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終章 ロバ耳王子と16歳と約束と
18、大渦
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突如。響いた爆音に民衆はどよめき、混乱する。
むわりっとステージの近くから煙が上がり、それを誰かが、「火事だ!」と叫んだ瞬間、一斉に出口に向けて我先にと走り出した。
会場は阿鼻叫喚。
怒鳴る声や泣き叫ぶ声がこだまする。
シルビオと一緒に無闇に動かず、動向を伺っていたが、出口で詰まった人が溢れて、僕達までその渦の中へと飲み込む。
シルビオは身を挺して、僕を民衆の渦から守ろうとしたが、多勢に無勢。
ひとりの力では押し切れ返せず、徐々にシルビオの腕の中も狭くなっていく。
「シルビオ! ラニ王子!」
頭上から僕達を呼ぶ誰かの声が聞こえる。
はたと見上げると二階のバルコニー席から乗り出したジェルマンがこちらに手を伸ばしていた。
シルビオは僕を抱き上げると、ジェルマンの手を掴めと叫んだ。ジェルマンの手を掴むとジェルマンはバルコニーに僕を引き上げた。
「シルビオっ!!」
「ジェルマン、ラニを頼むっ」
ジェルマンに抱えられたままシルビオに手を伸ばしてたが、シルビオは人の波に流されていってしまった。
「シルビオッ!!!」
「ラニ王子。シルビオなら。大丈夫だ」
「ジェルマンっ。ジェルマン。一体何が起きているの?」
ジェルマンを呼ぶ声に振り返ると、自信に溢れていた翡翠の瞳に涙を浮かべて、少女のように震えてジェルマンに縋るラピュセル公爵がいた。
「母上…」
「怖い音がして…。みんな恐ろしい顔になって…」
今にもパニックを起こしそうにラピュセル侯爵はカタカタと震えている。
ジェルマンは「安全な所に。行きましょう」と声を掛けるが、「嫌…。嫌」と呟き、その場にへたり込む。
その姿を前にシルビオを追おうとする目をつむり、気持ちを奥底に追いやって、なるだけ優しくアン・ラピュセル公爵に笑い掛ける。
「大丈夫だよ。アンにはジェルマンと僕が付いてるよ。一緒なら怖くないよ」
そう震える手を握れば、アンはパチパチと目を瞬かせ、不安そうに僕の手を握る。
「ラニ王子も一緒なの?」
「うん。そうだよ。一緒だよ。アンは僕とジェルマンが守るからね。大船に乗ったつもりでドーンっと任せてよ!」
ねっ!と、ジェルマンに声を掛けると、フッと笑みを浮かべて、頷く。
ジェルマンは僕を下ろすとアンをエスコートして、僕はアンが不安にならないように手を握り、話し掛ける。
「この会場には。王族ようの。二階に隠し通路がある」
「そうなんだ。あっ、あそこだね。後もう少しで出口だからね」
「お家に帰れるの?」
「ああ」
「うんっ! もう少しだよ、アン。」
「ふふっ。名前で呼ばれるとお友達になれたみたいね」
「僕と友達はいや?」
「いいえ。嬉しいわ」
にこぉーと何時もどおりに笑顔を浮かべれば、アンの表情には余裕が少し戻ってきた。
「ありがとう。ラニ王子」
「いや、僕はただお喋りしているだけだから気にしないでね」
「恩にきる」
やっと、アンを隠し通路へと誘導して、シルビオが心配になって振り返った最中。
ファルハ人が達が通路を横切るのが見えた。
大きな布で何かを包み、ファルハ人の男2人で運び去るその姿を。
負傷者数千人。
幸いなことに死人は出なかった。
シルビオもボロボロだったけど、生きていて僕は思わず、泣きながら抱き着いて、シルビオの腕の中でわんわん泣いた。
大きな騒ぎだったのに、本当に誰も怪我人も死人も出なかった。
忽然とエレン・メローディアは姿を消した事を除いては。
むわりっとステージの近くから煙が上がり、それを誰かが、「火事だ!」と叫んだ瞬間、一斉に出口に向けて我先にと走り出した。
会場は阿鼻叫喚。
怒鳴る声や泣き叫ぶ声がこだまする。
シルビオと一緒に無闇に動かず、動向を伺っていたが、出口で詰まった人が溢れて、僕達までその渦の中へと飲み込む。
シルビオは身を挺して、僕を民衆の渦から守ろうとしたが、多勢に無勢。
ひとりの力では押し切れ返せず、徐々にシルビオの腕の中も狭くなっていく。
「シルビオ! ラニ王子!」
頭上から僕達を呼ぶ誰かの声が聞こえる。
はたと見上げると二階のバルコニー席から乗り出したジェルマンがこちらに手を伸ばしていた。
シルビオは僕を抱き上げると、ジェルマンの手を掴めと叫んだ。ジェルマンの手を掴むとジェルマンはバルコニーに僕を引き上げた。
「シルビオっ!!」
「ジェルマン、ラニを頼むっ」
ジェルマンに抱えられたままシルビオに手を伸ばしてたが、シルビオは人の波に流されていってしまった。
「シルビオッ!!!」
「ラニ王子。シルビオなら。大丈夫だ」
「ジェルマンっ。ジェルマン。一体何が起きているの?」
ジェルマンを呼ぶ声に振り返ると、自信に溢れていた翡翠の瞳に涙を浮かべて、少女のように震えてジェルマンに縋るラピュセル公爵がいた。
「母上…」
「怖い音がして…。みんな恐ろしい顔になって…」
今にもパニックを起こしそうにラピュセル侯爵はカタカタと震えている。
ジェルマンは「安全な所に。行きましょう」と声を掛けるが、「嫌…。嫌」と呟き、その場にへたり込む。
その姿を前にシルビオを追おうとする目をつむり、気持ちを奥底に追いやって、なるだけ優しくアン・ラピュセル公爵に笑い掛ける。
「大丈夫だよ。アンにはジェルマンと僕が付いてるよ。一緒なら怖くないよ」
そう震える手を握れば、アンはパチパチと目を瞬かせ、不安そうに僕の手を握る。
「ラニ王子も一緒なの?」
「うん。そうだよ。一緒だよ。アンは僕とジェルマンが守るからね。大船に乗ったつもりでドーンっと任せてよ!」
ねっ!と、ジェルマンに声を掛けると、フッと笑みを浮かべて、頷く。
ジェルマンは僕を下ろすとアンをエスコートして、僕はアンが不安にならないように手を握り、話し掛ける。
「この会場には。王族ようの。二階に隠し通路がある」
「そうなんだ。あっ、あそこだね。後もう少しで出口だからね」
「お家に帰れるの?」
「ああ」
「うんっ! もう少しだよ、アン。」
「ふふっ。名前で呼ばれるとお友達になれたみたいね」
「僕と友達はいや?」
「いいえ。嬉しいわ」
にこぉーと何時もどおりに笑顔を浮かべれば、アンの表情には余裕が少し戻ってきた。
「ありがとう。ラニ王子」
「いや、僕はただお喋りしているだけだから気にしないでね」
「恩にきる」
やっと、アンを隠し通路へと誘導して、シルビオが心配になって振り返った最中。
ファルハ人が達が通路を横切るのが見えた。
大きな布で何かを包み、ファルハ人の男2人で運び去るその姿を。
負傷者数千人。
幸いなことに死人は出なかった。
シルビオもボロボロだったけど、生きていて僕は思わず、泣きながら抱き着いて、シルビオの腕の中でわんわん泣いた。
大きな騒ぎだったのに、本当に誰も怪我人も死人も出なかった。
忽然とエレン・メローディアは姿を消した事を除いては。
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