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終章 ロバ耳王子と16歳と約束と
5、懐かしいメロディ
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みんなが僕を置いて大人の階段を登っていく。
どうせ、フィルだって童貞じゃない。
シルビオは絶対で、リュビオは……。
リュビオは居なかった事にしよう。
これでエレンも主人公なのにいつの間にかに攻略者以外で脱童貞してたらやだなと、ふと、現実を見たくなくて、窓から外を見やる。
すると、何故か木の影に隠れて僕の教室の様子を窺うエレンの姿があった。
目が合い、ポカンッと思わず互いに固まる。
しかし、はたと正気に戻ったエレンがボボッと頬を林檎みたいに真っ赤にして、転けながら去っていく。
「「また…だ」」
「「また…だな」」
「また…だね」
そんなエレンをルトゥフ達と4人…、いや、帰って来たコンスタンチェと5人でなんとも言えない気持ちで見送る。
そして、取り敢えず情報過多なので、今はエレンの事は置いておいて、話に戻る。
「次の夜会までに大人の男…まではいかなくても、ある程度の知識を会得して向かい打ちたいっ」
「「無理だって」」
「あー、あれかい? 成程ね」
全否定する男3人(ルトゥフは苦笑い)。
そして、今まさに帰って来たばかりのコンスタンチェは僕の言葉と3人の様子を見て、状況を全て把握する。
勝ち取って来た情報をテーブルに置き、スマートに長い足を組みながら椅子に腰掛ける。
横髪を耳に掛け、肘を突きながらこちらに微笑みかける姿はもはや色男。
「今度のフラント侯爵の夜会にはあの《仮面の男爵》が来るそうだね。ふふっ。《仮面の男爵》の為に大人になりたいのかい? 一途な君は本当に可愛いらしい」
「……先に言っておくけど。一応、なんだ。もしもの時の為に奥の手として」
来週に来たるフラント侯爵の夜会。
そこにはなんと、社交場には未だ姿を現さない《仮面の男爵》が初めて公の場に出てくる。
この機会を逃しては成らず!
お近付きになって、あわよくば本物であるならば、間髪入れずに取っ捕まえねば。
だからこそ、逃走防止策を僕は身に付けなければならない。
やって見せるとグッと拳を握る。
「ハニートラップ…」と、ボソッとルトゥフがドン引きしてるが、僕は冗談ではなく、至って本気だ。
卑怯だろうが、卑劣だろうが、何だろうと僕は何が何でもライモンド先生を捕まえて見せる。
「色仕掛けか。思い切ったね…」
「そもそも、シルビオ様に監視されてる中、《仮面の男爵》に色仕掛けするスキはあるかな?」
「そこはもうシルビオ先輩に一服盛るしかないんじゃね?」
「ねぇ、シルビオが僕を邪魔する前提なの?」
「「「「………………」」」」
僕の素朴な疑問に無言でスッと目を逸らし、ルトゥフまでもが苦い顔で答えない。
え? 僕自らお近づきに行くのも、ダメなの??
フィルも乗り気なのに?
「……さぁーて。先生の目も怖い事だし、課題に戻るか」
「そーだな。コンスタンチェの成果を確認して、対策を立てよう。おっ、ルトゥフ、その文献面白そう。流石。」
「そ、そうかな? ふふっ」
「じゃあ、ルトゥフの文献を主軸に考えるかい? ラニ、一緒に関係書籍を図書館に取りに行くとしよう。勿論、重い荷物は私が待とう」
「いや、コニー。そこは僕に任せようか」
盛大に僕の話は逸らされて、一抹の不安を覚えつつも、紳士過ぎるコンスタンチェのお供として、そそくさとついて行く。
勿論、本は全て僕が持ち、図書館から教室への帰り道。
僕は耳慣れた懐かしいメロディを聞いた。
跳ねるように踊るように風に乗って響くそのメロディは、女神ミューズの噴水から聞こえて来た。
キラキラと噴水の水飛沫が空で輝くように。
一音一音大切に大切に紡がれるその様は、まるで宝物を愛でるかのようで、噴水のヘリに座り、エレンはとても優しい顔をしていた。
それはとても僕からしたら不思議な光景だった。
だって、それはモアナでは船乗りが無事に岸に戻れるようにと船の上で歌う歌。
モアナ王国では誰でも知ってる船乗りの歌。
それなのにまるで、恋歌のように聞こえた。
歌詞のないメロディだけのその歌はまるで優しく愛を囁いているようでもあった。
「ラニ。どうしだんだい?」
コンスタンチェに声を掛けられ、ハッと我に帰る。
「何…でもない。ちょっと、ボーとしてただけ」
その途端、気不味くなって、そそくさとその場を後にした。
まるで、人のラブレターを盗み見たような気持ち。
見てはいけなかったものを見てしまったようなそんな気不味さ。
その後。気不味く思いながらも、スタスタと颯爽に歩いて行くコンスタンチェを後ろから追いながら教室に帰る最中、僕はグルグル眼鏡先輩に拉致られた。
どうせ、フィルだって童貞じゃない。
シルビオは絶対で、リュビオは……。
リュビオは居なかった事にしよう。
これでエレンも主人公なのにいつの間にかに攻略者以外で脱童貞してたらやだなと、ふと、現実を見たくなくて、窓から外を見やる。
すると、何故か木の影に隠れて僕の教室の様子を窺うエレンの姿があった。
目が合い、ポカンッと思わず互いに固まる。
しかし、はたと正気に戻ったエレンがボボッと頬を林檎みたいに真っ赤にして、転けながら去っていく。
「「また…だ」」
「「また…だな」」
「また…だね」
そんなエレンをルトゥフ達と4人…、いや、帰って来たコンスタンチェと5人でなんとも言えない気持ちで見送る。
そして、取り敢えず情報過多なので、今はエレンの事は置いておいて、話に戻る。
「次の夜会までに大人の男…まではいかなくても、ある程度の知識を会得して向かい打ちたいっ」
「「無理だって」」
「あー、あれかい? 成程ね」
全否定する男3人(ルトゥフは苦笑い)。
そして、今まさに帰って来たばかりのコンスタンチェは僕の言葉と3人の様子を見て、状況を全て把握する。
勝ち取って来た情報をテーブルに置き、スマートに長い足を組みながら椅子に腰掛ける。
横髪を耳に掛け、肘を突きながらこちらに微笑みかける姿はもはや色男。
「今度のフラント侯爵の夜会にはあの《仮面の男爵》が来るそうだね。ふふっ。《仮面の男爵》の為に大人になりたいのかい? 一途な君は本当に可愛いらしい」
「……先に言っておくけど。一応、なんだ。もしもの時の為に奥の手として」
来週に来たるフラント侯爵の夜会。
そこにはなんと、社交場には未だ姿を現さない《仮面の男爵》が初めて公の場に出てくる。
この機会を逃しては成らず!
お近付きになって、あわよくば本物であるならば、間髪入れずに取っ捕まえねば。
だからこそ、逃走防止策を僕は身に付けなければならない。
やって見せるとグッと拳を握る。
「ハニートラップ…」と、ボソッとルトゥフがドン引きしてるが、僕は冗談ではなく、至って本気だ。
卑怯だろうが、卑劣だろうが、何だろうと僕は何が何でもライモンド先生を捕まえて見せる。
「色仕掛けか。思い切ったね…」
「そもそも、シルビオ様に監視されてる中、《仮面の男爵》に色仕掛けするスキはあるかな?」
「そこはもうシルビオ先輩に一服盛るしかないんじゃね?」
「ねぇ、シルビオが僕を邪魔する前提なの?」
「「「「………………」」」」
僕の素朴な疑問に無言でスッと目を逸らし、ルトゥフまでもが苦い顔で答えない。
え? 僕自らお近づきに行くのも、ダメなの??
フィルも乗り気なのに?
「……さぁーて。先生の目も怖い事だし、課題に戻るか」
「そーだな。コンスタンチェの成果を確認して、対策を立てよう。おっ、ルトゥフ、その文献面白そう。流石。」
「そ、そうかな? ふふっ」
「じゃあ、ルトゥフの文献を主軸に考えるかい? ラニ、一緒に関係書籍を図書館に取りに行くとしよう。勿論、重い荷物は私が待とう」
「いや、コニー。そこは僕に任せようか」
盛大に僕の話は逸らされて、一抹の不安を覚えつつも、紳士過ぎるコンスタンチェのお供として、そそくさとついて行く。
勿論、本は全て僕が持ち、図書館から教室への帰り道。
僕は耳慣れた懐かしいメロディを聞いた。
跳ねるように踊るように風に乗って響くそのメロディは、女神ミューズの噴水から聞こえて来た。
キラキラと噴水の水飛沫が空で輝くように。
一音一音大切に大切に紡がれるその様は、まるで宝物を愛でるかのようで、噴水のヘリに座り、エレンはとても優しい顔をしていた。
それはとても僕からしたら不思議な光景だった。
だって、それはモアナでは船乗りが無事に岸に戻れるようにと船の上で歌う歌。
モアナ王国では誰でも知ってる船乗りの歌。
それなのにまるで、恋歌のように聞こえた。
歌詞のないメロディだけのその歌はまるで優しく愛を囁いているようでもあった。
「ラニ。どうしだんだい?」
コンスタンチェに声を掛けられ、ハッと我に帰る。
「何…でもない。ちょっと、ボーとしてただけ」
その途端、気不味くなって、そそくさとその場を後にした。
まるで、人のラブレターを盗み見たような気持ち。
見てはいけなかったものを見てしまったようなそんな気不味さ。
その後。気不味く思いながらも、スタスタと颯爽に歩いて行くコンスタンチェを後ろから追いながら教室に帰る最中、僕はグルグル眼鏡先輩に拉致られた。
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