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幼女と邪神とユキ
幼女と邪神とユキと二日酔い
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朝の日課になっている鍛錬をひと区切りつけたところで、家の方から小さな気配が三つ、もぞもぞと動き出したのが分かった。
どうやらシロとミドリ、それからユキが起きたらしい。
汗をぬぐいながらリビングに戻ると、ソファには見慣れた光景が広がっていた。
「むじゅ、ねーね、くちゃい」
「……くさい」
クレバスがソファに突っ伏して寝ている。その頬や髪を、シロとミドリが指でつんつん突いていた。
近づいた瞬間、ツンと鼻を刺す酒の匂いが漂ってくる。目をしかめて、もう少し近くまで顔を寄せて確認する。
……しっかり酒臭い。
寝たまま吐いていないかだけ心配になり、軽く魔法で喉や胃の状態を探る。異常はない。二日酔いというところか。
「それなら大丈夫か」
ひとまず安堵していると、ソファの背もたれの向こうから声が飛んだ。
「あ、にーに! おあよー!」
「……ぉはよ」
「おう、おはようさん」
ユキも起きていたらしい。こちらを見て、酒の匂いに小さく眉を寄せている。
そういえば昨日、どれくらい飲んだのか確認した時、一樽分は平らげていたな……と、思い出して肩をすくめたところで。
「ぬぐぅ……なんじゃぁ、頭が割れる……」
ソファの上でクレバスが、今にも死にそうな声を漏らして頭を抱えた。
こめかみに指を押し当て、ゆっくりと上体を起こしたものの、視線はまだ定まっていない。完全に二日酔いだ。
「ねーね! おあよー!」
シロが遠慮なく耳元で叫ぶ。
クレバスは顔をしかめ、ゆっくりとシロの方に目線だけ向けた。
「のじゃっ……おはようなのじゃ……シロよ、あまり大きな声を出されると頭に響くのじゃ……」
「どしてー?」
クレバスの恨みがましい視線が、じわじわとこっちに向いてくる。
自分の酒量ぐらい、自分で把握しておいてほしいものだ。
「全員起きたことだし朝飯にするか」
「めし!」
シロがソファからぴょんっと飛び降り、そのままリビングのテーブルへ一直線に駆けていった。
朝からいつも通りの全開テンションだ。見ているだけでこっちが目を覚まされる。
頭痛と格闘しているクレバスと、寝室に戻ってベッドの毛布を整え始めたミドリとユキに目を向ける。
二人はベッドの上で、もう一度潜り込む準備をしている最中だった。
今日は二度寝を解禁している日ではない。
我が家のルールで、二度寝をしていいのは週に二日。その代わり、その二日はとことん寝ていい日と決めてある。
こっちをちらちらと盗み見ながら、あからさまに毛布をふわふわと広げているミドリを見るに、ルール自体は理解しているらしい。
ユキは、ただ隣で同じ動きを真似しているだけのようだが。
「はい、回収」
ベッドの縁まで歩いて行き、ミドリとユキをそれぞれ片腕で抱き上げる。
ミドリが小さく唇を尖らせ、ユキはきょとんとした顔で俺の肩に顎を乗せてきた。
「……むー」
「ん、私も?」
「ああ。二度寝は、また今度な」
まだ動ける気配のないクレバスに視線を移す。
うつ伏せのまま、枕を抱きしめて微動だにしない。ひとまず横の机に水の入ったコップを用意しておく。
「動けそうになったら来いよー」
「のじゃー……」
力の抜けた返事だけがソファから返ってきた。
少し魔法を使えば頭痛くらいすぐに抜けるだろうに、あえて使わないあたり、どこまで自力で耐えるつもりなのか、しばらく観察してみよう。
ミドリとユキを抱えたままリビングに向かうと、テーブルの前の椅子にはすでにシロが座っていた。
きちんと背筋を伸ばしているくせに、視線だけはテーブルの上をじっと見つめている。並べてあるはずの料理を待っている顔だ。
「歯磨きと顔は洗ったのか?」
「ぎくっ」
シロの肩が分かりやすく跳ねた。
視線だけ泳がせてごまかそうとしているが、バレバレである。
黙ってじっと見続けていると、観念したように椅子から飛び降り、いそいそと洗面所へ走って行った。
その背中を見送りつつ、ミドリとユキを床に下ろして洗面所へ向かうよう促す。
「いってきな」
「……うん」
「ん」
ちいさく頷いて二人もシロの後を追っていった。
「さて、と」
今のうちに朝飯を並べてしまおう。
早めに仕込んでおいたサラダ、カリカリに焼いたベーコンと目玉焼きを乗せたトースト、それから切っただけのフルーツを皿ごとに分けてテーブルに置いていく。
包丁やまな板を片付けていると、洗面所の方から話し声が聞こえてきた。
「……おねえちゃ、ちゃんとみがく!」
「ごはんー……」
「……みがかないと、ごはん、たべれなくなる……おにいちゃ、いってた」
「みがく!」
ミドリの、いつもの淡々とした声にちょっとだけ熱がこもっている。
そんな事を言った記憶があるような、ないような。虫歯の話をした時に、似たようなことを説明した気もする。
それをちゃんと覚えていて、こうしてシロを促しているのだから大したものだ。
洗面所から聞こえる水音に耳を傾けていると、クレバスが頭を押さえながら、ふらふらと立ち上がって椅子に腰かけた。
「水飲んだら少し楽になったのじゃ……」
「そうか。よかったな」
「妾も朝の身支度するのじゃ」
よろよろとした足取りで洗面所の方へ消えていくクレバスと入れ替わりに、シロたち三人が戻ってくる。
顔も手もさっぱりしていて、シロの髪はところどころ水滴で跳ねていた。
クレバスを除く全員が椅子に腰掛けたところで、最後のひとりを待つことにした。
どうせなら一緒に食べた方がいい。
しばらくして、クレバスがようやく席に着いた。
全員がそろったのを見計らって、俺は手を合わせる。
「じゃ、食うか」
「「「いただきます」」」
「……いただくのじゃ」
それぞれの声が重なり、静かな朝の食卓に、パンを噛む音とベーコンの香ばしい匂いが広がっていった。
どうやらシロとミドリ、それからユキが起きたらしい。
汗をぬぐいながらリビングに戻ると、ソファには見慣れた光景が広がっていた。
「むじゅ、ねーね、くちゃい」
「……くさい」
クレバスがソファに突っ伏して寝ている。その頬や髪を、シロとミドリが指でつんつん突いていた。
近づいた瞬間、ツンと鼻を刺す酒の匂いが漂ってくる。目をしかめて、もう少し近くまで顔を寄せて確認する。
……しっかり酒臭い。
寝たまま吐いていないかだけ心配になり、軽く魔法で喉や胃の状態を探る。異常はない。二日酔いというところか。
「それなら大丈夫か」
ひとまず安堵していると、ソファの背もたれの向こうから声が飛んだ。
「あ、にーに! おあよー!」
「……ぉはよ」
「おう、おはようさん」
ユキも起きていたらしい。こちらを見て、酒の匂いに小さく眉を寄せている。
そういえば昨日、どれくらい飲んだのか確認した時、一樽分は平らげていたな……と、思い出して肩をすくめたところで。
「ぬぐぅ……なんじゃぁ、頭が割れる……」
ソファの上でクレバスが、今にも死にそうな声を漏らして頭を抱えた。
こめかみに指を押し当て、ゆっくりと上体を起こしたものの、視線はまだ定まっていない。完全に二日酔いだ。
「ねーね! おあよー!」
シロが遠慮なく耳元で叫ぶ。
クレバスは顔をしかめ、ゆっくりとシロの方に目線だけ向けた。
「のじゃっ……おはようなのじゃ……シロよ、あまり大きな声を出されると頭に響くのじゃ……」
「どしてー?」
クレバスの恨みがましい視線が、じわじわとこっちに向いてくる。
自分の酒量ぐらい、自分で把握しておいてほしいものだ。
「全員起きたことだし朝飯にするか」
「めし!」
シロがソファからぴょんっと飛び降り、そのままリビングのテーブルへ一直線に駆けていった。
朝からいつも通りの全開テンションだ。見ているだけでこっちが目を覚まされる。
頭痛と格闘しているクレバスと、寝室に戻ってベッドの毛布を整え始めたミドリとユキに目を向ける。
二人はベッドの上で、もう一度潜り込む準備をしている最中だった。
今日は二度寝を解禁している日ではない。
我が家のルールで、二度寝をしていいのは週に二日。その代わり、その二日はとことん寝ていい日と決めてある。
こっちをちらちらと盗み見ながら、あからさまに毛布をふわふわと広げているミドリを見るに、ルール自体は理解しているらしい。
ユキは、ただ隣で同じ動きを真似しているだけのようだが。
「はい、回収」
ベッドの縁まで歩いて行き、ミドリとユキをそれぞれ片腕で抱き上げる。
ミドリが小さく唇を尖らせ、ユキはきょとんとした顔で俺の肩に顎を乗せてきた。
「……むー」
「ん、私も?」
「ああ。二度寝は、また今度な」
まだ動ける気配のないクレバスに視線を移す。
うつ伏せのまま、枕を抱きしめて微動だにしない。ひとまず横の机に水の入ったコップを用意しておく。
「動けそうになったら来いよー」
「のじゃー……」
力の抜けた返事だけがソファから返ってきた。
少し魔法を使えば頭痛くらいすぐに抜けるだろうに、あえて使わないあたり、どこまで自力で耐えるつもりなのか、しばらく観察してみよう。
ミドリとユキを抱えたままリビングに向かうと、テーブルの前の椅子にはすでにシロが座っていた。
きちんと背筋を伸ばしているくせに、視線だけはテーブルの上をじっと見つめている。並べてあるはずの料理を待っている顔だ。
「歯磨きと顔は洗ったのか?」
「ぎくっ」
シロの肩が分かりやすく跳ねた。
視線だけ泳がせてごまかそうとしているが、バレバレである。
黙ってじっと見続けていると、観念したように椅子から飛び降り、いそいそと洗面所へ走って行った。
その背中を見送りつつ、ミドリとユキを床に下ろして洗面所へ向かうよう促す。
「いってきな」
「……うん」
「ん」
ちいさく頷いて二人もシロの後を追っていった。
「さて、と」
今のうちに朝飯を並べてしまおう。
早めに仕込んでおいたサラダ、カリカリに焼いたベーコンと目玉焼きを乗せたトースト、それから切っただけのフルーツを皿ごとに分けてテーブルに置いていく。
包丁やまな板を片付けていると、洗面所の方から話し声が聞こえてきた。
「……おねえちゃ、ちゃんとみがく!」
「ごはんー……」
「……みがかないと、ごはん、たべれなくなる……おにいちゃ、いってた」
「みがく!」
ミドリの、いつもの淡々とした声にちょっとだけ熱がこもっている。
そんな事を言った記憶があるような、ないような。虫歯の話をした時に、似たようなことを説明した気もする。
それをちゃんと覚えていて、こうしてシロを促しているのだから大したものだ。
洗面所から聞こえる水音に耳を傾けていると、クレバスが頭を押さえながら、ふらふらと立ち上がって椅子に腰かけた。
「水飲んだら少し楽になったのじゃ……」
「そうか。よかったな」
「妾も朝の身支度するのじゃ」
よろよろとした足取りで洗面所の方へ消えていくクレバスと入れ替わりに、シロたち三人が戻ってくる。
顔も手もさっぱりしていて、シロの髪はところどころ水滴で跳ねていた。
クレバスを除く全員が椅子に腰掛けたところで、最後のひとりを待つことにした。
どうせなら一緒に食べた方がいい。
しばらくして、クレバスがようやく席に着いた。
全員がそろったのを見計らって、俺は手を合わせる。
「じゃ、食うか」
「「「いただきます」」」
「……いただくのじゃ」
それぞれの声が重なり、静かな朝の食卓に、パンを噛む音とベーコンの香ばしい匂いが広がっていった。
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