王子に買われた妹と隣国に売られた私

京月

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第二話

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「ユリ・ジョーカーの身柄を渡せと?リリア・ジョーカーではなくてか?」


「はい。私はユリの身柄さえ渡して頂ければ結構です。もちろんタダでとは言いません。父上、私が商売の才を持つのはご存じでしょう。ユリの身柄を渡しにいただければこの額を国に寄付します」


 サリウスは金額の書いてある紙を王様の側近に渡す。側近から紙を取り上げた王様は驚きを隠せないでいた。


「これほどの額を…分かった、お前の望み通りユリ・ジョーカーの身柄をお前に預けよう」


「感謝します、父上」


 待って…なんで私ではなく妹のユリが…


「どうしてですかサリウス!!どうして私ではなくユリなのですか!!!」


「黙れ、貴様はもう貴族でもないのだ。王子の俺に対してその口の利き方は無礼だぞ」


 サリウスは私が見たことが無いほど冷たい目をして私を見下す。サリウスはそのまま私の近くまでより私の耳元で私しか聞こえない程度の声で話す。


「俺はユリのことが好きだ。だからユリを助けた。それだけだ、元婚約者の義理として国外追放で済ませてやったんだ感謝しろ」


 私は絶望に支配された。そんな私に追い打ちをかけるかのように玉座の間に一人の使者がやって来る。


「失礼します。私はダイヤ王国からスペード王国の国王に伝言を預かったものです」


「今は取り込み中だ、客間で待て」


「大至急の伝言故取り急ぎお伝えしたい」


「…誰からの伝言だ?」


「ダイヤ王国第一王子、ジーク・ダイヤ様からの伝言です」



 ジーク・ダイヤ、私はその人のことを良く知っている。学園に通っていたころ留学生として同じ学園に通っていたのだ。一度だけ会話もしたことがある。会話の内容はもう覚えていないがジーク・ダイヤ王子のお姿だけははっきり覚えている。ジーク・ダイヤ王子は身長は私より低く、しかもかなり太っていた。そのお姿から陰では"豚王子"なんて呼ばれ嫌われていた。かくいう私もジーク・ダイヤ王子のことは嫌いだった。容姿の問題ではない。王子でありながら陰口に対して何も言い返さず受け入れてしまっている気の弱さが嫌いだったのだ。



「その内容は?」


「では失礼して、『我ダイヤ王国第一王子ジーク・ダイヤはスペード王国で処刑をされた公爵家の娘であるリリア・ジョーカーの身柄を我が国に渡して頂きたい。無論他国への干渉はご法度であることは重々承知、故にリリア・ジョーカーの身柄を渡して頂いたあかつきには国交の拡大と関税の緩和を約束する。早急な返答を待つ』以上」


 ダイヤ王国の使者は手紙を読み上げると王様の側近に手紙を渡し玉座の間を後にした。使者がいなくなると王様は大臣たちに意見を聞く。


「大臣たちよ、この話どう思う。そなたたちの意見を聞かせてくれ」


「率直に申し上げて、この話悪くはないかと」


「ですな、むしろ良すぎるほどです。罪人の首を跳ねずに隣国に渡すだけで莫大な利益となりましょう。受けない手はないかと」


「…リリア・ジョーカーの国外追放を取りやめダイヤ王国に引き渡す。ダイヤ王国にすぐ使者を送れ、提案を承諾したとな」


 玉座の間が慌ただしくなる中サリウスは笑いながら私に声をかける。


「良かったなリリア、あの"豚王子"から直々にご使命だ。妻にしてもらえるかもしれないぞ。俺が女ならあんな奴の妻など死んでもご免だがな」


 サリウスの言葉を聞きながら私は泣くの必死に堪える。ここで泣いたらどこまでもみじめになってしまうから。


 サリウスの事やジーク王子のことで対応に追われた王様と大臣たちは状況整理の為私とユリを一度元々収監されてた地下牢に戻した。
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