鬼上司と秘密の同居

なの

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番外編

365日と、これからの幸せ

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「透さぁ~んそんなキスしたら……」

「キスしたら?」

「いやっ。今日は何もしません。知りません」

「っん?でも、海斗のココは俺を求めてる気がするんだけど?」

「だって~今日は~」

「あぁ……そうだった。じゃあ……1回だけ

結局、僕は朝っぱらから透さんに喰われてしまった……
それでも、どこか嬉しかった。

***

来週はいよいよ、僕の27回目の誕生日。そして、パートナー1周年のお祝い。
その打ち合わせを《BAR|Hardenberg(ハーデンベルギア)》で、透さん、学さん、小倉さん、優太さん、四ノ宮さん、西原さんとする予定らしい。
だから邪魔な悠人と僕は、一緒に出かけようとしていたのだけれど……。

数か月前のあのケガ。透さんは、あのとき一緒に出掛けていれば……と心のどこかに引っかかっている様子だった。だから今回は、無理せずに家でまったりと過ごすことになった。

***

「ねぇ悠人は学さんとの記念日はいつもどう過ごしてたの?」

「は?いきなりだな」

「だって……結婚記念日なんて初めてだし……付き合った記念っていうのも僕たちはあんな突然みたいな形だったし……」

「特別なことなんてしなくてもいいんじゃね?一緒にいれるだけでいいじゃん。俺たちみたいな関係はさ」

そうだった……僕たちみたいに周りから祝福されるケースは珍しい。パートナーシップだって、したくてもできない人たちがいる。

だけど僕たちはみんなからお祝いしてもらえる。それだけで満足だ。

透さんがいてくれる。いつも一緒に……その思いを1周年に伝えよう。

***

学さんの店に着くと透さんが僕の背中に手を置いた。

「海斗、目つぶって」

「なんで?変なことしない?」

「しない。しないから、俺を信じろ」

扉が開いた音が聞こえると同時にクラッカーの音とあたたかい、みんなの祝福の声が響いた。

「海斗、お誕生日&パートナー1周年、おめでとう!」

目を開けると、温かな灯りと、優しい飾りつけに包まれていて、いつもより特別な雰囲気が店の中に広がっていた。

僕は開いた口が閉じられないくらい驚いてしまった。

学さんと悠人、小倉さんと優太さん、四ノ宮さんと西原さん、いつものメンバーが笑顔で迎えてくれる。

透さんたちが細やかに準備した空間には、1周年を祝うための特別な装飾や学さんの手作りの料理やケーキがあって祝福ムードが満ちていた。

「驚いてくれて何より。いつもよりも凄いだろ?俺、店、開いててよかったわ~」
と学さんが言うと、優太さんが

「透がしつこいくらい段取り考えてたよ」
と苦笑いしていた。

四ノ宮さんの掛け声で、白のスパークリングワインがグラスに注がれた。乾杯の瞬間、皆の祝福が胸に響いた。

「海斗、誕生日と1周年おめでとう。たくさん作ってもらって食べろよ」

学さんと悠人からは、名前入りの夫婦箸をプレゼントされた。
「ありがとう……たくさん食べるっ」

「これからも幸せになれよ」

小倉さんと優太さんからは、ペアの切子グラスが手渡された。

「飲みすぎ注意だけどな!」
「……ありがとうございます。凄い素敵!」

「俺たちからも、1周年&誕生日のお祝いだよ」

四ノ宮さんと西原さんからは、去年もらったキーケースと同じブランドの小銭入れが渡された。透さんと僕で色違い、2人のイニシャルも入っていた。

「去年と同じブランドでお揃いにしてやろうと思ってさ」
「ありがとうございます……本当に……」

そして最後に、透さんが静かに僕の元に来た。

「誕生日おめでとう」と言って緑色のリボンが付けられた箱を渡してくれた。
僕と透さんのイニシャル付きの名刺入れが入っていた。

「これからも、秘書として俺の隣で頑張ってもらいたいからさ。海斗、これからもよろしくな」
「……こんなの、ズルい……反則だよ……」

「ずるくても、お前が隣で笑ってくれるなら、それでいい」
額にキスをされて抱きしめられた。

透さんの言葉に思わず胸がいっぱいになった。

「……ありがとうございます。みんな……本当に……これからも幸せになります」

たくさんの拍手の中、プレゼントをもらって感極まってる僕の前で四宮さんは急にそわそわしはじめた。

「そろそろ食べない?今日、忙しくて昼抜きだったんだよ」

そんな声が聞こえて、みんなで笑い合って食事が始まった。

料理が並ぶテーブルにみんなが集まり、賑やかな会話が繰り広げられ、お祝いの言葉が自然に交わされ、笑い声が絶えなかった。

小倉さんと優太さんは冗談を交わし合い。
四ノ宮さんは、お腹がよほどお腹がすいていたのか、ガツガツと食べ始め、西原さんに怒られている。
学さんと透さんは、それを横目に穏やかな会話を楽しんでいた。

ふと、隣に悠人が立っていた。
「海斗、誕生日も結婚1周年もおめでとう。これからもっと幸せになれよ」

「うん、幸せになるよ」

悠人と過ごした日々を思い出す。あの雨の日、行く場所もなくて迷っていた僕を透さんがいる場所へ導いてくれた。
あの時、未来が見えなかった僕を支えてくれたのは透さんの愛だった。

いつの間にか隣にきてくれた透さんが僕の手を優しく握り、微笑んだ。その瞬間だけは、喧騒の中でも静かな幸せが広がった。

「去年、パートナーシップを交わしてからもう1年か。これからも……2人で幸せになろうな」

「うん。そうだね」

あの時の不安や不確かな未来が今ではしっかりと形になっていることに気づく。

「これからも、何度だって幸せになれる」
そう心の中でそっと誓いながら、透さんと歩むこれからの日々に、静かな光を見た。

これからの僕たちには未来という希望が満ち溢れている。


……完。


***


あとがき

ここまで長い間、読んでくださり、本当にありがとうございました。

この物語は本編で書ききれなかった「その後」を皆様の温かい反響に支えられて紡いできた番外編です。
海斗と透さんが少しずつ幸せを重ねていく様子を見守っていただけたこと、とても嬉しく思っています。

そして、今回のエピソードをもって、2人の物語はひとつの幕引きを迎えます。

彼らが出会い、悩み、苦しみ、そして共に歩む未来を手に入れるまでの道のりを、こうして最後まで見届けていただけたことに、心から感謝いたします。

日々の中にある「当たり前」の時間こそ、何よりの宝物なんだと感じていただけたら嬉しいです。

きっと彼らはこれからも、小さな幸せを見つけながら共に日々を生きていくことでしょう。

この物語が、少しでも誰かの心をあたためられたなら、それ以上の幸せはありません。
ここまで応援してくださった皆さまに深く感謝を込めて。

またどこか、物語の世界でお会いできる日を願ってます。

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感想 16

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みんなの感想(16件)

丼ママ
2025.07.26 丼ママ

17話ですが、「セフレ?本命?」のところが、
「セフレ?本名?」になってます〜

これはこれで面白いですがw

念の為、ご報告しておきまーす!

2025.07.26 なの

丼ママさん
ご報告ありがとうございます。
いやぁ〜見逃してました。教えてくれてありがとうございます。

解除
ハルハル
2025.05.04 ハルハル

番外編のラスト拝読させて頂きました。あれから1年後、とても幸せな気持ちになりました。自分も幸せな人生を送りたいと思います。
ホントありがとうございました。

2025.05.04 なの

ハルハルさん。コメントありがとうございます。

ハルハルさんの、これからの人生にも幸せが訪れますように♪

こちらこそお読みいただき本当にありがとうございました。

解除
ハルハル
2025.04.19 ハルハル

感動しました。こんな世の中になるといいですね。海斗くんと透さんの心境のみではなく、友達関係、親戚関係など全ての人達が2人の関係を応援している所に涙しました。

2025.04.22 なの

ハルハルさん、2回もコメントありがとうございます。とっても嬉しいです。こんなに応援して、祝福される2人。

本当に世の中もそうであってほしいですね。

解除

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