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私にできること

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 物語を思い出してから5日経った

 ジーク様とリアトリスの仲を深めるために手を尽くすと決めたものの、具体的に何をするのかは何も決めていない。今はちょうど1年目の夏の長期休暇中で家にいるが、あと3日ほどで学園に戻ることになる。それまでに戻ってからのことを考えておかなければならない

 まず、物語のことを思い出してみる

 舞台は私が今通っている学園で、ヒロインが入学してきた時点で始まる。
 ジーク様とは学園内で迷子になっているところを助けてもらう、それが出会いだ
 そのあと、生徒会は成績順で選ばれるため優秀なヒロインは副会長がジーク様である生徒会に入ることになり、日常生活や夜会などで関わることが増え、仲を深めていくのだ
 そして、最後にあのエミリアの断罪シーンが終わった後に将来を誓い合ってハッピーエンドだ

 私の役目はヒロインをいじめること。
 最初は罵る程度だったのだが、ジーク様とヒロインの関わりが増え、自分からどんどん離れていくのに耐えられなくなったためにどんどん行動はエスカレートして行き、水をかけたり、頑張ってヒロインが自分で作ったり攻略対象の誰かにもらったドレスにジュースをかけたり、階段から突き落としたりなどをしてヒロインの邪魔をするのだ
 だが、私は気づかなかった。その行動が逆にジーク様とヒロインの仲を発展させるきっかけになると。

 ーーじゃあ、私はリアトリスを虐めればいいの?本来の流れ通り

 いいえ、それはダメだわ。と冷静になった今ならわかる。虐めること自体もダメだけれど、それ以上にお父様のお顔を汚してしまうことになる。
 昔から愛を持って厳しく育ててくださったお父様。昔は、ずっと私を愛しておらず、ただ我がヴァンガー家の駒にするためだけに厳しく育てられているのだと思っていた。
 けど、今ならわかる。お父様は私を愛してくださっている。ここ3日間も物語のショックで引きこもっていたのだが、心配してくれていたみたいだ。少しわかりづらいけど
 だから、私はそんなお父様の邪魔になってしまうような行為をするわけにはいかない
 それにお父様だけでなく、婚約者であるジーク様のお顔にも泥を塗ってしまうのだ。それだけは、絶対にしたくない
 幸い、物語でいえば今はまだ始まったばかりで、私はリアトリスに暴言を吐き始めたところ。人にも見られてもいない。間に合ってよかったと思う。暴言を吐くことが許されることというわけではないけれど、まだ私が物語の中ですることのなかではマシな方だろう。

 家にもジーク様にも迷惑をかけず、2人の仲を深めることができる方法…ダメだわ、何も思いつかない

 ああ、そういえば、この長期休暇の間にもジーク様とリアトリスの仲を深める出来事があったはずだ。
 確か、ジーク様が街に出かけた時にたまたまリアトリスと会い、一緒に店を周るというものだったはずだ。

 ーージーク様はなぜ街に出かけたのだったかしら?…思い出せないわね

 ただ、今日までに起こったことなのか、残りの3日間の間に起こることなのか、もしくは今現在起こっていることなのか。それはわからないけれど、2人が一緒に歩いて、笑いあっているところを考えただけで、泣きそうになる。胸が締め付けられたように痛む。息が、苦しい。

 ーーなぜ、なぜなの。なぜ、私はこんなにも愛しているというのに、貴方は私を愛してくださらないの。

 自分の中にいる醜い私が、そう訴える。
 わかっている、私が愛されない理由なんて。私の未来を知った時点で、わかってしまった。

 思い出さなければ、やってきたであろう未来。
 思い出して愛されるよう頑張っても、きっと、絶対、愛されない現実。

 全て私の自業自得。全ては私のわがままのせい。

 それをわかっていて、愛されたいとどこかで願ってしまう私は、醜い。

 ーー愛されないとわかっているから振られるその時までとなりで歩くことを願ったというのに、それ以上のことを望んでしまう私は、とてもわがままね。

 醜い私は振られて当然。
 優しくて明るく、人を惹きつける魅力のある彼女は幸せになる資格がある

 だから、彼女とあの人は幸せにならなければならない。それがこの世界の法則

 2人が幸せになるまで、私のなかの醜い私には蓋をしよう。
 私は、2人の幸せのためだけに存在する、道具なのだから。

 だから、2人の邪魔にならないよう、ジーク様には必要最低限しか話さないようにしよう。リアトリスと一緒にいても無視しよう。
 醜い私の蓋が、開いてしまわないように。



 きっとそれが、今の私にできることだから。
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