王子様の耳はロバの耳 〜 留学先はblゲームの世界でした 〜

きっせつ

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終章 ロバ耳王子と16歳と約束と

20、ただ誠実な人なんだ

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      ※※ 注意 ※※

前半は別カプの絡みあり。
無理矢理。鬼畜。ヤンデレ。調教。監禁。洗脳。メス堕ち。
前半だけ何でもありのR指定高め。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


洗脳。マインドコントロール。
それは人の心を最も簡単に操ってしまう恐ろしい技。
それを初めて知ったのは3年生の秋のこと。

今までひとりだけ3日休んでいたリュビオの休みが4日になり、4日から5日、5日から6日と増え、ついには学園に来なくなった。

これはまずいと僕とフィルはゾッとして、みんなでリュビオの安否確認をしようと、乗り出した(尚、シルビオは止めておこう。と最後まで渋った)。


フィルのお兄さん、第一皇子ユーリウスはその1ヶ月前に王族位を返還して、最北にある寒冷地帯をグラース公爵として治めている。

夏は涼しく避暑地として人気だが、冬は極寒で全てが雪に閉ざされるグラース領。

雪に閉ざされたらもう逃げられない。
まだ雪に閉ざされる前にリュビオを奪還しよう。
そう僕とフィル、ついでに面白そうという理由で付いてきたエリオットは意気込んで4日掛けてグラース領に乗り込んだ。


「寒いっ…。もう寒いっ! しんじゃうっ」

「ラニラニ…。なら、もう諦めて帰ろうか…」

「ラニ。少しの我慢だ。リュビオを奪還したら即帰ろう」

「フィルっち…。あの人の面倒臭さをフィルっちが一番理解してるのに、尚、助ける気なの?」

「流石に、流石に、卒業出来ないのは可哀想だろ…」

基本、シルビオは怖いが、意外とフィルの言葉には弱い。

しゅんっとするフィルを前にシルビオは言いたい事を全て、飲み込んだ。
絶対、僕が相手ならシルビオは問答無用で連れて帰っていただろう。



そして、僕らはついに魔王の城(正式にはグラース公爵邸)に乗り込んだ。

公爵の家なのに何故か一般家庭より少し大きいくらいの邸で使用人は2人しかいない。
その2人は僕達の訪問を拒絶しなかったが、歓迎もしなかった。

「やめた方が良いと思いますよ…」

そう死んだ魚の目で彼等は忠告し、会釈すると「私たちを巻き込むなよ」と言わんばかりの顔で去っていった。

「…あの従者達、感じが悪いな」

「どちらかというともう既に参ってるんじゃない? きっと毎日だろうし、心も疲弊してるんぢゃ」

「心が疲弊!? い、一体何が!!」

「なー。雲行きが怪しくなってきたから、俺、帰ってい?」

雲行きが怪しい。
僕等はさっさとリュビオを連れて帰ろうとリュビオの寝室らしき場所の前まできた。

その時の時刻は昼。
太陽はお空の中心で輝いている時間……なのだが…。


「ああんっ!! ンッ、あぁああっ!!!」

部屋の中から聞こえるリュビオの甘さを含んだ叫び声とギシギシ、パンパンッと聞こえる謎の音。
独特な匂いが扉を開けてなくても匂ってきて、僕は扉のドアノブに手を掛けようか迷った。


居る。確実にリュビオと魔王(ユーリウス・グラース公爵)がこの中に居る。

「ラニラニ。お取込み中だからもう帰ろうか。教育に良くない」

「ちょっと待って! だって、リュビオ、叫んでるよ!? 何か痛い事されてるんじゃ…」

「それは…その…だな。ラニ…」

「ラニラニ。帰ろうか。今すぐ帰ろう」

「やべぇ。娼婦でもこんな激しい声聞かないぞ。ラニ、これはセッ…」

「ちょっと、黙ってろ。エリオット・ルー」

あんなに一緒に助けようと息巻いていたフィルは顔を真っ赤にして、そっと逃げ道を確認して、シルビオは僕を連れて帰ろうとする。
2人の姿に俄然僕は不安になる。
一体、中で何が起きて……。

もう、乗り込もう。そうしようとドアノブを捻ろうとした時、甲高いリュビオの叫び声とともにリュビオが何か口走る。

「もうっ、や…。お腹……いっぱい。ぐすっ…。もう、はいんないっ」

ー お腹? こんな激しい音立てて食事??

「リュビィ…。こんなにぽっこりお腹が出るまで俺を受け止めて本当にお前はいい子だ。……だが、少し溢れてるな。もっと注いできちんと蓋をしないと」

「やだっ。やらぁ…」

「ダメだぞ、リュビィ。リュビィは俺の唯一のメスなのだぞ? いっぱい、注がないと孕まないではないか」

「孕みゅ?」

「そうだ。いっぱい毎日ここに溢れる程注ぎ込んで蓋をして、リュビィは孕むまでずっとずっとこの部屋から出られない。だが、孕んだら俺もリュビィをこの部屋から出してやれる」

はりゃんだら、じゆう?」

「ああ。孕んだら部屋から出してやる」

「じゃあ、じゃあ。ユーリの子を孕みゅ」

「ああ。俺の可愛いリュビィ。孕む程、ここにいっぱい注ごうな。永遠に」

「うん。いっぱい、いっぱいちょうだい。わたしをはやくはりゃませて」


それは世にも恐ろしい洗脳の瞬間だった。

僕らの知るリュビオは死んだんだ。
うん、そうだ。そうに違いない。

僕達は気温関係なく、全員ガクブルッと心の芯まで震え上がった。
アレは多分、人知を超えた何かだ。
ユーリウスは魔王ではなく大魔王だった。



そう洗脳は怖いのだ。
とても怖い。僕は知ってる。
だから、僕は気を抜かない。
絶対に気を抜かず、ラピュセル家から脱出してみせるのだ!





「ラニ様…」

「んんぅ…。後、後5分」

「うふふっ。それは先程も聞きましたよ。もう30分は経ってますよ」

ふわふわと意識が夢の中を漂う。
何時もの微笑みながら侍女さんが優しく起こす声が聞こえる。
でも、眠たい。とっても眠たい。

何よりここは気持ちいい。
ふわふわなものに囲まれて、肌触りのいいベッドと寝巻きが僕を眠りから離さない。

「おはようございます」

「おはよう。ラニ王子は。朝は弱いのか?」

「ええ。とても幸せそうに寝てるので何時も起こすのが可哀想で」

「そうか。確かに。愛らしい寝顔だ」

どうせ、フィルが僕を容赦なく叩き起こす。
だから、ギリギリまで粘るんだとブランケットを巻き込むが、クスクスと笑い声とともに頬を撫でられて、むずむずする。

擽ったくて、ふふふっと笑いを零しながら、頬を撫でる手を捕縛する。
これでもうイタズラ出来ないでしょ!

満足げに捕縛した手を抱き込むと、「グッ」と誰か苦しむ声が聞こえて、チュッと指先を何かが啄んだ。

「煽らないでくれ。我慢が利かなくなる」

ハッとその声に意識が夢の世界から現実に帰還すると、視界一面にギラギラと捕食者みたいな目で見るジェルマンの顔があった。

「にゃ"ーーーッ!!?」

ロバ耳なのに、猫のような奇声をあげ、猫のようなジャンプで後ろに飛び退く。

「@\%〆ッ!!? #々*7€!?」

「すまない。あまりに愛らしかったので。我慢できなかった」

「&→$!!! ○\2%^|\ッ!!!」

「だが。俺は。貴方の寝顔が見れて幸せだ。出来るなら生涯。隣で貴方の寝顔を見ていたい」

僕の言葉になってない叫びに、何故か言いたい事を全て理解して答える。
なんなら、理解した上で口説いてくる始末だ。


「ジェルマンさん。僕は……」

僕はリュビオの二の舞にはならない。
どう逃げようか。とスッと目を逸らし、貴方の気持ちには悪いが答えられないと、言おうとした瞬間、まるで縋るように手を握られてジェルマンを見た。

「3日だけ。この3日だけ俺の事を。きちんと見てほしい」

そう切実な顔で、必死な声で、懇願されて、ズキリッと胸が痛む。


本当にジェルマンは何故、僕の事なんて好きなのか?
別に僕程度の相手なら幾らでも転がっている。
それでも僕なんかが良いと、この人は2年間も好き続けてくれている。

「分かったよ。この2日間、僕は貴方の事を考える。考えて、どんな結果でも答えを出すから受け入れて欲しい」

「ありがとう。恩に切る」

そう微笑み、礼の言葉をこぼすジェルマンに罪悪感を抱きつつも、首を横に振る。

そもそも全てが中途半端だったんだ。
攻略対象という以外で僕がジェルマンを見た事がこの2年間であったか?
ほぼ逃げ腰で、まともに向き合った事なんて片手で数える事が出来る程しかない。…いや、もしかしたらぜろかもしれない。

「僕と後2日。お試しで付き合ってくれる?」

「願ってもない」

そう、こてんと首を傾げて、手を差し出すと、ジェルマンは僕の手を取り、はにかんだ。

ジェルマンは何時だって誠実に言葉と態度で好意を伝えてくれているだけだ。
なら、僕も逃げるのではなくて、真っ向から受け取って答えを出すべきだ。
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