鬼上司と秘密の同居

なの

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嫉妬心は複雑です

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俺の過去を話しても透さんの態度は変わらなかった。むしろ俺にたくさんの愛情をくれているのがわかる。

朝は透さんに起こしてもらい、朝ごはんを作ってもらう。職場では俺が上田さんや他の人と2人きりにならないように目を光らせて、夜は、ほぼ透さんが作ってくれる。どうしても遅い日は俺が作るようになったし、遅くなる日は必ず連絡をくれる。毎日一緒のお風呂入りそのまま寝るときもあれば抱かれて透さんの腕の中で寝るときもある。そしてまた朝が来る…最近はその繰り返しだ。
掃除も洗濯も俺が起きる頃には全部終わっていて透さんはいつ寝ているのか?と最近は疑問だ。自分だって疲れてるはずなのに…

こんなに甘やかされていいの?と聞いたことがある。そしたら「海斗を愛してるから、なんでも俺がやってあげたいんだと…」それにしても俺って…毎日愛されてるなぁ…とついニヤニヤしてしまった。「小沢、なんか気持ち悪い…」同期の平井に声をかけられた。

「いやぁ…悪い。そんな気持ち悪かったか?」
「なに思い出してんだよ。最近、幸せオーラ出してるよな?なんかいいことあったのか?」
「そうかな?」
「そうだよ。部長にも分けてあげたら?いっつも無表情でさ、すぐ怒るし…なんで彼女作らないんだろ?できたら変わると思うのになぁー」
「あぁ…」

「そういえばこの前、受付の佐々木さんが社食から戻る途中の部長に声かけてたって、みんな告ったんじゃないかって噂してたぞ」
「告白…」

「昨日なんてさぁーあの秘書課の美人の川上さんに告られたって話だぞ。頭いいし、美人だし…スタイルいいし、しかも親はあの川上不動産の社長だってさ。羨ましいよな!未来の社長だよ」
「そうなんだ…」

「部長、結構告られてるみたいなのになんでかな?いい人いるのかな?って小沢」
「………」
「どうした?大丈夫か?」
「あ…うん。大丈夫」

部長がモテるのは知っている…でも女の人がダメで…透さんが好きなのは俺だけってわかってるけど…それでも心が痛かった…

「小沢、この書類はなんだ。いったい何してんだ。確認もしないで持ってくる奴がいるか?」
「部長すみませんでしたっ」
「やり直し、こんなの30分もあれば直るだろ。早くやり直せ」
「わかりました…」

「小沢、大丈夫か?さっきから変だぞ?」
「ありがとう平井。なんでもないよ。こんなミスするなんておかしいよな…」

どうにも頭が回らない…考えないようにしてもどうしてもさっき平井から言われた言葉が心に突き刺さる。受付の佐々木さんと秘書課の川上さん。どっちも美人で人気だ。部長と歩いたら絵になりそうだよな…

「小沢、まだ書類できないのか?あれから何時間たってる。早く持ってこい」
「はいっ…」
なんとか書類を完成させて部長の所に持って行った。

「部長…できました」
「遅いな……まぁいいだろ。就業時間とっくに過ぎてるぞ」
「はい…」
「俺はこれから会食だから…みんな気をつけて帰れよ。」
そう言ってオフィスを出て行った。

会食?会食って言った?
そんなこと聞いてない。メールを確認しても透さんからは何も入ってなかった…いつもならメールをくれるのに…なんで???ぼーとしながら会社を出ると見てしまった…あれは透さんと川上さん?肩を並べて歩いている…と思ったら突然、川上さんが透さんに抱きついた…透さんも腰に手を回してその華奢な体を支えていた…そのまま2人は寄り添うようにタクシーに乗ってどこかに行ってしまった…

「ねぇ、あの2人って付き合ってるの?」
「昨日だか川上さん告白したんだよね?OKだったってこと?」
「みんなの前で抱き合うとか…美男美女で絵になるわー」
「本当、羨ましい。私も部長と付き合いたかったなぁー」
「あなたじゃダメでしょ」
「ひどーい」
笑いながら歩いてる人を横目に俺は足早に通りすぎた。

結局2人がどこに行ったのか分からなかった。追いかけることもできずに透さん家に帰ってきてしまった。ご飯を食べる気にもなれず…大きなソファーの上で足を抱えて座っていた。 

「ただいまって海斗?どうした?」
「……」
「ごめん。会社で怒っちゃったから怒ってる?ごめんね。仕事だから海斗にだけ特別扱いできなくて本当ごめんね」そう言って抱きしめようとしてくれる手を振り払った。
「海斗?」
「今日は1人で寝ます。おやすみなさい」
透さんの顔を見れなくて俯きながら空いてる部屋に入って鍵を閉めた。
ドンドンドン
「海斗、怒らせちゃったならごめん。何度でも謝るから、特別扱いしてもいいなら明日からそうするから…海斗?ここ開けて?」
「今日は…無理ですっ…ごめんなさい…1人にさせてください」
「海斗っ…なんで?俺のせいか?本当に悪かった。辛い思いさせたな。落ち着いたら…待ってるから。その部屋、何もないだろ?クローゼットの中に布団入ってるよ。たまに優太とか泊まりにきたことがあるから使いなよ」

静まり返った何もない部屋の中で声を殺して泣いた。涙が止まらなかった…なんで本当のこと言ってくれないの?何もないよって言ってくれたら…それだけでいいのに…どうしてもネガティブな考えになってしまう。透さんを信じたかった。でも…あんなの見てしまったら…信じられなくなった。やっぱり女性がいいのかも…俺にだけ抱きしめてくれると思ってたのに…

自分に自信がない…俺には金持ちの親もいない…両親ともいない…仕事もできないし、家事も全部、透さん任せだ。透さんに甘えてやってもらったのがいけないの?好きって言われて図に乗っちゃった?俺には何もない…泣いて泣いて…気づいたら朝日が昇っていた。

ドアの外で音がする。きっと透さんが家事をしてくれてるんだろう。
トントントン
「海斗…大丈夫か?ご飯できてるよ。今日は朝からアポがあるから先に仕事に行くから、気をつけて来いよ。辛いならテレアポでもいいから…」そう言ってなんの音もしなくなった。しばらくすると玄関の鍵が閉まる音がした…出てったんだ…

そっと部屋を出た。ダイニングテーブルにはサンドウィッチが置いてあった。透さんの綺麗な字で
〝スープは冷蔵庫にあります。レンジで温めて。フルーツとヨーグルトも冷蔵庫に入ってるからね。先に行ってきます〟
と書いたメモがあった。一口サンドウィッチを食べると涙がまた溢れた。やっぱり俺は…幸せになれませんか?



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