異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)

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ぼっちと幼女と邪神

幼女と邪神と鍋

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 即興で組んだカセットコンロに火を点けると、青い炎が静かに顔を出した。
 その上には鍋が二つ。片方は野菜や肉団子がぎっしり詰まった普通の鍋、もう片方は澄んだ出汁だけを張った鍋だ。後者は肉をくぐらせて食べる専用、いわゆるしゃぶしゃぶ用だ。

 テーブルの上には、薄く切られた肉が大皿に何枚も並び、白い脂が照明を受けて艶めいている。
 その光景を前にして、シロとクレバスはまるで祭りを前にした子供のように目を輝かせ、今か今かと鍋の沸騰を待っていた。

 席順は、鍋を挟んで俺の正面がクレバス、その膝の上にシロ。
 俺の膝の上にはミドリがちょこんと座っている。

 本来ならシロとミドリにもそれぞれ椅子を用意していたのだが、座らせてみると、椅子の上で立たない限り鍋まで手が届かないことが判明した。
 結果、自然な流れで「膝の上に移動」という結論になった。

「まだかのう……」
「まだー?」

 コンロの火にかけた鍋は、まだ静かに湯気を立てているだけで、出汁の表面はほとんど波立っていない。
 シロとクレバスが待ちきれない声を上げる中、ミドリは興味なさそうな顔をしているものの、唇の端から透明な糸がひと筋、つっと下がっていた。

 鍋の底から、やがて小さな気泡が立ち上り、それが次第に大きく、数も増えていく。
 グツグツという音が耳に届き、出汁の表面に湯気がもわりと立ちのぼった。十分温まったようだ。

「もう大丈夫だな」

 合図をすると同時に、向かいのクレバスが勢いよく箸を伸ばし、しゃぶしゃぶ用の肉を一枚つまみ上げる。
 薄い肉を出汁にくぐらせ、火の通り加減を確かめるように数度揺らしたあと、隣に座るシロの小皿にぽとりと落とした。

「肉じゃ!」
「おにくー!」

 クレバスが取り分け、シロが食べる。どうやら役割分担ができているらしい。

「ミドリは何が食いたい?」
「きょうとったやさい…」

 今日収穫したピーマンとじゃがいもは、残念ながら鍋には入れていない。
 代わりに、俺がさっき切っておいた野菜から選ぶことにする。

「ほれっ、俺が収穫した奴だ」

 箸で掬い上げたのは、ほどよく煮えた白菜だった。
 ぽちゃん、と一度だけポン酢にくぐらせ、湯気を立てたままミドリの口元まで運ぶ。

「おいしい……!」

 小さな歯でそっとかじり、ミドリが短く感想を漏らす。
 白菜の甘みとポン酢の酸味がちょうどいいバランスになっている。口の中でほどけていく柔らかさが心地よい。

 しゃぶしゃぶ用のタレは、すき焼きを真似て作ったものだ。
 小鉢に落とした卵を溶き、その中にくぐらせて食べると、まるで肉の周りだけが一瞬だけ別の世界に行って帰ってきたような、濃厚な一体感が舌にまとわりつく。

 向かい側では、シロとクレバスが無言で肉を口に運び続けていた。
 小皿の上の肉が消える速度が、明らかに他の誰よりも速い。

 肉も野菜も、箸でつまめるだけつまんでは口に放り込むので、二人とも頬がパンパンに膨れあがり、欲張ったハムスターのような顔になっている。
 喉を詰まらせないかと一瞬だけ不安になるが、次の瞬間には、ゴクン、と効果音が聞こえそうな勢いで飲み込んでいた。どうやら本人的には問題ないらしい。

 ふと鍋を見ると、しゃぶしゃぶ用の肉の皿が心もとない量になっていた。

「まだ肉食べるか?」

 問いかけるや否や、テーブルのあちこちから声が重なる。

「当たり前じゃろう!?」
「食べるー!」
「ちょうだい……!」

 三方向からの即答。まだまだ余裕があるようだ。

 亜空間に手を伸ばし、おかわり用の肉を取り出す。
 最初に出したものとは別の種類の肉だ。

 俺の腰布にも使われている巨大トカゲの肉。
 よく見かける熊の、さらにひと回り大きい種類の熊の肉。
 風と土の魔法を操り、全長三十メートルほどもあったイノシシのような魔物の肉。

 どれも素材倉庫に眠っていたものだ。
 薄切りにして、事前に自分で毒味も済ませてある。味も、体への影響も問題なかった。

「このにくおいしー!」
「こっちも美味いのじゃ!」
「ぼくはこれがすき……」

 三者三様、それぞれ好みの肉を見つけたらしい。
 牙を剥いて襲いかかってきた魔物たちが、今はこうして静かに皿の上で消えていく。
 倒すのに少しだけ苦労した相手ほど、しっかり味わってやろうという気持ちになる。

「もう食えん……」
「よくたべましたー!」
「いっぱい……」

 食べ終わった三人は、それぞれリビングの毛皮の上にごろんと転がっていた。
 シャツの裾が少しめくれ、丸く膨らんだお腹が並んでいる。上から見ると、大小三つの小山のようだ。

 テーブルの上にあった食材は、きれいさっぱり消えている。
 鍋の中には、旨味と栄養だけを残した出汁だけが静かに揺れていた。

 俺も一緒に食べはしたが、腹の具合はほとんど変わらない。
 この世界に来た当初、三千年ほどろくに食事もできず、餓死しては蘇生を繰り返す生活を続けていた結果、空気中の魔力を生命エネルギーに変換して栄養とする術を身につけてしまった。

 おかげで、今では食べ物は食べても食べなくても大差がない。
 胃の中に入ったものは、ほとんどリアルタイムで消化されていく。
 代償として、空腹感というものに悩まされることもなくなったが、そのぶん「腹いっぱいで動けない」という感覚も自分とは縁遠くなった。

「おい、クレバス」
「なんじゃ……うっぷ、おい……! 腹を押すでない!」

 毛皮の上で大の字になっているクレバスの腹あたりを、軽く足でつつく。
 押された場所がぽよんと揺れ、本人が苦しそうに顔を歪める。

「そろそろシロとミドリが眠いみたいだから寝室に連れて行っておくぞ」
「わかったのじゃ」

 シロは「ふにゃー」とよくわからない声を出しながら目をこすり、ミドリはすでに半分以上まぶたが落ちていた。
 それぞれを抱き上げ、寝室へ向かう。

 寝室に入ると、二人は慣れた手つきで寝る用の格好になり、ベッドの上に潜り込んだ。
 毛布がふわりと膨らみ、その中から手だけがにゅっと伸びてくる。

「にーに。はやく」
「はやく…」

 催促の手招きに応じて、俺も腰布を脱いでいつもの寝間着に変え、ベッドにもぐり込む。
 右側にはシロ、左側にはミドリ。二人がしっかりと体を寄せてくる。

 子供特有の高めの体温が、左右からじんわりと伝わってくる。
 息をするたび、髪の匂いや、さっきまで鍋を囲んでいたときの温もりが、布団の中に微かに残っていた。

 この体勢になると、こちらの体もすぐに温まり、まぶたが重くなるのが早い。
 両腕を伸ばして二人を抱き寄せる。小さな背中と胸板に手のひらを当てると、規則正しい鼓動が指先に伝わった。

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