異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)

文字の大きさ
22 / 56
ぼっちと幼女と邪神

幼女と邪神と農作業

しおりを挟む
「そんなことより、畑仕事始めるぞ」
「ほほう。逃げたの?」
「にげたー」

 背後からの茶々をまとめて聞き流し、俺はひとつ息をついた。
 別に逃げたわけじゃない。話を切り替えただけだ。

「シロとクレバスは右側の果物ゾーンを頼む」
「承知したのじゃ」
「収穫できそうなものがあれば採ってきて構わないからな」
「わーい!」

 果物ゾーンは、今まで「食べてみて甘かったもの」だけを残して増やした場所だ。
 色とりどりの実が、枝から下がったり地面すれすれで膨らんでいたりと賑やかに並んでいる。

 この農業空間自体は、一辺十キロほどの閉じた世界だ。
 曇りひとつない人工の空の下、地平線の向こうまで畝が続いているように見えるが、ちゃんと手を入れているのは入り口から一キロほどだけ。
 奥のほうには、試験的に植えたまま放置している区画も多い。

 種の周りだけ強烈な毒を持つ果物を見つけたこともあった。
 うっかり多めに口にして、血を吐きながら痙攣して数分後に死んだのは、さすがに忘れられない。
 復活してから、その品種は根こそぎ抜いた。

「俺とミドリは野菜ゾーンだな」
「やる……がんばる……!」

 頭の上で、小さな拳がぎゅっと握られる。
 疑似太陽からの光が降り注ぎ、土の匂いが微かに鼻をくすぐった。

 しばらく歩き、まだ何も植えていない野菜ゾーンの一角まで進む。

「よし、この辺だな」

 足を止め、魔力を練る。
 土属性魔法を発動すると、地面がゆっくりと波打つように動き出した。
 塊になっていた土が砕け、ひっくり返され、空気を含んで柔らかくなっていく。

 耕された土に靴裏を押しつけると、ふかふかとわずかに沈んだ。
 その上を滑るように、風魔法で種を運び、一定の間隔で落としていく。
 重力魔法でほどよい深さまで沈め、水魔法で土の色が少しだけ濃くなる程度に湿らせる。

 一通り作業が終わったところで、手を止めた。

「終了だ」
「おにいちゃ…!」

 頭皮にじわりと痛みが走る。
 ミドリが頬をふくらませ、俺の髪を指でつまんで引っ張っていた。

 いつもの癖で、全部自分で片づけてしまったことにそこで気づく。

「ぼく、やる……! ゆった……!」

 引っ張る力がすこしだけ強くなった。
 言葉よりもよくわかる抗議だ。

「ごめんな。じゃあ一緒に収穫しようか?」
「ゆるす……」

 短く答えると、髪から指が離れた。

 収穫ができる区画まで歩く。
 そこには、見慣れた葉の列が規則正しく並んでいた。

 ここでは、前の世界で食べていた野菜に近づけるため、長い時間をかけて品種改良を繰り返してきた。
 ニンジン、キャベツ、白菜、ピーマン、じゃがいも。
 どれも今では、疑似太陽とこの土にすっかり馴染んでいる。

 畝の端にある白菜の一つを軽く押してみる。
 しっかり巻き、重さもある。今夜は鍋でも悪くない。

「おろして……」

 額をとん、と叩かれた。
 浮遊魔法でミドリの身体をふわりと浮かせ、そのまま地面に下ろす。

 ミドリはすぐには動かず、見上げるようにこちらを見てきた。

「どれ、とる……?」

 腰布の裾を小さくつまみ、首をこてんと傾げている。
 その仕草に手が勝手に伸び、頭を軽く撫でた。

「この辺のは問題ないな。こうやって取るんだ」

 ピーマンの実の根元をつまみ、ひねるようにして引き抜いて見せる。
 ぷつんと小さな感触とともに、濃い緑の実が手のひらに収まった。

「……!」

 ミドリの目がぱっと丸くなり、そのまま畝の前にしゃがみ込む。
 まだぎこちない手つきで、ひとつずつピーマンを外し始めた。

 亜空間からカゴを取り出し、収穫したものはそこに入れるよう伝える。
 近くの畝には、蔓を伸ばしたスイカも並んでいた。表面を軽く叩くと、良さそうな音が返ってくる。二つほど選んで収穫しておく。

 野菜の状態を見て回っていると、軽い足音が近づいてきた。

「おわった……!」

 ピーマンの畝を見れば、実はすべてきれいに無くなっていた。
 カゴの中には、山盛りになったピーマンがぎっしりと詰まっている。

「じゃあ次はこいつだ。こんな感じに採って、土を落として違うカゴに入れてくれ」
「いっぱいくっついてる……!」

 じゃがいもの葉を掴んで引き抜いて見せると、土の中から根ごと芋がいくつも顔を出した。
 ミドリも真似をして、根元を握りこんで足を踏ん張る。

 根は深く、土もそこそこ固い。
 しばらく唸りながら引っ張っていたが、茎はほとんど動かなかった。

「おにーちゃ……てつだって……!」

 振り向いた顔には、ほんの少し汗が光っている。

「こうか?」
「ちがう……! うしろ……!」

 正面からじゃなく、自分は先頭で抜きたいらしい。
 ミドリの背後に回り込んで、腰のあたりをそっと支え、一緒に力を込める。

「んー……っ! ふわぁっ……!?」
「おっ?」

 根が抜けた勢いで、ミドリの身体が後ろへと倒れ込んできた。
 とっさに抱きとめるが、その拍子に跳ねた土が服や腕にまとわりつく。

 見下ろせば、ミドリの髪にも細かい土がいくつもくっついていた。

「じゃりじゃりする…」

 ミドリが腕をさすり、服の中の違和感を気にしている。

「この辺で切り上げて、先に風呂入るか?」
「そう、する……」

 収穫したじゃがいもをまとめて亜空間にしまい、空間魔法で目の前に脱衣所へと繋がる扉を開く。
 その前に、互いの服についた土を手で払った。ぱふん、と乾いた音を立てて土が舞い上がる。

「はい、ばんざーい」
「んっ……」

 ミドリに両手を上げさせ、シャツをすっと脱がす。
 脱いだシャツと、自分の腰布を魔導式洗濯機へ放り込んだ。

 風呂場の扉を開けると、温かな湯気と木の香りが一気に押し寄せてくる。
 農作業のあとでゆっくり浸かれるように、出かける前に湯は張っておいた。

 ミドリもすべて脱ぎ終え、裸足のまま俺の隣に並ぶ。
 肩が軽く触れ合った。

 軽く息を吐き、濡れた床に足を滑らせないよう注意しながら、二人並んで浴室の中へ踏み入れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。 享年は25歳。 周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。 25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

『規格外の薬師、追放されて辺境スローライフを始める。〜作ったポーションが国家機密級なのは秘密です〜』

雛月 らん
ファンタジー
俺、黒田 蓮(くろだ れん)35歳は前世でブラック企業の社畜だった。過労死寸前で倒れ、次に目覚めたとき、そこは剣と魔法の異世界。しかも、幼少期の俺は、とある大貴族の私生児、アレン・クロイツェルとして生まれ変わっていた。 前世の記憶と、この世界では「外れスキル」とされる『万物鑑定』と『薬草栽培(ハイレベル)』。そして、誰にも知られていない規格外の莫大な魔力を持っていた。 しかし、俺は決意する。「今世こそ、誰にも邪魔されない、のんびりしたスローライフを送る!」と。 これは、スローライフを死守したい天才薬師のアレンと、彼の作る規格外の薬に振り回される異世界の物語。 平穏を愛する(自称)凡人薬師の、のんびりだけど実は波乱万丈な辺境スローライフファンタジー。

処理中です...