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11.野菜が好きだ! side スヴェイン
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sideスヴェイン
「スヴェイン様!!」
この可愛らしい声は……レティ?
トレイにスープボウルを載せたレティがこちらに向かって歩いてくる。
「ちょうど今、レティの話をしていたんだ。こんなところでどうしたんだ?」
学院は休みなのか?
「私の話? 内容が気になりますけど、それよりスヴェイン様。こちらもお食べください。あ、団長様もどうぞ」
レティから受け取ったのは、優しい香りがふわりと広がる野菜スープ。黄金色のブイヨンの中に浮かぶのは、鮮やかな緑のブロッコリー、オレンジのにんじん、クリーミーであろうじゃがいも、そしてつややかな玉ねぎのスライス。
何てうまそうだ。ここでは野菜を食べないと言っておきながら誘惑に勝てない。
ひとさじすくえば、スープの表面に小さなオリーブオイルの輝きが揺れ、野菜一つひとつの色と形がまるで宝石のように見える。
はやる気持ちを抑え、口に運ぶ。
スープそのものの深いコクと、じんわりと広がる自然な甘み。それから、柔らかく煮込まれた野菜が、ほろりと崩れる。にんじんの甘さ、セロリの香り、じゃがいものほくほく感が見事に調和している。
シンプルながらも奥深いその味わい。
うまい。
「レティシア嬢、これは、かなりうまいな」
団長も大絶賛だ。
「ああ、すごくうまい。だが、レティ。これはどうしたんだ?」
そもそも騎士団の食堂になぜレティが?
「肉ばかり食べているというスヴェイン様の体が心配なのです。ですので、お邸に送っているお野菜と同じものをこれから食堂にも届けることにしたのです。レシピは、我が家の商会の者が準備してくれて、食堂の者に渡しております」
俺のため?
「ちなみに、レティシア嬢。レシピ考案者は?」
団長は、目の前の湯気立つスープから視線を上げることなく、穏やかに問いかけた。
「アントワーヌ・デュヴァルですわ」
レティが静かに答えた瞬間、食堂の空気が揺れた。なんだ皆聞き耳を立てていたのか? 確かに、スープのいい香りがするのだ。こちらが気になってしょうがないのだろう。致し方ない。
「……最近話題の革新的シェフじゃないか」
団長は目を見開き、驚きを隠せないでいる。
「レティ、無理をしたんじゃないか?」
俺の昼食のために、団長が驚くほどのシェフに頼むなんて……。
「いいえ、アントワーヌ・デュヴァルは、まだ無名のころから我が商会が支援してきたシェフなのです。事情を話したら、私の婚約者のために、ぜひと快く数種類のレシピを考案してくださったのですわ。なので……、お肉だけを食べたいところだとは思うのですが、あなたを心配する私のためにどうか、これからは野菜も食べてくださいね」
「っ! ああ、もちろんだ。レティ、君の願いをかなえよう」
レティが花のように微笑む。
こんなにおいしいものを用意し、俺の健康まで気遣い、さらには食べる理由のため一芝居まで打ってくれる……。やはり俺のレティは最高だ。
『アントワーヌ・デュヴァルの店は、半年先まで予約がいっぱいだと言うぞ』
『どんな味なんだ。気になる』
『俺らは食べられないのか?』
『ああ、団長と隊長がうらやましい』
騎士たちのざわめきはやむ気配がない。その中、レティはふと手を叩いた。
「あら、大事なことを忘れていましたわ。スープはたくさん作った方が美味しくなるのです。だから、大量に作っていただいているのです」
彼女の声が食堂全体に響き渡る。
「もちろん、スヴェイン様が最優先ですが……余ったらもったいないですわ……。だから、お野菜好きの方々にもぜひ召し上がっていただきたいのです」
その瞬間、食堂が静まり返った。
「でも、どなたがお野菜好きかわかりませんので……。あ! 合言葉を決めましょう! 『野菜が好きです』と食堂の方に伝えてくだされば、無料で差し上げることにしますわ」
レティが言い終わる前に、椅子ががたがたと音を立て、騎士たちが我先にとスープ鍋の方へ殺到した。
「「「野菜が好きだ! 大好きだ!」」」
叫び声が次々と上がる。
『……食堂の者が冷静にスープを配っている。なるほど、合言葉は仕込みだな』
団長は相変わらず、小さな声でつぶやいている。
さすがに俺に肉の話をした王女付きの隊員たちは席を立たないが、その表情は明らかに行きたそうだ。少し気の毒にも思うが……隣のレティに目を向けると、彼女は微笑んでいた。
「きっとそのうち、あの方たちも野菜が好きとおっしゃるようになりますわ」
その柔らかな笑顔に、俺の胸は温かく満たされた。
「スヴェイン様!!」
この可愛らしい声は……レティ?
トレイにスープボウルを載せたレティがこちらに向かって歩いてくる。
「ちょうど今、レティの話をしていたんだ。こんなところでどうしたんだ?」
学院は休みなのか?
「私の話? 内容が気になりますけど、それよりスヴェイン様。こちらもお食べください。あ、団長様もどうぞ」
レティから受け取ったのは、優しい香りがふわりと広がる野菜スープ。黄金色のブイヨンの中に浮かぶのは、鮮やかな緑のブロッコリー、オレンジのにんじん、クリーミーであろうじゃがいも、そしてつややかな玉ねぎのスライス。
何てうまそうだ。ここでは野菜を食べないと言っておきながら誘惑に勝てない。
ひとさじすくえば、スープの表面に小さなオリーブオイルの輝きが揺れ、野菜一つひとつの色と形がまるで宝石のように見える。
はやる気持ちを抑え、口に運ぶ。
スープそのものの深いコクと、じんわりと広がる自然な甘み。それから、柔らかく煮込まれた野菜が、ほろりと崩れる。にんじんの甘さ、セロリの香り、じゃがいものほくほく感が見事に調和している。
シンプルながらも奥深いその味わい。
うまい。
「レティシア嬢、これは、かなりうまいな」
団長も大絶賛だ。
「ああ、すごくうまい。だが、レティ。これはどうしたんだ?」
そもそも騎士団の食堂になぜレティが?
「肉ばかり食べているというスヴェイン様の体が心配なのです。ですので、お邸に送っているお野菜と同じものをこれから食堂にも届けることにしたのです。レシピは、我が家の商会の者が準備してくれて、食堂の者に渡しております」
俺のため?
「ちなみに、レティシア嬢。レシピ考案者は?」
団長は、目の前の湯気立つスープから視線を上げることなく、穏やかに問いかけた。
「アントワーヌ・デュヴァルですわ」
レティが静かに答えた瞬間、食堂の空気が揺れた。なんだ皆聞き耳を立てていたのか? 確かに、スープのいい香りがするのだ。こちらが気になってしょうがないのだろう。致し方ない。
「……最近話題の革新的シェフじゃないか」
団長は目を見開き、驚きを隠せないでいる。
「レティ、無理をしたんじゃないか?」
俺の昼食のために、団長が驚くほどのシェフに頼むなんて……。
「いいえ、アントワーヌ・デュヴァルは、まだ無名のころから我が商会が支援してきたシェフなのです。事情を話したら、私の婚約者のために、ぜひと快く数種類のレシピを考案してくださったのですわ。なので……、お肉だけを食べたいところだとは思うのですが、あなたを心配する私のためにどうか、これからは野菜も食べてくださいね」
「っ! ああ、もちろんだ。レティ、君の願いをかなえよう」
レティが花のように微笑む。
こんなにおいしいものを用意し、俺の健康まで気遣い、さらには食べる理由のため一芝居まで打ってくれる……。やはり俺のレティは最高だ。
『アントワーヌ・デュヴァルの店は、半年先まで予約がいっぱいだと言うぞ』
『どんな味なんだ。気になる』
『俺らは食べられないのか?』
『ああ、団長と隊長がうらやましい』
騎士たちのざわめきはやむ気配がない。その中、レティはふと手を叩いた。
「あら、大事なことを忘れていましたわ。スープはたくさん作った方が美味しくなるのです。だから、大量に作っていただいているのです」
彼女の声が食堂全体に響き渡る。
「もちろん、スヴェイン様が最優先ですが……余ったらもったいないですわ……。だから、お野菜好きの方々にもぜひ召し上がっていただきたいのです」
その瞬間、食堂が静まり返った。
「でも、どなたがお野菜好きかわかりませんので……。あ! 合言葉を決めましょう! 『野菜が好きです』と食堂の方に伝えてくだされば、無料で差し上げることにしますわ」
レティが言い終わる前に、椅子ががたがたと音を立て、騎士たちが我先にとスープ鍋の方へ殺到した。
「「「野菜が好きだ! 大好きだ!」」」
叫び声が次々と上がる。
『……食堂の者が冷静にスープを配っている。なるほど、合言葉は仕込みだな』
団長は相変わらず、小さな声でつぶやいている。
さすがに俺に肉の話をした王女付きの隊員たちは席を立たないが、その表情は明らかに行きたそうだ。少し気の毒にも思うが……隣のレティに目を向けると、彼女は微笑んでいた。
「きっとそのうち、あの方たちも野菜が好きとおっしゃるようになりますわ」
その柔らかな笑顔に、俺の胸は温かく満たされた。
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