王子様の耳はロバの耳 〜 留学先はblゲームの世界でした 〜

きっせつ

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終章 ロバ耳王子と16歳と約束と

22、鳶色の瞳のお姉さん

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何故、こうなったのか、分からない。
僕は振った責任を男らしく取ろうとしたんだ。

だって、男娼のお兄さんたちと違って、2年間も純粋に想いだけをぶつけて来てくれた。
確かに、まぁ、最後は誘拐(アン・ラピュセルの暴走)されたが、それでも、決して僕に何かを無理に強いる事はなかった。

僕に願ったのも自分を見て欲しいという細やかな願いで、たった2日の交際も苦ではなかった。
むしろ、デート内容が可愛らしくて、ジェルマンらしくて、つい笑みが溢れてしまうものばかりだった。


『あまり。気のある相手に情けをかけない方がいい。つけ込まれてしまう』

触れた唇は意外に柔らかくて、恋愛経験値が少ない僕にはそれだけで、ぶわりっと頭が沸騰した。

だって、殴られると思ってたんだもん。
痛みが来ると思うでしょ?
不意打ちにそんな事されたら、錯乱する。


「3日間。学園の内通者を捕縛する為にラニ王子を貴殿に預けたのですが?」

そのまま恥ずかしさのまま、どっかに走って逃げようとした僕を迎えにきたシルビオが捕縛して、なんかジェルマンと喋ってる。

「最後の我儘だから。見逃して欲しい。母には。きちんと言って聞かせる」

「当たり前です。その目的もあって貴方に3日も任せた」

「ああ。分かっている。……俺と結婚すれば。フィルと結婚せずとも。ラニ王子はレーヴに留まる。お前はそれでも。なしなのだな」

「…………」

「お前も難儀な奴だ。フィル以上に真面目過ぎて。見ていられない」

「……俺は騎士です。騎士は主人の為に、国の為にある」

「お前の最良案が。フィルとの婚約だった訳か」

「…………」

僕が今すぐ穴に入りたい。頼むから逃さしてくれと、バタバタとシルビオの肩の上で暴れていると、シルビオが僕を姫抱きの刑に処した。
僕。もう、色々と限界なんだって!!


文句を言おうとシルビオを見やるが、シルビオの優しい眼差しが僕を見つめていて、その眼差しを見た瞬間、少しだけホッとした。
少し心が落ち着くとシルビオが怪我人だった事を思い出して、大人しく腕の中に収まる。

大人しくなった僕を見て、シルビオは苦笑を溢して、「よっ」と僕がシルビオの首にぶら下がりやすいように抱き直す。

「いや…、降ろしてくれて良いんだよ?」

「うーん、却下」

「却下!?」

「ラニラニはお転婆が過ぎるからねー。きちんと手綱を握ってないと」

「え? 僕、暴れ馬扱い??」

「んー。まぁ、うん。冗談はさておき」

半分くらい冗談だと思ってないよね? それと、ムゥッと膨れつつも、しょうがないので首にぶら下がる。

「帰ろうか、ラニラニ。音楽祭の事件の主犯から匿ってくれてたジェルマンにきちんとお礼を言おうねー」

「ん? 匿ってくれた?? …え? ちょっと待って。僕何も聞いてない」

「お礼など。要らない。ほぼ。母の我儘に過ぎない」

「まーね。でも、学園に主犯がいたから、ラニラニにまで危害が及ばなくて結果オーライかな?」

「え? 僕、匿ってくれた相手を思いっきり振ったの?」

途轍もなく知るには遅すぎる事実に僕は頭を抱えた。


どうやら音楽祭の騒動は、やはりファルハ人の仕業で首謀者は学園内に居たらしい。

鳶色の瞳に栗色の髪の令嬢。
彼女は今、騎士団屯所で尋問を受けているらしい。

あの2年前に、首脳会議のお祭りで僕を拐おうとしたお姉さんが…。







やっと学園の寮に戻ると、シルビオはお姉さんの尋問に立ち会わなければいけないと、僕をエリオットに預けて、屯所に戻った。

フィルもお姉さんの尋問に立ち会うらしく寮には帰っておらず、久々に部屋の中でひとりになった。
一応、エリオットが部屋の外には立ってるが、なんだか事態がヤバいらしいからきちんと今日は騎士の仕事を全うするらしいので、本当に暇なのは僕ひとり。

だからこそ、考えてしまう。
あのお姉さんが本当に大人しく捕まったのか。
お姉さんがエレンを拐ったのか。
物語はバッドエンドに突き進んでしまっているのか。

「教えてよ。眼鏡先輩」

ポスンッとベッドに横たわり、分からない答えを求めて、怒っていなくなってしまったグルグル眼鏡先輩を呼ぶ。


「しょうがないですね。教えてあげますよ」

返って来ない筈の返事が鼓膜を揺らす。
夜風がぶわりっと窓から入り込み、窓枠に誰かの人影が舞い降りる。

部屋の明かりに照らされて、人影はグルグル眼鏡先輩へと姿を変えた。
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