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14.運命の出会い side スヴェイン&レティシア

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 sideスヴェイン



 今日は、第二王子の視察の護衛として街に来ていた。


 しばらくお忍びの視察をした夕暮れ時。薄明かりが街を包み込む中、帰城の時間が迫ってきた。迎えの者がやって来て、引き継ぎを行う。


 ああ、明日はレティの家に行く日だな。


 まだ店が開いている時間だ。手土産を買いに行こう。

 レティのお気に入りの店に入ると、彼女の瞳の色を思わせるブルーサファイヤのピアスを見つけ、心が躍った。


 これだ!  


 いい買い物をしたといい気分で外に出ると、夕陽に照らされた街並みの中、ふと目に入ったのは花屋だった。


 明日は邸の花も持っていこうと思っていたが、珍しい花を見つけられるかもしれない。ちょっとだけ覗いていこう。


 店先で、真剣に花を選んでいると、花屋の店員がこちらをじっと見ていた。少し迷ってから、どの花がいいか尋ねてみた。

「白いバラはどうですか」

 店員の言葉に、ふと思った。そういえば、レティに白いバラを贈ったことはなかった。いつもは他の花を選んでいたから、これは新鮮だな。よし、これにしよう。


 バラの花束を作ってもらい、枯れないように邸の者に頼もうと急いで帰路についた。






 *****



 sideレティシア



「お嬢様、こちらがスヴェイン様の昨日についての報告書です」


 スヴェイン様に会えない日には、配下の者がスヴェイン様の記録を報告してくれる。

 勿論、配下の者にはプライバシーを守るよう厳しく指示している。
 報告には、彼の一日の行動や健康状態、特別な出来事が記されているが、決して彼の内面に踏み込むようなものではない。彼の尊厳を損なわないことは最優先だ。それでも、たとえ短い文章の中にでも、彼の気配を感じ取れる瞬間が嬉しい。



 報告書を広げ、さらりと目を通す。




『王都の静かな夕暮れ、風が街角を軽やかに吹き抜ける中、花屋の小さな店先には色とりどりの花々が並んでいた。そこには、平民の少女、リリアが一心に花を整えていた。彼女の手つきは優しく、まるで花々が彼女に応えるかのように、艶やかな色を放っている。花を見つめ目をキラキラさせている素朴な姿は、純粋そのものだった。

 その日は、近衛騎士隊長であるスヴェイン様が、第2王子の護衛として命を受けて王都の街を歩いていた。


 彼の鋭い目は、どんな危険も見逃さないが、その目線がふと、街角の花屋に向けられる。


 彼の視線がリリアに引き寄せられるのを、リリアは無意識に感じ取った。

 彼女は一瞬、仕事の手を止め、通りすがりの騎士に目を向ける。彼の装甲は煌びやかで、威厳に満ちた姿。だが、その目に映るのは、どこか孤独を抱えたような深い闇だった。

 彼が近くを通ると、リリアの心臓が少しだけ高鳴る。騎士の近くで仕事をすることなど滅多にないことだったからだ。


 スヴェイン様は、仕事が終わり、王子帰城の引継ぎを終えると花屋に向かった。



「花を買いたいのだが、どれがおすすめだ?」


 スヴェイン様の声は、硬さを感じさせるが、どこか柔らかさもあった。

 リリアは目の前の花を見つめ、少しだけ考えた後、答えた。


「これがいいかと……」


 指差したのは、優雅に花開く白いバラ。彼女はその花を特別に感じていた。



「白いバラか。清らかで美しい花だな」


 スヴェイン様はその花を手に取ると、少し笑みを浮かべた。


 リリアは、花を包みながら彼の視線を感じ、少し照れくさそうに顔を上げた。花束を抱えるスヴェイン様に彼女は、


「お似合いですよ」


 と、言うと、スヴェイン様は驚いたように彼女を見つめた。平民の少女が、彼にそんな言葉をかけるとは思ってもいなかったからだ。


 その瞬間、時が少しだけ止まったように感じた。


 騎士として武骨に生きてきたスヴェイン様にとって、リリアのその一言が、彼の心の奥底に深く触れたようだった。


 リリアが小さく微笑むと、スヴェイン様もまた、微笑んでいた。それは、戦場で見せるような冷徹な笑みではなく、どこか温かさを感じさせるものだった。


「ありがとう」


 彼の声が静かに響いた。


 スヴェイン様は、白いバラの花束を買い、その場を離れて行った。振り返ることなく、ただ前を見つめながら。



 リリアは、彼が去った後も、その微かな温もりが心の中に残っているのを感じていた。これが、運命の出会いだったのだろうか──』





 ……はぁ?





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