捨てられた騎士団長と相思相愛です

京月

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大歓声がサラドを包む。


 ゼゴに対して圧倒的な勝利を見せた彼を騎士団長として認めない者はこの場にはいない。


 まさに時の人となったサラドに駆け寄ってきたのはミルネ……ではなかった。


「パナ」

「お見事です!あのゼゴ団長に手も足も出させない強さ!やはり私の婚約者だけあります」


 会場がどよめく。

 
「私は怪我を負ったサラド様を助けるためにゼゴに愛を語るという裏切りをしてしまいました!!ですが…もう、その必要はないのですよね?」


 そう言ってサラドの胸に飛び込むパナ。


 割れんばかりの拍手がコロシアムに響き渡る。

 
 それは2人の会話もかき消した。
 

「さあ、どうしますかサラド様?ここで私を拒絶すればあなたは信用を失います。そうなればせっかく取り戻した騎士団長の地位も危うくなりますよ?」

「それが…本性か」

「そうです。私はこういう女なんです。自分のためなら脅迫なんて息をするように出来る女。さあ、この声援にこたえましょう。何時ぞやと同じような口付けを…」


 そう言ってサラドに口付けしようとするパナ。


 パン!


 サラドはそんなパナに平手打ちをした。


「え……?どういうことですか?」

「なにか勘違いをしているようだが、俺は騎士団長に戻る気はない。『騎士・闘』はゼゴを逃がさないための口実に過ぎないんだ」


 そう言ってサラドは歩き出す。


 コロシアムの袖に1人で立つ女性の元に。


「待たせたかい……ミルネ?」

「いいえサラド様。私も今用事を終えたところです。それにしてもいいのですか?騎士団長に戻らなくて?」

「ああ。騎士団長なんてどうでもいいと思えるほど大事な人に出会ったからな」


 騎士団長が婚約者に手を挙げた。


 それはすぐに国中に広まった。


 パナは悲劇のヒロインとして取り上げられたが、元騎士団長ゼゴの証言により彼女の裏の顔が皆の知れ渡るところとなる。


 それ以降、彼女に婚約者が出来ることは無く、両親の不幸な死や国に反逆した兄弟の責任をとるため家を取り潰したりと波乱万丈の人生を歩む。




 そんな人生を歩んだパナとは対照的にミルネはサラドとの間に子をもうけ、地方の田舎で仲良く人生を過ごした。




「愛しているよミルネ」

「私もサラド様」
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