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終章 ロバ耳王子と16歳と約束と
32、君を失うまでの物語(???視点)
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「おはよう。ライ」
まだ眠そうなとろんとした顔でふふふっと嬉しそうにラニが少年に身を寄せる。
ラニの突拍子もない行動で、結局、少年は任務に行けなかった。
ラニの中ではもう少年とラニは結婚したそうだ。
本人曰く、「誓いのちゅーしたら夫婦」だそうで、何故か少年がラニのお嫁さん役らしい。
目が完全に覚めるとラニは真っ先に自身の両親に結婚の報告した。
これには流石にこの両親も暗殺者との結婚は許さないだろうと思ったが、ラニの両親は何処までも緩かった。
「まぁ、ライくんがラニをお嫁さんに貰ってくれるのー? 素敵ねぇ、アナタ!!」
「ライがお嫁さんだよ!?」
「そうだね。ライくん、しっかりしてそうだし、きっといいお婿さんになるよ」
「ねぇ!? ライが僕のお嫁さんなんだって」
「あらあらぁー、そうなるとラニに花嫁修行させないとダメかしらー?」
「もうっ! 僕がお婿さんだもん。僕がライを養うんだもんっ! お魚釣って、お腹いっぱい食べさせてあげるんだもんっ!!」
ラニの結婚報告はめげずに続く。
少年と手を引いて自身の伯父さん達や従兄弟にも少年を自身のお嫁さんだと紹介し続けた。
「ラニちゃんお嫁に行くんだー」
「違うって、ライがお嫁に来るの!」
「ラニがお嫁さんだろ?」
「なんでみんな揃って僕がお嫁に行く感じなの!? 僕がお婿さ…」
「ははっ。まぁまぁ。ほーら、フルーツあるぞー。欲しい人は伯父さんのお膝においで」
「え? 欲しい!」
「可愛いなぁー、ラニは」
自身が嫁に取るんだと憤慨していたラニだが、フルーツに釣られて、少年から手を離し、伯父さんの膝にちょこんと座る。
伯父さんに撫でられて幸せそうに微笑むラニを見て、ざわりっと少年の胸の辺りが騒つく。
「うにゃ!? どうしたの。ライ?」
気付けば、伯父さんの上に座り、ラニの手を掴み、伯父さんから引っ剥がしていた。
「…………」
「ライ?」
「あははっ。嫉妬か。なんだ。ごっこ遊びかと思ったが、本気だったのかー」
ラニを膝に乗せていた伯父さんは自身の行動に困惑する少年を見て、「まぁまぁ、睨むなって」と愉快そうに笑う。
ー 嫉妬?
ギュッとラニが離れないように抱き上げる。ラニが手に持つ、伯父さんからもらったフルーツが目に入り、それが忌々しく見えて、ラニの手ごとパクリッと食べる。
手ごとパクリッと食べられて、ラニはびっくりする。
フルーツだけなくなって帰ってきた自身の手を見て、首を傾げて少年を見つめる。
「フルーツ食べたかったの?」
「ははっ。違う違う。ラニ、暗殺者の兄ちゃんは自分のお嫁さんが他の男に触れられるのが、嫌なんだってさー」
「お嫁さんは他の男に触れられちゃダメなの?」
「そうだなー。そのお兄ちゃんは独占欲が強いみたいだから伯父さんでも嫌なんだろうな」
「独占欲?」
「誰にも取られたくないくらい好きって事さ」
「好き……」
ー 好き?
腕の中のラニの頰がバラ色に染まる。
恥ずかしそうに微笑み、少年の頰にラニの手が触れる。
「えへへっ。ぼ、僕もライの事好きだよ。最初海で会った時にライの夕陽みたいな瞳が綺麗だなって、思ったの。ライはおねんね嫌いですぐ消えて、ちょっと困ったけど、僕が探すと出てきてくれるし。夜のトイレもついてきてくれるくらい優しいから。優しいライが僕、好きなんだよ?」
照れながら小声で恥ずかしそうに告白するラニに少年は目を丸くした。
あんなにも大胆に自分をあげると、結婚すると、恥ずかしげもなくキスをしたのに腕の中で恥ずかしがるラニの姿に胸の辺りがギュッとする。
おそらく、ラニの好きは恋愛に満たないものだった。
自分をあげる。結婚しようと言って実行したのも少年が死ぬのが単純に嫌だったから。離れられるのが寂しかったから。
それを繋ぎ止めるために出した幼いラニの答えが結婚だっただけだろう。
「ぼ、僕。お魚釣ってくるっ! 僕はお婿さんだからね。お嫁さんのライにお魚をいっぱい食べさせてあげるの。後、お料理もして、お掃除もしなきゃ!」
恥ずかしいのが限界に達したのか。
ラニははははっと誤魔化し笑いを浮かべながらぴょんっと少年の腕から飛び降りる。
「ライは伯父さん達とそこで待っててね」
顔を真っ赤に染めて、そう走り去っていく姿を少年はラニが見えなくなるまで目で追い続けた。
「こりゃ、重症だな」
「いや、重症もなにも。この兄ちゃんは最初からずっと、俺たちがラニに話し掛けると嫌そうな顔してたしなぁ」
「今更か」
少年は気付いてなかった。
自身がラニと関わり始めてから、どんな顔をしていたのか。
今、自分がどんな顔をしているのかを。
何故。最初からラニを振り切って、任務を遂行しなかったのかも、まだこの時、分かっていなかった。
そして、少年は自身が任務を遂行しなかった事を一生後悔する事を、この時はまだ知らない。
「ファルハ王が目覚めた!」
そう誰かの叫び声が、賑やかだったモアナの広場に響き渡り、突如、騒然とする。
事態は少年が自身の気持ちを理解する間もなく、一変する。
「王宮で暴れてるっ!」
それは同盟国内でも広まる大事件。
ラニが歌えなくなる原因になった忌々しい事件。
これは少年がラニと出会い《ラニ》を失うまでの物語だ。
まだ眠そうなとろんとした顔でふふふっと嬉しそうにラニが少年に身を寄せる。
ラニの突拍子もない行動で、結局、少年は任務に行けなかった。
ラニの中ではもう少年とラニは結婚したそうだ。
本人曰く、「誓いのちゅーしたら夫婦」だそうで、何故か少年がラニのお嫁さん役らしい。
目が完全に覚めるとラニは真っ先に自身の両親に結婚の報告した。
これには流石にこの両親も暗殺者との結婚は許さないだろうと思ったが、ラニの両親は何処までも緩かった。
「まぁ、ライくんがラニをお嫁さんに貰ってくれるのー? 素敵ねぇ、アナタ!!」
「ライがお嫁さんだよ!?」
「そうだね。ライくん、しっかりしてそうだし、きっといいお婿さんになるよ」
「ねぇ!? ライが僕のお嫁さんなんだって」
「あらあらぁー、そうなるとラニに花嫁修行させないとダメかしらー?」
「もうっ! 僕がお婿さんだもん。僕がライを養うんだもんっ! お魚釣って、お腹いっぱい食べさせてあげるんだもんっ!!」
ラニの結婚報告はめげずに続く。
少年と手を引いて自身の伯父さん達や従兄弟にも少年を自身のお嫁さんだと紹介し続けた。
「ラニちゃんお嫁に行くんだー」
「違うって、ライがお嫁に来るの!」
「ラニがお嫁さんだろ?」
「なんでみんな揃って僕がお嫁に行く感じなの!? 僕がお婿さ…」
「ははっ。まぁまぁ。ほーら、フルーツあるぞー。欲しい人は伯父さんのお膝においで」
「え? 欲しい!」
「可愛いなぁー、ラニは」
自身が嫁に取るんだと憤慨していたラニだが、フルーツに釣られて、少年から手を離し、伯父さんの膝にちょこんと座る。
伯父さんに撫でられて幸せそうに微笑むラニを見て、ざわりっと少年の胸の辺りが騒つく。
「うにゃ!? どうしたの。ライ?」
気付けば、伯父さんの上に座り、ラニの手を掴み、伯父さんから引っ剥がしていた。
「…………」
「ライ?」
「あははっ。嫉妬か。なんだ。ごっこ遊びかと思ったが、本気だったのかー」
ラニを膝に乗せていた伯父さんは自身の行動に困惑する少年を見て、「まぁまぁ、睨むなって」と愉快そうに笑う。
ー 嫉妬?
ギュッとラニが離れないように抱き上げる。ラニが手に持つ、伯父さんからもらったフルーツが目に入り、それが忌々しく見えて、ラニの手ごとパクリッと食べる。
手ごとパクリッと食べられて、ラニはびっくりする。
フルーツだけなくなって帰ってきた自身の手を見て、首を傾げて少年を見つめる。
「フルーツ食べたかったの?」
「ははっ。違う違う。ラニ、暗殺者の兄ちゃんは自分のお嫁さんが他の男に触れられるのが、嫌なんだってさー」
「お嫁さんは他の男に触れられちゃダメなの?」
「そうだなー。そのお兄ちゃんは独占欲が強いみたいだから伯父さんでも嫌なんだろうな」
「独占欲?」
「誰にも取られたくないくらい好きって事さ」
「好き……」
ー 好き?
腕の中のラニの頰がバラ色に染まる。
恥ずかしそうに微笑み、少年の頰にラニの手が触れる。
「えへへっ。ぼ、僕もライの事好きだよ。最初海で会った時にライの夕陽みたいな瞳が綺麗だなって、思ったの。ライはおねんね嫌いですぐ消えて、ちょっと困ったけど、僕が探すと出てきてくれるし。夜のトイレもついてきてくれるくらい優しいから。優しいライが僕、好きなんだよ?」
照れながら小声で恥ずかしそうに告白するラニに少年は目を丸くした。
あんなにも大胆に自分をあげると、結婚すると、恥ずかしげもなくキスをしたのに腕の中で恥ずかしがるラニの姿に胸の辺りがギュッとする。
おそらく、ラニの好きは恋愛に満たないものだった。
自分をあげる。結婚しようと言って実行したのも少年が死ぬのが単純に嫌だったから。離れられるのが寂しかったから。
それを繋ぎ止めるために出した幼いラニの答えが結婚だっただけだろう。
「ぼ、僕。お魚釣ってくるっ! 僕はお婿さんだからね。お嫁さんのライにお魚をいっぱい食べさせてあげるの。後、お料理もして、お掃除もしなきゃ!」
恥ずかしいのが限界に達したのか。
ラニははははっと誤魔化し笑いを浮かべながらぴょんっと少年の腕から飛び降りる。
「ライは伯父さん達とそこで待っててね」
顔を真っ赤に染めて、そう走り去っていく姿を少年はラニが見えなくなるまで目で追い続けた。
「こりゃ、重症だな」
「いや、重症もなにも。この兄ちゃんは最初からずっと、俺たちがラニに話し掛けると嫌そうな顔してたしなぁ」
「今更か」
少年は気付いてなかった。
自身がラニと関わり始めてから、どんな顔をしていたのか。
今、自分がどんな顔をしているのかを。
何故。最初からラニを振り切って、任務を遂行しなかったのかも、まだこの時、分かっていなかった。
そして、少年は自身が任務を遂行しなかった事を一生後悔する事を、この時はまだ知らない。
「ファルハ王が目覚めた!」
そう誰かの叫び声が、賑やかだったモアナの広場に響き渡り、突如、騒然とする。
事態は少年が自身の気持ちを理解する間もなく、一変する。
「王宮で暴れてるっ!」
それは同盟国内でも広まる大事件。
ラニが歌えなくなる原因になった忌々しい事件。
これは少年がラニと出会い《ラニ》を失うまでの物語だ。
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