【完結】妹が欲しがるならなんでもあげて令嬢生活を満喫します。それが婚約者の王子でもいいですよ。だって…

西東友一

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「アリス、お前とは婚約破棄だ」

 出会って5秒で、ハンス王子は偉そうに私のそう告げた。

「うっ・・・ごほんっ。えーっとだな、その・・・」

 ただ、私が妹のメアリーの話を聞いていたからか、目つきがきつかったのでしょう。私がハンス王子を見ていると、彼はすぐにきょどりだしました。

(うん、クロ。まーックロ。それも、とてもきったない黒すら嫌がるクロっ)

「ハンス王子。悲しいけれど、承知いたしました。お世話になりました」

 私はハンス王子の道化っぷりを見て理解したので、彼が言うであろう穴だらけの理屈を聞きたくも無かったし、その滑稽さも醜いし、見ているだけで不快でしたのでそのまま去ろうとしました」

「なんだ、その目は」

「はい?」

 ハンス王子は私の目を見て、恐怖と怒りを向けて来た。私はただ愛想笑いをしている顔をしているのに、どうしたことでしょう。

「お前も・・・弟グリフィスと同じ目をするのかっ!!!」

「弟?」

 そう言えば聞いたことがある。
 ハンス王子には腹違いの弟がいると言うことを。
 その弟は優秀だったけれど、ハンス王子のお母様がその才能を恐れ、王様を誑かし、無実の罪を着せて、放浪の旅に出させたとかいう話もあれば、地下牢で監禁していると言う話、殺してしまったとう話まであった気がする。

「俺を馬鹿にしている目だ・・・」

「いえいえ、めっそうも・・・」

「あいつもそう言っていたっ!!!」

 困ったことに、弟のグリフィス様と気が合うようで、同じような行動を無意識にとってしまったみたいです。

(ちょっと、グリフィス様にお会いしたいけれど・・・まぁ、無理よね)

 世界は広い。
 もしかしたら、死んでいるかもしれない。
 そんな人にこのまま令嬢としてこの国で安静に暮らそうとしてる私が・・・。

「王子、そう言えば、大臣たちは?」

 今に気づくと、私が知っているような優秀そうな大臣たちがいない。
 まぁ、はっきり言って、あの呪いのブローチを私に渡す前に止められなかった人たちなんて、優秀じゃないと思ってますけど。聞く耳をほとんど持たない王子に仕えて、できる範囲は少ないけれど、一生懸命国のために働いていた人たちだ。そんな人たちがこの場にいない。

「ふんっ、あんな使えない奴らはクビにしたっ!!」

(あぁ・・・妹の見る目は本当に正しいわね・・・)

「だいたい、あいつらはうるさいんだ、まったく、まったく・・・っ」

 イライラしながら、右へ左へと歩くハンス王子は滑稽だった。
 というか、妹のメアリーのように同じ言葉を繰り返しているのが、見ていられなかった。
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