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第四章 闇の王国編
第二十九話 学園生活が始まる
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ティアが女子生徒達と和やかに会話していると、少しおずおずとした声が背後から聞こえた。
「こ、こんにちは。……あ、あのう、新入生の方ですよね」
振り返ると、肩までの淡い栗色の髪を持つ少女が立っていた。
制服はきちんと着こなしているが、緊張からか手を胸元でぎゅっと握りしめている。
「私はメリル・クラウストと申します。
レスゲル王国の……クラウスト男爵家の三女です」
深々と礼をするその仕草に、周囲の女子生徒たちも「わあ、丁寧な子ね」と囁き合う。
ティアはにっこりと微笑んで答えた。
「まあ、ご丁寧にありがとう。
私はティア・リブンです。
アインレット王国リブン侯爵家の長女として参りましたわ。
……メリルさん、こちらに来てくださって嬉しいですわ」
「ひゃっ……!」
メリルは思わず赤面して、慌てて首を振った。
「い、いえ!こちらこそ、アインレット王国侯爵家のお嬢様にお声をかけていただけるなんて、光栄です!」
ティアは落ち着いた笑みを浮かべつつも、(この子、とても素直で良い子ね。
……仲良くしておいて損はないわ)と心中で計算していた。
「私、まだ寮の中もよく分からなくて……もしよろしければ、ご案内していただけませんか?」
ティアがそう頼むと、メリルの顔が一気に明るくなった。
「は、はいっ!ぜひ、ご案内させてください!」
周囲の女子たちも「あの子、交友が広い子だから安心ね」と囁き合い、ティアの第一歩は順調に進んでいった。
メリルと話を続けるうちに、彼女もまた自分と同じ「途中編入組」であることが分かった。
「少し前に入学したんです。
だから、まだ友達も少なくて……。
でも、今朝、寮でティアさんをお見かけして、すごく可愛くて、美人で……それに、あの綺麗な髪! 全部が素敵で……お話してみたいって思ったんです!」
一気に捲し立てるように褒められ、ティアは一瞬きょとんとした後、ふっと頬を緩めた。
「まあ……そんな風に言っていただけるなんて、嬉しいですわ。
私の事はティアとお呼びくださって構いませんわよ。」
「あ、ありがとう。
それではティア、よろしくお願いします。」
お淑やかに微笑むものの、胸の奥では「褒められるのって、やっぱり悪くないわね」と少し照れも混じっていた。
そして話題は自然とロイスのことに移った。
「わたくしには兄がおりますの。
二年生のロイス兄様です。とても優秀で……わたくしにとって大切な方なのです」
「ロイス様……!」
メリルの目が一瞬で輝いた。
「二年生の中でもすごく評判の方ですよ!
とても聡明で立派な立ち振る舞いをされるか方だと……!
やっぱり兄妹なんですね、素敵です!」
ティアは少しだけ誇らしげに、しかし「妹らしく」顔を赤らめて俯いた。
「……ふふ、明日からの授業が、とても楽しみになってきましたわ」
メリルも嬉しそうに頷き、2人の間に温かな友情のような空気が流れた。
夜。
寮の静けさの中、ティアは自室に臣下たちを集めた。窓から月明かりが差し込む中、ティアの表情は昼間の学園で見せた“お淑やかな妹キャラ”とはまるで別人のように冷徹で理知的だった。
「――船に現れた4人が使った拘束魔法、あれを分析したわ」
ティアの声に、臣下たちは自然と背筋を伸ばす。
「まず、あれは4人の魔力で展開された術式ではない。魔道具を媒介にした発動の可能性が高い。
つまり、使い手の力量を問わずに誰でも発動できる……厄介な仕組みね」
セリアが眉をひそめる。
「……つまり、どんな小物でも勇者様を足止めできる可能性があると」
「恐らく、勇者に対して効果があるのかを検証したかったと言うのが、本来の目的だったと考えるのが自然ね。
効果があれば勇者に対してダメージを与えられる。
効果が無ければ改良のデータとなる。
どちらにしても勇者が狙われてることに変わりはないわね。」
ティアは頷き、さらに言葉を続けた。
「それと、極秘の任務で勇者が動いているはずなのに……彼らは“ロイスが船に乗っている”ことを知っていた。
つまり――勇者に近しい者の中に、闇の組織の影が潜んでいる可能性がある」
室内に重い空気が流れる。
ティアは臣下一人一人に視線を送りながら指示を出した。
「セリア。
あなたは街の様子を調査して。
酒場やギルドで、それとなく“闇の組織”に関する噂を拾ってきてほしい」
「はっ、御意に」
「カイン。
あなたはロイスの部屋へ行って。
船での拘束魔法の件、そして私が考察した内容を伝えて。
勇者周辺の警戒と調査はあなたの役割よ」
「承知した。
必ずや抜かりなく」
「リシェル、ルシェル。
あなた達は寮内で不審な人物がいないか調べて。
私が学園に出ている間の目と耳になってほしい。
それと……私に近づいてくる生徒の身辺調査もお願い」
双子は同時に頷く。
「「任せてください、主様」」
最後にティアは深く息をつき、表情を少しだけ和らげた。
「明日から私は学園内の調査に入るわ。皆、頼りにしている」
臣下たちが一斉に頭を垂れる。
こうして、学園潜入の裏で水面下の調査が動き出した。
学園初日。
ロイスと一緒に登校したティアは、さっそく「お兄様大好き」を全面に押し出し、通りすがりの生徒たちを赤面させるほどシスコンを爆発させた。
「お兄様と一緒に登校できて……本当に嬉しいですわ」
と、控えめな笑顔でロイスの袖をぎゅっと掴むティア。
(――完璧な“お淑やかな妹キャラ”。これならすぐに周囲に浸透するわね)
ティアの行動にロイスはタジタジになりながら初登校することになった。
授業が始まると、その可憐な外見と仕草によりクラスの注目を独占。
「ねえ、とても髪が綺麗ですわね。」
「何処からいらしたの?」
「とてもお綺麗ですわ。」
男子達は
「天使だろ、凄いタイプだぜ。」
「学園一の美少女だぞ。」
「仲良くなりたい。」
休み時間にはあっという間に女子たちに囲まれ、男子からも熱い視線が注がれる。
ただ、その様子を苦々しげに眺める生徒たちもいた。
――昼休み。
ティアはメリルと一緒に食堂の窓際で談笑しながら昼食を取っていた。
すると、制服の襟をきっちりと整えた三人組の女子が近づいてきた。
「あら、転入生のティアさんですわね」
先頭に立つ少女が、上から目線で名乗った。
「わたくしはザザルン王国ラッテル伯爵家のシャーロットと申します」
「私はザザルン王国ルセント男爵家のメゼルと申します」
「私はザザルン王国ビンセント男爵家のマーガレットと申します」
三人はそれぞれ名乗り終えると、同じ笑みを浮かべて続けた。
「少しお話がありますの。食後にお時間よろしい?」
(……ふふ、来たわね。これはいわゆる“いじめキャラ”の登場シーン)
ティアは、表向きはにこやかに、しかし内心では完全に相手を見定める態勢に入った。
「ええ、よろしくてよ」
食後、中庭へ。
そこにはシャーロットと取り巻き二人が立ちはだかっていた。
「転入生のくせに……少し目立ちすぎではありませんの?」
「そうですわ! シャーロット様を差し置いて皆の注目を集めるなんて」
「転入してきたならまずは、この国の第二王子の許嫁であられるシャーロット様にご挨拶するのが先ですわ!」
ティアは内心でなるほどと頷く。
(シャーロットは一年生の花形……つまり派閥の中心人物。
私が可愛い子キャラを前面に出したのが、彼女のプライドを刺激してしまったのね)
ティアは少し肩をすくめ、演技を切り替える。
「あ、あ……そ、それは、ごめんなさい。
何も知らなくて……ただ、早く皆さんと仲良くなりたくて、頑張ってしまいましたの……」
小さな声と弱気な仕草に、取り巻き二人は一瞬たじろぐ。
だがシャーロットは冷たい笑みを浮かべた。
「あら、そうでしたの。
ならばこれからは、目立ちすぎないよう気をつけなさいませ。」
「そうですわ」
「ご理解いただければ結構ですの」
二人の取り巻きが睨みつけてくる中、ティアは小さく会釈してその場をやり過ごした。
――だが、その瞳の奥では冷ややかな光がきらめいていた。
(……さて。
思わぬ情報だわ。
第二王子の許嫁。
どう扱うのが良いのか…。)
「こ、こんにちは。……あ、あのう、新入生の方ですよね」
振り返ると、肩までの淡い栗色の髪を持つ少女が立っていた。
制服はきちんと着こなしているが、緊張からか手を胸元でぎゅっと握りしめている。
「私はメリル・クラウストと申します。
レスゲル王国の……クラウスト男爵家の三女です」
深々と礼をするその仕草に、周囲の女子生徒たちも「わあ、丁寧な子ね」と囁き合う。
ティアはにっこりと微笑んで答えた。
「まあ、ご丁寧にありがとう。
私はティア・リブンです。
アインレット王国リブン侯爵家の長女として参りましたわ。
……メリルさん、こちらに来てくださって嬉しいですわ」
「ひゃっ……!」
メリルは思わず赤面して、慌てて首を振った。
「い、いえ!こちらこそ、アインレット王国侯爵家のお嬢様にお声をかけていただけるなんて、光栄です!」
ティアは落ち着いた笑みを浮かべつつも、(この子、とても素直で良い子ね。
……仲良くしておいて損はないわ)と心中で計算していた。
「私、まだ寮の中もよく分からなくて……もしよろしければ、ご案内していただけませんか?」
ティアがそう頼むと、メリルの顔が一気に明るくなった。
「は、はいっ!ぜひ、ご案内させてください!」
周囲の女子たちも「あの子、交友が広い子だから安心ね」と囁き合い、ティアの第一歩は順調に進んでいった。
メリルと話を続けるうちに、彼女もまた自分と同じ「途中編入組」であることが分かった。
「少し前に入学したんです。
だから、まだ友達も少なくて……。
でも、今朝、寮でティアさんをお見かけして、すごく可愛くて、美人で……それに、あの綺麗な髪! 全部が素敵で……お話してみたいって思ったんです!」
一気に捲し立てるように褒められ、ティアは一瞬きょとんとした後、ふっと頬を緩めた。
「まあ……そんな風に言っていただけるなんて、嬉しいですわ。
私の事はティアとお呼びくださって構いませんわよ。」
「あ、ありがとう。
それではティア、よろしくお願いします。」
お淑やかに微笑むものの、胸の奥では「褒められるのって、やっぱり悪くないわね」と少し照れも混じっていた。
そして話題は自然とロイスのことに移った。
「わたくしには兄がおりますの。
二年生のロイス兄様です。とても優秀で……わたくしにとって大切な方なのです」
「ロイス様……!」
メリルの目が一瞬で輝いた。
「二年生の中でもすごく評判の方ですよ!
とても聡明で立派な立ち振る舞いをされるか方だと……!
やっぱり兄妹なんですね、素敵です!」
ティアは少しだけ誇らしげに、しかし「妹らしく」顔を赤らめて俯いた。
「……ふふ、明日からの授業が、とても楽しみになってきましたわ」
メリルも嬉しそうに頷き、2人の間に温かな友情のような空気が流れた。
夜。
寮の静けさの中、ティアは自室に臣下たちを集めた。窓から月明かりが差し込む中、ティアの表情は昼間の学園で見せた“お淑やかな妹キャラ”とはまるで別人のように冷徹で理知的だった。
「――船に現れた4人が使った拘束魔法、あれを分析したわ」
ティアの声に、臣下たちは自然と背筋を伸ばす。
「まず、あれは4人の魔力で展開された術式ではない。魔道具を媒介にした発動の可能性が高い。
つまり、使い手の力量を問わずに誰でも発動できる……厄介な仕組みね」
セリアが眉をひそめる。
「……つまり、どんな小物でも勇者様を足止めできる可能性があると」
「恐らく、勇者に対して効果があるのかを検証したかったと言うのが、本来の目的だったと考えるのが自然ね。
効果があれば勇者に対してダメージを与えられる。
効果が無ければ改良のデータとなる。
どちらにしても勇者が狙われてることに変わりはないわね。」
ティアは頷き、さらに言葉を続けた。
「それと、極秘の任務で勇者が動いているはずなのに……彼らは“ロイスが船に乗っている”ことを知っていた。
つまり――勇者に近しい者の中に、闇の組織の影が潜んでいる可能性がある」
室内に重い空気が流れる。
ティアは臣下一人一人に視線を送りながら指示を出した。
「セリア。
あなたは街の様子を調査して。
酒場やギルドで、それとなく“闇の組織”に関する噂を拾ってきてほしい」
「はっ、御意に」
「カイン。
あなたはロイスの部屋へ行って。
船での拘束魔法の件、そして私が考察した内容を伝えて。
勇者周辺の警戒と調査はあなたの役割よ」
「承知した。
必ずや抜かりなく」
「リシェル、ルシェル。
あなた達は寮内で不審な人物がいないか調べて。
私が学園に出ている間の目と耳になってほしい。
それと……私に近づいてくる生徒の身辺調査もお願い」
双子は同時に頷く。
「「任せてください、主様」」
最後にティアは深く息をつき、表情を少しだけ和らげた。
「明日から私は学園内の調査に入るわ。皆、頼りにしている」
臣下たちが一斉に頭を垂れる。
こうして、学園潜入の裏で水面下の調査が動き出した。
学園初日。
ロイスと一緒に登校したティアは、さっそく「お兄様大好き」を全面に押し出し、通りすがりの生徒たちを赤面させるほどシスコンを爆発させた。
「お兄様と一緒に登校できて……本当に嬉しいですわ」
と、控えめな笑顔でロイスの袖をぎゅっと掴むティア。
(――完璧な“お淑やかな妹キャラ”。これならすぐに周囲に浸透するわね)
ティアの行動にロイスはタジタジになりながら初登校することになった。
授業が始まると、その可憐な外見と仕草によりクラスの注目を独占。
「ねえ、とても髪が綺麗ですわね。」
「何処からいらしたの?」
「とてもお綺麗ですわ。」
男子達は
「天使だろ、凄いタイプだぜ。」
「学園一の美少女だぞ。」
「仲良くなりたい。」
休み時間にはあっという間に女子たちに囲まれ、男子からも熱い視線が注がれる。
ただ、その様子を苦々しげに眺める生徒たちもいた。
――昼休み。
ティアはメリルと一緒に食堂の窓際で談笑しながら昼食を取っていた。
すると、制服の襟をきっちりと整えた三人組の女子が近づいてきた。
「あら、転入生のティアさんですわね」
先頭に立つ少女が、上から目線で名乗った。
「わたくしはザザルン王国ラッテル伯爵家のシャーロットと申します」
「私はザザルン王国ルセント男爵家のメゼルと申します」
「私はザザルン王国ビンセント男爵家のマーガレットと申します」
三人はそれぞれ名乗り終えると、同じ笑みを浮かべて続けた。
「少しお話がありますの。食後にお時間よろしい?」
(……ふふ、来たわね。これはいわゆる“いじめキャラ”の登場シーン)
ティアは、表向きはにこやかに、しかし内心では完全に相手を見定める態勢に入った。
「ええ、よろしくてよ」
食後、中庭へ。
そこにはシャーロットと取り巻き二人が立ちはだかっていた。
「転入生のくせに……少し目立ちすぎではありませんの?」
「そうですわ! シャーロット様を差し置いて皆の注目を集めるなんて」
「転入してきたならまずは、この国の第二王子の許嫁であられるシャーロット様にご挨拶するのが先ですわ!」
ティアは内心でなるほどと頷く。
(シャーロットは一年生の花形……つまり派閥の中心人物。
私が可愛い子キャラを前面に出したのが、彼女のプライドを刺激してしまったのね)
ティアは少し肩をすくめ、演技を切り替える。
「あ、あ……そ、それは、ごめんなさい。
何も知らなくて……ただ、早く皆さんと仲良くなりたくて、頑張ってしまいましたの……」
小さな声と弱気な仕草に、取り巻き二人は一瞬たじろぐ。
だがシャーロットは冷たい笑みを浮かべた。
「あら、そうでしたの。
ならばこれからは、目立ちすぎないよう気をつけなさいませ。」
「そうですわ」
「ご理解いただければ結構ですの」
二人の取り巻きが睨みつけてくる中、ティアは小さく会釈してその場をやり過ごした。
――だが、その瞳の奥では冷ややかな光がきらめいていた。
(……さて。
思わぬ情報だわ。
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