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終章 ロバ耳王子と16歳と約束と
11、大王の襲来
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(???視点)
その日は大嵐だった。
乗っていた大きな船は波の前に砕け散り、大人も偉い人も関係なく、冷たい海で、等しく行きたいが故に木片にしがみ付く。
「大丈夫。助けるから」
そう差し伸べられた小さな手は荒波の中で今にも流されてしまいそうなのに、俺の手を掴み、死が待つ冷たい海から引き上げる。
俺を見つめる深い青い瞳には美しい銀の花が咲き誇り、雨の中で濡れた銀の髪は艶やかに白い肌を彩る。
まるで宝石のようだと思った。
その宝石は俺を見つめて、大輪の花が咲いたかのように眩しい笑みを浮かべた。
この時の俺はまだ知らなかった。
凍りついていた筈の心臓が人間のように脈を打ち、恋歌を刻み始める事を。
まだこの時の俺は知らない。
◇
フラント侯爵の事件に巻き込まれてから4日。
僕は何故か宰相から謹慎(保護ともいう)をくらい、温室付きの後宮で過ごしていた。
思った以上にフラント侯爵の裏切りは根深く、エレン・メローディア暗殺計画なるものも彼の書斎から見つかり、巷を騒がせた。
早くエレンの事も軌道修正しなきゃならない。
だが、僕は謹慎中(保護ともいう)。
そして、またひとつ問題が浮上している。
ラピュセル公爵家が正式にモアナ大王に婚約の打診をしたらしい。
ー 大王、どうするのかな…
正直、大王がどう返答するのか未知数だ。
そもそもその書状を大王の手に渡ったのか。そこもまた怪しい。
温室で「どうしたもんか」と、まったりとお茶を啜る。
ラピュセル公爵にはここ数年何度もハッキリとお断りをしてきた。だが、あの公爵は人の話を聞かない。
そして、ジェルマンもまためげない。
まぁ、ジェルマンに関してはあのthe肉食系の勢い負けて、ハッキリと言えない僕に完全に非があるんだけどね…。
時計を見て、そろそろシルビオが迎えに来る時間だなとふと思い出し、また紅茶を啜る。
フラント侯爵の件で事後処理を任されたシルビオはこの4日間、騎士団屯所にほぼ篭りきりで仕事をしている(他の警護もいるのに夜は律儀に僕の警護にやってくる)。
やっと僕達はそれぞれの仕事を終え(僕は謹慎)、学園に今日、帰れるのだ。
ー 地味に長かった…
やっとシャバの空気が吸える。
まだ色々と問題は片付いていないが、そう思えば気持ちが軽くなる。
今日の夜はエリオット達と何を食べよう。
そう鼻歌を歌っているとガチャリッと温室の扉が開いた。
もう帰る時間かとぴょんっと椅子から飛び降りると侍女さんに苦笑されてしまった。
いけない、いけない。
僕はもう16歳。大人としての余裕を持った行動をしなければ!!
こほんっと咳払いをして、走りたい気持ちを抑えて、ゆったりと堂々とシルビオの所に向かうと、ふと、足が床から数センチ浮いた。
ギョッとして、「僕は抱っこしてもらう程、子供じゃない」とシルビオに抗議しようと、抱き上げた張本人を睨む。
しかし、その張本人と目があった瞬間、ブワリッと自然と涙が出た。
そこに居たのはシルビオじゃなかった。
モアナ王国に居る筈の大切な家族。
久々にみる同じ銀の髪に銀の花が咲く青い瞳。
深く刻まれた皺にこんがり日焼けした肌。少し恰幅の良いどっしりとした姿は相変わらずなその人は…。
「じいちゃんッ!」
「じいちゃんが会いに来たぞぉー、ラニっ! 相変わらず、お前は泣き虫だなぁー」
スンスンッと泣いて、ギュッと首に腕を回せば、昔も今も変わらず、ワイルドな大王は軽々と僕を抱っこした。
◇
「おー。久しぶりだなぁー、ルーファス。サフィール。大きくなったなぁー」
ガッハハッと陽気に笑いながらモアナ大王ことじいちゃんはバシバシと皇帝の背を叩く。
皇帝は困惑気味にサフィールさんを見るが、サフィールさんは青い顔で全力で首を横に振る。
どうやら、来訪の便りも出してなければ、案の定、平民として入国したようだ。
ダメだよ、じいちゃん。
王族は王族として入国しなきゃいけないんだってさ。
「大王…。何度も言ってますが、先に来訪の旨を書状で送って下さいと……」
「おお、サフィール! 以前に呑んだ時に辛い酒は苦手だと聞いてなぁー。手土産にマンゴーで作った酒を持って来たんだ。良かったら、もらってくれ」
「そ、それはお手数おかけしてって…、いや、そうじゃなくてッ」
「ルーファス!! これは俺の秘蔵の酒でな。今日飲もうと持って来たんだ」
「え? いや、え??」
あれよあれよという内に、大王のペースに飲まれて、酒盛りをする流れになっている。
マズイと文官や武官が止めようとするが、「まぁまぁ」と大王自らお酌して、何時の間にかに自分達も飲む流れになってる。
僕は僕で上機嫌なじいちゃんが膝に乗せたがるので、なんか乗ってる。
「でっかくなったなぁ」なんてほろりっと涙を浮かべながら嬉しそうに言われると、流石に断り辛い。
ロバ耳も相まって、もう約4年くらいは会ってなかったからね…。
「はー。子供の成長は早いなぁー。ちょっと前までは宴の度にライチのように軽い体でちょこんと俺の膝の上に乗って拙いうる覚えの歌を元気よく歌ってたのになぁー。重くなったなぁー」
そう言いつつもその表情に重みに耐えるような苦悶の色はなく、やっぱり軽々と胡座を掻いた膝の上で抱っこしてる。
基本、床に座って食事をとるモアナでの生活の慣れから自然とレーヴでは絶対に座らない絨毯の上に座ってるじいちゃん。
じいちゃんがさも当然のように座ってるので皇帝達も絨毯の上に座らざるおえない。
人数も段々と増えていき、自然に酒の肴も増え、最早宴会状態。
仕事をしていた侍女や侍従も巻き込まれて、中にはもう酒瓶を持ったまま寝こけてる人もいる。
ー 多分。これが迷惑なんだろうな…
おそらく、半分以上、城の機能は停止してしまっている。
そろっと書類だけ持って、自分だけでも仕事をしようとしていたフィルのお兄さんの第二皇子もじいちゃんに捕まり、お酌されてる。
……あれ、これ、半分じゃなくて全機能停止してるかも。
気付いた恐ろしい事実にソッと蓋をして、じいちゃんのコップにお酒を注ぐ。
「何してるの…。ラニラニ」
注いでいると騒ぎを駆けつけたシルビオと、学園にいる筈のフィルが入り口からこちらを見ていた。
シルビオは一瞬、何故か殺気を放ったが、事態を察したようで「あー。成程」とスッと目を逸らした。
しかし、フィルは……。
「な、な、な、何をッ! 何をしてる!? 何故、ラニを膝に乗っけて腰に腕を回して、酌を…。は??」
「いや、あのね…」
「変態かっ!? この爺さんは変態なのかッ!!」
あわあわと動揺して、何を勘違いしたのか、慌てて僕を助けようとするフィル。
シルビオがガッと駆け出そうとするフィルの肩を掴み、「いくな」と首を横に振る。
「は? いや、お前ッ、ラニが変態に絡まれてッ」
「フィルっち落ち着いて」
「兄貴分と護衛が助けなくてどうする!?」
「や、だからね。フィルっち」
そのカオスなやり取りをみて、じいちゃんは青い瞳には涙を溜める程、ガッハハっと愉快そうに笑う。
「変態っ…。俺がか、若造っ!」
「そ、そうだ」
「ラニはお前の弟分かぁ」
「ああ。兄は弟を助けるものだろうっ! 血は繋がってないが、大事な弟分だ」
「フハハハッ。そうかっ、そうか! 面白い若造だなぁっ!!」
周囲がフィルの発言に顔をこわばらせる中、じいちゃんはとっても嬉しそうで、まだ状況が分かってないフィルを手招きして、半ば無理矢理自身の隣に座らせた。
「あれかっ、若造はルーファスの末の倅かぁー」
「お、俺はレーヴ帝国第三皇子フィルバートだ」
「そうかそうかぁっ! 俺はモアナ王国の大王。友人達からはモアナ大王と呼ばれている。まー、細かい自己紹介は嫌いでなっ。ラニの兄貴分ならじいちゃんとでも呼んでくれ!」
「モアナ……、大…、王!?」
サッとフィルの顔から表情が消える。
表情が消えたと思ったら僕とシルビオを今にも泣きそうな顔で見て、僕達はサッとその視線から目を逸らした。
「……そ、その、ラニの祖父、モアナ大王とはつゆ知らず…」
「ん? さっきの威勢はどうした、若造。…そういや、若造。お前、幾つだ?」
「こ、今年で18になります。その先程は大変申し訳…」
「おー、18!! 確か、レーヴでは18は飲んで良かったよなー!! ほーら、俺の秘蔵酒だ。飲め飲め!」
「え? いや、まだ誕生日まで半年あるので私はまだ17です」
「ルーファスと一緒で、硬いなぁー。半年なんて誤差だ誤差。さー、飲め飲め」
「ご、誤差!? え…。いや、法律では…」
「まぁー、飲め飲めっ! 初の酒を一緒に飲めるとはめでたいなー。なぁ、ルーファス」
「え? いや、フィルバートまだは未成年…」
「めでたいなー!」
何時の間にかにコップを持たされたフィル。
いや、じいちゃん、それはマズイと僕がフィルにお酌して、フィルのコップにはしれっとジュースに注ごうとするが、じいちゃんは首を横に振る。
是非とも自分がお祝いしたい。
そうじいちゃん秘蔵の度数高めの酒を注いで……。
「フィルっち。取り敢えず、それはもう18の俺が飲むから渡そうか」
「いや、大王自ら注いだのだ。断る訳には…」
「断って良いんだよっ。ねぇ!? 断って良いんだって!!」
何処までも真面目に真面目を重ねたフィルは神妙な面持ちでグイッと一気にコップの中のお酒を一滴も残さずに飲み干した。
案の定。まだお酒に一切の耐性ないフィルは度数高めの酒にすぐ顔を真っ赤にして、目を回した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※この物語はフィクションです。
未成年にお酒を勧めるのはやめましょう。
ダメ。絶対。
その日は大嵐だった。
乗っていた大きな船は波の前に砕け散り、大人も偉い人も関係なく、冷たい海で、等しく行きたいが故に木片にしがみ付く。
「大丈夫。助けるから」
そう差し伸べられた小さな手は荒波の中で今にも流されてしまいそうなのに、俺の手を掴み、死が待つ冷たい海から引き上げる。
俺を見つめる深い青い瞳には美しい銀の花が咲き誇り、雨の中で濡れた銀の髪は艶やかに白い肌を彩る。
まるで宝石のようだと思った。
その宝石は俺を見つめて、大輪の花が咲いたかのように眩しい笑みを浮かべた。
この時の俺はまだ知らなかった。
凍りついていた筈の心臓が人間のように脈を打ち、恋歌を刻み始める事を。
まだこの時の俺は知らない。
◇
フラント侯爵の事件に巻き込まれてから4日。
僕は何故か宰相から謹慎(保護ともいう)をくらい、温室付きの後宮で過ごしていた。
思った以上にフラント侯爵の裏切りは根深く、エレン・メローディア暗殺計画なるものも彼の書斎から見つかり、巷を騒がせた。
早くエレンの事も軌道修正しなきゃならない。
だが、僕は謹慎中(保護ともいう)。
そして、またひとつ問題が浮上している。
ラピュセル公爵家が正式にモアナ大王に婚約の打診をしたらしい。
ー 大王、どうするのかな…
正直、大王がどう返答するのか未知数だ。
そもそもその書状を大王の手に渡ったのか。そこもまた怪しい。
温室で「どうしたもんか」と、まったりとお茶を啜る。
ラピュセル公爵にはここ数年何度もハッキリとお断りをしてきた。だが、あの公爵は人の話を聞かない。
そして、ジェルマンもまためげない。
まぁ、ジェルマンに関してはあのthe肉食系の勢い負けて、ハッキリと言えない僕に完全に非があるんだけどね…。
時計を見て、そろそろシルビオが迎えに来る時間だなとふと思い出し、また紅茶を啜る。
フラント侯爵の件で事後処理を任されたシルビオはこの4日間、騎士団屯所にほぼ篭りきりで仕事をしている(他の警護もいるのに夜は律儀に僕の警護にやってくる)。
やっと僕達はそれぞれの仕事を終え(僕は謹慎)、学園に今日、帰れるのだ。
ー 地味に長かった…
やっとシャバの空気が吸える。
まだ色々と問題は片付いていないが、そう思えば気持ちが軽くなる。
今日の夜はエリオット達と何を食べよう。
そう鼻歌を歌っているとガチャリッと温室の扉が開いた。
もう帰る時間かとぴょんっと椅子から飛び降りると侍女さんに苦笑されてしまった。
いけない、いけない。
僕はもう16歳。大人としての余裕を持った行動をしなければ!!
こほんっと咳払いをして、走りたい気持ちを抑えて、ゆったりと堂々とシルビオの所に向かうと、ふと、足が床から数センチ浮いた。
ギョッとして、「僕は抱っこしてもらう程、子供じゃない」とシルビオに抗議しようと、抱き上げた張本人を睨む。
しかし、その張本人と目があった瞬間、ブワリッと自然と涙が出た。
そこに居たのはシルビオじゃなかった。
モアナ王国に居る筈の大切な家族。
久々にみる同じ銀の髪に銀の花が咲く青い瞳。
深く刻まれた皺にこんがり日焼けした肌。少し恰幅の良いどっしりとした姿は相変わらずなその人は…。
「じいちゃんッ!」
「じいちゃんが会いに来たぞぉー、ラニっ! 相変わらず、お前は泣き虫だなぁー」
スンスンッと泣いて、ギュッと首に腕を回せば、昔も今も変わらず、ワイルドな大王は軽々と僕を抱っこした。
◇
「おー。久しぶりだなぁー、ルーファス。サフィール。大きくなったなぁー」
ガッハハッと陽気に笑いながらモアナ大王ことじいちゃんはバシバシと皇帝の背を叩く。
皇帝は困惑気味にサフィールさんを見るが、サフィールさんは青い顔で全力で首を横に振る。
どうやら、来訪の便りも出してなければ、案の定、平民として入国したようだ。
ダメだよ、じいちゃん。
王族は王族として入国しなきゃいけないんだってさ。
「大王…。何度も言ってますが、先に来訪の旨を書状で送って下さいと……」
「おお、サフィール! 以前に呑んだ時に辛い酒は苦手だと聞いてなぁー。手土産にマンゴーで作った酒を持って来たんだ。良かったら、もらってくれ」
「そ、それはお手数おかけしてって…、いや、そうじゃなくてッ」
「ルーファス!! これは俺の秘蔵の酒でな。今日飲もうと持って来たんだ」
「え? いや、え??」
あれよあれよという内に、大王のペースに飲まれて、酒盛りをする流れになっている。
マズイと文官や武官が止めようとするが、「まぁまぁ」と大王自らお酌して、何時の間にかに自分達も飲む流れになってる。
僕は僕で上機嫌なじいちゃんが膝に乗せたがるので、なんか乗ってる。
「でっかくなったなぁ」なんてほろりっと涙を浮かべながら嬉しそうに言われると、流石に断り辛い。
ロバ耳も相まって、もう約4年くらいは会ってなかったからね…。
「はー。子供の成長は早いなぁー。ちょっと前までは宴の度にライチのように軽い体でちょこんと俺の膝の上に乗って拙いうる覚えの歌を元気よく歌ってたのになぁー。重くなったなぁー」
そう言いつつもその表情に重みに耐えるような苦悶の色はなく、やっぱり軽々と胡座を掻いた膝の上で抱っこしてる。
基本、床に座って食事をとるモアナでの生活の慣れから自然とレーヴでは絶対に座らない絨毯の上に座ってるじいちゃん。
じいちゃんがさも当然のように座ってるので皇帝達も絨毯の上に座らざるおえない。
人数も段々と増えていき、自然に酒の肴も増え、最早宴会状態。
仕事をしていた侍女や侍従も巻き込まれて、中にはもう酒瓶を持ったまま寝こけてる人もいる。
ー 多分。これが迷惑なんだろうな…
おそらく、半分以上、城の機能は停止してしまっている。
そろっと書類だけ持って、自分だけでも仕事をしようとしていたフィルのお兄さんの第二皇子もじいちゃんに捕まり、お酌されてる。
……あれ、これ、半分じゃなくて全機能停止してるかも。
気付いた恐ろしい事実にソッと蓋をして、じいちゃんのコップにお酒を注ぐ。
「何してるの…。ラニラニ」
注いでいると騒ぎを駆けつけたシルビオと、学園にいる筈のフィルが入り口からこちらを見ていた。
シルビオは一瞬、何故か殺気を放ったが、事態を察したようで「あー。成程」とスッと目を逸らした。
しかし、フィルは……。
「な、な、な、何をッ! 何をしてる!? 何故、ラニを膝に乗っけて腰に腕を回して、酌を…。は??」
「いや、あのね…」
「変態かっ!? この爺さんは変態なのかッ!!」
あわあわと動揺して、何を勘違いしたのか、慌てて僕を助けようとするフィル。
シルビオがガッと駆け出そうとするフィルの肩を掴み、「いくな」と首を横に振る。
「は? いや、お前ッ、ラニが変態に絡まれてッ」
「フィルっち落ち着いて」
「兄貴分と護衛が助けなくてどうする!?」
「や、だからね。フィルっち」
そのカオスなやり取りをみて、じいちゃんは青い瞳には涙を溜める程、ガッハハっと愉快そうに笑う。
「変態っ…。俺がか、若造っ!」
「そ、そうだ」
「ラニはお前の弟分かぁ」
「ああ。兄は弟を助けるものだろうっ! 血は繋がってないが、大事な弟分だ」
「フハハハッ。そうかっ、そうか! 面白い若造だなぁっ!!」
周囲がフィルの発言に顔をこわばらせる中、じいちゃんはとっても嬉しそうで、まだ状況が分かってないフィルを手招きして、半ば無理矢理自身の隣に座らせた。
「あれかっ、若造はルーファスの末の倅かぁー」
「お、俺はレーヴ帝国第三皇子フィルバートだ」
「そうかそうかぁっ! 俺はモアナ王国の大王。友人達からはモアナ大王と呼ばれている。まー、細かい自己紹介は嫌いでなっ。ラニの兄貴分ならじいちゃんとでも呼んでくれ!」
「モアナ……、大…、王!?」
サッとフィルの顔から表情が消える。
表情が消えたと思ったら僕とシルビオを今にも泣きそうな顔で見て、僕達はサッとその視線から目を逸らした。
「……そ、その、ラニの祖父、モアナ大王とはつゆ知らず…」
「ん? さっきの威勢はどうした、若造。…そういや、若造。お前、幾つだ?」
「こ、今年で18になります。その先程は大変申し訳…」
「おー、18!! 確か、レーヴでは18は飲んで良かったよなー!! ほーら、俺の秘蔵酒だ。飲め飲め!」
「え? いや、まだ誕生日まで半年あるので私はまだ17です」
「ルーファスと一緒で、硬いなぁー。半年なんて誤差だ誤差。さー、飲め飲め」
「ご、誤差!? え…。いや、法律では…」
「まぁー、飲め飲めっ! 初の酒を一緒に飲めるとはめでたいなー。なぁ、ルーファス」
「え? いや、フィルバートまだは未成年…」
「めでたいなー!」
何時の間にかにコップを持たされたフィル。
いや、じいちゃん、それはマズイと僕がフィルにお酌して、フィルのコップにはしれっとジュースに注ごうとするが、じいちゃんは首を横に振る。
是非とも自分がお祝いしたい。
そうじいちゃん秘蔵の度数高めの酒を注いで……。
「フィルっち。取り敢えず、それはもう18の俺が飲むから渡そうか」
「いや、大王自ら注いだのだ。断る訳には…」
「断って良いんだよっ。ねぇ!? 断って良いんだって!!」
何処までも真面目に真面目を重ねたフィルは神妙な面持ちでグイッと一気にコップの中のお酒を一滴も残さずに飲み干した。
案の定。まだお酒に一切の耐性ないフィルは度数高めの酒にすぐ顔を真っ赤にして、目を回した。
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※この物語はフィクションです。
未成年にお酒を勧めるのはやめましょう。
ダメ。絶対。
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