毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝

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第一章 転生

第四話 魔王種への試練

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リトラの部屋に光が収まると、私は静かに呼吸を整えた。
いや、正確には「呼吸の真似事」だ。
もう私は空気すら必要ない。

「……ふぅ、これがアルハラってやつね」

見下ろせば、蒼白の肌に半透明の羽衣のような衣装。
かつての“魔物然”とした姿とはまるで違う。
私自身が、天使とも悪魔ともつかない**“異形の美”**を宿した存在に変わっていた。

背中の翼をゆっくりと広げる。
羽ばたけば、一瞬で部屋の空気が震える。

「完全擬態に、魔法反射、腐蝕絶滅眼まで……戦場の女王って感じね」

ダンジョンで死に物狂いにレベルを上げて来た。
時には視線を彷徨い。
それでも諦めずに目指した姿。

《アルハラ》──それは上位魔物の中でも“進化を極めし者”だけが辿り着ける存在。
しかも、まだ私はレベル313。
伸び代しかない。

種族 アルハラ
名持ち スルカ・サマリス。
性別 メス
レベル313
体力 502564 魔力 627345 物理攻撃 85320 魔法攻撃力 105496 物理防御 45328 魔法防御 76902 速度 63782 運 86972
スキル
猛毒牙 猛毒霧 猛毒舌 猛毒針 剛腕 堅固 浮遊翼 防御翼 隠密 鋼糸 魔法反射 絶剣
全属性魔法レベル10
ポイズンアロー ポイズンスワム ポイズンスラッシュ デスサイズポイズン
腐蝕根絶波動 腐蝕大爪剣 腐蝕絶滅眼
無限再生 斬撃無効 炎無効 完全擬態 貫通無効 状態異常無効
飛行 早熟 熱無効 頑丈 魔力探知 神眼 魔王覇気
斬撃効果アップ
称号
毒舌の転生者 知性の宝玉 リトラとの絆 無謀の先駆者 激毒の死神 欲望の亡者 偽りの仮面

「おおお……! これはもう……お前、本物の魔王の素質があるぞ!!」

リトラが歓喜に声を上げる。
金色の瞳が、まるで宝石を見つけたように輝いていた。

「このレベル、このスキル構成……もはや魔王種の進化条件の“基盤”は満たしている!
あとは……あとは“神性”か、“罪の魂”をいくつか集めれば……!」

「“罪の魂”?」

リトラはコクンと頷く。

「そう。“裏切り”“嫉妬”“支配”“傲慢”といった、濁った感情にまみれた魂よ。
それらを喰らうことで、魔王種としての最終進化が解放される。
つまり、人間でも魔物でも、**『強い感情を持って死んだ者』**が必要ってこと」

「……また殺さなきゃならないってわけね」

その言葉に、胸の奥が冷たく軋んだ。
人間社会に溶け込んできた時間が、ふとよぎる。

けれど――

(私は魔物だ。魔王を目指してる。躊躇う理由なんて、最初から無かったはず……)

その夜、私は西方に位置する未開のダンジョンへと足を踏み入れていた。
このダンジョンは50層まで攻略されているがそれ以降は死者を出し続けた為に閉鎖されている。
そんな事は気にすることもなく、さらに最下層へと進んだ。
私の魔王種の可能性がこのダンジョンが怪しいと騒めいている。

レベル300を超えた今、これまでの魔物たちはもはや私の敵ではない。
腐蝕絶滅眼一発で、レベル350程度の魔物も一掃できる。

だが、ある階層を抜けた先。
地形が急変する。

「……何、ここ?」

床は白い大理石。天井には光る魔石が整然と並び、まるで聖堂のようだった。
中央に、異様な気配を放つ“黒い扉”が立っている。

【封印された試練:魔王種の資格ある者のみ通行可能】

そんな文字が扉の上に浮かんでいた。

「……来たわね。いよいよ“魔王進化”に繋がる試練」

扉の気配を読み取ると、どうやら中には“人型の強敵”が複数存在するようだ。
しかも、彼らの魂は全て“濁っている”。

(つまり、“罪の魂”を持ってる……これは渡りに船ね)

私はゆっくりと扉に手をかけた。

その瞬間、鋭い声が響いた。

「その扉の先は、戻れないわかもよ?」

──声の主は、ギルドでパーティーを組んでいるランクAの冒険者セリア・ミリアード。

赤い瞳と黒髪のエルフ。
強力な鑑定スキル持ちで、一部からは「探知殺しのセリア」とも呼ばれている。
気配を消して距離をとって跡をつけられたようだ。

「あなた……やっぱり、人間じゃないでしょ?」

セリアの言葉に、一瞬で背中に冷たい風が走る。

(……見抜かれた? いや、どこまで?)

私はゆっくりと笑った。

「何を言ってるのか、よく分からないわね。
でも……中に入りたいなら、止めないわよ?」

「──なら、私も行く。あなたの正体を見届けるために」

思わぬ展開だ。

「じゃあ、行きましょう。セリア。
私たち、“魔王種の扉”を開く仲間として──」

黒く鈍く輝く扉が、軋むような音を立てて開いた。

眼前に広がったのは、七つの祭壇と、その中央にある闇の玉座。
不浄な魔力が辺りを満たし、空間そのものがよろめくような不安定さを持っていた。

「うっ……気持ち悪い……」

隣でセリアがわずかに顔をしかめた。
神経を逆撫でするような瘴気が、聖属性の強い者には毒になるらしい。

その時、玉座の前に立つ一人の男が、こちらを向いた。

「ようこそ、アルハラの継承者よ──
ここは【堕罪の間】。魔王種へ至るための関門」

男は人間の姿をしていた。
だが、その背からは黒く歪んだ羽根が伸びており、**“罪そのもの”**が具現化したような存在だった。

「私の名は《グロス・エル・マルド》。この試練の監視者にして、“傲慢”の守護者」

彼の声はまるで水底から響くような重低音。
そして次々に現れる影──
•「あはっ、私の“嫉妬”に焼かれて、灰になってよぉぉ……♪」《ジェラ・ファミリア》
•「裏切りってさぁ……気持ちいいんだよね」《ベトル・ナイン》
•「あら、アナタ。私の“快楽”を味わってみる?」《ルゥル・セリシア》
•「復讐だけが……俺を生かす理由だ……」《ガルド・ヘムリク》
•「ねえ……もっと、もっと私を見てよおおお……!
私の"強欲"受け止められる?」《アモ・リッツ》
•「すべては、“怠惰”の中に還る……」《ネトル・ズィア》

そのどれもが、魔物であり、人間であり、狂気と欲望を帯びた“魂の濁り”そのものだった。

セリアが即座に剣を抜き、警戒態勢に入る。

「こいつら……ただの魔物じゃないわ。
シエラ、これは……危険すぎる!」

だが私は、一歩前に出た。

「進むしかないわ。これは、私にとって“必要な進化”なの」

その瞬間、グロスが宣言する。

「この試練を突破するには、“七つの罪”のうち五つの魂を取り込むこと。
方法は問わない──討伐するも、堕とすも、契約するも、自由」

「……面白いじゃない」

私は唇の端を吊り上げた。



◆第一の罪“裏切り”──ベトル・ナインとの頭脳戦

最初に出てきたのは、道化師のような風貌をした男ベトル・ナイン。
ふざけた笑顔を浮かべながら、奇妙な動きでこちらを翻弄してくる。

「なーに警戒してんのさ、アルハラちゃん?
裏切りってのはね、“信じた時”にやってくるのさ!」

彼のスキルは【心象転写】。
こちらの疑念や信頼の度合いを読み取り、相手の“心”を能力に変換する、超厄介な異能だった。

私はすぐに《魔王覇気》と《神眼》を使い、情報を読み取る。

(……信頼度が高いほど相手に力を与えてしまう。
つまり、こいつに対しては“絶対に心を開かない”のが正解)

「面白いスキル。でも、無駄よ。私は誰にも心を開かない」

ベトルが一瞬、目を見開いた。

「──へぇ、マジかい。ちょっと怖いくらいの冷たさだ」

私は《腐蝕絶滅眼》を放つ。

濃密な腐蝕魔力がベトルの体を貫き、半身を溶かす。

「う、うあああああッ!? い、いや、待って……っ!!」

「裏切り者は……信じる価値すら無い。消えて」

魔法反射+デスサイズポイズン+毒舌の連撃。

あっけなく、ベトル・ナインは魂ごと崩壊した。
私の体内に、濁った“裏切りの魂”が取り込まれていく。

「……1つ、クリア」

隣で見ていたセリアが一歩後ずさったのに、気づいた。

(……ああ、やっぱり見られてる。この“私の本性”を)

彼女はもう私を普通の冒険者だとは思っていない。
でも、それがどうした?

私は、“魔王”になるんだから。
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