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第六章 学園生活
第四十一話 学園祭
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ロイスが各地を奔走し、暗殺部隊の残党処理や王国の混乱収束に追われていた頃――。
ティアは学園の生活をすっかり気に入り、友人たちとの穏やかな日々を楽しんでいた。
そして季節は流れ、陽射しが眩しい夏。
学園では毎年恒例の一大行事――学園祭が始まろうとしていた。
「メリル。学園祭だって。」
「うん、楽しみだね!どんな事をするのか気になるなあ。」
「クラスで出し物とか……考えるだけでワクワクするよね。」
ティアは笑みを浮かべながら答えた。
彼女は一応生徒会の一員だが、会長エルリンの不在中の仕事は副会長レゼントが担当しており、ティアは「今回は絶対に参加しない」と念押ししていた。
だからこそ、純粋に一人の学生として学園祭を楽しめる。
学園祭の目玉は二つ。
一つはクラス対抗の「出し物対決」。
模擬店の売り上げ一位のクラスには、夏休み中に学園所有の避暑地を自由に使える権利が与えられる。
もう一つは「ミスコン」――男女ペアで出場し、全校生徒の投票で一番「お似合い」だと思われたカップルが選ばれる。
その優勝クラスには、なんと豪華客船でのクルージング旅行が贈られるという。
この二大イベントのおかげで、学園祭は毎年大いに盛り上がるのだ。
クラスでは出し物と代表者を決める話し合いが行われていた。
委員長ナディアと副委員クロウドの進行で議論が始まる。
「はい!」
勢いよく手を挙げた男子が叫ぶ。
「出し物はメイド喫茶がいい!」
「ええ~、やだぁ!」
「メイドなんて恥ずかしい!」
「むしろ男子がホスト喫茶でもやれば?」
すぐさま女子たちの猛反発が飛ぶ。
貴族の娘が多いこの学園では、メイド姿に抵抗を覚える者が少なくない。
「じゃあ肉を焼こうぜ!屋台で!」
「いやいや、うちのクラスは女子が可愛い子ばっかりなんだ。
メイド喫茶しかないだろ!」
場は一気に大混乱。
しかし最終的には多数決と、男子による必死の交渉の末、出し物は「メイド喫茶」で決まった。
「次はミスコンの代表者だね。」
教室の空気が一変し、皆の視線が一斉にティアへと向けられる。
「え……あ~、私?
別にいいけど……やりたい人がやった方がよくない?」
少しだけ照れながら、ティアは小首を傾げて答えた。
「男子はブライトンがいいんじゃない?」
「そうよね!ティアとブライトンなら絶対似合う!」
女子たちの声が飛び交い、なんとなくティアとブライトンの組み合わせで決まってしまう。
ブライトンは静かな性格で、頭もよく人当たりも柔らかい。男女を問わず慕われる人気者だ。
ティアは微笑んで彼の席に歩み寄る。
「ブライトン。
よろしくね。」
「あ、ああ……よ、よろしく。」
不意を突かれたのか、ブライトンはわずかに赤くなり、ぎこちない声で応えた。
その様子にティアは思わずクスリと笑う。
魔王としての威厳も、臣下を従える冷徹さも、今はここにはない。
ただ一人の少女として、学園祭の夏が始まろうとしていた――。
学園祭まであと一週間。
クラスの出し物であるメイド喫茶のメニューは決まったものの、最大の問題――「誰がメイド役をやるか」で議論が紛糾していた。
「ティア~!お願いだぁ!
メイドやってくれ!」
「ティアがメイド姿で接客してくれたら、絶対優勝間違いなしなんだ!」
男子が勢いよく声を上げると、すぐさま女子の反発が飛ぶ。
「ちょっと!
ティアに失礼じゃないの?
侯爵令嬢にメイドをやれなんて!」
「そうよそうよ!」
「それにティアはブライトンとミスコンもあるんだから。
ティアばかりに負担かけられないでしょ!」
議論は平行線を辿り、空気がピリピリしてきたその時。
「あ、あの……わ、私やります!」
メリルが小さく手を挙げた。
「おおっ!」
男子たちの顔がぱっと明るくなる。
「メリル~!
ありがとう!救世主だ!」
メリルは耳まで真っ赤に染め、恥ずかしそうにうつむいていた。
その姿を見て、ティアは小さく笑うと、すっと手を挙げた。
「じゃあ……私もやる。」
「おおおっ!」
男子たちの歓声が爆発する。
「ちょっ、ティア!
大丈夫なの?
男子の言うことなんて聞かなくていいのよ!」
女子が慌てて制止するが、ティアは首を横に振った。
「別に嫌じゃないわ。
メリルと一緒なら楽しそうだし。」
その一言に女子たちは顔を見合わせ、ため息をついた。
「……仕方ないわね。
ティアがやるなら、私たちもやらないと形にならないし。」
「うぅ……男子め、屈辱的だわ!」
「いいわよ、その代わり男子は料理や裏方全部担当だからね!
コキ使ってやるんだから!」
女子たちが息巻き、男子たちが「は、はいっ!」と青ざめる。
こうして、クラスのメイド喫茶計画は、波乱の中ようやく動き出したのだった。
メイド喫茶の準備は着々と進み、いよいよ衣装合わせの日がやって来た。
クラスの女子たちは渋々ながらも用意された衣装を手に取り、控え室で着替えを始めていた。
「うぅ……これ、本当に着るの……?」
メリルは袖口を引っ張りながら、恥ずかしそうに鏡の前に立つ。
黒を基調としたクラシカルなメイド服は、彼女の清楚な雰囲気にぴったりだった。
「似合ってるわよ、メリル。
すごく可愛い。」
ティアが笑いかける。
そのティア自身も、真新しいメイド服に袖を通していた。
――白いエプロンがひらりと揺れ、ふわりと広がるスカートが膝上できらめく。
普段は凛とした気品を漂わせるティアが、メイド服を着た姿はあまりにも新鮮で、まるで舞台から飛び出してきたおとぎ話のヒロインのようだった。
「ティ、ティア……っ。
やっぱりすごい……」
メリルは見惚れて、思わず息を呑む。
ティアは少し照れながらスカートの裾をつまみ、くるりと一回転してみせた。
「どう?変じゃない?」
「へ、変じゃないよ!
むしろ……天使。」
メリルの声は小さくなり、それ以上は言葉にならなかった。
その時、教室の扉が勢いよく開いた。
「おーい!
準備できたかー!」
男子たちがどっと雪崩れ込んでくる。
そして、目に飛び込んできたティアの姿に――。
「うぉぉぉぉぉぉ!!!」
男子全員が雄叫びを上げた。
「やっぱりティア最強!
優勝待ったなし!」
「いや、メリルも可愛い!
癒やし度ナンバーワン!」
「うちのクラスの女子達は最高!」
「みんな可愛い!」
教室が一気にカオスな熱気に包まれる。
「ちょっと!入ってくるの早すぎ!」
女子たちが真っ赤になって怒鳴り、追い返そうとするが、男子は感動のあまり動かない。
その喧騒の中、ただ一人――ブライトンだけは静かにティアを見つめていた。
いつもの穏やかな表情のまま、けれど瞳の奥に熱が宿っているのを、ティアはふと感じ取る。
「……似合ってるよ、ティア。」
小さく、それでもはっきりとした声で。
「……っ」
ティアは一瞬だけ心臓が跳ねるのを感じ、思わず視線を逸らしてしまった。
メイド姿を見られる事なんて、そうそう無い。
普通に恥ずかしかった。
「おい!ブライトン!
お前ずるいぞ!いいとこ取り!」
男子の誰かが叫び、教室はさらに大混乱に。
――学園祭を前にして、クラスの雰囲気は熱気と笑いに包まれていた。
学園祭当日。
校門をくぐった瞬間から、学園は色とりどりの飾り付けと人々の笑い声で溢れかえっていた。
屋台の香ばしい匂い、楽器の音、呼び込みの声。
一年で最も華やぐ日が始まったのだ。
ティアたちのクラスは、早朝からメイド喫茶の準備に追われていた。
黒と白を基調にした仮設の店内は、花飾りとカーテンで彩られ、まるで本物の高級サロンのような雰囲気を漂わせている。
「いらっしゃいませ♪」
メリルが照れながらも笑顔でお客様を迎えると、列をなす来客から歓声があがった。
その奥から現れたのは――。
「ようこそ。お席へご案内いたしますね。」
微笑むティア。
気品あふれる佇まいに、客の視線は一瞬で釘付けとなる。
「女神か……?」
「いや、天使だろ……」
「くそっ、なんで俺は客じゃなくて厨房担当なんだ!」
男子クラスメイトの悲鳴交じりの声に、店内は笑いの渦に包まれた。
喫茶は大盛況で、休む間もないほどの忙しさだったが、ティアもメリルも楽しそうに働いていた。
「ふふっ、思ったより楽しいわね。」
「うん、みんな笑ってくれるから、なんだか嬉しい。」
やがて午後。
最大の目玉イベント――クラス対抗ミスコンの時間が迫ってきた。
舞台裏では、参加する生徒たちが慌ただしく準備を進めていた。
ティアもメイド服を脱ぎ、白を基調にした華やかなドレスに着替えていた。
宝石のような青い瞳と、長い金髪が一層映え、会場スタッフすら思わず見惚れるほどだった。
「……緊張してる?」
隣で控えるブライトンが、静かに声をかけてきた。
彼は黒の礼服に身を包み、普段の穏やかさとは違う凛とした雰囲気を纏っている。
「ちょっとだけね。」
ティアは小さく微笑む。
「でも、あなたが一緒なら大丈夫。」
その言葉に、ブライトンの頬がわずかに赤くなる。
「出番です!」
係の声が響く。
二人は視線を交わし、そっと手を取り合った。
ティアの指先にブライトンの温もりが重なると、緊張で硬くなっていた心がふわりと解けていく。
カーテンが開き、まばゆいライトと歓声が押し寄せた。
「きゃあああ!ティア様ーー!」
「ブライトン王子ーーー!」
クラスメイト達が叫んでいる。
割れんばかりの声援の中、二人は舞台へと歩み出る。
完璧な笑顔を浮かべながら。
――この瞬間、会場の視線はすべて、彼らに奪われていた。
ティアは学園の生活をすっかり気に入り、友人たちとの穏やかな日々を楽しんでいた。
そして季節は流れ、陽射しが眩しい夏。
学園では毎年恒例の一大行事――学園祭が始まろうとしていた。
「メリル。学園祭だって。」
「うん、楽しみだね!どんな事をするのか気になるなあ。」
「クラスで出し物とか……考えるだけでワクワクするよね。」
ティアは笑みを浮かべながら答えた。
彼女は一応生徒会の一員だが、会長エルリンの不在中の仕事は副会長レゼントが担当しており、ティアは「今回は絶対に参加しない」と念押ししていた。
だからこそ、純粋に一人の学生として学園祭を楽しめる。
学園祭の目玉は二つ。
一つはクラス対抗の「出し物対決」。
模擬店の売り上げ一位のクラスには、夏休み中に学園所有の避暑地を自由に使える権利が与えられる。
もう一つは「ミスコン」――男女ペアで出場し、全校生徒の投票で一番「お似合い」だと思われたカップルが選ばれる。
その優勝クラスには、なんと豪華客船でのクルージング旅行が贈られるという。
この二大イベントのおかげで、学園祭は毎年大いに盛り上がるのだ。
クラスでは出し物と代表者を決める話し合いが行われていた。
委員長ナディアと副委員クロウドの進行で議論が始まる。
「はい!」
勢いよく手を挙げた男子が叫ぶ。
「出し物はメイド喫茶がいい!」
「ええ~、やだぁ!」
「メイドなんて恥ずかしい!」
「むしろ男子がホスト喫茶でもやれば?」
すぐさま女子たちの猛反発が飛ぶ。
貴族の娘が多いこの学園では、メイド姿に抵抗を覚える者が少なくない。
「じゃあ肉を焼こうぜ!屋台で!」
「いやいや、うちのクラスは女子が可愛い子ばっかりなんだ。
メイド喫茶しかないだろ!」
場は一気に大混乱。
しかし最終的には多数決と、男子による必死の交渉の末、出し物は「メイド喫茶」で決まった。
「次はミスコンの代表者だね。」
教室の空気が一変し、皆の視線が一斉にティアへと向けられる。
「え……あ~、私?
別にいいけど……やりたい人がやった方がよくない?」
少しだけ照れながら、ティアは小首を傾げて答えた。
「男子はブライトンがいいんじゃない?」
「そうよね!ティアとブライトンなら絶対似合う!」
女子たちの声が飛び交い、なんとなくティアとブライトンの組み合わせで決まってしまう。
ブライトンは静かな性格で、頭もよく人当たりも柔らかい。男女を問わず慕われる人気者だ。
ティアは微笑んで彼の席に歩み寄る。
「ブライトン。
よろしくね。」
「あ、ああ……よ、よろしく。」
不意を突かれたのか、ブライトンはわずかに赤くなり、ぎこちない声で応えた。
その様子にティアは思わずクスリと笑う。
魔王としての威厳も、臣下を従える冷徹さも、今はここにはない。
ただ一人の少女として、学園祭の夏が始まろうとしていた――。
学園祭まであと一週間。
クラスの出し物であるメイド喫茶のメニューは決まったものの、最大の問題――「誰がメイド役をやるか」で議論が紛糾していた。
「ティア~!お願いだぁ!
メイドやってくれ!」
「ティアがメイド姿で接客してくれたら、絶対優勝間違いなしなんだ!」
男子が勢いよく声を上げると、すぐさま女子の反発が飛ぶ。
「ちょっと!
ティアに失礼じゃないの?
侯爵令嬢にメイドをやれなんて!」
「そうよそうよ!」
「それにティアはブライトンとミスコンもあるんだから。
ティアばかりに負担かけられないでしょ!」
議論は平行線を辿り、空気がピリピリしてきたその時。
「あ、あの……わ、私やります!」
メリルが小さく手を挙げた。
「おおっ!」
男子たちの顔がぱっと明るくなる。
「メリル~!
ありがとう!救世主だ!」
メリルは耳まで真っ赤に染め、恥ずかしそうにうつむいていた。
その姿を見て、ティアは小さく笑うと、すっと手を挙げた。
「じゃあ……私もやる。」
「おおおっ!」
男子たちの歓声が爆発する。
「ちょっ、ティア!
大丈夫なの?
男子の言うことなんて聞かなくていいのよ!」
女子が慌てて制止するが、ティアは首を横に振った。
「別に嫌じゃないわ。
メリルと一緒なら楽しそうだし。」
その一言に女子たちは顔を見合わせ、ため息をついた。
「……仕方ないわね。
ティアがやるなら、私たちもやらないと形にならないし。」
「うぅ……男子め、屈辱的だわ!」
「いいわよ、その代わり男子は料理や裏方全部担当だからね!
コキ使ってやるんだから!」
女子たちが息巻き、男子たちが「は、はいっ!」と青ざめる。
こうして、クラスのメイド喫茶計画は、波乱の中ようやく動き出したのだった。
メイド喫茶の準備は着々と進み、いよいよ衣装合わせの日がやって来た。
クラスの女子たちは渋々ながらも用意された衣装を手に取り、控え室で着替えを始めていた。
「うぅ……これ、本当に着るの……?」
メリルは袖口を引っ張りながら、恥ずかしそうに鏡の前に立つ。
黒を基調としたクラシカルなメイド服は、彼女の清楚な雰囲気にぴったりだった。
「似合ってるわよ、メリル。
すごく可愛い。」
ティアが笑いかける。
そのティア自身も、真新しいメイド服に袖を通していた。
――白いエプロンがひらりと揺れ、ふわりと広がるスカートが膝上できらめく。
普段は凛とした気品を漂わせるティアが、メイド服を着た姿はあまりにも新鮮で、まるで舞台から飛び出してきたおとぎ話のヒロインのようだった。
「ティ、ティア……っ。
やっぱりすごい……」
メリルは見惚れて、思わず息を呑む。
ティアは少し照れながらスカートの裾をつまみ、くるりと一回転してみせた。
「どう?変じゃない?」
「へ、変じゃないよ!
むしろ……天使。」
メリルの声は小さくなり、それ以上は言葉にならなかった。
その時、教室の扉が勢いよく開いた。
「おーい!
準備できたかー!」
男子たちがどっと雪崩れ込んでくる。
そして、目に飛び込んできたティアの姿に――。
「うぉぉぉぉぉぉ!!!」
男子全員が雄叫びを上げた。
「やっぱりティア最強!
優勝待ったなし!」
「いや、メリルも可愛い!
癒やし度ナンバーワン!」
「うちのクラスの女子達は最高!」
「みんな可愛い!」
教室が一気にカオスな熱気に包まれる。
「ちょっと!入ってくるの早すぎ!」
女子たちが真っ赤になって怒鳴り、追い返そうとするが、男子は感動のあまり動かない。
その喧騒の中、ただ一人――ブライトンだけは静かにティアを見つめていた。
いつもの穏やかな表情のまま、けれど瞳の奥に熱が宿っているのを、ティアはふと感じ取る。
「……似合ってるよ、ティア。」
小さく、それでもはっきりとした声で。
「……っ」
ティアは一瞬だけ心臓が跳ねるのを感じ、思わず視線を逸らしてしまった。
メイド姿を見られる事なんて、そうそう無い。
普通に恥ずかしかった。
「おい!ブライトン!
お前ずるいぞ!いいとこ取り!」
男子の誰かが叫び、教室はさらに大混乱に。
――学園祭を前にして、クラスの雰囲気は熱気と笑いに包まれていた。
学園祭当日。
校門をくぐった瞬間から、学園は色とりどりの飾り付けと人々の笑い声で溢れかえっていた。
屋台の香ばしい匂い、楽器の音、呼び込みの声。
一年で最も華やぐ日が始まったのだ。
ティアたちのクラスは、早朝からメイド喫茶の準備に追われていた。
黒と白を基調にした仮設の店内は、花飾りとカーテンで彩られ、まるで本物の高級サロンのような雰囲気を漂わせている。
「いらっしゃいませ♪」
メリルが照れながらも笑顔でお客様を迎えると、列をなす来客から歓声があがった。
その奥から現れたのは――。
「ようこそ。お席へご案内いたしますね。」
微笑むティア。
気品あふれる佇まいに、客の視線は一瞬で釘付けとなる。
「女神か……?」
「いや、天使だろ……」
「くそっ、なんで俺は客じゃなくて厨房担当なんだ!」
男子クラスメイトの悲鳴交じりの声に、店内は笑いの渦に包まれた。
喫茶は大盛況で、休む間もないほどの忙しさだったが、ティアもメリルも楽しそうに働いていた。
「ふふっ、思ったより楽しいわね。」
「うん、みんな笑ってくれるから、なんだか嬉しい。」
やがて午後。
最大の目玉イベント――クラス対抗ミスコンの時間が迫ってきた。
舞台裏では、参加する生徒たちが慌ただしく準備を進めていた。
ティアもメイド服を脱ぎ、白を基調にした華やかなドレスに着替えていた。
宝石のような青い瞳と、長い金髪が一層映え、会場スタッフすら思わず見惚れるほどだった。
「……緊張してる?」
隣で控えるブライトンが、静かに声をかけてきた。
彼は黒の礼服に身を包み、普段の穏やかさとは違う凛とした雰囲気を纏っている。
「ちょっとだけね。」
ティアは小さく微笑む。
「でも、あなたが一緒なら大丈夫。」
その言葉に、ブライトンの頬がわずかに赤くなる。
「出番です!」
係の声が響く。
二人は視線を交わし、そっと手を取り合った。
ティアの指先にブライトンの温もりが重なると、緊張で硬くなっていた心がふわりと解けていく。
カーテンが開き、まばゆいライトと歓声が押し寄せた。
「きゃあああ!ティア様ーー!」
「ブライトン王子ーーー!」
クラスメイト達が叫んでいる。
割れんばかりの声援の中、二人は舞台へと歩み出る。
完璧な笑顔を浮かべながら。
――この瞬間、会場の視線はすべて、彼らに奪われていた。
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