【完結】妹が欲しがるならなんでもあげて令嬢生活を満喫します。それが婚約者の王子でもいいですよ。だって…

西東友一

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 呪いの赤いブローチ。 

 ハンス王子に恨みを持った商人が、ハンス王子に寄贈した品。
 王子として、お金があり、優秀な人材がこの国には多くいるのだから、自分が身に着けるか、大切な人に送る前には必ず鑑定士に見てもらうのが貴族以上では当たり前の作法。
 なのに、あのハンス王子はそんな当たり前のことすらせずに、私に贈ってきたのだ。

 私もあまりに当たり前のことだったし、呪いがあるがゆえなのか、そのとても魅力的なブローチを思わず油断して着けてしまったが最後。今日と言う日まで、どうしよう、どうしようと心配していたところだったのだ。だけれども、妹のメアリーが取ってくれたので所有者が変わった。

(ごめんなさいね・・・メアリー。呪いのせいで私はその呪いに付いて言えないの)

 私もお礼にメアリーにそのことを伝えたかったけれど、呪いでそのことは伝えられない。言おうとすると喉が詰まってしまうのだ。書くこともジェスチャーもできない。

 そんな強力な呪いなら、そこらへんのエセ鑑定士だって分かるに違いない。
 だから、ハンス王子が鑑定してもらっていなかったことは事実でしかない。

 まぁ、呪いが発動したら、お金は物凄くかかるだろうけれど、祈祷師に解除してもらえばいい。呪いは発動してからであれば解除はできるのだ。
 それでも、3年くらいはかかるだろうから、6歳は歳を取ってしまい、肉体は私を超えてしまう。
 上手く使えば、精神年齢も成長できるはずらしいけれど、メアリーの性格では・・・多く見積もっても、成長は0に違いない。下手すれば、もっと悪化するだろう。

「本当にあの子はいい妹だわ、メアリー」

 昔から鬱陶しくてかなわないメアリーだったけれど、唯一の特技がある。
 それは、ピークを過ぎたもの・すぐに過ぎそうなものを欲しがるのだ。

(ということは・・・ハンス王子も・・・・・・っ)

 私自身予感はしていたけれど、どうやら妹の嗅覚を考えれば間違いなさそうだ。
 とはいえ、自分の目で確かめないといけないとも思ったし、呪いのブローチとは違って何かができるかもしれない。仮にも私を育んでくれたこの国の王子。安静な日々を送るには彼が没落しないことが重要だ。

「でも、あんなお気楽で、能天気な王子よりも、優秀な王子に代わった方がいいかも・・・・・・なんて、私ったらはしたない。くわばら、くわばら」

 私は手をこすり合わせながら、自分の屋敷を出て、ハンス王子のところへと向かった。
 
(まぁ、嘘の場合もないこともないし・・・)
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