強制終了させられた。
ココアを僕の手から取るとシルビオがニッコリ顔に「やめないなら。俺が君の歯を磨いて強制入眠させる」と書いてあるので、恐れ慄き、歯を磨きに洗面台に走る。
最近のシルビオは本気でそういう事をやる。
実際に歯を心ゆくまで磨かれた上に身体中のあらゆる睡眠のツボ。足のツボや、首のツボに、腕のツボ、ヘソの下の下っ腹をのツボをくりくりと押され、痛さと気持ちよさに僕は泣かされた。
アレはとても恐ろしい体験だった。
下手したら癖になりそうな大人な体験だった(ただのマッサージ)。
「あー。解散かー」
「まぁ、しょうがないな。俺もベッドで楽譜を読みながら寝るか」
「勤勉っすね。今度の音楽祭の楽譜っすか?」
「ああ。そうだ。……おやすみ、ラニ。シルビオ」
「2人ともおやすみー」
「やすみー。ラニ……と、ついでにシルビオ先輩」
「あれ? シルビオは帰んないの? ねぇ!? なんで2人ともナチュラルにシルビオを僕の部屋に置いて帰るの!?」
あんなに3人で熱く論争を交わしたというのに、ナチュラルに居座ろうとするシルビオを見なかった事にして、そそくさと帰っていった。
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