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皇太子アルフォンス。
騎士ギルバート。
魔術師ルシアン。
学園が誇る、最も優秀で、最も美しく、そして最も面倒なイケメン三人が、一人の令嬢に執着している。
その噂は、瞬く間に学園中を駆け巡っていた。
「まあ、聞いた? あのセレスティナ様が、御三方を……」
「逆ハーレムですって! さすがはヴァイスハイト公爵令嬢ね!」
「でも、あの方、いつも『面倒』としかおっしゃらないのに……」
この状況を、一人、満面の笑みで眺めている人物がいた。
聖女、ミレイナ・ハートである。
(ふふふ……! やっぱり、皆、セレスティナ様の魅力に気づき始めたんだわ!)
彼女は、自分の「布教活動」の成果に、深く満足していた。
(でも、まだまだ足りないわ!)
(殿方たちは、セレスティナ様の「塩対応」という名の「奥ゆかしさ」を、まだ誤解しているかもしれない!)
ミレイナは、決意した。
三人のイケメンたちに対し、セレスティナ様の魅力を、より深く、より正しく(勘違いして)伝える必要がある、と。
こうして、ミレイナを会長兼、唯一の正会員とする、非公式ファンクラブ。
「セレスティナ様の魅力を(勝手に)伝える会」が、秘密裏に発足された。
そして、その日の昼休み。
ミレイナは、なぜか、三人の攻略対象を、中庭の大樹の下(セレスティナが諦めた場所)に呼び出していた。
「……何の用だ、ハート嬢。私は多忙なのだが」
皇太子アルフォンスが、少し不機嫌そうに腕を組む。
「フン。皇太子までいやがる。面倒な集まりだ」
ギルバートが、壁に寄りかかり、そっぽを向いている。
「ククッ。これは面白い組み合わせだね。で、聖女様。我々を集めて、一体何の研究発表かな?」
ルシアンだけが、楽しそうに状況を観察している。
三者三様の、ピリピリとした空気。
その中心で、ミレイナは、輝くような笑顔で、高らかに宣言した。
「第一回! 『セレスティナ様の魅力報告会』を、開催いたします!」
「「「……は?」」」
三人の声が、綺麗にハモった。
「それでは、早速、ご報告に移ります!」
ミレイナは、どこから取り出したのか、小さな手帳(セレスティナ様観察日記)を開いた。
「まずは、皇太子殿下とのエピソードから!」
「(む……!)」
アルフォンスが、わずかに身を乗り出す。
「先日! 殿下が、セレスティナ様に、たくさんの宝石やドレスをお贈りになられましたね!」
「ああ、そうだが……」
「その時、セレスティナ様は、こうおっしゃったそうです! 『こんなに頂いても、手入れが面倒ですので』と!」
ギルバートが「プッ」と噴き出し、ルシアンが「あはは!」と声を上げて笑った。
アルフォンスの顔が、わずかに赤くなる。
「な、なんだ、その言い草は……」
ギルバートが、面白そうに煽る。
だが、ミレイナは、興奮した様子で、拳を握りしめた。
「皆様! これこそが、セレスティナ様の『謙虚さ』と『倹約の精神』の表れです!」
「「「……え?」」」
「普通の令嬢なら、あんな宝の山を前に、我を忘れて喜びます! ですが、セレスティナ様は違いました!」
「(そ、そうだ! そうなんだ!)」
アルフォンスが、ミレイナの言葉に、激しく頷く。
「『手入れが面倒』……それはつまり、『こんな高価な物を管理する、侍女たちの手間を心配する』という、深いお心遣いなんです!」
「(おお……! なんという、臣下思い……!)」
アルフォンスは、ミレイナの完璧な解説(勘違い)に、再び感動に打ち震えた。
「次! ギルバート様のエピソードです!」
「……俺かよ」
ギルバートが、面倒くさそうに顔を上げた。
「先日! アシュフォード様が、セレスティナ様を『壁ドン』なさいましたね!」
「「(壁ドン……!?)」」
アルフォンスとルシアンの視線が、ギルバートに突き刺さる。
「(なっ……! こいつ、どこで見てやがった!)」
ギルバートが、さすがに狼狽する。
「その時、セレスティナ様は、何とおっしゃったか!」
ミレイナは、うっとりとした表情で、そのセリフを復唱した。
「『その壁の修繕費は、騎士科持ちですか』……と!」
「「…………」」
アルフォンスとルシアンが、絶句した。
「く、くくっ……! あはははは! 最高だ、彼女は!」
ルシアンが、腹を抱えて笑い転げる。
「(……くそっ! やはり、あの時のことか!)」
ギルバートの顔が、屈辱で赤く染まる。
だが、ミレイナは、真剣な顔で続けた。
「皆様! これこそが、セレスティナ様の『冷静沈着さ』の表れです!」
「……は?」
「殿方に、あんな情熱的に迫られても、決して取り乱さない! それどころか、破損した器物の心配(コスト管理)をなさるなんて! なんて、現実的で、地に足の着いたお考えでしょう!」
「(……そ、そうか? そういうことだったのか?)」
ギルバートは、自分の狼狽が恥ずかしくなるような、ミレイナの解説(勘違い)に、困惑した。
(フン……。確かに、あんな状況で『修繕費』とか言う女、普通じゃねえ。……やはり、面白い女だ)
彼は、自分の中で、そう結論付けた。
「最後は、ルシアン先生です!」
「おや、私まであるのかい?」
「先生が、研究室へお誘いした時、セレスティナ様は『面倒なので』と、バッサリお断りなさいました!」
「ああ、したね。実に清々しいほどに」
ルシアンが、楽しそうに頷く。
「これこそが! セレスティナ様の『強い意志』の表れです!」
ミレイナが、ビシッと指を差す。
「天才魔術師である先生のお誘いを、物怖じせずに断る! なんて、肝が据わっていらっしゃるんでしょう! 他の誰にも媚びない、孤高の精神! 素敵です!」
「(……ククッ。なるほど、『面倒』とは『私はあなたになびかない』という、孤高のサインだったわけか)」
ルシアンは、その解釈(勘違い)に、心底満足した。
三者三様の勘違いが、聖女ミレイナによって、完璧に補強されていく。
「そして! 本日のご報告ですが!」
ミレイナが、興奮で頬を染める。
「今朝のセレスティナ様は、教室の窓際で、紅茶を飲んでいらっしゃいました! そのお姿が、また、最高にクールで……!」
「少し、眠そうに目を伏せられて……」
その一言に、三人が、同時に反応した。
(眠そう……だと!?)
アルフォンスが、目を見開く。
(ああ、やはり! 私が毎日会いに行くせいで、彼女は、嬉しくて夜も眠れないのでは!? なんということだ! 俺が、彼女を癒さねば!)
(眠そう?……フン)
ギルバートが、口の端を吊り上げる。
(あの氷の女が、そんな隙だらけの顔を……。……俺以外の男の前で、見せてんじゃねえよ。さっさと、俺が奪ってやる)
(眠い……か)
ルシアンが、目を細める。
(やはり、あの膨大な魔力を、常時隠蔽し続けるのは、精神力を消耗するんだろう。……ああ、早く、その仮面を剥がして、本物の君を解析したい……!)
三人の男たちが、セレスティナへの(間違った)想いを胸に、バチバチと火花を散らし始める。
「「「……」」」
「ふふっ! 皆様、セレスティナ様の魅力、お分かりいただけましたよね!」
ミレイナは、三人が(自分のおかげで)セレスティナの魅力に取り憑かれていると、大満足の笑顔を浮かべた。
「皆様! どうか、これからも、仲良く! セレスティナ様のことを、応援してあげてくださいね!」
この聖女(トラブルメーカー)が、逆ハーレム展開を、全力で盛り上げていることに、まだ誰も気づいていなかった。
その頃。
セレスティナは、ついに見つけた安息の地――管理が放棄された、古い物置小屋の裏手の日陰で。
(……ああ。今日は、なんて静かなのかしら)
誰にも邪魔されない、つかの間の平穏に、ようやく安堵の息をつき、ゆっくりと眠りに落ちようとしていた。
騎士ギルバート。
魔術師ルシアン。
学園が誇る、最も優秀で、最も美しく、そして最も面倒なイケメン三人が、一人の令嬢に執着している。
その噂は、瞬く間に学園中を駆け巡っていた。
「まあ、聞いた? あのセレスティナ様が、御三方を……」
「逆ハーレムですって! さすがはヴァイスハイト公爵令嬢ね!」
「でも、あの方、いつも『面倒』としかおっしゃらないのに……」
この状況を、一人、満面の笑みで眺めている人物がいた。
聖女、ミレイナ・ハートである。
(ふふふ……! やっぱり、皆、セレスティナ様の魅力に気づき始めたんだわ!)
彼女は、自分の「布教活動」の成果に、深く満足していた。
(でも、まだまだ足りないわ!)
(殿方たちは、セレスティナ様の「塩対応」という名の「奥ゆかしさ」を、まだ誤解しているかもしれない!)
ミレイナは、決意した。
三人のイケメンたちに対し、セレスティナ様の魅力を、より深く、より正しく(勘違いして)伝える必要がある、と。
こうして、ミレイナを会長兼、唯一の正会員とする、非公式ファンクラブ。
「セレスティナ様の魅力を(勝手に)伝える会」が、秘密裏に発足された。
そして、その日の昼休み。
ミレイナは、なぜか、三人の攻略対象を、中庭の大樹の下(セレスティナが諦めた場所)に呼び出していた。
「……何の用だ、ハート嬢。私は多忙なのだが」
皇太子アルフォンスが、少し不機嫌そうに腕を組む。
「フン。皇太子までいやがる。面倒な集まりだ」
ギルバートが、壁に寄りかかり、そっぽを向いている。
「ククッ。これは面白い組み合わせだね。で、聖女様。我々を集めて、一体何の研究発表かな?」
ルシアンだけが、楽しそうに状況を観察している。
三者三様の、ピリピリとした空気。
その中心で、ミレイナは、輝くような笑顔で、高らかに宣言した。
「第一回! 『セレスティナ様の魅力報告会』を、開催いたします!」
「「「……は?」」」
三人の声が、綺麗にハモった。
「それでは、早速、ご報告に移ります!」
ミレイナは、どこから取り出したのか、小さな手帳(セレスティナ様観察日記)を開いた。
「まずは、皇太子殿下とのエピソードから!」
「(む……!)」
アルフォンスが、わずかに身を乗り出す。
「先日! 殿下が、セレスティナ様に、たくさんの宝石やドレスをお贈りになられましたね!」
「ああ、そうだが……」
「その時、セレスティナ様は、こうおっしゃったそうです! 『こんなに頂いても、手入れが面倒ですので』と!」
ギルバートが「プッ」と噴き出し、ルシアンが「あはは!」と声を上げて笑った。
アルフォンスの顔が、わずかに赤くなる。
「な、なんだ、その言い草は……」
ギルバートが、面白そうに煽る。
だが、ミレイナは、興奮した様子で、拳を握りしめた。
「皆様! これこそが、セレスティナ様の『謙虚さ』と『倹約の精神』の表れです!」
「「「……え?」」」
「普通の令嬢なら、あんな宝の山を前に、我を忘れて喜びます! ですが、セレスティナ様は違いました!」
「(そ、そうだ! そうなんだ!)」
アルフォンスが、ミレイナの言葉に、激しく頷く。
「『手入れが面倒』……それはつまり、『こんな高価な物を管理する、侍女たちの手間を心配する』という、深いお心遣いなんです!」
「(おお……! なんという、臣下思い……!)」
アルフォンスは、ミレイナの完璧な解説(勘違い)に、再び感動に打ち震えた。
「次! ギルバート様のエピソードです!」
「……俺かよ」
ギルバートが、面倒くさそうに顔を上げた。
「先日! アシュフォード様が、セレスティナ様を『壁ドン』なさいましたね!」
「「(壁ドン……!?)」」
アルフォンスとルシアンの視線が、ギルバートに突き刺さる。
「(なっ……! こいつ、どこで見てやがった!)」
ギルバートが、さすがに狼狽する。
「その時、セレスティナ様は、何とおっしゃったか!」
ミレイナは、うっとりとした表情で、そのセリフを復唱した。
「『その壁の修繕費は、騎士科持ちですか』……と!」
「「…………」」
アルフォンスとルシアンが、絶句した。
「く、くくっ……! あはははは! 最高だ、彼女は!」
ルシアンが、腹を抱えて笑い転げる。
「(……くそっ! やはり、あの時のことか!)」
ギルバートの顔が、屈辱で赤く染まる。
だが、ミレイナは、真剣な顔で続けた。
「皆様! これこそが、セレスティナ様の『冷静沈着さ』の表れです!」
「……は?」
「殿方に、あんな情熱的に迫られても、決して取り乱さない! それどころか、破損した器物の心配(コスト管理)をなさるなんて! なんて、現実的で、地に足の着いたお考えでしょう!」
「(……そ、そうか? そういうことだったのか?)」
ギルバートは、自分の狼狽が恥ずかしくなるような、ミレイナの解説(勘違い)に、困惑した。
(フン……。確かに、あんな状況で『修繕費』とか言う女、普通じゃねえ。……やはり、面白い女だ)
彼は、自分の中で、そう結論付けた。
「最後は、ルシアン先生です!」
「おや、私まであるのかい?」
「先生が、研究室へお誘いした時、セレスティナ様は『面倒なので』と、バッサリお断りなさいました!」
「ああ、したね。実に清々しいほどに」
ルシアンが、楽しそうに頷く。
「これこそが! セレスティナ様の『強い意志』の表れです!」
ミレイナが、ビシッと指を差す。
「天才魔術師である先生のお誘いを、物怖じせずに断る! なんて、肝が据わっていらっしゃるんでしょう! 他の誰にも媚びない、孤高の精神! 素敵です!」
「(……ククッ。なるほど、『面倒』とは『私はあなたになびかない』という、孤高のサインだったわけか)」
ルシアンは、その解釈(勘違い)に、心底満足した。
三者三様の勘違いが、聖女ミレイナによって、完璧に補強されていく。
「そして! 本日のご報告ですが!」
ミレイナが、興奮で頬を染める。
「今朝のセレスティナ様は、教室の窓際で、紅茶を飲んでいらっしゃいました! そのお姿が、また、最高にクールで……!」
「少し、眠そうに目を伏せられて……」
その一言に、三人が、同時に反応した。
(眠そう……だと!?)
アルフォンスが、目を見開く。
(ああ、やはり! 私が毎日会いに行くせいで、彼女は、嬉しくて夜も眠れないのでは!? なんということだ! 俺が、彼女を癒さねば!)
(眠そう?……フン)
ギルバートが、口の端を吊り上げる。
(あの氷の女が、そんな隙だらけの顔を……。……俺以外の男の前で、見せてんじゃねえよ。さっさと、俺が奪ってやる)
(眠い……か)
ルシアンが、目を細める。
(やはり、あの膨大な魔力を、常時隠蔽し続けるのは、精神力を消耗するんだろう。……ああ、早く、その仮面を剥がして、本物の君を解析したい……!)
三人の男たちが、セレスティナへの(間違った)想いを胸に、バチバチと火花を散らし始める。
「「「……」」」
「ふふっ! 皆様、セレスティナ様の魅力、お分かりいただけましたよね!」
ミレイナは、三人が(自分のおかげで)セレスティナの魅力に取り憑かれていると、大満足の笑顔を浮かべた。
「皆様! どうか、これからも、仲良く! セレスティナ様のことを、応援してあげてくださいね!」
この聖女(トラブルメーカー)が、逆ハーレム展開を、全力で盛り上げていることに、まだ誰も気づいていなかった。
その頃。
セレスティナは、ついに見つけた安息の地――管理が放棄された、古い物置小屋の裏手の日陰で。
(……ああ。今日は、なんて静かなのかしら)
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