異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)

文字の大きさ
46 / 56
幼女と邪神とユキ

ぼっちと邪神と準備

しおりを挟む
 今日はユキの歓迎会をしようと思う。
 季節的には夏だ。なら外で――バーベキューが一番それっぽい。

 家の外に出るだけで、草の匂いが濃くなる。土の湿り気と、葉の青臭さが混ざった匂い。風の通り方も、屋内とはまるで違う。

 ユキの表皮には熱を冷気に変換する結界を張ってある。日向に出ても歩き回れるし、日差しの刺激で動けなくなる心配もない。
 デメリットとして炎系の魔法が一切効かなくなってしまったが、種族的には炎は弱点だ。むしろ安全側だろう。

「よし、肉の準備をしよう」

「がたっ……」

「おねーちゃ……すわってて……」

 肉という単語に反応して、シロが椅子から跳ね上がった。
 その髪を編んで遊んでいたミドリが、両手で肩を押さえて強制的に座らせる。シロは立ちたいのに座らされて、口をむっと尖らせたまま固まった。

 歓迎会の主役はユキだが、うちの空気はいつも通りだな……。

 俺は寝ているクレバスを担いで倉庫に向かう。
 担いでも起きないのがいつものこと――と思いきや、肩に乗った重みの奥で、魔力の流れは妙に整っている。寝ているふりだ。

 廊下を抜けて倉庫前に立つと、冷えた空気がじんわり肌に触れた。保管の魔法陣が常時働いているせいか、空気そのものが止まっている。

 倉庫に入って、クレバスを床に下ろす。

「……なんじゃ、妾は寝ていたいのじゃが」

 寝ていたいと言いながら、目だけはしっかり開いている。

「ユキの歓迎会をする準備を手伝ってくれ」

「うむ……分かったのじゃ。手伝おう」

 妙に素直だ。
 いつもなら、最初に何かしら要求してくるはずだが……逆に怪しい。

「バーベキューをしようと思っているから、この袋の中に使えそうな食材を詰めてくれ」

「分かったのじゃ」

 クレバスに袋を渡す。空間拡張と時間停止の魔法陣を刻んだ袋だ。口を開けても中は暗く、底が見えない。手を突っ込んだまま動かしても、中身がずれない感触がある。

 この倉庫の半分……大きさ的には一万キロの立方体ぐらい。用途別に倉庫は七つほどあるが、全部同じ規模だ。
 外から見たら小さなコンテナ程度なのが、自分でやっておいても時々おかしく感じる。

 倉庫の壁面には空間拡張、時間停止、状態保存、抗菌、迎撃――そういう類の魔法陣が、目に見えない糸みたいに張り巡らされている。
 保存されている素材の“鮮度”が、ここだけ別の理屈で固定されている。

 クレバスが棚の列の間を行ったり来たりして、やけに真剣に探している。
 何を、そんな必死に――。

「あったのじゃ! あっ……しまったのじゃ……声に出してもうた……」

 背中がびくっと跳ねた。しまった顔。
 隠し事の顔だな。

「何を見つけたんだ?」

「バレてしまったのなら言うしかないのう……こいつじゃ」

 クレバスが、塊肉を掲げる。
 暗い倉庫の光の下でも、脂の白が細く走っているのが分かる。サシが細かく、肉質はやたら良さそうだ。触れなくても柔らかそうな気配がある。

「何の肉だ……?」

 俺が首を傾げた瞬間、クレバスがわざとらしく肩を落とした。

「何故、狩ったお主が首を傾げてるのじゃ??」

「ここ食糧倉庫だからな……? ブロックになってる肉を見て何の肉だって分かる方がおかしいと思うんだが……」

 見た目で判別できるのは、よほど特徴があるやつだけだ。
 基本は肉にしか見えない。

「鑑定魔法を使えばよかろう。自分の知識にあるものならば詳細が見えるはずなのじゃ」

 ……そういえばそんな魔法あったな。
 長いこと使っていないから、すっかり頭の棚から落ちてた。

 魔力を目に流して、肉を鑑定する。
 表面の情報じゃなく、魔力の層に刻まれた由来が浮かぶ。

「珍しい肉、千年に一度しか現れないとても珍しい魔物の肉……としか書いてないぞ」

 鑑定結果が雑すぎる。

「食材としか認識しておらんのか……この肉はフリシモドラゴンじゃ。妾が世界を創るときに、食べる目的で創った魔物の一種じゃの」

「なるほど、霜降りドラゴンか」

 名前の勢いがすごい。
 少しずつ思い出す。外殻に覆われていて、可燃性のガスを撒き散らしながら襲ってくる――そんなやつだった気がする。

「誰にも食われんように外殻の硬さを、この世のものじゃ傷すらつけられないように硬く設定したはずなのじゃが……お主の素材倉庫に、砕かれたこいつの殻があってのう……?」

「確かに砕けるまで殴った記憶があるな。そいつのおかげで拳が強くなった」

 硬いものを殴り続けたせいで、拳が強化された。
 当時は、殴っても殴っても壊れなくて、意地だけで続けたんだったか。

 滅多に現れないから貴重な素材だと思って、ここ最近は傷をつけないように狩ってたな。そういえば。

「こいつの肉は絶品のはずじゃ! まだ食ったことないがのう……」

 言い方が悔しそうで、変に笑いそうになる。

「じゃあ食うか。袋に入れておいてくれ」

「うむ!」

 即答で袋を開け、肉を大事そうに沈めた。袋の口が一瞬だけ膨らんで、何事もなかったみたいに閉じる。
 クレバスが素直に手伝いを引き受けた理由が、だいぶ見えてきた。

 俺がチョイスした方の肉も同じ袋に入れる。
 歓迎会の主役はユキ。だが、肉の前では全員が主役みたいな顔をするのがうちだ。

 食べるために創られたドラゴンか。
 なんとも言えないが――ちゃんと食べてやるのが一番か。

「これだけあれば十分だろう」

「足りんじゃろ……?」

「百二十キロあるぞ。どんだけ食うんだ?」

 シロでさえ食って一キロ……もっと食っている気がする。
 ――いや、あの体に何でそんなに入るんだ? 普通なら百五十グラムでも多いぐらいの年齢だろ。

 考え始めると分からなくなる。
 歓迎会の準備は、まだこれからだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。 享年は25歳。 周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。 25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

『規格外の薬師、追放されて辺境スローライフを始める。〜作ったポーションが国家機密級なのは秘密です〜』

雛月 らん
ファンタジー
俺、黒田 蓮(くろだ れん)35歳は前世でブラック企業の社畜だった。過労死寸前で倒れ、次に目覚めたとき、そこは剣と魔法の異世界。しかも、幼少期の俺は、とある大貴族の私生児、アレン・クロイツェルとして生まれ変わっていた。 前世の記憶と、この世界では「外れスキル」とされる『万物鑑定』と『薬草栽培(ハイレベル)』。そして、誰にも知られていない規格外の莫大な魔力を持っていた。 しかし、俺は決意する。「今世こそ、誰にも邪魔されない、のんびりしたスローライフを送る!」と。 これは、スローライフを死守したい天才薬師のアレンと、彼の作る規格外の薬に振り回される異世界の物語。 平穏を愛する(自称)凡人薬師の、のんびりだけど実は波乱万丈な辺境スローライフファンタジー。

処理中です...