異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)

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幼女と邪神とユキ

幼女と邪神とユキと旅行準備

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 全員が朝食を食べ終えて、それぞれが好きな体勢で椅子にもたれたり、床に寝転がったりしてだらけ始めた頃。
 テーブルに突っ伏していたクレバスが、回復魔法でどうにか二日酔いから抜け出したらしく、顔だけこちらへ向けてぼそりと口を開いた。

「のう、旅行に行きたいのじゃ」

 不意打ちの一言に、シロとミドリとユキが同時に首を傾げ、そろって俺の顔を見上げてくる。
 旅行、か……。

 行くとして、どこに行けばいいんだ?

「どこに行きたいとか決まっているのか?」
「それを皆で考えるのが旅行の醍醐味じゃろう?」

 クレバスが胸を張る。頭痛はまだ残っているはずだが、その辺はもうどうでもいいらしい。

「確かにそうかもしれないが……」

 この世界に来てから、俺の行動範囲といえば、この魔の森の中と、前線都市。
 その往復以外をしたことがない。どこそこの景勝地だとか、有名な観光名所だとか、そういう情報もほとんど仕入れていない。

 何を目的にして旅行に行くか、それをまず考えないといけない。

「人族領の中心地にある王都なんてどうじゃ?」
「王都……行ったことがないな」
「おーと! おいしい?」
「……たぶん、ちめい」
「そっかー」

 膝の上でシロとミドリが、小声で漫才のような掛け合いをしている。
 前線都市までですら、普通に歩けば相当な距離がある。王都とやらは、そのさらに向こう側らしい。

 どれくらい離れているんだろうな、と距離感を頭の中でざっくりと見積もっていると、クレバスがじとっとした目でこちらを睨んできた。

「お主、今飛んで行こうなど無粋なことを考えておるな?」
「王都が目的なんだろ? ダメなのか?」

 飛翔魔法で一気に飛ぶのが一番手っ取り早いし楽だ。そう思って口に出した瞬間、クレバスは深々とため息を吐き、椅子の背にもたれかかった。

「旅の風情というものを分かっとらんのう……旅行というのはそこにたどり着くまでを含めて旅行なのじゃ」
「転移とかで目的地だけ踏んだらダメなのか」
「そういうことじゃ。前線都市からのんびりと馬車に揺られて行くのも悪くなかろう?」

 なるほど。
 わざわざ不便な手段を選んで、その不便さごと楽しむのが旅――ということらしい。

 確かに、ここ最近の俺の移動手段は、ほぼ全部魔法だ。目的地を思い浮かべて一瞬で移動する、それの繰り返し。
 効率はいいが、途中の景色や匂い、空気の重さみたいなものはほとんど味わっていない。

 たまには、そういう面倒を抱え込んでみるのも悪くないのかもしれない。

「よし、そうと決まれば旅行に行くぞ。準備だ」
「うむ! 準備するのじゃ!」

 クレバスが勢いよく椅子から立ち上がる。その様子につられたのか、シロたちも目をきらきらさせ始めた。

 シロとミドリとユキには、旅行という言葉の意味から説明しておく。
 知らない場所に行って、見たことのないものを見て、美味いものを食って、ちゃんと帰ってくる。その全部がひとまとまりで旅行だと。

 その上で、服やら身の回りのものやらの準備も必要だと伝える。

 全員分のリュックサックを、手早く魔法で作り出す。
 背負いやすいように重さ軽減の魔法陣を組み込んでおいて、中に入れる物の重さがそのまま身体にこないようにしておく。

 着替えと、簡単な救急用の道具、それから……。
 それ以外に何を持っていけばいいのか、ふと手が止まる。

 森にこもって暮らしていると、持ち物の優先順位がおかしくなってくるな。
 街道を歩くと仮定すると、金貨は忘れずに持っていくべきだろう。

「俺は準備完了だ」

 自分の分のリュックを軽く持ち上げ、中身の確認を終えた。
 クレバスも自分の荷物を背中に乗せ、腰のあたりをぽんぽん叩きながら頷く。

「妾も大丈夫なはずじゃ」

 視線を横に移すと、ミドリが床にしゃがみ込んで、服を綺麗に畳んではリュックの中に隙間なく詰め込んでいた。
 一回出して、畳みなおして、また入れて……と、何度かやり直しているあたり、妙なところで几帳面だ。

 シロは――どこ行った?
 ユキの姿も見えない。

 リビングを見回していると、キッチンの方から小さな足音がして、シロを肩車したユキがこちらに歩いてくるのが見えた。
 シロの両手には、棚のかなり上の方に隠しておいた干し肉がしっかり握られている。
 二人とも口をもぐもぐ動かしているところを見るに、すでに一枚は胃袋の中だ。

「せっかくシロが届かないところに隠してたんだけどな……」
「ん、ごめん……」

 ユキが、申し訳なさそうに目を伏せる。
 シロはというと、悪びれもなく、干し肉を掲げて満面の笑みだ。

「おいひい!」

 なるほどな。
 どう考えてもシロがユキを踏み台にしたパターンだ。
 届かない場所にあるものは工夫して取れ――とよく言えば努力家だが、干し肉は別だ。

「没収な」
「えーー!!!」

 シロの手から干し肉を取り上げて、亜空間の保管庫に放り込む。
 シロが今にも泣き出しそうな声をあげたので、完全に取り上げるのも罪悪感がある。

「おやつの時間になったら渡してやる」
「わかった!」

 条件付きでの返却に、シロはあっさり折れた。
 どうやら「おやつ」という言葉の響きには逆らえないらしい。

 ふと足元に目を落とすと、ミドリが小さな体でリュックを背負い、肩紐をきゅっと握りしめて満足そうに立っていた。
 荷物の準備は完全に終わった、という顔だ。

「よし。シロとユキも終わってるか?」
「ん、終わってる」
「わった!」

 ユキが短く答え、シロは胸を張って頷いてみせた。
 気が付けば、全員が同じ形のリュックサックを背負い、玄関の方へと視線を向けている。

 森から出るところだけは、さすがに徒歩ではどうしようもない。
 転移を封じて旅に出ると言っても、この魔の森から前線都市まで歩いたら、何年かかるか分かったものではない。
 クレバスもその辺は理解しているのか、森を抜けるための転移に関しては何も言ってこなかった。

「じゃあ、前線都市の門近くまで転移するぞー」

 全員がきちんと手を繋いでいるのを確認してから、転移魔法の術式を展開する。
 魔力の流れを整え、位置を指定し、まとめて空間を滑らせるようにして飛ばす。

 視界がぐにゃりと歪んだかと思うと、次の瞬間にはひんやりとした風と、石壁の匂いが鼻をかすめた。
 周囲を見回せば、前線都市の巨大な城壁と、その中腹にある門がすぐそこの距離に見えている。

 地面に立っている感触を一つ一つ確かめ、繋いでいる手の数を数える。

 ……よし。
 五体満足で、全員そろっているな。
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