捨てられた騎士団長と相思相愛です

京月

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「なんでお前がここにいるんだ!?」

「そう騒ぐな。いつも言っていただろ、冷静さを欠くのはお前の悪癖だ、ゼゴ副団長」

「俺が質問しているんだ!!それと俺は副団長じゃねえ!団長だ!!」


 ミルネは今にもつかみかかってきそうなゼゴを睨め付ける。

 
 この人がゼゴ…いつもサラド様の近くにいた人だ。

 
 なんだか自己肯定欲の塊みたいな人だな。


「お前に裏切られておった火傷を治してくれた人がいてな。その人と婚約したので付き添いとして参加させてもらった」

「ふん!傷を癒してもらったくらいで結婚だと…!存外元騎士団長様は惚れやすいのか、それとも相手が軽い女なのか…どちらにせよお似合いー」

「口を慎め」


 サラドは腰に携えた剣を抜刀しゼゴの首元に当てる。


「俺の悪口なら見過ごそう。だがミルネを悪く言うのなら…その舌を切り落とす」

「や、やってみろや!俺は騎士団長だぞ!俺に手を出そうものなら国中の騎士がお前の敵になる!!そもそもお前はまだ騎士団所属扱いだ!俺に手を出せばすぐ死刑だぞ!」

「ああ、それは分かっている。だからゼゴ騎士団長に『騎士・闘』を申し込む」


 『騎士・闘』とは騎士団長に不満のある下の騎士が申し込むことのできる決闘だ。

 下の騎士が勝てば負けた騎士団長に代わり騎士団長となり、負ければ即死刑の大勝負なのである。


「今は既に形骸化されたに等しい制度だが、これに騎士団長の拒否権は無い。下の者にやられるほどの騎士団長など不要だからな。さぁゼゴ、どうする?」


 ゼゴは一歩退くが、すぐに威勢を取り戻す。


「いいぜ!やってやるよ!場所はコロシアム、日時は3日後。それでいいな?」

「ああ、問題ない」

「ちょ、ちょっと待ってください。ゼゴ様!婚約者の私の意見も聞かずに勝手に承諾されては困ります。それにもし怪我をされては…」

「うるせえ!」


 ゼゴはパナを突き飛ばす。


「きゃっ!」

「俺が怪我するわけないだろ!万が一傷を負ってもその時はサラドの女に治療させればいい」


 勝手に決めないで欲しいな、まあやるけど。


「分かりました。ご安心くださいパナさん。どん な傷を負っても私がちゃんと塞いであげます」

「決まりだ!サラド!覚悟しておけ…」

「言われるまでもない」



 こうして現団長と元団長の一騎打ちは国中に広まり、会場となるコロシアムには満席になるほどの観客が詰め寄った。


 私とパナさんはコロシアムの袖で見守る中、闘技場の中心にはサラドとゼゴが立つ。



「ボコボコにして泣きっ面をさせてやる」


「俺は負けないさ」

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