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第4話:もふもふ里デビュー
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朝食を終えると、ゼルが外套を肩にかけてくれた。
「ユナ。……行くぞ」
「え、どこに!?」
「里の案内だ。必要だろう」
外へ出ると、朝の光が雪を照らし、キラキラと反射していた。冷たい空気なのに、どこかあったかい。
(……すごい。ほんとに絵本の世界みたいだ)
村のあちこちで、煙突の煙がゆらゆらと上がり、獣人や精霊たちが朝の支度をしていた。
「ゼル様、おはようございます!」
「その子がユナくん?」
「人間ってほんとに珍しい~!見せて見せて!」
「え、え、な、なんか視線が多い……!」
ゼルは俺の腕をそっと引いて、身体を自分の前に隠す。
「見るな」
しかし、すでに好奇心たっぷりの子どもから大人まで、もふもふたちが集まってきていた。
「ユナくん、寒くない?これ食べる?」と、リス獣人のおばあちゃんがクッキーをくれた。
「ユナ兄ちゃん、背中に乗っていい?」と、ウサギ獣人の子どもがぴょんぴょん跳ねる。
「匂い嗅いでいい?」
と、犬獣人のお兄さんが近づいてきて――
「嗅ぐな!!」
ゼルの声が炸裂した。
「ねぇゼルさん、さっきから制限ワードが多いんですけど!!」
「当然だ。ユナは俺の番だ」
「だから勝手に決めないでってば!!」
周囲のもふもふ達は、くすくす笑っている。
「ゼル様って本当に独占欲強いよねぇ」
「でも、ユナくん可愛いしね~」
「わかる!ずっと見てられる!」
「見ないで!!?」
思わず自分で言ってしまった。するとゼルが満足そうに頷く。
「そうだ。見るな」
「いや俺のセリフ!!」
市場に来ると、もっと大変だった。
「ユナく~ん、これ着てみて!」と、服屋の狐獣人が大判のマフラーを巻きつけてきた。
「ユナくんの髪、ふわふわだね」と、猫獣人の少女が髪を触りたそうに手を伸ばす。
「ねぇユナくん、ちょっと耳元でささやいてみて?」
と、イタズラ好きの妖精まで飛んでくる。
「え、ささやくってなに!?なんでみんな距離近いの!!」
ゼルは俺の手をがっしり握った。
「触るな。近い。離れろ」
明らかにたてがみが逆立ってる。
「ゼルさん、圧がすごいよ!?」
「おまえが危ない」
「どこが!?むしろ俺が押し負けてるだけで危険は感じてない!!」
ゼルは俺の身体をぐっと引き寄せると胸に背中が当たって、どきっとしてしまう。
「……ユナ。帰る」
「早い!!?え、もう散策終わり!?5分くらいしか歩いてないよ!!」
「充分だ。おまえが……よそ見ばかりするから」
「えっ!?」
ゼルはそっぽを向く、耳がほんのり赤いのが、雪の光に透けて見えた。
(……この人、無表情なのに感情丸わかりなんだよな……)
人気(ひとけ)から逃れるように、森の方へ歩く。静かで、雪の粒がふわふわと落ちてきて、ゼルの白い髪にそっと積もった。
「……ユナ」
「なに?」
「……嫌か?」
「何が?」
「その……里の連中が、おまえに触れようとしたこと」
珍しく歯切れが悪いし、声が少し小さい。
俺は笑って言った。
「別に嫌じゃないよ。みんな優しかったし、あったかかったし」
「…………」
ゼルの眉がわずかに下がり、何か言いたそうなのに言えない顔。
なんとなく少し悪戯してみたくなる。
「でもさ……」
ゼルがこちらを見る。
「一番あったかいのは、ゼルだったけどね」
「――っ」
見たことないくらい、ゼルが固まった。顔が、耳が、尻尾の先まで真っ赤。
「ゼル?」
「……ユナ。……帰るぞ、寒いからな」
「いや寒くないよね!?今のは恥ずかしくて逃げたいだけだよね!!」
それでもゼルは俺の手をぎゅっと握った。
「……ユナは、俺だけ見ていればいい。」
誰にも聞こえないくらいの声で、そう囁いた。
(ずるい……こんなん言われたら……)
胸がぽかぽかして、俺まで顔が赤くなる。雪が静かに降る中、ゼルと俺は並んで家へ帰った。
――もふもふの里での生活は、どうやらまだまだ騒がしく、あったかくなりそうだ。
「ユナ。……行くぞ」
「え、どこに!?」
「里の案内だ。必要だろう」
外へ出ると、朝の光が雪を照らし、キラキラと反射していた。冷たい空気なのに、どこかあったかい。
(……すごい。ほんとに絵本の世界みたいだ)
村のあちこちで、煙突の煙がゆらゆらと上がり、獣人や精霊たちが朝の支度をしていた。
「ゼル様、おはようございます!」
「その子がユナくん?」
「人間ってほんとに珍しい~!見せて見せて!」
「え、え、な、なんか視線が多い……!」
ゼルは俺の腕をそっと引いて、身体を自分の前に隠す。
「見るな」
しかし、すでに好奇心たっぷりの子どもから大人まで、もふもふたちが集まってきていた。
「ユナくん、寒くない?これ食べる?」と、リス獣人のおばあちゃんがクッキーをくれた。
「ユナ兄ちゃん、背中に乗っていい?」と、ウサギ獣人の子どもがぴょんぴょん跳ねる。
「匂い嗅いでいい?」
と、犬獣人のお兄さんが近づいてきて――
「嗅ぐな!!」
ゼルの声が炸裂した。
「ねぇゼルさん、さっきから制限ワードが多いんですけど!!」
「当然だ。ユナは俺の番だ」
「だから勝手に決めないでってば!!」
周囲のもふもふ達は、くすくす笑っている。
「ゼル様って本当に独占欲強いよねぇ」
「でも、ユナくん可愛いしね~」
「わかる!ずっと見てられる!」
「見ないで!!?」
思わず自分で言ってしまった。するとゼルが満足そうに頷く。
「そうだ。見るな」
「いや俺のセリフ!!」
市場に来ると、もっと大変だった。
「ユナく~ん、これ着てみて!」と、服屋の狐獣人が大判のマフラーを巻きつけてきた。
「ユナくんの髪、ふわふわだね」と、猫獣人の少女が髪を触りたそうに手を伸ばす。
「ねぇユナくん、ちょっと耳元でささやいてみて?」
と、イタズラ好きの妖精まで飛んでくる。
「え、ささやくってなに!?なんでみんな距離近いの!!」
ゼルは俺の手をがっしり握った。
「触るな。近い。離れろ」
明らかにたてがみが逆立ってる。
「ゼルさん、圧がすごいよ!?」
「おまえが危ない」
「どこが!?むしろ俺が押し負けてるだけで危険は感じてない!!」
ゼルは俺の身体をぐっと引き寄せると胸に背中が当たって、どきっとしてしまう。
「……ユナ。帰る」
「早い!!?え、もう散策終わり!?5分くらいしか歩いてないよ!!」
「充分だ。おまえが……よそ見ばかりするから」
「えっ!?」
ゼルはそっぽを向く、耳がほんのり赤いのが、雪の光に透けて見えた。
(……この人、無表情なのに感情丸わかりなんだよな……)
人気(ひとけ)から逃れるように、森の方へ歩く。静かで、雪の粒がふわふわと落ちてきて、ゼルの白い髪にそっと積もった。
「……ユナ」
「なに?」
「……嫌か?」
「何が?」
「その……里の連中が、おまえに触れようとしたこと」
珍しく歯切れが悪いし、声が少し小さい。
俺は笑って言った。
「別に嫌じゃないよ。みんな優しかったし、あったかかったし」
「…………」
ゼルの眉がわずかに下がり、何か言いたそうなのに言えない顔。
なんとなく少し悪戯してみたくなる。
「でもさ……」
ゼルがこちらを見る。
「一番あったかいのは、ゼルだったけどね」
「――っ」
見たことないくらい、ゼルが固まった。顔が、耳が、尻尾の先まで真っ赤。
「ゼル?」
「……ユナ。……帰るぞ、寒いからな」
「いや寒くないよね!?今のは恥ずかしくて逃げたいだけだよね!!」
それでもゼルは俺の手をぎゅっと握った。
「……ユナは、俺だけ見ていればいい。」
誰にも聞こえないくらいの声で、そう囁いた。
(ずるい……こんなん言われたら……)
胸がぽかぽかして、俺まで顔が赤くなる。雪が静かに降る中、ゼルと俺は並んで家へ帰った。
――もふもふの里での生活は、どうやらまだまだ騒がしく、あったかくなりそうだ。
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