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第十章 悪魔王ディアボロス
第七十九話 クリストナ遺跡
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翌朝――。
ロイスたちはまだ薄暗い時間から出発した。クリストナ遺跡までは徒歩で数時間。
早めに動かなければ探索に時間を割けないからだ。
「朝早すぎるってば~……」
サーシャは眠そうにあくびを噛み殺しながら、杖をついて歩いている。
「ふふっ、ほんとに眠そうね。」
リリアは楽しそうに笑った。
「リリアは平気なの?」
「私は大丈夫。
朝は得意だから。」
「すごいなぁ……。」
サーシャは半分夢の中のような声で返す。
「まあ、早朝から始まる依頼も多いしな。
俺は慣れてる。」
オースティンが肩を回しながら答える。
「私も特に問題ないですね。」
ディックは冷静な顔で頷いた。
「サーシャ!気を抜くな。
いつ魔物が出るかわからないんだぞ。」
ロイスが振り返って注意する。
「わかってるわよ……もう、いちいちうるさいんだから!」
サーシャはむくれ顔で返した。
――それから一時間ほど。
一行は遺跡を見下ろす高台に到達した。朝靄に包まれた石造りの廃墟が遠くに浮かび上がっている。
「見えたな。
あれがクリストナ遺跡だ。
グールが巣を作ってるって話だ。
気を引き締めて行こう。」
軽く休憩を取った後、一行は遺跡の入口に立った。
「……特に異常は感じないです。
悪魔族の気配も無い。」
リリアが静かに目を閉じ、周囲を探る。
「油断は禁物だ。
行くぞ。」
ロイスが先頭に立ち、廃墟の中へ踏み込んだ。
瓦礫が散乱し、壁は崩れ落ち、かつての栄華を思わせる装飾もほとんど失われている。
「遺跡っていうより……廃墟だな。」
オースティンが呟く。
「ここは盗賊に荒らされて、今はほとんど空っぽらしいです。」
ディックが壁を調べながら答える。
その時――。
「ロイスさん、待って。
ここ……何かある。」
リリアが立ち止まり、地面に手をかざした。
「え、何かって……隠し通路か?」
サーシャが覗き込む。
「……試してみるわね。《解除(ディアクティベート)》!」
リリアの掌から魔法陣が広がり、地面を覆っていた封印が砕け散る。
瞬間、瓦礫の下から石造りの階段が現れた。
「おお~!
やるじゃない!」
サーシャが感心して声を上げる。
「すごいな……。」
ロイスは思わず呟いた。
いつものおっとりした雰囲気とは違う、冷静に魔法を操るリリア。
そのギャップに内心驚かされる。
「リリアって、こういう時ほんと落ち着いてるよな。」
ディックが感心したように呟くと――
「え?あ、いえ……そんな大したことじゃないですから……!」
リリアは頬を赤らめ、慌てて立ち上がった。
「よし、降りるぞ。」
ロイスが剣を抜き、階段へと足を踏み入れる。
階段の先には暗い通路が伸びていた。
「待ってください。《索敵》……」
リリアが再び魔法を放ち、目を細める。
「……グールの群れが、こっちに向かってきています。通路は真っ直ぐですが、その先はかなり複雑です。」
「よし。俺とオースティンが前に出る。
リリアは俺達の後方でディックとサーシャを護衛してくれ。
二人は魔法の準備を。」
「了解!」
次の瞬間、闇の中から無数の唸り声。腐臭と共に現れたグールたちを、ロイスとオースティンが切り伏せていく。
「さすが勇者ね……。」
サーシャが感心して目を見張った。
「この調子で進むぞ。」
ロイスが剣を振り払う。
リリアの索敵と探索で見つけた部屋へと迷いながらも大きな扉へと、一行は辿り着いた。
「……ここだな。」
ロイスが押し開けようとするが、扉はびくともしない。
「リリア、頼めるか?」
「はい。《解除》!」
彼女の魔法に応じて重厚な扉がきしみを上げ、ゆっくりと開いていく。
その先に広がる部屋は、ただならぬ気配を漂わせていた。
扉が重々しく開くと、その奥には朽ちた祭壇が鎮座していた。壁や柱は崩れ、長い年月と盗賊たちの手で荒らされた痕跡が残っている。
「……何もなさそうだな。」
ロイスが慎重に祭壇へと歩み寄る。
「ロイスさん、待ってください。」
リリアがすぐさま制止し、祭壇の表面を調べ始めた。
指先から魔力が流れ込み、淡い光が広がる。
「これは侵入者を欺くためのフェイクです。
《解除》」
低い震動と共に祭壇が後方へと動き出し、その下から隠された階段が姿を現した。
「リリア……君は本当に頼りになるな。」
ロイスは感嘆して彼女の肩に軽く手を置いた。
「ひゃっ!?」
リリアは飛び上がるように横へ避け、顔を真っ赤にする。
「ご、ごめんなさいっ!
びっくりして……」
「リリア可愛い~!」
サーシャはクスクス笑いながらリリアに寄り添い、ロイスを睨む。
「ロイス、女の子に気安く触らないの!」
「……悪かった。
気をつける。」
ロイスは苦笑して頭をかいた。
一行は階段を降りて通路へ進む。
すると、何もしていないのに壁の灯りが次々と点り、まるで導かれるように道を照らし出す。
「静かすぎるな……」
ディックが周囲を見回し、声を潜める。
「ああ、気味が悪いほどだ。」
オースティンは盾を構え、神経を尖らせていた。
「ロイスさん、この奥……強大な魔力を感じます。」
リリアが真剣な面持ちで奥を指差す。
「行こう。」
ロイスが短く答え、一行は奥へ進む。
やがて辿り着いたのは、再び閉ざされた扉だった。
しかしロイスが触れる前に、扉はひとりでに音を立てて開く。
「……嫌な気配だ。」
ロイスは足を止め、身構える。
「勇者の勘ってやつね。」
サーシャは冗談めかして言いながらも、その瞳は険しく奥を見つめていた。
踏み入れた瞬間、部屋全体の灯りが一斉に点る。広間の奥には美しい祭壇があり、その上には漆黒のオーブが鎮座していた。
「……荒らされた形跡はないな。
あれが闇の宝玉か。」
ロイスが近付くと、リリアも前に出て両手を翳した。
「《鑑定》……闇の宝玉です。
ですが強い呪いが掛かっています。
このまま触れれば呪われてしまいます。
解除が必要です。」
「出来るか?」
「少し時間をいただければ……」
「頼んだ。」
その時――。
「おっと、それを解かれては困りますね。」
不意に声が響き、入口に黒衣の男が現れた。
「誰だ!」
ロイスが即座に前へ出る。
「ふむ、勇者が関わってきましたか。
面倒ですねぇ。」
男は不敵に笑った。
「……悪魔族、アルビゲイツか。」
「おや、名を知っているとは。
なるほど――例の神魔と繋がっているわけだ。」
アルビゲイツは肩を竦め、にやりと口角を吊り上げる。
「邪竜アヴェスターを、あの貧弱な魔力の神魔の女が倒せるとは思えなかったのですが……勇者が絡んでいたなら合点がいきます。
ですが――その宝玉は我ら悪魔のもの。
お返しいただきましょう。」
「そうはさせない。
リリア、解除を急げ!
俺たちが時間を稼ぐ!」
ロイスが剣を抜き放ち、仲間たちが即座に陣形を整える。
「ククク……ならば、遊んで差し上げましょう。」
アルビゲイツが地面に魔法陣を展開すると、闇から這い出すように五体の悪魔が現れる。
「この前の小物とは違いますよ。
覚悟してください。」
「行くぞ!」
ロイスとオースティンが前に出て構え、サーシャとディックは後方で魔力を高める。
そして、闇の広間で激突の幕が上がった――。
ロイスたちはまだ薄暗い時間から出発した。クリストナ遺跡までは徒歩で数時間。
早めに動かなければ探索に時間を割けないからだ。
「朝早すぎるってば~……」
サーシャは眠そうにあくびを噛み殺しながら、杖をついて歩いている。
「ふふっ、ほんとに眠そうね。」
リリアは楽しそうに笑った。
「リリアは平気なの?」
「私は大丈夫。
朝は得意だから。」
「すごいなぁ……。」
サーシャは半分夢の中のような声で返す。
「まあ、早朝から始まる依頼も多いしな。
俺は慣れてる。」
オースティンが肩を回しながら答える。
「私も特に問題ないですね。」
ディックは冷静な顔で頷いた。
「サーシャ!気を抜くな。
いつ魔物が出るかわからないんだぞ。」
ロイスが振り返って注意する。
「わかってるわよ……もう、いちいちうるさいんだから!」
サーシャはむくれ顔で返した。
――それから一時間ほど。
一行は遺跡を見下ろす高台に到達した。朝靄に包まれた石造りの廃墟が遠くに浮かび上がっている。
「見えたな。
あれがクリストナ遺跡だ。
グールが巣を作ってるって話だ。
気を引き締めて行こう。」
軽く休憩を取った後、一行は遺跡の入口に立った。
「……特に異常は感じないです。
悪魔族の気配も無い。」
リリアが静かに目を閉じ、周囲を探る。
「油断は禁物だ。
行くぞ。」
ロイスが先頭に立ち、廃墟の中へ踏み込んだ。
瓦礫が散乱し、壁は崩れ落ち、かつての栄華を思わせる装飾もほとんど失われている。
「遺跡っていうより……廃墟だな。」
オースティンが呟く。
「ここは盗賊に荒らされて、今はほとんど空っぽらしいです。」
ディックが壁を調べながら答える。
その時――。
「ロイスさん、待って。
ここ……何かある。」
リリアが立ち止まり、地面に手をかざした。
「え、何かって……隠し通路か?」
サーシャが覗き込む。
「……試してみるわね。《解除(ディアクティベート)》!」
リリアの掌から魔法陣が広がり、地面を覆っていた封印が砕け散る。
瞬間、瓦礫の下から石造りの階段が現れた。
「おお~!
やるじゃない!」
サーシャが感心して声を上げる。
「すごいな……。」
ロイスは思わず呟いた。
いつものおっとりした雰囲気とは違う、冷静に魔法を操るリリア。
そのギャップに内心驚かされる。
「リリアって、こういう時ほんと落ち着いてるよな。」
ディックが感心したように呟くと――
「え?あ、いえ……そんな大したことじゃないですから……!」
リリアは頬を赤らめ、慌てて立ち上がった。
「よし、降りるぞ。」
ロイスが剣を抜き、階段へと足を踏み入れる。
階段の先には暗い通路が伸びていた。
「待ってください。《索敵》……」
リリアが再び魔法を放ち、目を細める。
「……グールの群れが、こっちに向かってきています。通路は真っ直ぐですが、その先はかなり複雑です。」
「よし。俺とオースティンが前に出る。
リリアは俺達の後方でディックとサーシャを護衛してくれ。
二人は魔法の準備を。」
「了解!」
次の瞬間、闇の中から無数の唸り声。腐臭と共に現れたグールたちを、ロイスとオースティンが切り伏せていく。
「さすが勇者ね……。」
サーシャが感心して目を見張った。
「この調子で進むぞ。」
ロイスが剣を振り払う。
リリアの索敵と探索で見つけた部屋へと迷いながらも大きな扉へと、一行は辿り着いた。
「……ここだな。」
ロイスが押し開けようとするが、扉はびくともしない。
「リリア、頼めるか?」
「はい。《解除》!」
彼女の魔法に応じて重厚な扉がきしみを上げ、ゆっくりと開いていく。
その先に広がる部屋は、ただならぬ気配を漂わせていた。
扉が重々しく開くと、その奥には朽ちた祭壇が鎮座していた。壁や柱は崩れ、長い年月と盗賊たちの手で荒らされた痕跡が残っている。
「……何もなさそうだな。」
ロイスが慎重に祭壇へと歩み寄る。
「ロイスさん、待ってください。」
リリアがすぐさま制止し、祭壇の表面を調べ始めた。
指先から魔力が流れ込み、淡い光が広がる。
「これは侵入者を欺くためのフェイクです。
《解除》」
低い震動と共に祭壇が後方へと動き出し、その下から隠された階段が姿を現した。
「リリア……君は本当に頼りになるな。」
ロイスは感嘆して彼女の肩に軽く手を置いた。
「ひゃっ!?」
リリアは飛び上がるように横へ避け、顔を真っ赤にする。
「ご、ごめんなさいっ!
びっくりして……」
「リリア可愛い~!」
サーシャはクスクス笑いながらリリアに寄り添い、ロイスを睨む。
「ロイス、女の子に気安く触らないの!」
「……悪かった。
気をつける。」
ロイスは苦笑して頭をかいた。
一行は階段を降りて通路へ進む。
すると、何もしていないのに壁の灯りが次々と点り、まるで導かれるように道を照らし出す。
「静かすぎるな……」
ディックが周囲を見回し、声を潜める。
「ああ、気味が悪いほどだ。」
オースティンは盾を構え、神経を尖らせていた。
「ロイスさん、この奥……強大な魔力を感じます。」
リリアが真剣な面持ちで奥を指差す。
「行こう。」
ロイスが短く答え、一行は奥へ進む。
やがて辿り着いたのは、再び閉ざされた扉だった。
しかしロイスが触れる前に、扉はひとりでに音を立てて開く。
「……嫌な気配だ。」
ロイスは足を止め、身構える。
「勇者の勘ってやつね。」
サーシャは冗談めかして言いながらも、その瞳は険しく奥を見つめていた。
踏み入れた瞬間、部屋全体の灯りが一斉に点る。広間の奥には美しい祭壇があり、その上には漆黒のオーブが鎮座していた。
「……荒らされた形跡はないな。
あれが闇の宝玉か。」
ロイスが近付くと、リリアも前に出て両手を翳した。
「《鑑定》……闇の宝玉です。
ですが強い呪いが掛かっています。
このまま触れれば呪われてしまいます。
解除が必要です。」
「出来るか?」
「少し時間をいただければ……」
「頼んだ。」
その時――。
「おっと、それを解かれては困りますね。」
不意に声が響き、入口に黒衣の男が現れた。
「誰だ!」
ロイスが即座に前へ出る。
「ふむ、勇者が関わってきましたか。
面倒ですねぇ。」
男は不敵に笑った。
「……悪魔族、アルビゲイツか。」
「おや、名を知っているとは。
なるほど――例の神魔と繋がっているわけだ。」
アルビゲイツは肩を竦め、にやりと口角を吊り上げる。
「邪竜アヴェスターを、あの貧弱な魔力の神魔の女が倒せるとは思えなかったのですが……勇者が絡んでいたなら合点がいきます。
ですが――その宝玉は我ら悪魔のもの。
お返しいただきましょう。」
「そうはさせない。
リリア、解除を急げ!
俺たちが時間を稼ぐ!」
ロイスが剣を抜き放ち、仲間たちが即座に陣形を整える。
「ククク……ならば、遊んで差し上げましょう。」
アルビゲイツが地面に魔法陣を展開すると、闇から這い出すように五体の悪魔が現れる。
「この前の小物とは違いますよ。
覚悟してください。」
「行くぞ!」
ロイスとオースティンが前に出て構え、サーシャとディックは後方で魔力を高める。
そして、闇の広間で激突の幕が上がった――。
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