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5.多少の罪など消える side 隊員たち
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side 隊員たち
「ああ、腕がいてえ」
「ちょっと肩を見てくれないか? あざになっているような気がするんだ」
「はぁ、これが毎日続くのか……」
訓練を終えて、疲れた足取りで休憩場へと戻ると、口々に訴えが飛び交う。無理もない。確かに、訓練は義務だ。しかし、これまではどこか他人事のようにのらりくらりとやり過ごしてきた。
訓練などせずとも、と思っていたが、半日でこれほどまでに疲れるとは思ってもみなかった。もっとできると思っていたのに、体が言うことを聞かない。
これでは、いざというとき役立たずだな。はは……。
「……お前、家が潰されるなんて隊長に言おうとするなんて正気か? 隊長の婚約者のロラン子爵令嬢に本当に潰されるぞ」
さっき、アルノーを肘でつついていたリシャールが言う。
家が潰されるほどのこととは……なんだ?
「す、すまない。つい……。それより、私だけではなかったんだな……。皆は、ロラン子爵令嬢に何と言われたのだ?」
皆の顔に浮かぶ微妙な表情が、何かを隠していることを示している。
「ああ、俺は……女のことだ。なんでロラン子爵令嬢は、私の市井での女遊びを知っているんだ? 偽名で遊んでいたというのに。こんなこと婚約者の家に知られたら……っ! 婿入り予定なんだぞ、私は……」
ああ……。
「……私は、秘密の借金があって……金額は言えないが……どこから漏れたのか……」
消え入るような声で話す男爵令息。
秘密の借金? 何に使ったんだ? 気になる……清廉潔白に見えるこいつに、そんな一面があったなんて。意外だ。
「私も詳しくは言えないが、この前、邸のパーティーで出したワインについて……いや、その……これ以上は……」
「な、なんだよ、お前ら。大事なところはごまかして! 俺は女遊びのことを馬鹿正直に話してしまったではないか! なぁ、頼むから内緒にしてくれよ」
口の軽いこいつはどもかく、皆の秘密が、なぜロラン子爵令嬢にばれているのか?
……私の女装趣味だって。市井で密かに楽しんでいるだけで、邸の者ですら知らないというのに……。くっ、これはまずい。
「……つまり、全員が『訓練をする、隊長を敬う。当たり前のことができない騎士の地位や評判など地に落ちても構いませんわ』と言われた、ということでいいのだろうか?」
その言葉に、皆が一斉に頷く。
『騎士ですもの。訓練を真面目にこなしていれば、多少の罪などは消えますわね』とも言われた。皆もそうだろう。
消えるわけはないと思うが……。
ばれるはずがないと思っていた女装の話を『小耳にはさんだのですが』と言われた時は、説明できない震えが止まらなかった。
部屋がしんと静まり返り、誰もが言葉を飲み込んだ。
「あの、噂は本当だったのだな。ロラン子爵家の陰の実力者は、ロラン子爵令嬢だというのは」
「いや、私は信じてはいなかったが……今まで可憐だと思っていた微笑みに、昨日は恐怖してしまった」
「私は、畏怖した……」
部屋は一層、重い空気に包まれた。誰もがその言葉に背筋を伸ばし、互いに目を合わせることなく、言葉を続けることはなかった。
「お、おい。もう、やめにしないか? 疑っているわけじゃないが、この会話も漏れているんじゃないかと心配になる。触らぬ神に祟りなしだ。私はもう、これ以上余計なことは言わないぞ」
その場の空気が一変し、思わず口を閉じた私は、そそくさと部屋を出ることにした。
背後で、みんなが互いに目配せをしてから重い腰を上げ、訓練の続きに向かって歩き出した。
「ああ、腕がいてえ」
「ちょっと肩を見てくれないか? あざになっているような気がするんだ」
「はぁ、これが毎日続くのか……」
訓練を終えて、疲れた足取りで休憩場へと戻ると、口々に訴えが飛び交う。無理もない。確かに、訓練は義務だ。しかし、これまではどこか他人事のようにのらりくらりとやり過ごしてきた。
訓練などせずとも、と思っていたが、半日でこれほどまでに疲れるとは思ってもみなかった。もっとできると思っていたのに、体が言うことを聞かない。
これでは、いざというとき役立たずだな。はは……。
「……お前、家が潰されるなんて隊長に言おうとするなんて正気か? 隊長の婚約者のロラン子爵令嬢に本当に潰されるぞ」
さっき、アルノーを肘でつついていたリシャールが言う。
家が潰されるほどのこととは……なんだ?
「す、すまない。つい……。それより、私だけではなかったんだな……。皆は、ロラン子爵令嬢に何と言われたのだ?」
皆の顔に浮かぶ微妙な表情が、何かを隠していることを示している。
「ああ、俺は……女のことだ。なんでロラン子爵令嬢は、私の市井での女遊びを知っているんだ? 偽名で遊んでいたというのに。こんなこと婚約者の家に知られたら……っ! 婿入り予定なんだぞ、私は……」
ああ……。
「……私は、秘密の借金があって……金額は言えないが……どこから漏れたのか……」
消え入るような声で話す男爵令息。
秘密の借金? 何に使ったんだ? 気になる……清廉潔白に見えるこいつに、そんな一面があったなんて。意外だ。
「私も詳しくは言えないが、この前、邸のパーティーで出したワインについて……いや、その……これ以上は……」
「な、なんだよ、お前ら。大事なところはごまかして! 俺は女遊びのことを馬鹿正直に話してしまったではないか! なぁ、頼むから内緒にしてくれよ」
口の軽いこいつはどもかく、皆の秘密が、なぜロラン子爵令嬢にばれているのか?
……私の女装趣味だって。市井で密かに楽しんでいるだけで、邸の者ですら知らないというのに……。くっ、これはまずい。
「……つまり、全員が『訓練をする、隊長を敬う。当たり前のことができない騎士の地位や評判など地に落ちても構いませんわ』と言われた、ということでいいのだろうか?」
その言葉に、皆が一斉に頷く。
『騎士ですもの。訓練を真面目にこなしていれば、多少の罪などは消えますわね』とも言われた。皆もそうだろう。
消えるわけはないと思うが……。
ばれるはずがないと思っていた女装の話を『小耳にはさんだのですが』と言われた時は、説明できない震えが止まらなかった。
部屋がしんと静まり返り、誰もが言葉を飲み込んだ。
「あの、噂は本当だったのだな。ロラン子爵家の陰の実力者は、ロラン子爵令嬢だというのは」
「いや、私は信じてはいなかったが……今まで可憐だと思っていた微笑みに、昨日は恐怖してしまった」
「私は、畏怖した……」
部屋は一層、重い空気に包まれた。誰もがその言葉に背筋を伸ばし、互いに目を合わせることなく、言葉を続けることはなかった。
「お、おい。もう、やめにしないか? 疑っているわけじゃないが、この会話も漏れているんじゃないかと心配になる。触らぬ神に祟りなしだ。私はもう、これ以上余計なことは言わないぞ」
その場の空気が一変し、思わず口を閉じた私は、そそくさと部屋を出ることにした。
背後で、みんなが互いに目配せをしてから重い腰を上げ、訓練の続きに向かって歩き出した。
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