毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝

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第八章 謎の転校生

第六十三話 船内舞踏会

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夜――
船内のホールは煌びやかなシャンデリアが輝き、音楽隊の優雅な旋律が流れていた。
ティアとメリルはそれぞれドレスに身を包み、登場する。

「やっぱりティアは素敵ね。
みんな釘付けだわ」

「もう、何言ってるの。
メリルの方こそ見惚れちゃうくらい綺麗よ」

そんな二人のやりとりも束の間――。

ティアがホールに足を踏み入れた瞬間、男子達の視線が一斉に集中!
「ティア嬢だ!!」
「き、きたぞ……女神が!」
「今こそ勝負の時ッ!」

次の瞬間――我先にとティアの前に群がる男子たち。
「ティア嬢!最初のダンスを僕と!」
「いやいや、ここは俺が!」
「並べ!チャンスは公平だ!」
押し合いへし合い、ホールは軽くカオス状態。

ティアはその光景に苦笑しつつ、ふっと一言。
「えっと……最初はね、私を推してくれてるファンクラブの皆んなと踊るわ!」

「なっ……!」
その瞬間、会場は二つに割れた。

ファンクラブ会員(数名)
「やったぁあああ!
推し活は裏切らないっ!」
「長年の信仰が実ったぞ!」
「これが……ティア様推しの勝利だ!」

非会員男子
「う、嘘だろ……」
「なぜ俺はファンクラブに入会してなかったんだ……!」
「ま、まだ間に合うか?入会希望は……」

「もう遅いよー!」
ファンクラブ会員が誇らしげに胸を張ると、非会員たちは肩を落とし、壁際でスミに寄り添う羽目に。

ティアはそんな彼らを横目に、会員の一人と手を取り優雅にダンスを始める。
「……ふふ、楽しんでくれてるみたいね」
満面の笑みで舞うティアに、会場中の男子達の心がさらにざわめき立つのであった。

――こうして、舞踏会は幕を開けた。

ティアがファンクラブ会員と優雅に踊り始めると、壁際で落ち込んでいた非会員男子達がコソコソと作戦会議を始めた。

「……くそっ!
このままじゃ舞踏会が終わっちまう!」
「俺たちにもチャンスがあっていいはずだ!」
「そうだ!ファンクラブ連中を出し抜くんだ!」

そして立ち上がった一人が声を潜めて叫ぶ。
「作戦名――“踊りの乱入”!」
「「おおーっ!」」

だが次の瞬間。
彼らはタイミングを誤り、演奏の転調に合わせて一斉にティアへ突撃――

「ティア嬢ぉぉぉ!!!」
「次のダンスは俺たちと――!」

……結果。
足をもつれさせて互いにぶつかり合い、床にドミノ倒しのように転がっていく。

「ぎゃああっ!」
「重い!誰かどけぇ!」
「靴が!靴が取れたぁ!」

その惨状を見ていたティアは思わず吹き出す。
「ふふっ……もう、何やってるのよ」

メリルも肩を震わせながら。
「ティア、大人気すぎて逆に大変ね」

一方ファンクラブ会員達は胸を張って勝ち誇る。
「見たか非会員ども!信仰心の差だ!」
「推しを愛でる心が勝敗を決めるのだ!」

非会員男子達は涙目で床に転がったまま。
「お、俺たち……一体どこで道を間違えたんだ……」
「入会……しておけば……」

こうして、ティアの初舞踏会は笑いとドタバタの渦に包まれて幕を開けたのだった。

その後、ティアは可能な限り皆んなと楽しく踊って他の生徒達も楽しく舞踏会は静かに終わりを告げた。

舞踏会の余韻がまだ残る翌朝。
甲板から大騒ぎの声が上がった。

「だ、男子が倒れてるー!!」

集まった生徒達の視線の先、そこには頭にタンコブを作った男子生徒がぐったりと横たわっていた。
すぐさま医務室へ運ばれると、当の本人は目を覚ましこう訴えた。

「お、俺はただ夜風にあたりに甲板に出ただけなんだ!
そしたら……後ろからゴツンと……気がついたら気絶してたんだ……」

その言葉に一同ざわめく。

「ま、まさか船の上に……怪盗が!?」
「いやいや、幽霊じゃねぇか!?」
「エルフの呪い説だ!」

ざわざわする生徒達を前に、ティアは腕を組みながらスッと前に出た。

「……これは事件ね。」

メリルも頷くと、何故か胸を張って名乗りを上げる。

「ティアとメリルの名探偵コンビ、ここに誕生!」

「えっ、勝手に決めちゃったの!?」
「いいじゃない、カッコいいでしょ?」

こうしてティアは“冷静頭脳派探偵”、メリルは“ひらめき感性派探偵”として船上の事件に挑むことになった。

だが周囲の生徒達は半信半疑。
「いや、どう考えても遊びだろ……」
「推理より食堂のデザートに夢中そう」
「でも、ティア会長が言うなら……」

ティアは咳払いしながら手をひらり。
「まずは現場検証よ。
倒れてた甲板に行ってみましょう!」

メリルは勢いよく頷く。
「任せて!
私の勘が真実を嗅ぎつけるわ!」

こうして船上探偵コンビの“ドタバタ捜査劇”が幕を開けたのであった。

船上探偵ティアとメリルの大捜査線

ティアとメリルの探偵コンビは、甲板で現場検証を開始した。

「ティア!
ここに証拠が落ちてるよ!」
メリルが指差したのは……片方だけの シークレットシューズ。

「これは……身長を盛るための靴ね。」
ティアが真剣に分析する。

「つまり、犯人は“背を気にしている男子”だ!」
メリルの妙な断定に、集まった男子生徒達の背筋がピクリと反応した。

そして聞き込み調査の末、シューズの持ち主はある男子生徒に行き着いた。
本人は顔を真っ赤にして叫ぶ。
「ち、違うんだ!これは俺の靴だけど、昨夜の舞踏会で無くしたんだ!」

すると別の男子が証言する。
「そうだ!
舞踏会の後で俺らが談笑してた時……そいつの靴をからかって脱がせたんだ。」
「で、ふざけて投げ合ってたら……」

そこまで聞いてティアは首をかしげる。
「それで、どうして靴が甲板に落ちてたの?」

男子生徒は気まずそうに続けた。
「……俺がそいつの靴を持って、遠くに投げようとしたんだ。
でも取り返そうとして揉み合いになって……」

「そ、それで靴が飛んで……ティアに……」
別の男子が小声で付け足す。

ティア「え?」
メリル「え?」

「……ティアに靴が当たったんです!」

その瞬間、メリルの目がキラリと光った。
「つまり、靴が当たって怒ったティアが――!」

ティア(顔を真っ赤にして記憶がフラッシュバックする)
──バンッ!
『何よこれぇ!!』
(勢いよく甲板の外に投げ捨てるティアの姿)

メリル「……ティアが投げた靴が、後頭部直撃!」
男子生徒たち「……!!」

ティア「ちょ、ちょっと待って!
それじゃあまるで私が犯人みたいじゃない!」

メリル(真顔で手錠ポーズ)
「ティア、あなたを“靴暴行事件の犯人”として逮捕します!」

ティア「やめてーー!!」

男子生徒達は大爆笑。
「ティアが犯人だったなんて!」
「逆にスッキリしたわ!」

被害者の男子も頭をさすりながら笑う。
「いや……あの時の靴、めちゃくちゃ痛かったんだよね……でもティアが犯人なら……まぁ、許す!」

ティアは真っ赤になりながら
「ご、ごめんなさい……次からは物を投げる時、もっと狙いを考えるわ……!」
と頭を下げるのだった。

こうして――船上探偵コンビの最初の事件は、犯人ティア自身の自白によって幕を閉じた。

クルージングの旅は、笑いと驚きの連続で、毎日が宝物のような時間だった。
だが楽しい時間ほど過ぎ去るのは早い。

最終日。
船内はそれぞれの客室で思い思いに過ごす者が多くなり、あのにぎやかな声も次第に落ち着きを帯びていた。

ティアとメリルは、甲板に並んで立ち、潮風を浴びながら静かな海を眺めていた。

「……楽しかったね。
また来年も、みんなでこんな風に過ごせたらいいな。」

「うん。
ティアと出会えて、本当に良かった。
学園に入る前は、こんな楽しい時間が待ってるなんて、想像もしなかったよ。」

潮騒が、2人の言葉にやわらかく寄り添う。
名残惜しさと、確かな絆の温かさが、秋の夕暮れの空気に溶けていった。

やがて船は港へと帰り着き、生徒たちはそれぞれの寮へと戻っていった。

――その夜。
ティアが自室で寛いでいると、リシェルとルシェルが現れ、揃って跪いた。

「主様……学園に、ちょっと不思議な奴が来ています。」
「そう。
どこか主様と似たような……妙な気配を持つ者が。」

ティアは目を細めて、小さく笑う。
「ああ、それなら転校生でしょ。
秋休み明けに入学するって聞いたわ。
……なるほど、もう寮に来てるのね。」

そして休みが明け、登校初日。
教室の扉が開かれ、新しい転校生がティアたちのクラスへと迎え入れられた――。
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