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これからも、ずっと隣で
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その日……悠真は、少しだけ落ち着かなかった。
「あの言葉がプロポーズだったのか?」
そんな問いが心のどこかでくすぶっていた。指輪ももらったけど……
落ち着かない気持ちを誤魔化すように右手の薬指の指輪を触った。
鷹臣はいつだって俺の知らないところで覚悟を決めてる……だから今度は俺が……ちゃんと返したいと思った。
***
舎弟たちは朝からピリついた空気を感じていた。
「……いよいよっすね」
「ああ。今日、兄貴……決める気だ」
屋敷全体が、なんとなく「空気読めモード」で張りつめていた。準備は完璧。あとは本人の「言葉」を乗せるだけ。
***
夜、いつものようにリビングのソファーで2人で並んで座っていた。
どこか落ち着かない沈黙。
けれどその間さえ、ふたりにとっては心地いい。
「……なあ、鷹臣」
「ん?」
「最近のお前、変だぞ」
「……またそれかよ」
「ちげぇよ悪い意味じゃない言葉が多くなった」
「……」
「昔はさ、あんま言わねぇのがお前らしさ。だったのに……」
悠真はコップを指先でいじりながら、ふと視線を外す。
「でもな、俺……お前の声とか、笑い方とか、全部が救いだったんだよ……お前がそばにいてくれたから、俺……ここにいられた」
「……」
「何気ない毎日とか名前呼んでくれる声とか。全部、特別でさ……お前がそばにいてくれたから俺は生きてていいって思えた」
鷹臣の手が、そっと悠真の手の上に重なる。
「俺も……お前がそばにいるから、ちゃんと生きようって思えた」
目が合った。言葉じゃ足りない想いが、そこにはあった。
「……だからさ俺から言わせて」
「え?」
悠真はポケットから小さな紙袋を取り出した。
中には細い鎖のペアネックレスだった。
「……これ、ずっと迷ってたけど俺も渡したくて」
「悠真……」
「だから、お前の気持ちが本当なら……俺ちゃんと受け取るから」
そのとき鷹臣は笑った。目元がゆるんで今までで一番あったかい顔だった。
「……先、越されたな」
「は?」
「俺も……あんだよ」
鷹臣は懐から小さな箱を取り出した。
ぱちん、と開くと、中にはシンプルな銀のペアリングだった。
「俺はお前の未来を守るだけじゃなくて、一緒に生きるって決めた。
……悠真。俺と家族になってくれ。名前も未来も、すべて俺と一緒に刻んでいこう」
息が詰まりそうなほど真っ直ぐな言葉だった。
悠真は、何か言おうとして言葉に詰まり喉の奥が熱くて視界がじわりと滲んだ。
「……バカ」
それが最初に出た言葉だった。
「ずっと、そうやって俺のこと甘やかして……勝手に先に覚悟決めて……」
「先じゃねぇよ」
鷹臣が少しだけ震える指で悠真の左手を取り、指輪をゆっくりはめた。
「とっくに俺はお前に誓ってた」
その声は低くて、けれど、どこまでも優しくて悠真は、もう涙を我慢できなかった。
「……俺もっ、誓うよ」
鷹臣の手をぎゅっと握り返し、もう片方のリングを鷹臣の指に通した。
「お前と一緒にい続ける。どんな未来でも隣にいるって決めた」
「……ああ」
ふたりは指と指を重ね額をそっと合わせた。
「……これで、ちゃんと夫婦だな」
この瞬間が永遠になるように。
***
その頃、廊下で舎弟たちは、ずらっと並んで耳を当てていた。
「……終わったか……?」
「静かになったな……てことは成功……?」
「いや、もしかして、その先に行ったんじゃ……」
「それ以上言うな!耳が穢れる!」
「でも……もう我慢できねぇ!」
「兄貴!おめでとうございますうううう!!」
ドアが勢いよく開いた。
「……っ!?」
ソファに並んで座っていた二人。悠真は目を潤ませたまま固まり、鷹臣は溜息混じりに額を押さえる。
「……てめぇら何やってんだ」
「いや、あの……祝福をですね!」
「余計なタイミングで来んなって何回言った?」
「ごめんなさいぃぃぃっ!!」
土下座。正座。感涙。
「……けどまあ、おめでとうって言いたい気持ちは嘘じゃないです!」
「本気で兄貴が幸せそうで、オレら……泣きそうで……!」
「実際ちょっと泣いてます!」
悠真はぽかんとしながら、つぶやいた。
「……お前ら、ずっと知ってたの?」
「はい。だいぶ前から」
「花の発注からドレスの手配から全部……」
「言うな言うな!!」と鷹臣が慌てて止める。
けれど悠真は――ゆっくりと笑った。
「……そっか。ありがとな」
「……悠真?」
「バレバレだったけど……嬉しかったよ全部」
そう言って隣の鷹臣の肩にもたれる。
「ずるいよな、ほんと……こんなの断れるわけねぇだろ」
鷹臣の表情が、ふわりと緩んだ。
「これから先、何があっても……お前の隣は、俺の場所だ」
「……うん」
「あの言葉がプロポーズだったのか?」
そんな問いが心のどこかでくすぶっていた。指輪ももらったけど……
落ち着かない気持ちを誤魔化すように右手の薬指の指輪を触った。
鷹臣はいつだって俺の知らないところで覚悟を決めてる……だから今度は俺が……ちゃんと返したいと思った。
***
舎弟たちは朝からピリついた空気を感じていた。
「……いよいよっすね」
「ああ。今日、兄貴……決める気だ」
屋敷全体が、なんとなく「空気読めモード」で張りつめていた。準備は完璧。あとは本人の「言葉」を乗せるだけ。
***
夜、いつものようにリビングのソファーで2人で並んで座っていた。
どこか落ち着かない沈黙。
けれどその間さえ、ふたりにとっては心地いい。
「……なあ、鷹臣」
「ん?」
「最近のお前、変だぞ」
「……またそれかよ」
「ちげぇよ悪い意味じゃない言葉が多くなった」
「……」
「昔はさ、あんま言わねぇのがお前らしさ。だったのに……」
悠真はコップを指先でいじりながら、ふと視線を外す。
「でもな、俺……お前の声とか、笑い方とか、全部が救いだったんだよ……お前がそばにいてくれたから、俺……ここにいられた」
「……」
「何気ない毎日とか名前呼んでくれる声とか。全部、特別でさ……お前がそばにいてくれたから俺は生きてていいって思えた」
鷹臣の手が、そっと悠真の手の上に重なる。
「俺も……お前がそばにいるから、ちゃんと生きようって思えた」
目が合った。言葉じゃ足りない想いが、そこにはあった。
「……だからさ俺から言わせて」
「え?」
悠真はポケットから小さな紙袋を取り出した。
中には細い鎖のペアネックレスだった。
「……これ、ずっと迷ってたけど俺も渡したくて」
「悠真……」
「だから、お前の気持ちが本当なら……俺ちゃんと受け取るから」
そのとき鷹臣は笑った。目元がゆるんで今までで一番あったかい顔だった。
「……先、越されたな」
「は?」
「俺も……あんだよ」
鷹臣は懐から小さな箱を取り出した。
ぱちん、と開くと、中にはシンプルな銀のペアリングだった。
「俺はお前の未来を守るだけじゃなくて、一緒に生きるって決めた。
……悠真。俺と家族になってくれ。名前も未来も、すべて俺と一緒に刻んでいこう」
息が詰まりそうなほど真っ直ぐな言葉だった。
悠真は、何か言おうとして言葉に詰まり喉の奥が熱くて視界がじわりと滲んだ。
「……バカ」
それが最初に出た言葉だった。
「ずっと、そうやって俺のこと甘やかして……勝手に先に覚悟決めて……」
「先じゃねぇよ」
鷹臣が少しだけ震える指で悠真の左手を取り、指輪をゆっくりはめた。
「とっくに俺はお前に誓ってた」
その声は低くて、けれど、どこまでも優しくて悠真は、もう涙を我慢できなかった。
「……俺もっ、誓うよ」
鷹臣の手をぎゅっと握り返し、もう片方のリングを鷹臣の指に通した。
「お前と一緒にい続ける。どんな未来でも隣にいるって決めた」
「……ああ」
ふたりは指と指を重ね額をそっと合わせた。
「……これで、ちゃんと夫婦だな」
この瞬間が永遠になるように。
***
その頃、廊下で舎弟たちは、ずらっと並んで耳を当てていた。
「……終わったか……?」
「静かになったな……てことは成功……?」
「いや、もしかして、その先に行ったんじゃ……」
「それ以上言うな!耳が穢れる!」
「でも……もう我慢できねぇ!」
「兄貴!おめでとうございますうううう!!」
ドアが勢いよく開いた。
「……っ!?」
ソファに並んで座っていた二人。悠真は目を潤ませたまま固まり、鷹臣は溜息混じりに額を押さえる。
「……てめぇら何やってんだ」
「いや、あの……祝福をですね!」
「余計なタイミングで来んなって何回言った?」
「ごめんなさいぃぃぃっ!!」
土下座。正座。感涙。
「……けどまあ、おめでとうって言いたい気持ちは嘘じゃないです!」
「本気で兄貴が幸せそうで、オレら……泣きそうで……!」
「実際ちょっと泣いてます!」
悠真はぽかんとしながら、つぶやいた。
「……お前ら、ずっと知ってたの?」
「はい。だいぶ前から」
「花の発注からドレスの手配から全部……」
「言うな言うな!!」と鷹臣が慌てて止める。
けれど悠真は――ゆっくりと笑った。
「……そっか。ありがとな」
「……悠真?」
「バレバレだったけど……嬉しかったよ全部」
そう言って隣の鷹臣の肩にもたれる。
「ずるいよな、ほんと……こんなの断れるわけねぇだろ」
鷹臣の表情が、ふわりと緩んだ。
「これから先、何があっても……お前の隣は、俺の場所だ」
「……うん」
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