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第八章 謎の転校生
第六十四話 転校生
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クラスの朝の会。
担任に連れられて教室へ入ってきたのは、一人の男子生徒だった。
その瞬間――教室中がざわめく。
「キャーッ!カッコいい!」
「背、高いし!モデルみたい!」
女子たちの黄色い声援が飛び交う。
「なんだよ女子、うるせえぞ!」
男子たちも半分やっかみで声を荒げるが、視線は気になるのか、チラチラと新入りに向けられていた。
「静かに!落ち着け!」
担任が苦笑しながら咳払い。
「彼は今日からこの学園に転校してきた。
自己紹介を。」
転校生は壇上に立ち、ほんの少し柔らかい笑みを浮かべて小さくお辞儀をした。
「俺の名前は、アーサー・グレイストン。
よろしくお願いします。」
簡潔な挨拶に、クラスは再びざわついた。
落ち着いた雰囲気、爽やかなイケメン、しかも身長も高い。
女子たちの視線は釘付けだ。
空いている席に座ったアーサーは、たちまち男子女子を問わず囲まれて質問攻めに遭う。
その様子を見て、ティアは少し遠い目をしていた。
――自分が転入した頃を思い出して。
そして、特に話すこともないまま昼休み。
食堂でメリルと並んでランチを楽しんでいると――
「ここ、いいかな?」
と、アーサーがトレイを持って現れた。
「え?あ、ええ、いいわよ。」
「ど、どうぞ。」
ティアもメリルも思わず顔を見合わせたが、せっかくだと受け入れることにした。
「ありがとう。」
軽く微笑むと、彼はティアたちの正面に腰を下ろした。
「ティアとメリルだよね?
そして、ティアは生徒会長なんだって。
みんなから聞いたよ。」
「そうよ。
……アーサーはどこから来たの?」
「ああ、俺は北方のマッセイユ王国から。」
「えっ、遠いところから……!」
「うん。
――ティアに会いに来るためにね。」
その瞬間。
空間が“音”を失い、メリルも周囲もピタリと動きを止めた。時間そのものが凍り付いたようだった。
ティアは目を細め、椅子からゆっくりと背を離す。
「……何者?」
「ふふ。
驚かないんだね。
俺は“転生者”。
別の世界から来たんだ。」
「転生者……。
じゃあ、私と同じ?」
「そうだよ。
君のこと、ずっと見てた。
魔物から進化して、この世界を救ってきた君を。」
アーサーはニコニコと人懐こい笑顔を浮かべるが、その言葉には妙な含みがあった。
「へぇ。
見てたのね。
それで私に何の用?」
「同じ転生者同士、仲良くしたいと思ってさ。」
ティアは一瞬だけ考え込み――すぐに肩をすくめる。
「まあいいけど。
私は“人間”として学園生活を楽しんでるの。
転生者だなんて内緒にしてよ。」
「それは大丈夫。
……それにしても、魔物の雰囲気が全然ないね?
擬態?」
「違うわ。
進化の過程でこの姿になったの。
見た目は人間そのものよ。あなたは?」
「俺は人間の子供に転生したんだ。
前世の記憶を持ったまま生まれてきてね。
もうこの世界に来て……100年は経つ。」
「100年!? ……それで、その若さ?」
「俺も進化したんだ。
“高エネルギー生命体”へね。
寿命がなくなった。
……暇で山奥にこもってたけど、君が魔王種に進化した瞬間、スキルで感知したんだ。」
「魔王種を感知するスキルね。
面白いわね。
……で、もういい?この空間、解除しても。」
「もう少し二人で――」
アーサーが言い切る前に、ティアは指を軽く弾いた。
「パチン!」
次の瞬間、時間の流れが戻り、食堂の喧騒が一斉に押し寄せた。
「ええっ!?
い、今の……!」
アーサーが思わず声を漏らしたが、
「ん?どうしたの?」
何も知らないメリルが首をかしげる。
「な、なんでもないよ。」
アーサーは慌てて誤魔化す。
「それよりメリル、放課後ミュウオケ行こうよ!」
「いいね!」
ティアとメリルが楽しげに話し始めるのを、アーサーは笑みを崩さぬまま、どこか探るような目で眺めていた――。
放課後。
ティアは生徒会室で執務を片付けていた。
「転校生が来たそうだな。」
副会長のレゼントが声をかけてくる。
「はい。
背が高くてイケメンで、人当たりもいい。
クラスの女子は大騒ぎです。」
「ティアは気にならないのか?」
「別に。
どうでもいいです。」
あっさりと答え、ティアはデータ端末を閉じる。
その後、メリルと合流して「ミュウオケ」へ向かっていると――
「そのミュウオケ、俺も行きたい!」
突然、アーサーが後ろから走ってきた。
「えっ!? ダメよ。
今日はメリルと行くんだから!」
ティアは思わず振り返って声を荒げる。
「そう言うなよ。
……ところで“ミュウオケ”って何?」
「はぁ!?
知らないのに『行きたい』って言ったの!?」
「だって楽しそうな響きだったからさ。」
悪びれず笑うアーサーに、ティアは口をパクパクさせて固まる。
「……こ、こいつ……。」
そんな二人を、メリルは苦笑しながら眺めていた。
「ティア。
アーサーと仲いいのね。」
「なっ!? ち、違うから!
転校生のくせに馴れ馴れしいからイライラしてるだけよ!」
「そう?
私はアーサーも一緒でも構わないけど。」
「ほら!メリルの方が大人だ!」
アーサーはすかさず便乗する。
「はぁ!? ……もう、メリルがいいなら……しょうがないわね!」
結局、押し切られるようにティアが折れてしまい――
こうして、謎の三人組でのミュウオケ行きが決定したのだった。
その夜。
ティアが寮の部屋でくつろいでいると――
「ティア!話が……!」
突如、転送魔法の光とともにアーサーが現れた。
「……は?」
ティアが目を瞬いたその瞬間。
「主様に近づくなッ!」
「この無礼者!」
シャッ、と鋭い音。
アーサーの両脇にリシェルとルシェルが現れ、左右から喉元に短剣を突きつけた。
「ひっ!? ちょ、ちょっと待って!
俺、ただ話しに――!」
慌てふためくアーサー。
ティアは溜息をつきながら椅子から立ち上がった。
「ルシェル、リシェル。大丈夫よ。
……それに、女性の部屋にいきなり転送してくるなんて、失礼にも程があるわよ。」
「そ、そうだね……ご、ごめん……。」
顔を引きつらせて謝るアーサー。
しかし、リシェルとルシェルは依然として鋭い眼光で睨み、短剣の刃先を微動だにさせない。
「二人とも、下がって。」
ティアの一声に、双子はぴたりと動きを止めた。
「御意。」
声を揃え、すぐさま影のように姿を消す。
部屋に残ったのはティアと、冷や汗を垂らしながら胸を押さえるアーサーだけ。
「……それで?
わざわざ命を張ってまで、何をしに来たのかしら?」
ティアは腕を組んで冷ややかに見下ろす。
「えっと……シャクイードって魔王種。
居場所、分かるよ。」
アーサーは小声で打ち明けた。
「……シャクイードまで知ってるのね。」
「まあ、ずっとティア達のこと見てたからね。
あいつが絡んできたのも知ってるよ。
どう?ちょっとは興味、湧いたでしょ?」
ニコッと笑うアーサー。
ティアは呆れたように息を吐いた。
「……ほんと、次はちゃんとノックしてから来なさいよ。」
シャクイードの情報は、喉から手が出るほど欲しいもの。
だがティアは、すぐにはアーサーに飛びつかなかった。
「……その前に、ちょっと確認したいことがあるわ。
またこっちから声をかける。」
そう告げて、彼を帰したその夜。
ティアは久々に魔界へ戻っていた。
「アダミル。
例のものはどうかしら?」
「おお!主よ、お待ちしておりましたぞ!」
白衣をはためかせながら、アダミルが満面の笑みで駆け寄る。
「完成しておる!
……まあ、まだ主専用の機体だけじゃがな。
ささ、工場へ参りましょうぞ!」
ティアはアダミルに連れられ、街外れの巨大工場へと足を運んだ。
堅牢な扉が重々しく開くと、中から幾人もの技師たちが頭を下げる。
「これはユスティティア様に、アダミル様。
お待ちしておりました!」
「主はあれをご覧になりたいそうじゃ。」
アダミルが得意げに顎をしゃくる。
「はい!
つい先ほど完成したばかりです。
……まだ微調整は必要かもしれませぬが、我らの見解では十分“完成”と呼べる段階にございます。」
ティアの視線の先――
重い足音が工場内に響き、影がひとつ現れた。
自立歩行でゆっくりと進み出るその姿。
全身は艶やかな赤に染め上げられ、随所に金色のフレームが輝く。
背には四枚の鋼鉄の翼が展開し、緑に光る双眸は精悍で知性を感じさせる。
右手には灼熱のように赤く燃える剣を握り、その細身の躯体はしなやかに、そして力強く歩んでいた。
身長はおよそ二メートル――
かつてのオメガを思わせる要素は微塵もない。
「……これが、私の専用機体。」
ティアが目を細める。
アダミルは胸を張って声を張り上げた。
「どうですじゃ! 主のために作り上げた専用機体、その名も――《スカーレット》!!」
技師たちが一斉に拍手し、工場の天井に歓声が響く。
「かっ、カッコよかろう!? 見よ、この燃えるような赤! そして黄金のフレームの輝き! 主にこそ相応しい機体じゃあああ!
まあ、主が無理難題をふっかけて来たからの。
先ずは、魔力を使わず動く事。
これは難題じゃったわい!
だが、そこは天才アダミルじゃからな。
雷帝石からプラズマを生み出すエンジンを造ったぞ。
最初は不安定じゃったが、エンジンの素材をいろいろ試して完成したわい!
あとは、自己修復機能、プラズマを変換してのビーム砲、機動系は反重力展開装置、オートシールドにマジックミラーとマジックエナジーとまあ、多彩な装備じゃ。
転送機能はご要望通り亜空間転移じゃ。
主とシンクロしていつでも呼び出し可能ですぞ。」
興奮のあまり身振り手振りで力説するアダミル。
ティアは小さく笑った。
「……ふふ。確かに、悪くないわね。」
スカーレットの眼光が、まるで「主よ」と語りかけるように彼女に向けられていた。
担任に連れられて教室へ入ってきたのは、一人の男子生徒だった。
その瞬間――教室中がざわめく。
「キャーッ!カッコいい!」
「背、高いし!モデルみたい!」
女子たちの黄色い声援が飛び交う。
「なんだよ女子、うるせえぞ!」
男子たちも半分やっかみで声を荒げるが、視線は気になるのか、チラチラと新入りに向けられていた。
「静かに!落ち着け!」
担任が苦笑しながら咳払い。
「彼は今日からこの学園に転校してきた。
自己紹介を。」
転校生は壇上に立ち、ほんの少し柔らかい笑みを浮かべて小さくお辞儀をした。
「俺の名前は、アーサー・グレイストン。
よろしくお願いします。」
簡潔な挨拶に、クラスは再びざわついた。
落ち着いた雰囲気、爽やかなイケメン、しかも身長も高い。
女子たちの視線は釘付けだ。
空いている席に座ったアーサーは、たちまち男子女子を問わず囲まれて質問攻めに遭う。
その様子を見て、ティアは少し遠い目をしていた。
――自分が転入した頃を思い出して。
そして、特に話すこともないまま昼休み。
食堂でメリルと並んでランチを楽しんでいると――
「ここ、いいかな?」
と、アーサーがトレイを持って現れた。
「え?あ、ええ、いいわよ。」
「ど、どうぞ。」
ティアもメリルも思わず顔を見合わせたが、せっかくだと受け入れることにした。
「ありがとう。」
軽く微笑むと、彼はティアたちの正面に腰を下ろした。
「ティアとメリルだよね?
そして、ティアは生徒会長なんだって。
みんなから聞いたよ。」
「そうよ。
……アーサーはどこから来たの?」
「ああ、俺は北方のマッセイユ王国から。」
「えっ、遠いところから……!」
「うん。
――ティアに会いに来るためにね。」
その瞬間。
空間が“音”を失い、メリルも周囲もピタリと動きを止めた。時間そのものが凍り付いたようだった。
ティアは目を細め、椅子からゆっくりと背を離す。
「……何者?」
「ふふ。
驚かないんだね。
俺は“転生者”。
別の世界から来たんだ。」
「転生者……。
じゃあ、私と同じ?」
「そうだよ。
君のこと、ずっと見てた。
魔物から進化して、この世界を救ってきた君を。」
アーサーはニコニコと人懐こい笑顔を浮かべるが、その言葉には妙な含みがあった。
「へぇ。
見てたのね。
それで私に何の用?」
「同じ転生者同士、仲良くしたいと思ってさ。」
ティアは一瞬だけ考え込み――すぐに肩をすくめる。
「まあいいけど。
私は“人間”として学園生活を楽しんでるの。
転生者だなんて内緒にしてよ。」
「それは大丈夫。
……それにしても、魔物の雰囲気が全然ないね?
擬態?」
「違うわ。
進化の過程でこの姿になったの。
見た目は人間そのものよ。あなたは?」
「俺は人間の子供に転生したんだ。
前世の記憶を持ったまま生まれてきてね。
もうこの世界に来て……100年は経つ。」
「100年!? ……それで、その若さ?」
「俺も進化したんだ。
“高エネルギー生命体”へね。
寿命がなくなった。
……暇で山奥にこもってたけど、君が魔王種に進化した瞬間、スキルで感知したんだ。」
「魔王種を感知するスキルね。
面白いわね。
……で、もういい?この空間、解除しても。」
「もう少し二人で――」
アーサーが言い切る前に、ティアは指を軽く弾いた。
「パチン!」
次の瞬間、時間の流れが戻り、食堂の喧騒が一斉に押し寄せた。
「ええっ!?
い、今の……!」
アーサーが思わず声を漏らしたが、
「ん?どうしたの?」
何も知らないメリルが首をかしげる。
「な、なんでもないよ。」
アーサーは慌てて誤魔化す。
「それよりメリル、放課後ミュウオケ行こうよ!」
「いいね!」
ティアとメリルが楽しげに話し始めるのを、アーサーは笑みを崩さぬまま、どこか探るような目で眺めていた――。
放課後。
ティアは生徒会室で執務を片付けていた。
「転校生が来たそうだな。」
副会長のレゼントが声をかけてくる。
「はい。
背が高くてイケメンで、人当たりもいい。
クラスの女子は大騒ぎです。」
「ティアは気にならないのか?」
「別に。
どうでもいいです。」
あっさりと答え、ティアはデータ端末を閉じる。
その後、メリルと合流して「ミュウオケ」へ向かっていると――
「そのミュウオケ、俺も行きたい!」
突然、アーサーが後ろから走ってきた。
「えっ!? ダメよ。
今日はメリルと行くんだから!」
ティアは思わず振り返って声を荒げる。
「そう言うなよ。
……ところで“ミュウオケ”って何?」
「はぁ!?
知らないのに『行きたい』って言ったの!?」
「だって楽しそうな響きだったからさ。」
悪びれず笑うアーサーに、ティアは口をパクパクさせて固まる。
「……こ、こいつ……。」
そんな二人を、メリルは苦笑しながら眺めていた。
「ティア。
アーサーと仲いいのね。」
「なっ!? ち、違うから!
転校生のくせに馴れ馴れしいからイライラしてるだけよ!」
「そう?
私はアーサーも一緒でも構わないけど。」
「ほら!メリルの方が大人だ!」
アーサーはすかさず便乗する。
「はぁ!? ……もう、メリルがいいなら……しょうがないわね!」
結局、押し切られるようにティアが折れてしまい――
こうして、謎の三人組でのミュウオケ行きが決定したのだった。
その夜。
ティアが寮の部屋でくつろいでいると――
「ティア!話が……!」
突如、転送魔法の光とともにアーサーが現れた。
「……は?」
ティアが目を瞬いたその瞬間。
「主様に近づくなッ!」
「この無礼者!」
シャッ、と鋭い音。
アーサーの両脇にリシェルとルシェルが現れ、左右から喉元に短剣を突きつけた。
「ひっ!? ちょ、ちょっと待って!
俺、ただ話しに――!」
慌てふためくアーサー。
ティアは溜息をつきながら椅子から立ち上がった。
「ルシェル、リシェル。大丈夫よ。
……それに、女性の部屋にいきなり転送してくるなんて、失礼にも程があるわよ。」
「そ、そうだね……ご、ごめん……。」
顔を引きつらせて謝るアーサー。
しかし、リシェルとルシェルは依然として鋭い眼光で睨み、短剣の刃先を微動だにさせない。
「二人とも、下がって。」
ティアの一声に、双子はぴたりと動きを止めた。
「御意。」
声を揃え、すぐさま影のように姿を消す。
部屋に残ったのはティアと、冷や汗を垂らしながら胸を押さえるアーサーだけ。
「……それで?
わざわざ命を張ってまで、何をしに来たのかしら?」
ティアは腕を組んで冷ややかに見下ろす。
「えっと……シャクイードって魔王種。
居場所、分かるよ。」
アーサーは小声で打ち明けた。
「……シャクイードまで知ってるのね。」
「まあ、ずっとティア達のこと見てたからね。
あいつが絡んできたのも知ってるよ。
どう?ちょっとは興味、湧いたでしょ?」
ニコッと笑うアーサー。
ティアは呆れたように息を吐いた。
「……ほんと、次はちゃんとノックしてから来なさいよ。」
シャクイードの情報は、喉から手が出るほど欲しいもの。
だがティアは、すぐにはアーサーに飛びつかなかった。
「……その前に、ちょっと確認したいことがあるわ。
またこっちから声をかける。」
そう告げて、彼を帰したその夜。
ティアは久々に魔界へ戻っていた。
「アダミル。
例のものはどうかしら?」
「おお!主よ、お待ちしておりましたぞ!」
白衣をはためかせながら、アダミルが満面の笑みで駆け寄る。
「完成しておる!
……まあ、まだ主専用の機体だけじゃがな。
ささ、工場へ参りましょうぞ!」
ティアはアダミルに連れられ、街外れの巨大工場へと足を運んだ。
堅牢な扉が重々しく開くと、中から幾人もの技師たちが頭を下げる。
「これはユスティティア様に、アダミル様。
お待ちしておりました!」
「主はあれをご覧になりたいそうじゃ。」
アダミルが得意げに顎をしゃくる。
「はい!
つい先ほど完成したばかりです。
……まだ微調整は必要かもしれませぬが、我らの見解では十分“完成”と呼べる段階にございます。」
ティアの視線の先――
重い足音が工場内に響き、影がひとつ現れた。
自立歩行でゆっくりと進み出るその姿。
全身は艶やかな赤に染め上げられ、随所に金色のフレームが輝く。
背には四枚の鋼鉄の翼が展開し、緑に光る双眸は精悍で知性を感じさせる。
右手には灼熱のように赤く燃える剣を握り、その細身の躯体はしなやかに、そして力強く歩んでいた。
身長はおよそ二メートル――
かつてのオメガを思わせる要素は微塵もない。
「……これが、私の専用機体。」
ティアが目を細める。
アダミルは胸を張って声を張り上げた。
「どうですじゃ! 主のために作り上げた専用機体、その名も――《スカーレット》!!」
技師たちが一斉に拍手し、工場の天井に歓声が響く。
「かっ、カッコよかろう!? 見よ、この燃えるような赤! そして黄金のフレームの輝き! 主にこそ相応しい機体じゃあああ!
まあ、主が無理難題をふっかけて来たからの。
先ずは、魔力を使わず動く事。
これは難題じゃったわい!
だが、そこは天才アダミルじゃからな。
雷帝石からプラズマを生み出すエンジンを造ったぞ。
最初は不安定じゃったが、エンジンの素材をいろいろ試して完成したわい!
あとは、自己修復機能、プラズマを変換してのビーム砲、機動系は反重力展開装置、オートシールドにマジックミラーとマジックエナジーとまあ、多彩な装備じゃ。
転送機能はご要望通り亜空間転移じゃ。
主とシンクロしていつでも呼び出し可能ですぞ。」
興奮のあまり身振り手振りで力説するアダミル。
ティアは小さく笑った。
「……ふふ。確かに、悪くないわね。」
スカーレットの眼光が、まるで「主よ」と語りかけるように彼女に向けられていた。
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