捨てられた騎士団長と相思相愛です

京月

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 俺の防御魔法は国一番の強度を誇る。誰にも砕けない鉄壁だ。


 それをあいつも気づいたんだろ、ずっと下ばかり向いている。


 馬鹿な奴だぜ、俺の前に姿を現さなければこの人数を前に恥をかかずに済んだのによ!


「それでは試合開始!!」

「サラド!!どこからでもー」


 スパ


「え?ぐあああ!!目が!目が!!!何も見えねぇ!!」


 サラドは一瞬のうちにゼゴの目の前に立ち剣を振る。

 
 その動きを捉えることが出来た者は1人もいなかった。


「どうした?団長になれたことに浮かれて鍛錬を怠ったか、ゼゴ」

「クソ!卑怯だぞ!!」

「何でもありのルールなはずだが」



 そんなのは分かっているよ!

 
 俺の目的はサラドの気を反らして時間を稼ぐことだ。


 俺の周りを紫色の透明な球体が囲う。


「『ガード』!これでお前は俺に手が出せなくなったな!!『ガード』は時間を掛ければ徐々に範囲を広げられる!壁にめり込ませてアートにしてやるよサラド!!」


 しかしサラドは俺の言葉などに耳を貸さず、剣を振るう。


 バリン!!


 俺の防御魔法はサラドの剣によってまるで飴細工のようにいとも容易く砕かれた。



「な…ど、どうして!今までお前は俺の『ガード』に傷一つ付けることも叶わなかったはず…!」

「確かに今までの俺はそうだった。だがミルネに傷を癒してもらってからの鍛錬により俺は強くなった。もうお前の魔法など無いものと同じだ」

「ふ、ふざけるなーーー!!!!」


 ゼゴは力の限りを尽くし何層にもわたる『ガード』を発動した。

 
「言ったはずだ。冷静さを失うことがお前の弱点だと」


 サラドは突きの構えを取り、一度息を整る。


「はああああ!!!」

 バリンバリンバリンバリンバリンバリンバリン! 

「ぐあああ!!」


 サラドの突きは『ガード』を全て破り、ゼゴの肩に深々と刺さる。

 
 痛い!!何で俺がこんな目に!!


「ゼゴ、これは俺がお前のために編み出した技だ。とくと味わえ」

「まーaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!」


 全身を幾度となく切り刻むサラドの剣を受けて、俺は意識を手放した。


◇◇◇◇


 あれ…暗い…ここは何処だ?


「ここは医務室です。約束通り私が傷を塞いであげました」


 サラドの婚約者か…。


「……確かに痛くねえが…早く目も治せよ!全身にも力が入らねえ!この下手糞女!!」

「?私はちゃんと塞ぎましたよ?」


 どういうことだ?俺はまだ何も見えてねえぞ!


「あっ!もしかしてゼゴさんは勘違いをしているかもしれません!!」


 勘違い?




「私は怪我を塞ぐと言いました。でも治すとは言っていません。だからゼゴさんの目に光が映ることはもうないでしょう」



 は?ふざけるな!!治せ!!早く治せ!!


 返事が無い。


 おい!そこにいるんだろ!?いるんだよな!?


 最初の威勢は消え、ゼゴは何も見えない恐怖から震えが止まらなくなる。


 そんなゼゴの耳元でミルネはそっと一言呟いた。


「私、怒ると結構怖いんですよ……」
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