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出会い
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その日、夢を見た。
私はいつもより低い目線で、心なしかいつもより綺麗に見える王宮の中を歩いている
私の少し後ろではサリーが付いて来ており、周りは私より高い草や花で囲まれていた
もともと作られている一本道をキョロキョロと視線を彷徨わせながら歩く。何度か曲がったりしながら進んでいくと、大きな広場に出た
地面には芝生が生えていて所々に一段のレンガで囲まれた薔薇たちが咲いていた。広場の周りは円を描くように緑の葉で覆われている
その中に従者を1人つけた少年がしゃがみ薔薇を眺めているのが目に入った
その少年は金の髪と青の瞳を持った理想の王子様のような子
ーー彼はきっと、私の運命の人なんだわ。
横顔でもわかるとても整った顔の王子様。そんな人とお花畑で少女は運命の出会いをする。そういう物語を最近読んだばかりの私はそう思った
彼に一目惚れした私は、王子と運命の恋をする物語の主人公になったのだと信じて疑わなかった
あの人の瞳に映りたい。そう思い彼のそばへ近寄ると同じようにしゃがみ、まだ上手く呂律の回らない口を動かした
「ごきげんよう、わたしはエミリア=ヴァンガーというの。あなたのおなまえは?」
私が話しかければ、彼は薔薇から私へと視線を移した
ーー綺麗な青空の色をした、宝石みたい
幼い自分の顔が映った瞳に私は釘付けになった
彼は少しの間私の顔をジッと見つめたあと、立ち上がるとその見た目とそぐわないお辞儀を天使のような笑顔を浮かべながらした
「僕の名前はジーク=ヴィクラム。以後お見知り置きを、エミリア様」
私はその姿に見惚れて一瞬上手く頭が働かなかった
すぐに我に帰ると、ジーク=ヴィクラムと名乗っていたことを思い出しはっとした
ジーク=ヴィクラムといえば、この国の第二王子だ。社交界デビューをするほどの年齢に満ていないとはいえ、私は公爵令嬢だ。あまり王子に対して良い態度でほなかったことに気づいたのだ
「も、もうしわけありません、ジークでんか。しつれいなたいどをとってしまいました」
慌てて立ち上がり礼をすると、優しい声が聞こえた
「気にしないで。初対面なんだから気づかなくても仕方がないよ」
顔をあげて彼の顔を見てみれば優しい微笑みを浮かべていた
王子だから優しいのは当たり前なのだろう。その優しさも微笑みも自分だけに向けられるものではないともわかっている。
それでも、私は思った
ーーこの人は、私のものだ。絶対に、誰かにわたしたりしない
そこで夢は終わった。
あれは、私が4歳のときの記憶。
その日、父に連れられ王宮に来ていた。
『陛下とお話しをするからこの先にある場所で遊んでいて』
王宮に着くと父からそう告げられ私は黙ってうなづいた。父に言われた通りの場所へ行くと夢で見た通り彼がいたのだ。その後日、殿下と婚約が決まったことを知らされた。
当時は分からなかったけど、あれは嵌められたのだ。殿下は知らないけれど、少なくとも私が彼とあのような出会い方をすれば好きになるに違いないと考えたのだろう
私は心臓が痛むのを感じた
あの日、私は彼を絶対に誰にも渡したくないと思ったのだ。その目に私だけを映してほしいと。
その気持ちは今でも変わらない。彼が私以外の女性を好きになる未来など潰したいと思う
ーーでもそれ以上に、悲しませたくない。笑っていて欲しい。人生が幸せだと思っていて欲しい。
矛盾している。
その目に誰も映して欲しくないのに、その手助けをしようとしている。
私は両手を握った。大丈夫だと。
私のこの選択は、願いは、間違ってなどいない
私はいつもより低い目線で、心なしかいつもより綺麗に見える王宮の中を歩いている
私の少し後ろではサリーが付いて来ており、周りは私より高い草や花で囲まれていた
もともと作られている一本道をキョロキョロと視線を彷徨わせながら歩く。何度か曲がったりしながら進んでいくと、大きな広場に出た
地面には芝生が生えていて所々に一段のレンガで囲まれた薔薇たちが咲いていた。広場の周りは円を描くように緑の葉で覆われている
その中に従者を1人つけた少年がしゃがみ薔薇を眺めているのが目に入った
その少年は金の髪と青の瞳を持った理想の王子様のような子
ーー彼はきっと、私の運命の人なんだわ。
横顔でもわかるとても整った顔の王子様。そんな人とお花畑で少女は運命の出会いをする。そういう物語を最近読んだばかりの私はそう思った
彼に一目惚れした私は、王子と運命の恋をする物語の主人公になったのだと信じて疑わなかった
あの人の瞳に映りたい。そう思い彼のそばへ近寄ると同じようにしゃがみ、まだ上手く呂律の回らない口を動かした
「ごきげんよう、わたしはエミリア=ヴァンガーというの。あなたのおなまえは?」
私が話しかければ、彼は薔薇から私へと視線を移した
ーー綺麗な青空の色をした、宝石みたい
幼い自分の顔が映った瞳に私は釘付けになった
彼は少しの間私の顔をジッと見つめたあと、立ち上がるとその見た目とそぐわないお辞儀を天使のような笑顔を浮かべながらした
「僕の名前はジーク=ヴィクラム。以後お見知り置きを、エミリア様」
私はその姿に見惚れて一瞬上手く頭が働かなかった
すぐに我に帰ると、ジーク=ヴィクラムと名乗っていたことを思い出しはっとした
ジーク=ヴィクラムといえば、この国の第二王子だ。社交界デビューをするほどの年齢に満ていないとはいえ、私は公爵令嬢だ。あまり王子に対して良い態度でほなかったことに気づいたのだ
「も、もうしわけありません、ジークでんか。しつれいなたいどをとってしまいました」
慌てて立ち上がり礼をすると、優しい声が聞こえた
「気にしないで。初対面なんだから気づかなくても仕方がないよ」
顔をあげて彼の顔を見てみれば優しい微笑みを浮かべていた
王子だから優しいのは当たり前なのだろう。その優しさも微笑みも自分だけに向けられるものではないともわかっている。
それでも、私は思った
ーーこの人は、私のものだ。絶対に、誰かにわたしたりしない
そこで夢は終わった。
あれは、私が4歳のときの記憶。
その日、父に連れられ王宮に来ていた。
『陛下とお話しをするからこの先にある場所で遊んでいて』
王宮に着くと父からそう告げられ私は黙ってうなづいた。父に言われた通りの場所へ行くと夢で見た通り彼がいたのだ。その後日、殿下と婚約が決まったことを知らされた。
当時は分からなかったけど、あれは嵌められたのだ。殿下は知らないけれど、少なくとも私が彼とあのような出会い方をすれば好きになるに違いないと考えたのだろう
私は心臓が痛むのを感じた
あの日、私は彼を絶対に誰にも渡したくないと思ったのだ。その目に私だけを映してほしいと。
その気持ちは今でも変わらない。彼が私以外の女性を好きになる未来など潰したいと思う
ーーでもそれ以上に、悲しませたくない。笑っていて欲しい。人生が幸せだと思っていて欲しい。
矛盾している。
その目に誰も映して欲しくないのに、その手助けをしようとしている。
私は両手を握った。大丈夫だと。
私のこの選択は、願いは、間違ってなどいない
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