毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝

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第八章 謎の転校生

第六十五話 烈紅の騎士スカーレット

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ティアは静かに右手をかざした。
その瞬間、スカーレットの瞳が一段と鮮烈に輝き、頭部が彼女の方にわずかに傾いた。

「主様とのリンク、完了しました!」
操作盤に張りついていた技師が叫ぶ。

アダミルは得意げに髭を撫でながら、舞台役者のように解説を始める。
「ご覧あれ! このスカーレットは、主の魔力を直に回路に流し込み、主の意思をそのまま動作へと変換する究極の機体なのじゃ! 超人工知能ASI(Artificial Super Intelligence)を搭載しておる。
戦う度に学習して強くなるぞ。」

「なるほどね。」
ティアが軽く意識を向けると、スカーレットは剣を構え、舞うように空気を切った。
風圧で工場の床に砂埃が走り、技師たちが「おおお!」とどよめく。

「へぇ……確かに、応答がいいわね。」
ティアの唇にわずかな笑みが浮かぶ。

「では! 実戦テストに移るぞ!」
アダミルが手を叩くと、工場の奥から訓練用のゴーレム数体がせり出してきた。
重厚な金属の鎧を纏い、武器を構える試作機たち。

「さあ、スカーレットよ! 
その力を示すのじゃあああ!」
アダミルの叫びと同時に、ゴーレムたちが一斉に動き出した。

ティアが軽く念じると、スカーレットの翼が展開し、紅の残光を残しながら瞬時に間合いを詰める。
灼熱の剣が振るわれた次の瞬間――ゴーレムの盾は真っ二つに割れ、火花と共に床へと崩れ落ちた。

「……強い。」
技師の一人が呆然と呟いた。

ティアはさらに意識を向ける。
スカーレットが剣を振り下ろすと、衝撃波が走り、残りのゴーレムもまとめて粉砕された。

「ふふ。いいわね。
かなり軽快に動くわ。」
ティアが満足そうに頷く。

アダミルは両手を広げて大げさに叫んだ。
「ど、どうじゃ! 
これぞ主専用の究極機体スカーレット! 
炎のように速く、雷のように鋭く! 
そして……何よりも主に似合う!」

「ええ、確かに似合ってるかも。」
ティアは口元を押さえて小さく笑った。

だが次の瞬間――スカーレットが突然、勝手に決めポーズを取った。
翼を広げ、剣を掲げ、まるで観客にアピールするかのようにキラリと輝く。

「えっ!? 
今の動作、私指示してないんだけど……?」

「……おお? 
そ、それは恐らくアダミル様の趣味が少々反映され……ぐふっ!」
慌ててごまかそうとしたアダミルは、後ろの技師たちに「余計なプログラムを仕込むな!」と小突かれ、吹っ飛んだ。

ティアはため息をつきながらも、どこか嬉しそうに呟く。
「まあ……これくらいのお茶目さも、悪くないかもね。」

スカーレットの瞳が、緑の光をチラリと瞬かせた。

人間界へ戻ったティアは、部屋で待っていたリシェルに命じた。
「リシェル、アーサーを呼んできて。」

「御意。」

直後、転送魔法が展開し、アーサーが現れる。
「ティア、来たよ。」

「お待たせしたわね。
――今からシャクイードの本拠地に乗り込むわよ。」

「お、ついに行くんだね。
あいつらは地下に潜ってる。
案内するよ。」

アーサーの先導で山間部へ向かうと、岩肌の斜面に怪しい空気が漂っていた。
結界のような偽装魔法が入口を覆っていたが――ティアが軽く指を弾いただけで、霞のように霧散する。

「さあ、行きましょう。」

二人が進むと、ダンジョンの奥には想像を絶する広大な地下空間が広がっていた。
その中心には宮殿のような建物が、威圧感を放ちながら鎮座している。

「……でかいな。」
思わずアーサーが息を呑む。

「魔王種が十体ほど、潜んでいるな。」

「ここは私に任せて。」
ティアの目が凛と輝く。

「アダミル! 
あなたも見たいでしょ!」

「ふふふ……主よ。
ここで使うのか! 
我が至高の傑作の性能をデータに残すぞい!」
老魔工師アダミルが、どこからともなく姿を現す。

「だ、誰っ!?」
アーサーは目を丸くするが、ティアはさらりと答える。
「ああ、彼はアダミル。
今から――いいもの見せてあげるわ。」

その時、宮殿から無数の魔物が飛び出してきた。
牙を剥き、咆哮を上げながら迫り来る黒き軍勢。

ティアは一歩前へ進み、右手を高く掲げた。
「――来なさい! スカーレット!」

空間が裂け、烈紅の光が奔る。
亜空間ゲートから現れたのは、赤と金に彩られた鋼鉄の騎士。
四枚の紅翼を広げ、緑の双眸が煌めき、燃える剣を携えて降り立つ姿は――まさに戦場の王者。

「な、な、なんだよそれっ!? 
か、かっこよすぎるだろ!」
アーサーが叫ぶ。

スカーレットは主の意志を受け取ると、紅蓮の残光を描きながら単身、魔物の群れへ突撃した。
剣閃が閃くたびに、魔物は閃光のように倒れ、次の瞬間には粉砕される。
翼を広げると炎の衝撃波が走り、数十体の魔物を一掃する。

「おおぉぉ! これぞ! 我が最高傑作ぁぁぁ!」
アダミルは大興奮で跳ね回る。

ティアたちは烈紅の騎士スカーレットを先頭に、宮殿へと突入した。

「さあ、スカーレット。
――暴れちゃって。」

主の声に応えるかのように、スカーレットの瞳が鮮やかな緑光を放つ。
次の瞬間、赤き剣が閃き、先陣を切って迫る魔物を次々と薙ぎ倒していった。

宮殿の広間に踏み込むと、八体の魔王種が次々と姿を現す。
龍牙魔王【バレル】
雷鬼魔王【レストラ】
水蛇魔王【ミケーニャ】
海伯魔王【ミロード】
風絶魔王【ヒゴール】
氷輪魔王【マレー】
煙霧魔王【バダルト】
炎凱魔王【ソトレード】――。

「何者だ! ここから生きて帰れると思うな!」
「後悔と共に骨まで残さず消し去ってやる!」

怒号と共に魔王種たちが一斉に襲い掛かる。

だが――。

スカーレットは疾風のように動き、最も近くにいた水蛇魔王ミケーニャを一閃。
赤き剣が心核を断ち割り、その巨体は泡のように消滅した。

「う……馬鹿なっ――!」

仲間の消滅を目の当たりにした魔王種たちは、即座に身構える。
しかし、スカーレットは右腕を構え、掌から烈光のビームを放つ。
轟音と閃光が広間を覆い、バレル、レストラ、バダルト、マレーの心核をまとめて粉砕した。

「なっ……!」
残る魔王種が言葉を発する間もなく、烈紅の騎士は一気に切り込む。
剣閃が疾り、ミロード、ヒゴール、ソトレードもまた心核ごと切り裂かれ、瞬く間に塵と化した。

――八体の魔王種、殲滅。

広間に響くのは、スカーレットの赤き翼が揺れる金属音だけだった。

「ふふ……良い動きね。」
ティアは満足げに腕を組む。

アダミルが誇らしげに胸を張る。
「主よ! どうですじゃ! 
スカーレットにレベルこそ無いが、換算すれば魔族レベル1200相当ですぞ! 
ワハハハ!」

「へえ、それは頼もしいわね。」

「お、おい……強すぎるだろ……」
アーサーは冷や汗を流しながら、スカーレットをまじまじと見つめていた。

ティアは軽く笑みを浮かべる。
「さて、残るはシャクイードだけね。」

だがアーサーが首を振る。
「……残念だけど、もう逃げられたよ。
亜空間移動で転移して、痕跡も完全に消してる。しばらくは追えないね。」

「ふふ。
逃げ足だけは一流ってわけね。」

その頃――。

亜空間を経由し魔界へと逃げ込んだシャクイードは、荒い息を吐きながら呟いていた。
「ぐ……あれは何だ……! 
とんでもない兵器を持ち込んでいたな……どうする……」

そこへ、薄暗い居城の玉座から声が響く。
「おや……シャクイード。
ずいぶんと慌てて帰ってきたね。」

「ふん。
貴様には関係ない。」
顔を上げると、そこにはまた別の存在の影が――。

一方その頃、ティアはスカーレットの初陣に大満足し、人間界へと悠々と帰還していた。
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