もふもふ守護獣と運命の出会い—ある日、青年は異世界で大きな毛玉と恋に落ちた—

なの

文字の大きさ
4 / 7

第4話:もふもふ里デビュー

しおりを挟む
朝食を終えると、ゼルが外套を肩にかけてくれた。

「ユナ。……行くぞ」

「え、どこに!?」

「里の案内だ。必要だろう」

外へ出ると、朝の光が雪を照らし、キラキラと反射していた。冷たい空気なのに、どこかあったかい。

(……すごい。ほんとに絵本の世界みたいだ)

村のあちこちで、煙突の煙がゆらゆらと上がり、獣人や精霊たちが朝の支度をしていた。

「ゼル様、おはようございます!」
「その子がユナくん?」
「人間ってほんとに珍しい~!見せて見せて!」

「え、え、な、なんか視線が多い……!」

ゼルは俺の腕をそっと引いて、身体を自分の前に隠す。

「見るな」

しかし、すでに好奇心たっぷりの子どもから大人まで、もふもふたちが集まってきていた。

「ユナくん、寒くない?これ食べる?」と、リス獣人のおばあちゃんがクッキーをくれた。

「ユナ兄ちゃん、背中に乗っていい?」と、ウサギ獣人の子どもがぴょんぴょん跳ねる。

「匂い嗅いでいい?」
と、犬獣人のお兄さんが近づいてきて――

「嗅ぐな!!」

ゼルの声が炸裂した。

「ねぇゼルさん、さっきから制限ワードが多いんですけど!!」

「当然だ。ユナは俺の番だ」

「だから勝手に決めないでってば!!」

周囲のもふもふ達は、くすくす笑っている。

「ゼル様って本当に独占欲強いよねぇ」
「でも、ユナくん可愛いしね~」
「わかる!ずっと見てられる!」

「見ないで!!?」

思わず自分で言ってしまった。するとゼルが満足そうに頷く。

「そうだ。見るな」

「いや俺のセリフ!!」



市場に来ると、もっと大変だった。

「ユナく~ん、これ着てみて!」と、服屋の狐獣人が大判のマフラーを巻きつけてきた。

「ユナくんの髪、ふわふわだね」と、猫獣人の少女が髪を触りたそうに手を伸ばす。

「ねぇユナくん、ちょっと耳元でささやいてみて?」
と、イタズラ好きの妖精まで飛んでくる。

「え、ささやくってなに!?なんでみんな距離近いの!!」

ゼルは俺の手をがっしり握った。

「触るな。近い。離れろ」

明らかにたてがみが逆立ってる。

「ゼルさん、圧がすごいよ!?」

「おまえが危ない」

「どこが!?むしろ俺が押し負けてるだけで危険は感じてない!!」

ゼルは俺の身体をぐっと引き寄せると胸に背中が当たって、どきっとしてしまう。

「……ユナ。帰る」

「早い!!?え、もう散策終わり!?5分くらいしか歩いてないよ!!」

「充分だ。おまえが……よそ見ばかりするから」

「えっ!?」

ゼルはそっぽを向く、耳がほんのり赤いのが、雪の光に透けて見えた。

(……この人、無表情なのに感情丸わかりなんだよな……)

人気(ひとけ)から逃れるように、森の方へ歩く。静かで、雪の粒がふわふわと落ちてきて、ゼルの白い髪にそっと積もった。

「……ユナ」

「なに?」

「……嫌か?」

「何が?」

「その……里の連中が、おまえに触れようとしたこと」

珍しく歯切れが悪いし、声が少し小さい。

俺は笑って言った。

「別に嫌じゃないよ。みんな優しかったし、あったかかったし」

「…………」

ゼルの眉がわずかに下がり、何か言いたそうなのに言えない顔。

なんとなく少し悪戯してみたくなる。

「でもさ……」

ゼルがこちらを見る。

「一番あったかいのは、ゼルだったけどね」

「――っ」

見たことないくらい、ゼルが固まった。顔が、耳が、尻尾の先まで真っ赤。

「ゼル?」

「……ユナ。……帰るぞ、寒いからな」

「いや寒くないよね!?今のは恥ずかしくて逃げたいだけだよね!!」

それでもゼルは俺の手をぎゅっと握った。

「……ユナは、俺だけ見ていればいい。」

誰にも聞こえないくらいの声で、そう囁いた。

(ずるい……こんなん言われたら……)

胸がぽかぽかして、俺まで顔が赤くなる。雪が静かに降る中、ゼルと俺は並んで家へ帰った。

――もふもふの里での生活は、どうやらまだまだ騒がしく、あったかくなりそうだ。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうか溺れる恋をして

ユナタカ
BL
失って、後悔して。 何度1人きりの部屋で泣いていても、もう君は帰らない。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

ゆい
BL
涙が落ちる。 涙は彼に届くことはない。 彼を想うことは、これでやめよう。 何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。 僕は、その場から音を立てずに立ち去った。 僕はアシェル=オルスト。 侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。 彼には、他に愛する人がいた。 世界観は、【夜空と暁と】と同じです。 アルサス達がでます。 【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。 2025.4.28 ムーンライトノベルに投稿しました。

人生はままならない

野埜乃のの
BL
「おまえとは番にならない」 結婚して迎えた初夜。彼はそう僕にそう告げた。 異世界オメガバース ツイノベです

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

グラジオラスを捧ぐ

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
憧れの騎士、アレックスと恋人のような関係になれたリヒターは浮かれていた。まさか彼に本命の相手がいるとも知らずに……。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...