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14.潤う兆し
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「お時間をください」
ミシェルは王座の間で、深々とマハラジャに頭を下げた。
「・・・・・・」
「マハラジャ様」
執事のミライオがマハラジャを促す。
(わかっている・・・)
マハラジャは悩んだ。ミシェルが「必ずや、雨乞いを成功させてみせます」と言いに来たのだ。マハラジャやガラハラ王国の人々にとって願ってもない言葉。心が熱くならずにはいられなかったが、その小さな背中で何もかも背負い込もうとするミシェルのことが心配だった。
「決して・・・無理をしたり、自分を傷つけないと約束できますか?」
マハラジャは王なのに何もできない歯がゆさを感じながらも、ミシェルに尋ねた。
「はいっ」
けれど、マハラジャの杞憂はミシェルの満面の笑顔で吹き飛んだ。ミシェルが来たことで、曇りきっていたマハラジャの心は晴れ間が見えていたが、そのミシェルの笑顔で、このガラハラ王国の晴天のように曇りが全て吹き飛んだ。マハラジャは王座から降り、ミシェルの前で跪き、
「ありがとうございます」
と頭を下げた。
「では、さっそく取り掛かりますね」
そう言って、ミシェルは自室へと急いで向かった。
「御変わりになられましたね・・・」
ミライオがマハラジャの傍にきて、軽くなったミシェルの背中を見てそう呟く。
「ミライオ、蓄えの水を国民皆に配るぞ」
「絞った方が・・・よいのでは? 土地にしても元々育ちの悪い場所もございます。さらに言えば、食糧難。自力で生きられない者を抱える余裕は我が国には・・・」
「足元を見られてもいい。他国からも水を集めよ」
「ですが・・・」
「僕は・・・ミシェルを信じたい。これが、僕の誠意なんだ」
「心中は・・・愚策かと思いますが・・・」
ミライオはマハラジャの目を見た。マハラジャは優しい性格で温和な瞳をしていたけれど、その時はとても力強い目をしていた。
「わかりました・・・早速手配します」
ミライオはマハラジャの強い意志に従った。
(ですが、もしもの時は・・・いや、今は考えまい)
ミライオは自分が汚れ役になっても、この国を守ろうと思った。しかし、
(老体には厳しいガラハラの太陽も、眩しい若者の輝きもいい加減嫌だと思って老いを感じておりましたが・・・)
枯れ切ったミライオの心。けれど、エバーガーデニア王国で見た久しぶりの雨を思い出し、そんな幸せの国で泣いていたミシェルのことを思い出したら、心が少しだけ潤いが戻った。
ミシェルが祈祷を始めるかまだ始めていないかの頃。ガラハラ王国の空に誰も気づかないような薄っすらとした雲が浮かんだ。
誰も気づいていないのだから、それが吉兆なのか、凶兆なのかも誰も分からなかった。
ミシェルは王座の間で、深々とマハラジャに頭を下げた。
「・・・・・・」
「マハラジャ様」
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(わかっている・・・)
マハラジャは悩んだ。ミシェルが「必ずや、雨乞いを成功させてみせます」と言いに来たのだ。マハラジャやガラハラ王国の人々にとって願ってもない言葉。心が熱くならずにはいられなかったが、その小さな背中で何もかも背負い込もうとするミシェルのことが心配だった。
「決して・・・無理をしたり、自分を傷つけないと約束できますか?」
マハラジャは王なのに何もできない歯がゆさを感じながらも、ミシェルに尋ねた。
「はいっ」
けれど、マハラジャの杞憂はミシェルの満面の笑顔で吹き飛んだ。ミシェルが来たことで、曇りきっていたマハラジャの心は晴れ間が見えていたが、そのミシェルの笑顔で、このガラハラ王国の晴天のように曇りが全て吹き飛んだ。マハラジャは王座から降り、ミシェルの前で跪き、
「ありがとうございます」
と頭を下げた。
「では、さっそく取り掛かりますね」
そう言って、ミシェルは自室へと急いで向かった。
「御変わりになられましたね・・・」
ミライオがマハラジャの傍にきて、軽くなったミシェルの背中を見てそう呟く。
「ミライオ、蓄えの水を国民皆に配るぞ」
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「足元を見られてもいい。他国からも水を集めよ」
「ですが・・・」
「僕は・・・ミシェルを信じたい。これが、僕の誠意なんだ」
「心中は・・・愚策かと思いますが・・・」
ミライオはマハラジャの目を見た。マハラジャは優しい性格で温和な瞳をしていたけれど、その時はとても力強い目をしていた。
「わかりました・・・早速手配します」
ミライオはマハラジャの強い意志に従った。
(ですが、もしもの時は・・・いや、今は考えまい)
ミライオは自分が汚れ役になっても、この国を守ろうと思った。しかし、
(老体には厳しいガラハラの太陽も、眩しい若者の輝きもいい加減嫌だと思って老いを感じておりましたが・・・)
枯れ切ったミライオの心。けれど、エバーガーデニア王国で見た久しぶりの雨を思い出し、そんな幸せの国で泣いていたミシェルのことを思い出したら、心が少しだけ潤いが戻った。
ミシェルが祈祷を始めるかまだ始めていないかの頃。ガラハラ王国の空に誰も気づかないような薄っすらとした雲が浮かんだ。
誰も気づいていないのだから、それが吉兆なのか、凶兆なのかも誰も分からなかった。
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