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第四章 闇の王国編
第二十六話 久々の魔界
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ティアはロイスと共に旅立つ前に、ひとつの決意を固めていた。
――魔界に戻り、魔王達を集める。
魔界の深奥に存在する《黒曜の王座》の間。
重厚な扉が開かれると同時に、幾つもの強大な気配が空間を満たした。
「……ふふ。随分と間が空いたな、ユスティティア。」
嘲るように笑ったのは、漆黒の長髪を靡かせる【傲慢の魔王アルセリオス】。
かつて天界で同僚だった彼は、今もその鋭い眼差しを失っていなかった。
「80年も顔を見せぬとはな。我らを忘れたのではあるまいな?」
低い声で言うのは、黄金の鎧を纏った【強欲の魔王ガルディアン】。
その体躯から放たれる覇気は、今なお帝王のごとき迫力を保っている。
「おひさしぶりぃ~~ユスティティアぁぁ!」
豪快に笑いながら両腕を振るうのは、食欲を全ての力に変える【暴食の魔王グラトーラ】。
そして次々に姿を現す、怠惰・色欲・嫉妬の魔王達。
六魔王が黒曜の円卓に揃ったのは、実に八十年ぶりのことだった。
重々しい沈黙を破り、ユスティティア――ティアは席に着く。
その瞳は人間として過ごした柔らかさを失い、神魔魔王の冷厳な光を宿していた。
「久しぶりね。今日は報せがあって来たの。」
円卓に集った魔王達の視線が一斉にティアに注がれる。
アルセリオスが口元を歪める。
「さては――また人間界のことであろう?」
ティアは頷き、冷ややかに告げる。
「西の小国バザルトンが、海の向こうより来た《闇の王国サザルン》に滅ぼされたのよね。」
その場の空気が一瞬にして張り詰めた。
ガルディアンが低く唸る。
「サザルンの事はこちらでも把握している。」
「ふふ、面白いじゃない。
人間同士の争いなら好きにさせればいいのに……」
グラトーラが舌なめずりしながら笑う。
だがユスティティアは首を横に振った。
「そうもいかないわ。
放置すれば人間界は再び大乱に陥るし、魔界への影響もあるかもしれない。
それに何と無く嫌な予感もするしね。」
アルセリオスの瞳が細まり、ニヤリと笑う。
「80年も人間に紛れて暮らした故に感化されたか……面白い。」
「とりあえず勇者ロイスと共に、フェルミナンス学園に潜入し、サザルンの内情を探るわ。」
その言葉に魔王達はざわめいた。
「勇者と……手を組むだと?」
「はっ、らしいといえばらしいな。
慈愛と狂気の両極を抱く女魔王め。」
ティアは静かに円卓を見渡し、凛と告げる。
「今回も私は一人で行く。
でも、もし私に手に負えない案件なら皆んなにも協力を仰ぐわね。」
数瞬の沈黙。
やがてアルセリオスが不敵に笑い、手を叩いた。
「よかろう。
せいぜい勇者ごっこを楽しむがいい。」
黒曜の間に残された魔王達は、それぞれの思惑を胸に沈黙した。
色欲の魔王ヴェリアンが椅子に腰かけたまま、艶やかな目を細めた。
「……それにしても、不思議だな、ユスティティア。
なぜその姿なのだ?
魔王の威容を捨て、人間の娘のような姿でいるとは。」
嫉妬の魔王イラエルが鼻で笑う。
「まさか、人間に未練でもあるのか?」
怠惰の魔王ミゼリスは頬杖をつき、眠たげに呟く。
「見た目はただの小娘……正直、欠伸が出るわ。」
するとティアは、机を軽く叩いて身を乗り出した。
「そうなのよ! 聞いてよみんな!」
一同「!?」
ティアは勢いよく語りだす。
「邪神を倒した後ね、ロディアスったら――『世界中のダンジョンを巡ろう!』とか言い出したのよ! あの人、完全にデートのつもりだったみたいなんだけど……どこがデートよ!?
出てくる魔物をひたすら倒して、『いやぁ楽しいな!』って……そんな訳あるか~~い!」
机をドンと叩き、ツッコミを入れるティア。
魔王達は目を瞬かせる。
「で、そんなことしてたら、レベルがどんどん上がっちゃって……気付いたら9999。
そしたら“進化”が始まってね、選択肢が出たのよ。
『神が想像した人間の姿がいいか? それとも尊厳に満ちた魔王の姿がいいか?』って!」
「……それで?」アルセリオスが眉をひそめる。
ティアはドヤ顔で続けた。
「ロディアスに『どっちがいい?』って聞いたら――『うん! 可愛いから人間がいいぞ!』って言われたの!
だからこの姿になったのよ!」
魔王達「…………」
ガルディアンが額を押さえた。
「馬鹿か、あの勇者……」
イラエルが口を尖らせる。
「それで、今のレベルは……いくつなんだ?」
ティアは軽く指折りながら、さらっと言った。
「ああ、13000よ。
それにね――種族も“フィン”とかいうのになっちゃったの。
これ以上進化ないってことかしら?」
魔王達「知るかァァァァ!!!」
円卓の魔王達が一斉に立ち上がって叫んだ。
しかしアルセリオスが表情を引き締め、低く問い直す。
「……だが、本当にレベル13000なのか?
我らには、まるで魔力を感じぬ。」
ティアはにっこり笑って肩をすくめる。
「ああ、それね?
抑えてるからよ。
だって、放出しっぱなしだと、レベルの低い魔物なんて一瞬で消し飛んじゃうもの。
それに魔力がダダ漏れって、何だか恥ずかしいじゃない。
だから努力して抑えたの、大変だったんだから!」
愚痴をぽんぽん並べ立てるティアに、魔王達は冷や汗を浮かべながら顔を見合わせた。
――13000という数字の意味を、誰よりも理解している彼らにとって、それは恐怖以外の何物でもなかった。
魔王達は高くて700程度のレベルしかない。
円卓の空気は、笑っていいのか震えるべきなのか分からない、不思議な静寂に包まれた。
ティアが一通り愚痴を言い終えると、円卓に集った魔王達は一斉に押し黙った。
普段なら小競り合いの絶えない彼らが、互いに目を合わせては引きつった笑みを浮かべている。
「……おい。」
強欲の魔王ガルディアンが声をひそめた。
「本当に“レベル13000”と言ったか?」
「間違いなく言ったな。」
傲慢の魔王アルセリオスが低く唸る。
「しかも“魔力を抑えている”……だと?」
怠惰の魔王ミゼリスは眠たげだった目をぱっちり見開き、椅子をきしませながら後ずさった。
「抑えて、あのゼロに等しい気配……? じゃあ、解放したらどうなる……?」
魔王達の脳裏に、一瞬で大陸が吹き飛ぶ光景が浮かぶ。
「ひぃ……」
色欲の魔王ヴェリアンが珍しく艶を失い、肩を震わせた。
「我ら……とんでもないものを横に座らせているのでは……?」
「……爆弾だな。」
アルセリオスが短く言い切る。
「そうだ……!」
イラエルが机を叩いた。
「ただの爆弾じゃない、“歩く世界最終兵器”だ!」
「扱いを間違えれば……」
ガルディアンがごくりと唾を飲む。
「我らの王国ごと、一瞬で吹き飛ぶ……」
魔王達が一斉にティアから椅子ごと距離を取った。
ガタガタガタッ!
ティア「え、なによ?
なんでみんな後ずさるのよ?
ちょっとぉ、私そんな怖い話したかしら?」
「「「十分怖いわァァァァ!!!」」」
魔王達全員が同時に叫び、会議の場は混乱に包まれた。
ティアは頬を膨らませて腕を組む。
「むぅ……せっかく頑張って魔力も抑えて、可愛くて優しいティアちゃんでいるのに……なんなのよ、爆弾って!」
――しかし魔王達の心中には、ただひとつの確信しか残っていなかった。
(((……これは絶対に敵に回してはいけない存在だ……!)))
――魔界に戻り、魔王達を集める。
魔界の深奥に存在する《黒曜の王座》の間。
重厚な扉が開かれると同時に、幾つもの強大な気配が空間を満たした。
「……ふふ。随分と間が空いたな、ユスティティア。」
嘲るように笑ったのは、漆黒の長髪を靡かせる【傲慢の魔王アルセリオス】。
かつて天界で同僚だった彼は、今もその鋭い眼差しを失っていなかった。
「80年も顔を見せぬとはな。我らを忘れたのではあるまいな?」
低い声で言うのは、黄金の鎧を纏った【強欲の魔王ガルディアン】。
その体躯から放たれる覇気は、今なお帝王のごとき迫力を保っている。
「おひさしぶりぃ~~ユスティティアぁぁ!」
豪快に笑いながら両腕を振るうのは、食欲を全ての力に変える【暴食の魔王グラトーラ】。
そして次々に姿を現す、怠惰・色欲・嫉妬の魔王達。
六魔王が黒曜の円卓に揃ったのは、実に八十年ぶりのことだった。
重々しい沈黙を破り、ユスティティア――ティアは席に着く。
その瞳は人間として過ごした柔らかさを失い、神魔魔王の冷厳な光を宿していた。
「久しぶりね。今日は報せがあって来たの。」
円卓に集った魔王達の視線が一斉にティアに注がれる。
アルセリオスが口元を歪める。
「さては――また人間界のことであろう?」
ティアは頷き、冷ややかに告げる。
「西の小国バザルトンが、海の向こうより来た《闇の王国サザルン》に滅ぼされたのよね。」
その場の空気が一瞬にして張り詰めた。
ガルディアンが低く唸る。
「サザルンの事はこちらでも把握している。」
「ふふ、面白いじゃない。
人間同士の争いなら好きにさせればいいのに……」
グラトーラが舌なめずりしながら笑う。
だがユスティティアは首を横に振った。
「そうもいかないわ。
放置すれば人間界は再び大乱に陥るし、魔界への影響もあるかもしれない。
それに何と無く嫌な予感もするしね。」
アルセリオスの瞳が細まり、ニヤリと笑う。
「80年も人間に紛れて暮らした故に感化されたか……面白い。」
「とりあえず勇者ロイスと共に、フェルミナンス学園に潜入し、サザルンの内情を探るわ。」
その言葉に魔王達はざわめいた。
「勇者と……手を組むだと?」
「はっ、らしいといえばらしいな。
慈愛と狂気の両極を抱く女魔王め。」
ティアは静かに円卓を見渡し、凛と告げる。
「今回も私は一人で行く。
でも、もし私に手に負えない案件なら皆んなにも協力を仰ぐわね。」
数瞬の沈黙。
やがてアルセリオスが不敵に笑い、手を叩いた。
「よかろう。
せいぜい勇者ごっこを楽しむがいい。」
黒曜の間に残された魔王達は、それぞれの思惑を胸に沈黙した。
色欲の魔王ヴェリアンが椅子に腰かけたまま、艶やかな目を細めた。
「……それにしても、不思議だな、ユスティティア。
なぜその姿なのだ?
魔王の威容を捨て、人間の娘のような姿でいるとは。」
嫉妬の魔王イラエルが鼻で笑う。
「まさか、人間に未練でもあるのか?」
怠惰の魔王ミゼリスは頬杖をつき、眠たげに呟く。
「見た目はただの小娘……正直、欠伸が出るわ。」
するとティアは、机を軽く叩いて身を乗り出した。
「そうなのよ! 聞いてよみんな!」
一同「!?」
ティアは勢いよく語りだす。
「邪神を倒した後ね、ロディアスったら――『世界中のダンジョンを巡ろう!』とか言い出したのよ! あの人、完全にデートのつもりだったみたいなんだけど……どこがデートよ!?
出てくる魔物をひたすら倒して、『いやぁ楽しいな!』って……そんな訳あるか~~い!」
机をドンと叩き、ツッコミを入れるティア。
魔王達は目を瞬かせる。
「で、そんなことしてたら、レベルがどんどん上がっちゃって……気付いたら9999。
そしたら“進化”が始まってね、選択肢が出たのよ。
『神が想像した人間の姿がいいか? それとも尊厳に満ちた魔王の姿がいいか?』って!」
「……それで?」アルセリオスが眉をひそめる。
ティアはドヤ顔で続けた。
「ロディアスに『どっちがいい?』って聞いたら――『うん! 可愛いから人間がいいぞ!』って言われたの!
だからこの姿になったのよ!」
魔王達「…………」
ガルディアンが額を押さえた。
「馬鹿か、あの勇者……」
イラエルが口を尖らせる。
「それで、今のレベルは……いくつなんだ?」
ティアは軽く指折りながら、さらっと言った。
「ああ、13000よ。
それにね――種族も“フィン”とかいうのになっちゃったの。
これ以上進化ないってことかしら?」
魔王達「知るかァァァァ!!!」
円卓の魔王達が一斉に立ち上がって叫んだ。
しかしアルセリオスが表情を引き締め、低く問い直す。
「……だが、本当にレベル13000なのか?
我らには、まるで魔力を感じぬ。」
ティアはにっこり笑って肩をすくめる。
「ああ、それね?
抑えてるからよ。
だって、放出しっぱなしだと、レベルの低い魔物なんて一瞬で消し飛んじゃうもの。
それに魔力がダダ漏れって、何だか恥ずかしいじゃない。
だから努力して抑えたの、大変だったんだから!」
愚痴をぽんぽん並べ立てるティアに、魔王達は冷や汗を浮かべながら顔を見合わせた。
――13000という数字の意味を、誰よりも理解している彼らにとって、それは恐怖以外の何物でもなかった。
魔王達は高くて700程度のレベルしかない。
円卓の空気は、笑っていいのか震えるべきなのか分からない、不思議な静寂に包まれた。
ティアが一通り愚痴を言い終えると、円卓に集った魔王達は一斉に押し黙った。
普段なら小競り合いの絶えない彼らが、互いに目を合わせては引きつった笑みを浮かべている。
「……おい。」
強欲の魔王ガルディアンが声をひそめた。
「本当に“レベル13000”と言ったか?」
「間違いなく言ったな。」
傲慢の魔王アルセリオスが低く唸る。
「しかも“魔力を抑えている”……だと?」
怠惰の魔王ミゼリスは眠たげだった目をぱっちり見開き、椅子をきしませながら後ずさった。
「抑えて、あのゼロに等しい気配……? じゃあ、解放したらどうなる……?」
魔王達の脳裏に、一瞬で大陸が吹き飛ぶ光景が浮かぶ。
「ひぃ……」
色欲の魔王ヴェリアンが珍しく艶を失い、肩を震わせた。
「我ら……とんでもないものを横に座らせているのでは……?」
「……爆弾だな。」
アルセリオスが短く言い切る。
「そうだ……!」
イラエルが机を叩いた。
「ただの爆弾じゃない、“歩く世界最終兵器”だ!」
「扱いを間違えれば……」
ガルディアンがごくりと唾を飲む。
「我らの王国ごと、一瞬で吹き飛ぶ……」
魔王達が一斉にティアから椅子ごと距離を取った。
ガタガタガタッ!
ティア「え、なによ?
なんでみんな後ずさるのよ?
ちょっとぉ、私そんな怖い話したかしら?」
「「「十分怖いわァァァァ!!!」」」
魔王達全員が同時に叫び、会議の場は混乱に包まれた。
ティアは頬を膨らませて腕を組む。
「むぅ……せっかく頑張って魔力も抑えて、可愛くて優しいティアちゃんでいるのに……なんなのよ、爆弾って!」
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