毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝

文字の大きさ
80 / 162
第十章 悪魔王ディアボロス

第八十話 魔法少女リリア

しおりを挟む
アークデーモン五体が咆哮を上げ、漆黒の魔力を纏って一斉に襲いかかってきた。
広間全体が震え、空気そのものが重く淀む。

「くっ……! 
アークデーモンか!」
ロイスが剣を構え、先頭に飛び出す。

「前衛は任せろ!」
オースティンも槍と盾を掲げ、ロイスと肩を並べた。

「《フレイム・ランス》!」
サーシャが炎の槍を放つ。
一本の槍が悪魔の胸を貫き、爆炎が広間を包む。
だが、アークデーモンは黒い翼で爆風を払い、すぐさま立ち上がった。

「硬すぎる……!」
サーシャが歯噛みする。

「《サンダーバースト》!」
ディックの雷撃が放たれ、二体の悪魔を一瞬痺れさせる。

「今だ!」
ロイスが一気に踏み込み、剣を振り抜いた。
聖なる光を纏った刃がアークデーモンの胸を深々と切り裂き、黒い血が飛び散る。
「一体は俺が斬る!」

「《シールド・チャージ》!」
オースティンが盾で悪魔を押し飛ばし、槍で突き上げる。
鋭い一撃が顎を砕き、巨体を揺らした。

その隙にサーシャが叫ぶ。
「《ヘルフレイム・スパイラル》!」
炎が渦を巻き、二体の悪魔を炎の竜巻に閉じ込める。

「やったか!?」

だが――。
「グオオオッ!!」
炎を突き破り、焦げながらも悪魔が再び迫ってくる。

「全然止まらない……!」

「落ち着け!
時間を稼げばいい!」
ロイスは仲間に叫び、再び剣を振り抜く。
聖剣が光を放ち、二体目の悪魔を両断。

「二体目撃破!」

その頃、後方でリリアが必死に詠唱を続けていた。
「《呪詛解除の式》……《浄化の環》……もう少し……!」
闇の宝玉に絡みつく呪いが、少しずつ剥がれ落ちていく。

「リリア、急げ!」
ロイスが振り返りざまに叫ぶと、背後から迫る悪魔の爪が襲いかかる。

「させるかっ!」
オースティンが間に入り、盾でその一撃を受け止める。
衝撃で腕が痺れるが、踏ん張って仲間を守り抜いた。

「オースティンさん!」
リリアが叫ぶ。

「気にするな!やれ!」

「――《ライトニング・レイ》!」
ディックの光を帯びた雷撃が一直線に走り、三体目の悪魔の胸を貫いた。

「残り二体!」
ロイスが剣を掲げる。

サーシャとディックの魔法が炸裂し、炎と雷が交錯。
ロイスとオースティンが前線で斬り伏せる。
一進一退の攻防の中、ついに最後の一体もロイスの渾身の斬撃により絶命した。

「はぁ……はぁ……全滅だ。」
ロイスが剣を下ろす。

「……すごい……本当に五体全部……」
サーシャが膝に手をつき、息を荒げながらも笑みを浮かべる。

「呪いは……解除完了しました!」
リリアが振り返り、闇の宝玉を両手に掲げた。
宝玉の黒い輝きは薄れ、静かな光を放っている。

だが、その瞬間。

「……ほぅ、さすが勇者一行。
アークデーモンを倒すとは。」
アルビゲイツが、にやりと笑った。
「ですが――本番はここからですよ。」

広間全体が再び震え、空気が冷たく淀む。

ロイスとオースティンがアルビゲイツへと斬りかかる。
しかし――その姿は蜃気楼のように揺らめき、剣も槍も空を切った。

「幻術か!」
ロイスが歯を食いしばる。

「動きが速すぎて捉えられねぇ!」
オースティンの槍も虚しくかわされる。

「《フレイム・ランス》!」
サーシャの炎の槍が放たれるが、アルビゲイツはひらりと舞い、炎の軌跡すら楽しむようにかわしていく。

「ならば――《ホーリー・レイ》!」
ディックの神聖魔法が悪魔に突き刺さる。
一瞬アルビゲイツの動きが止まったが、決定打には至らない。

「浅いですね。」
アルビゲイツは冷笑し、漆黒の魔力を広間に解き放った。

「ぐっ……身体が……動かねぇ!」
ロイスたちの足が闇に絡め取られ、動きが封じられる。

「《ダーク・サンダー》!」
闇の稲妻が迸り、ロイス、オースティン、サーシャ、ディックを一瞬で薙ぎ払った。
轟音と共に光が弾け、彼らはその場に崩れ落ちる。

ただひとり――リリアだけが立ち尽くしていた。
両手には闇の宝玉。

「さあ、その宝玉を渡しなさい。」
アルビゲイツが不気味に微笑む。

震える体を押さえつけるように、必死に言葉を絞り出す。

「わ、わたしは……悪魔なんて……! 
こ、怖くないんだから!」
リリアは叫んだ。

次の瞬間、彼女とアルビゲイツの姿は、遺跡の上空へと転移していた。

「なっ……!? 
何が起こった!」
予期せぬ転移に、アルビゲイツが動揺する。

「この宝玉は――もう、ただのガラス玉よ。」
リリアは微笑みながら言い放つ。
「なぜなら、私が浄化したから。穢れを祓うのに少し時間が掛かったけど……上手く出来たわ。」

そう告げると、彼女は宝玉を手放した。
地上に落ちる前に、アルビゲイツは素早くそれを拾い上げたが――

「ぬぅぅぅ! 
なんということを!」
握りつぶすと、ただのガラス片が砕け散る。

「だって、悪いことに使うんでしょ? 
そういうのはダメだって教えられたもの。」

「ふざけるな!」
アルビゲイツの身体から黒炎が立ち昇る。

しかし――
「……‼」
彼は気づいた。自らの周囲に、無数のキラキラと輝く粒子が網のように広がっていることに。

「なんだ、これは……?」

「宝玉を手放す時、あなたが拾うと想定して仕掛けておいた罠よ。
予想通りだったわ。」

「くだらん!」
アルビゲイツは黒炎を放つ。
だが、炎はすべて光の粒に吸収され、逆にその肩が触れられた瞬間――消滅していく。

「ぐあああああっ!!」

転移しようと魔力を解き放つが……不発。

「なぜだ……!? 
なぜ転移できん!」

「無駄よ。
これは私が作った“可愛いキラキラ”。
あなたを逃がさない。」

「き、貴様……何者だ!」

リリアは胸を張り、顔を真っ赤にしながら――恥ずかしいポーズを決めた。

「わ、私は……魔法少女リリア!」

『きまった~!』
自分の中で決めポーズが炸裂し、陶酔するリリア。

「そして――さようなら!」

光の粒が一斉に収束し、アルビゲイツの肉体を一瞬で消滅させた。
しかし、消えゆく刹那。

「おのれええええ!」
心核だけが罠の隙間をすり抜け、地上へと落ちる。

「――あ! 逃げた!」

心核は瞬く間に再生し、アルビゲイツの半身を象ると、憎悪に燃える瞳でリリアを睨みつけた。

「勇者どもに……伝えておけ……次は必ず……!」

怨嗟の声を残し、彼は転送魔法で姿を消した。

広い空に一人取り残され、リリアはふぅっと息をついた。
「……うぅ、魔法少女ポーズ、やっぱり人に見られなくて良かったぁ……」

リリアは静かに転移の魔法を展開し、倒れ伏す仲間たちのもとへと戻ってきた。
未だ気を失っているロイスたちの姿を見て、彼女は慌てて駆け寄る。

「《ヒール》! 《リカバー》!」

光が広間を満たし、ロイス、オースティン、サーシャ、ディックの身体に癒しが宿る。
やがて四人は呻き声を上げながら目を覚ました。

「……っ、ここは……」
ロイスは上体を起こし、周囲を見回す。
「アルビゲイツは!? 
あいつは……!」

「ご、ごめんなさい! 
に、逃げられちゃいました……。
わ、わたし、がんばったのに~
……うぇぇぇぇぇん!」

リリアは堰を切ったように涙を流し、その場に座り込んでしまう。

「お、おいおい……! 
大丈夫か!?」
オースティンが慌てて声をかける。

「リリア、落ち着いて!」
サーシャは泣きじゃくるリリアに寄り添い、背を優しくさすった。

「……あいつを、本当に退けたのか?」
ロイスは呆然と、涙ながらに訴えるリリアの姿を見つめる。
勇者としても信じがたい光景だった。

「ほ、宝玉は……」

「うぅぅ……ほ、宝玉は……じょ、浄化したから……うぅ……だ、大丈夫です……」
しゃくりあげながらも、リリアは震える声で答える。

「浄化……だと?」
ロイスの瞳が大きく見開かれる。
あの短時間で、闇の宝玉を――浄化?

「そんな芸当……普通の冒険者にできるわけが……」
ディックも目を丸くして言葉を失う。

泣きじゃくる少女。
だが、その小さな体ひとつで悪魔を退け、宝玉を浄化してみせた。

ロイスは胸の奥に込み上げてくるものを抑えきれなかった。
ティアが紹介した“ただの可愛らしい冒険者”――その正体が、ただ者ではないことを今、誰よりも強く思い知らされていた。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

異世界でカイゼン

soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)  この物語は、よくある「異世界転生」ものです。  ただ ・転生時にチート能力はもらえません ・魔物退治用アイテムももらえません ・そもそも魔物退治はしません ・農業もしません ・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます  そこで主人公はなにをするのか。  改善手法を使った問題解決です。  主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。  そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。 「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」 ということになります。

建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF
ファンタジー
死後に転生した魔界にて突然無敵の身体を与えられた地野改(ちの かい)。 その身体は物理的な攻撃に対して金属音がするほど硬く、マグマや高電圧、零度以下の寒さ、猛毒や強酸、腐食ガスにも耐え得る超高スペックの肉体。   その上で与えられたのはイメージ次第で命以外は何でも作り出せるという『創成魔法』という特異な能力。しかし、『イメージ次第で作り出せる』というのが落とし穴! それはイメージ出来なければ作れないのと同義! 生前職人や技師というわけでもなかった彼女には機械など生活を豊かにするものは作ることができない! 中々に持て余す能力だったが、周囲の協力を得つつその力を上手く使って魔界を住み心地良くしようと画策する。    近隣の村を拠点と定め、光の無かった世界に疑似太陽を作り、川を作り、生活基盤を整え、家を建て、魔道具による害獣対策や収穫方法を考案。 更には他国の手を借りて、水道を整備し、銀行・通貨制度を作り、発電施設を作り、村は町へと徐々に発展、ついには大国に国として認められることに!?   何でもできるけど何度も失敗する。 成り行きで居ついてしまったケルベロス、レッドドラゴン、クラーケン、歩く大根もどき、元・書物の自動人形らと共に送る失敗と試行錯誤だらけの魔界ライフ。 様々な物を創り出しては実験実験また実験。果たして住み心地は改善できるのか?   誤字脱字衍字の指摘、矛盾の指摘大歓迎です! 見つけたらご報告ください!   2024/05/02改題しました。旧タイトル 『魔界の天使 (?)アルトラの国造り奮闘譚』 2023/07/22改題しました。旧々タイトル 『天使転生?~でも転生場所は魔界だったから、授けられた強靭な肉体と便利スキル『創成魔法』でシメて住み心地よくしてやります!~』 この作品は以下の投稿サイトにも掲載しています。  『小説家になろう(https://ncode.syosetu.com/n4480hc/)』  『ノベルバ(https://novelba.com/indies/works/929419)』  『アルファポリス(https://www.alphapolis.co.jp/novel/64078938/329538044)』  『カクヨム(https://kakuyomu.jp/works/16818093076594693131)』

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

処理中です...