鬼上司と秘密の同居

なの

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番外編

不安な気持ち

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ギプスで固定してもらい松葉杖の使い方を教えてもらった。
なんだか思っていたよりも大怪我した人みたいな恰好になってしまった。この体じゃ仕事は当分できそうにもない。秘書のリモートなんてたかがしれてる。そんなに仕事なんかできないだろう。そしたら透さんと一緒に同行もできないのか……じゃあ透さんの同行は誰がするんだろう?そう考えたら不安になってきてしまった。今まで自分なりに秘書として頑張ってきてせいか周りからも少しずつ認めてもらえるようになって最近は仕事が楽しくなってきたところだったのに出鼻をくじかれたように感じた。僕の何が悪かったんだろう?なんでこんな目にあってしまったんっだろう……どんなに考えても考えても答えなんて出なかった。

「海斗?」
顔を上げると心配そうにして少し額に汗をかいている透さんが立っていた。

「透さんっ」
思わず透さんの腰に抱きついた。自分が情けなくて悔しくて……結局、僕はいつまでたっても透さんのお荷物になってる。きっと僕のことが心配で仕事もそこそこに急いできてくれたんだと思うと嬉しいけど僕がこんなケガをしなければ仕事もちゃんとしてくれたかもしれない。でも不安な心が消えなくてしばらく透さんに抱きついていた。透さんは何も言わず、ただ頭を撫でてくれた。

「海斗って透さん」
「悠人くんありがとう。学は?」
「今、会計してます」
「そうか……学から大体は聞いたよ。大変だけど治るまでは無理しないで行こうな。それにしてもこんなギプスじゃ動くのもお風呂もこれから色々と大変だよな」
そう言って透さんはスマホで何かを調べていたようだった。しばらくして「これ見て」と差し出された画面にはギプスしたままお風呂に入れるカバーや大きいな介護用のお風呂椅子まで購入してくれていた。

「これでお風呂に入れるな。それにしてもその恰好は寒いだろう」
太ももの半分までギプスを巻かれた僕は履いてきたズボンが入らなくなったので悠人に売店でハーフパンツを買ってきてもらった。でもギプスを巻いてるほうはいいのだが、反対の足は丸見えで筋肉もあまりついてない白く華奢な足は見苦しさもあるかもしれない。透さんはそんな僕の気持ちを察したのかジャケットを脱いで足にかけてくれた。

「透、来てたのか」
学さんが会計を終えて戻ってきた。
「学さんすみません」
「いやぁ~これから大変だよな。でもこの際無理せずに透に甘えろ。透が就任してきて今まで頑張ってきただろ?秘書検定まで取ってさ。だから少しだけ神様から長い休暇をもらったと思えばいいよ」
「でも……」
僕は言葉に詰まってしまった。その時

「ここにいたんだ」
僕の主治医で透さんたちの同級生という立花さんがやってきた。

「もしかして立花?」
「そうそう、びっくりだろ?医大に受かったとき、みんなで盛り上がったもんな。でも同窓会に一度も来てくれなかったからみんな心配してたんだぞ」
「色々忙しくてさ。この病院も4月から来たんだけどシステムとか慣れるのに時間がかかってみんなに連絡できなかったんだよ。悪い」
「そうだったんだな。そういえば海斗はよくなるのか?」
「手術にならないだけまだマシだね。でもしばらくは制限が必要だし、痛みもすぐには治まらないから見てあげて」
「わかった。これからも頼むな。海斗疲れたろ?帰ろう」
この足のせいで膝を曲げられない僕は悠人の指定席だった助手席に乗せてもらい学さんの車で送ってもらって家に着いた。

「海斗、横になろうか」
初めての松葉杖は扱いが難しかった。結局、透さんに支えてもらってベットに横になったけど足を高くしないとダメらしく透さんにクッションを入れてもらい布団までかけてもらった。

「透さんごめんなさい」
「だからもう謝るな」
「でも……」
「でも?そういえば病院でも何か言いかけただろ。言いたいことは何でも言うって約束したよな」
「やっぱり僕はお荷物ですよね。腰をやった時といい今回のことも……僕、このまま休んだら自分の居場所がなくなる感じがしてるんです。あの就任披露パーティーで僕たちがパートナーになったのは社員ならパーティーに出てくれて知ってるけど、今年度入ってきた新入社員や中途採用者には伝えていないじゃないですか。秘書課の佐久間さんや幸田さんも僕たちの関係知らなさそうだし。それに……透さんの同行は誰と一緒ですか?室長?それとも川上さん……ですか?」
不安で不安で仕方がないまるで迷子になってる子供みたいに目に涙をためている顔をしていた。俺は海斗の上半身を抱きしめた。

「海斗の代理は角谷さんが引き受けてくれた。海斗もそのほうが安心じゃないかって」
「でもそれじゃあ」
「親父の秘書は角谷さんと室長だ。川上さんは関わらないよ。それに……佐久間や幸田には伝えている親父がな。だから心配しなくても大丈夫。俺のパートナー兼秘書はどんなことがあっても海斗しかいない。だからその場所を誰かに取られるかもしれないんて余計な心配考えなくていい。学の言う通りロングバケーションでももらったと思ってさ。このギブスが取れて、少し歩けるようになったら旅行にでも行こう?とりあえずは今はゆっくり休んで俺に海斗のお世話全部させて?海斗はただ俺に愛されていればいいんだよ」
「透さんは僕に甘すぎます」
「海斗限定だから。それぐらいいいじゃん」
海斗は少し安心した顔に戻った。海斗の泣き顔はもう見たくないっていうか全部俺のせいで泣かしてきたんだけどな。それにしてもこの身体じゃセックスは当分お預けになりそうだがどうしようか……と本気で悩んでしまったのは海斗には秘密だ。
今日はギプスを巻いたばかりだからお風呂はやめてレンジで温めたタオルで体を拭くだけにした。海斗のモノはやっぱりかわいくて口に入れたくなったが、今は無理をさせるわけにはいかない。海斗も痛みが取れないからできないだろう。

次の日から海斗を家に残して出るのは不安でお袋でも呼ぼうかと海斗に相談したら気を使うかもしれないからと断られた。
「海斗、何かあったらっていうかなくても連絡して。お昼はサンドイッチ作ってあるから。なるべく安静にして休んでろ」
海斗の側にいてやれないのは仕方がない。今週の予定は立て込んでしまってるんだから……後ろ髪を引かれる思いのまま会社に向かった。

透さんが会社に行ってしまうと途端に寂しくなってしまった。痛みで心細いのもあるだろう。僕はすっかり透さんに甘えることを覚えてしまったようだ。
動きも制限されて思うように動かせないスマホも見るのも辛くて痛み止めを飲むが痛みは少ししかよくならなかった。

「透さん……早く帰ってきて」
1人でいる部屋は心細かった。

「ただいま海斗起きてたか?痛みは?」
今日のスケジュールは分刻みだった気がするそれでも疲れなんて見せずに僕のところに帰ってきてくれて嬉しかった。

透さんに手伝ってもらってお風呂に入れてもらった。自分1人じゃ服も脱げないからお風呂に入ることもできない。透さんのは兆しがみられたが僕は口でしてあげることもできないし、こんな体じゃエッチもできない。

「海斗どうした?」
「この体じゃ当分エッチもできないね。ごめんね」
「仕方ない。でも海斗が痛い思いするのは嫌だからな。海斗は痛くてそんな気分にはなれないだろ?俺だって我慢くらいできるし、痛みがなくなったら思いっきり愛し合おうな」
俺は甲斐甲斐しく世話を焼いたっていうか俺が手伝わないとできないことが多すぎる。着替え1つもできないのだ。膝が曲がらないことがどんなに大変なのか思い知った。本当は強く抱きしめたいでも、この足じゃ何もできなかった。どうしたら体だけじゃなく愛を伝えることができるんだろう。今まで言葉や態度に表してきたつもりだったけど海斗が不安に思うのであれば、まだまだ伝えきれてなかったのかもしれない。


◇◆◇◆◇◆


久しぶりに2人のことを書いていたら筆が乗ってしまいました(笑)皆様、もう少しだけお付き合いくださいね。

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