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季節は冬。
枯れた木々や落ちた落ち葉が山を茶色一色に染め上げる。
この季節は冬眠前の動物が跋扈しており、足場も滑ることから山を進むのは賢明ではないとされている。
熟練の登山家でも困難な時期。
そんな中、マリンはまるで散歩をするように山を登っていた。
『マリンは山登りが得意なんだ』
「昔から薪を拾うために山に登ってたからかな」
『このペースならすぐにでも頂上に着きそうね』
頂上に到着したマリン。
そこにいたのは動物のお肉を焼いているアルベットだった。
「アルベットさん!?」
「マリン!?何故こんなところに?」
マリンは今まであったことを全て話した。
静かに話を聞いていたアルベットが口を開く。
「あの女が聖女だとは女神の目は節穴だな。あの時、ナイフ突き付けた俺にスープを与えてくれたマリンの方が聖女に相応しいだろう」
『マリンにナイフを突きつけたのはまだ許してない。でもその慧眼に免じて許してあげるよ』
ヴィーナがアルベットさんの頭をよしよししている。
もちろんアルベットにはヴィーナの姿は見えていない。
「疲れただろう。とりあえず飯を食べよう」
アルベットはマリンに肉を差し出す。
マリンは自然とよだれが出てきた。
「美味しい!!お肉なんて何年振りです!」
「喜んでもらえてよかった」
「ありがとうございます!アルベットさん」
『マリン、私もお肉食べたいよ』
うーん、食べさせてあげたいけどアルベットさんにはヴィーナの姿が見えてないよね。
空中でお肉が消えたらアルベットさんビックリしちゃう。
どうしよう。
焚火に枝を入れていたアルベットが顔を上げる。
視線の先はマリン、ではなくヴィーナを向いている。
「マリン、ずっと聞きたかったんだが…。その浮いている女は誰だ?」
アルベットの質問に驚くマリン。
ヴィーナも同様に驚いている。
「見えているんですかアルベットさん!?」
「ああ。ゴウの一族は第六感が人より鋭い。はっきりとは見えていないがシルエットだけはわかる。何か喋っているようだがそれは悪霊か?」
『悪霊なんて酷い!!私は女神様なの!!』
「悪霊じゃなくて、その、女神様です」
マリンは全てをアルベットに説明した。
最初は信じてもらえるか心配だったけど、納得してくれた。
「女神の力で俺の居場所が分かったのか。それでマリンはその盗賊に支配されるだろう村をどうしたい?」
「助けたいです!」
そのマリンの目にアルベットはまた面影を重ねる。
ルー、お前も困っている人がいたらなりふり構わず助けようとしていたよな。
「分かった。力を貸す。一緒に村を助けよう」
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