鬼上司と秘密の同居

なの

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ケセラセラ

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「はぁ~よく寝たー。おぉ…僕そのまま…」
昨日あのまま寝ちゃってんだ…時計を見ると6時を回ったところだった。学さんと悠人に悪いことしちゃったよな…それにしても2人ともよく寝てる。お店もあのまま閉めたんだよな…とりあえず家に帰って着替えてから仕事行くか。

僕は学さんと悠人に話したことで少しだけ気持ちが楽になった。もうなるようにしかならないケセラセラだ。

よし!僕は気合を入れて店を出た。悠人に「昨日はごめん。お世話になりました」とメールをした。家に帰ってシャワーを浴びて洗濯をした。今日は気持ちがいいほど青空が広がっていた。ふとベットの横にあるサイドテーブルに目がいった。昨日、置いたシルバーのネックレスに付いた石とその先についた指輪がキラキラと光っていた。僕は目を閉じた。これをもらった時は、胸が高鳴り凄く、すごく嬉しかった。でも今は…やっぱり付ける気持ちにはなれなくて、サイドテーブルの引き出しにしまった。

少し物思いに更けてしまった。時計を見ると、いつも家を出る時間より5分も過ぎていた。「ヤバっ」ジャケットを羽織り、急足で会社に向かった。

会社に着いて急ぎの仕事をしていたら悠人から「仕事終わったらお店に来て」と連絡があった。昨日のことも謝りたいし…何よりお金を払ってなかった。それは流石に友達との間でも駄目だろう。「今日は昨日より早く行けると思う」と連絡した。

お昼になって平井が久しぶりに声をかけてきた。お互い営業で出払うことが多くて、なかなか時間が合わなかったのだ。「久しぶりに飯いかねぇ?」2人で社食に行って、平井はA定のチキンソテー、僕はB定のアジフライにした。 

「ホントいっつも被らないよな?」

「たまたまだよ。毎日一緒に食べてないから…きっと合うときもあると思うよ」

「まぁ…そんなことより部長とは上手くいってるのか?今、出張でいないし、寂しいよな?俺でよければ晩飯でも、なんでも付き合うぞ。大丈夫か?たまには弱音、吐いてもいいんだぞ」

「大丈夫だよ。あ!あの窓際の席に行こう」まったく…勘が鋭いというか…今は、これ以上、胸をえぐられたくはない。平井と仕事のことを話して、なるべく透さんの話題を避けた。なのに…後ろの席から思いも寄らない声が聞こえてきた。

「お前さぁ…本当に度胸あるよな。だってあの部長だぞ!」

「仕方ないじゃないか、好きなのに言わないなんて…だって、もしかしたら恋人がいるっていうのも嘘かもしれないし、もしかしたら脈あるかもよ」

「自分で言うか普通?まぁ玉砕だろうけど、それでいつ告るんだ?」

「出張から帰ってきたらかな?早く帰って来ないかな?」

「でもよかったな。浅井部長がカミングアウトしなきゃ、お前は告白なんてできなかっただろ?それにしても部長は凄いな。男からも女からもモテて。…ていうか恋人ってどんなやつかな?」

相変わらずモテてるんだ。つい平井の顔を見てしまった。
「大丈夫か?」

「うん。平気。気にしてないから」
そう言ったものの気になって仕方がなかった。透さんに告白したい子は誰なんだろう?声だけじゃわからなくて…食器を片付けるときに見てしまった。海外事業部に優秀な子が入ってきたと噂されてた、橋田さんじゃないかな。そうか…透さんが好きなんだ。でも透さんは…もしかしたら、向こうで見つけて帰ってくるかもね。そう考えるとまた、落ち込みそうになったので、慌てて頭を振って思考を停止させた。

悠人に会いたいから、早く仕事終わらせないと…18時過ぎに終わり急いで学さんの店に向かった。

「学さん、悠人、昨日はごめんね。お金も払わず、しかもあのまま寝ちゃって」

「おかえり。今日は寝ないでよ。とりあえずご飯、親子丼だけどいい?お昼とかぶってない?」

「いいの?大丈夫だよ。昨日迷惑かけたのに…親子丼食べるよ。それより学さんは?」
奥のテーブルで学さんはパソコンをいじっていた。僕は側に駆け寄った。

「学さん昨日はすみませんでした。ご迷惑おかけしました」

「まぁ、仕方ないな。とりあえず腹ごしらえが先だな。食べたら…浅井とコレでテレビ通話しろ。顔見たほうがいいだろ?さぁ用意するから待ってろ」そう言ってカウンターの奥に行ってしまった。

テレビ通話なんて…したくない。できないよ。もしかしたら碧い目の美青年が隣にいたらどうしたらいいの?なるようにしかならないけど…その場で立ち尽くしてしまった。

「海斗~できたよ。なめこのお味噌汁もあるよ~」悠人の声が聞こえてカウンターに座った。そういえばお客さん来ないなぁ~と思って聞いてみた。

「今日は臨時休業、海斗様の貸し切りです」そう言ってホカホカと湯気がたった親子丼となめこの味噌汁、きゅうりの漬物が乗ったお盆が置かれた。
「美味しそう。でもいいの?臨時休業って」

「仕方ないだろ。きっと1人じゃテレビ通話なんてしなそうだしな」

「学さん、ごめんね。僕…やっぱり」

「海斗、ご飯冷めちゃう。食べよう」 

悠人に言われて味噌汁を一口飲んだ。温かくて美味しい。
心まで温かくなる感じがした。

 
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