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55 そのころ隣室では…(マリアナ)
しおりを挟む大広間での騒動の真っ最中。
その頃隣室では………とても楽しく見学をしている人物が一人。
「ねぇ、マリー?久しぶりにワクワクしてるんだけど、どうしよう」
夜会が行われている大広間。そこに隣接する部屋にて、私の旦那様にしてこの国の王アズラエル様は、満面の笑みでおっしゃいました。
「アズラエル様……いくら今私達だけとは言え、愛称呼びはどうかと。後……ワクワクですか?ワク…ワク………え?」
物凄く頭痛がしてきそうな発言ですわね。
この腹黒陛下がワクワク……。
自慢ではありませんが、彼とは長い付き合いです。
普段あまり本当の感情を表に出さない彼が満面の笑みとか、もう恐怖でしかないのですけど。
「ねぇ、リンファもそう思うよね~?」
………その精霊、私の契約精霊なんですが。
漆黒の猫型精霊を膝に乗せ、ソファーに腰掛ける彼の様はまるで絵本に出て来そうですわ。
歳を重ねてなお衰える事のない美貌。
毎日見てますが……見飽きないものですわね。
美人は三日で飽きるとは言いますが、嘘ですわ。
「それに、今この部屋には私と君、後はアニキスだけだしさ、別に畏まる必要はないよ」
そうなんですけど。
そうなんですけどね?一応この部屋、大広間の隣ですのよ?
しかもこの部屋、王族の支度部屋という事で、大広間を確認出来る魔鏡がありますの。
簡単に言うと、前世で言うマジックミラーですわ。
広間から此方が見えないのは分かっていますが、内心ドキドキですわ。
「そう言えば、妹は今日どうしたの?アニキスだけなんて珍しいですわね」
万年新婚夫婦である妹夫妻ですが、今日は珍しくアニキス一人。
妹大好きな彼が夜会でエスコートしないなんて、普通に考えてあり得ない事なんですけど。
「フローラでしたら登城はしていますよ?アズ…陛下には先に挨拶だけさせて頂きましたが。今日フローラは「家」の仕事で席を外しています」
あぁ、ドロッセル家の仕事でしたの。
それなら仕方ないですわね。
「うん、フローラには私から個人的なお仕事依頼をね。ちょっと予定が詰まってしまったせいで、マリーに挨拶する時間がなかったのはごめん」
アズラエル様直々…でしたら、仕方ないですわね。
まぁ、今夜の「コレ」に関する事なんでしょうけど。
フローラも大変ですわね…相手が腹黒大魔王ですから。
それにしても、アニキスったら、お顔がアズラエル様みたいになってますわ。
アニキスとアズラエル様は従兄弟同士ですから、頭の中もよく似てますもの。今の現状をアズラエル様同様、実は楽しんでいるのが丸わかりですわね。
「それにしても、ピンク頭の娘があそこまで母親似とは。報告でしか知らなかったから、実際見てびっくりだな。しかもあの三人……まるで過去の再現じゃないか」
やはりアニキスも同意見でしたわね。
えぇ、私も驚きましたわ。
ララベルの娘がまさかの彼女そっくりだなんて。
ララベル自身、学生時代かなりの痛い方でしたが、娘も負けず劣らずですわね。
二人とも記憶をもつ転生者のはずですが……あそこまで似ます?
現在進行形で、大広間ではララベルの娘が精霊に向かってキャンキャンと吠えていますし、本当、どうなってるのかしら。
私自身ゲームをクリアした身ですから、ヒロインと精霊のイベントは知っていますし、当時そのエンディングの難易度が高すぎて諦めたのもいい思い出です。
それを考えて、あの娘、全くもって理解不能ですわ。
何故このタイミングで出てきた精霊に「契約して!」なんて言えるのかしら。
どう考えてもオカシイ状況でしょうに。
クリア詳細は運営が鬼だったのでSNSなどに一切公開されていませんでしたが、精霊のイベントは卒業間近に起こるのは周知されていました。
それが今起こる事自体オカシイのです。
しかもザマァ後の母親が精霊を連れてくるとか、「イベントとしてあり得ない」とそちらに思考はいかないものなのかしら。
『マリー、君、顔が愉快な事になってるよ?』
「煩いですわリンファ!だって仕方ないでしょ?この意味不明な状況ですのよ?」
『まぁ、親娘そろって「ワタリ人」……君達で言う「転生者」だからかなぁ?ちょっとこの世界の住人と違って異質な思考回路なんじゃない?って、顔怖いよ~」
アズラエル様のお膝に居座ったまま、悟りを開いたお爺さんみたいな口調で呑気に話されてますが…。
今の「君達」と、「異質」は聞き捨てなりませんわ。
あのピンク親娘と一緒にしないでください!
しかも、アズラエル様はいいとして、今「君達」って言いましたわね。
この場に居るアニキスは、放棄したとは言え、王位継承権持ちでしたのよ?「ワタリ人」やら「転生者」やら…その言葉は完全アウトですわ。
「アニキス…えっと」
「ワタリ人…ですか。まさかその言葉が今出るとは思わなかったですが…義姉上が「ソウ」だと?」
あぁ…やはり反応してましたわ。
「え、違うよ?フィオもだよ?」
ちょっと!アズラエル様ぁぁぁあ!
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