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第十一章 覚醒編
第九十四話 恋愛関係ゼロのティア
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翌朝。
ティアはベッドの中で目を覚まし、昨夜のことを思い返していた。
――アーサーと付き合うことにした。
けれど冷静になって考えてみると、今までまともに恋愛なんてしたことがない自分に気がつく。
転生前はアイドルとして忙しく、恋愛経験はゼロ。
ロディアスとは結婚したものの、共に過ごしたのは戦いや冒険ばかりで、恋人らしい日々とは程遠かった。
結局、多少のデートはした事があるものの、恋愛については何も知らないまま今日まで来てしまったのだ。
「……私、本当に大丈夫かしら。」
不安を抱えたティアは、親友のメリルに相談する決意をした。
寮を出ると、ちょうどメリルと一緒に登校することになった。
「あのね。
実は……アーサーと付き合うことにしたの。」
「えっ!本当に?
良かったじゃない!」
メリルは目を輝かせて笑った。
「うん……でも、私ね。
恋愛経験がゼロなのよ。
その……“恋人同士”って何をすればいいの?」
「ふふっ、ティアらしいなぁ。
何をするかなんて決まってないよ。
お互いが楽しいって思えることを一緒にすれば、それでいいの。」
「……そういう感じなんだ。」
少し安心したティアの口元に、照れくさい笑みが浮かぶ。
そうして学園の門に着くと、アーサーが待っていた。
「ティア、おはよう!
メリルもおはよう!」
アーサーは朝から快活な笑顔を見せる。
「おはよう。」
ティアは少し頬を赤らめて返事をした。
「アーサー。
ティアと付き合い始めたんだって?
よかったわね~。」
メリルがにやりと笑みを浮かべて覗き込む。
「うっ……そうだな。
素敵な人と付き合えることになって、本当に嬉しいよ。」
「それは私に感謝しないとね。
それに――ティアは恋愛経験ゼロらしいよ?」
メリルはからかうように二人を交互に見て笑った。
「も、もう! メリル!
恥ずかしいこと言わないで!」
ティアは真っ赤になって頬を膨らませる。
放課後。
生徒会の仕事を終えて帰ろうとしたティアの前に、アーサーが立っていた。
「お疲れさま。」
「え? アーサー、待っててくれたの?」
「ああ。
一緒に帰ろうと思ってさ。」
「ありがとう。
……じゃあ帰りましょう。」
ティアはその笑顔を見て、胸が温かくなるのを感じた。
――こういう何気ないことが、きっと恋愛の楽しさなんだろう。
「ティア。
このあと予定ある?」
アーサーは少し照れくさそうに頭を掻く。
「特にはないけど。」
「じゃあ……二人でミュウオケに行かないか?」
「うん、いいよ。」
ふたりでミュウオケに着くと、偶然にもクラスの男子たちが先に来ていて鉢合わせになった。
「あっ!」
「あっ!」
気まずい沈黙のあと、男子の一人が声を上げる。
「もしかして……ティアとアーサー、付き合ってるのか?」
あっという間にアーサーは男子たちに囲まれ、ティアは一人で部屋に入って歌うことになった。
しばらくして、ぐったりした様子のアーサーが戻ってくる。
「大丈夫?」
ソファに腰を下ろした彼は肩を落とし、項垂れた。
「……クラスの男子たちに囲まれてな。
言わないと帰してもらえそうになかったから……付き合ってるって、言っちゃった。」
「そうだったんだ。
別にいいよ。」
「えっ、本当に?」
「うん。
隠すことでもないでしょ?」
「……そうか。
でもティア、明日からちょっと大変かもしれないぞ。」
「え?
そうなの?」
よくわかっていないティアは、その後も気にせず歌い続けた。
「……あれ?
アーサーは歌わないの?」
その問いかけに、アーサーは急に姿勢を正し、ティアの肩に腕を回す。
「ティア!
俺が守るから!」
「ちょっ……!」
さらに彼は腰に手を添えて抱き寄せ、真っ直ぐに見つめてくる。
「キスしていいか?」
「えっ……ここで?」
ティアの返事を待つ間もなく、アーサーは優しく唇を重ねた。
「……っ」
熱を帯びた口づけは、ティアの舌に触れて絡み合う。
キスが終わると、ティアは顔を真っ赤にして抗議した。
「もう!
誰かに見られたらどうするのよ!」
「もうみんな知ってるから大丈夫さ。」
そう言ってアーサーは、再びティアに口づけをした。
翌朝。
ティアが学園の門をくぐると――
「ティア嬢! 少しお時間を頂きたい!」
正門脇にファンクラブの面々が横一列に整列しており、中心には真剣そのものの顔をした会長マクラレンが立っていた。
背後には「ティア嬢を守る会」の旗が誇らしげに翻っている。
「え、ええと……おはよう?」
ティアが恐る恐る挨拶すると、ファンクラブたちは一斉に直立して頭を下げた。
「おはようございます。
ティア嬢!」
「な、なにこれ……」
ティアは目をぱちぱちさせる。
マクラレンが一歩前へ進み出た。
「昨夜、ティア嬢とアーサー殿が“交際を開始した”という情報が我々の耳に入りました。
この件につきまして、ファンクラブとして正式に事情を確認させていただきたく!」
「じ、事情って……まるで私が容疑者みたいじゃない!」
ティアは頬を膨らませ、可愛らしく抗議した。
「容疑者ではありません!
崇拝対象でございます!」
「ますます意味わかんないわ!」
すると後ろの会員たちが一斉にノートを取り出し、ページをめくり始める。
「質問①:交際の経緯は?」
「質問②:どちらから告白したのか?」
「質問③:初デートの行き先は?」
「ちょ、ちょっと待って! 質問攻めやめなさい!」
ティアは必死に手を振るが、可愛らしい仕草になってしまい、むしろファンクラブの興奮を煽ってしまう。
「かわいい……!」
「怒ってるのに可愛い……!」
「これはアーサー殿、本当に相応しいのか徹底調査が必要だな!」
その場で一致団結した会員たちは――
「アーサー殿を、連行せよ!」
「え、ちょっ――!」
ティアの声も空しく、校舎の方で待っていたアーサーが会員に囲まれて引っ張られてきた。
学園裏庭。
臨時に設置された長机の上には「審問会場」と書かれた札。
アーサーはその中央に座らされ、左右にファンクラブ幹部たちが並んでいる。
「では――尋問を開始する!」
マクラレンが木槌を打ち下ろす。
「ア、アーサーだ。ティアと付き合ってることは……事実だ。」
「質問! ティア嬢の笑顔に対し、あなたはどれほどの覚悟で臨んでいるのですか!」
「質問! ティア嬢を泣かせた場合、どう責任を取るつもりか!」
「質問! ティア嬢のファンクラブ会員証を持つ覚悟はあるか!」
「な、なんだその最後のは!?」
アーサーは額に汗を浮かべながら、ひとつひとつ真剣に答えていった。
「俺は……ティアを誰よりも大切にする! 泣かせるつもりなんてない!
それに、彼女の隣に立てるよう全力で頑張る! それが俺の覚悟だ!」
静まり返る会員たち。
やがて――
マクラレンが静かに声を挙げる。
「ティア嬢を泣かせたら、丸坊主か去勢か。
君の覚悟を聞きたい!」
「何だ!去勢って!
俺は絶対に泣かせない!
どんな事があっても守り抜く覚悟はある!」
「こんな事はあってはならないが、我らがアイドルであるティア嬢を泣かせた場合は去勢されても構わないと言う程の覚悟があると言う事だな!」
「当たり前だ!
そんな事をお前達に言われる筋合いもない気がするが、覚悟はある。」
「……合格だ。」
マクラレンがゆっくりと頷いた。
「えっ……?」
ティアが目を丸くすると、ファンクラブ会員たちが一斉に立ち上がり、拍手を始める。
「ティア嬢にふさわしいと認めよう!」
「アーサー殿、我々は貴殿を全面的に応援する!」
「ティア嬢を頼んだぞ!」
「ちょ、ちょっと……大げさすぎるわよ!」
ティアは顔を真っ赤にして抗議するが、周囲の熱気に押されて可愛らしく小さく見えてしまう。
アーサーはそんなティアの手を取り、真剣に言った。
「……ありがとう。
ティアを必ず幸せにする。」
ファンクラブ一同は感涙しながら再び拍手喝采を送るのだった。
「何これ?」
ティアは小さく呟いた。
ティアはベッドの中で目を覚まし、昨夜のことを思い返していた。
――アーサーと付き合うことにした。
けれど冷静になって考えてみると、今までまともに恋愛なんてしたことがない自分に気がつく。
転生前はアイドルとして忙しく、恋愛経験はゼロ。
ロディアスとは結婚したものの、共に過ごしたのは戦いや冒険ばかりで、恋人らしい日々とは程遠かった。
結局、多少のデートはした事があるものの、恋愛については何も知らないまま今日まで来てしまったのだ。
「……私、本当に大丈夫かしら。」
不安を抱えたティアは、親友のメリルに相談する決意をした。
寮を出ると、ちょうどメリルと一緒に登校することになった。
「あのね。
実は……アーサーと付き合うことにしたの。」
「えっ!本当に?
良かったじゃない!」
メリルは目を輝かせて笑った。
「うん……でも、私ね。
恋愛経験がゼロなのよ。
その……“恋人同士”って何をすればいいの?」
「ふふっ、ティアらしいなぁ。
何をするかなんて決まってないよ。
お互いが楽しいって思えることを一緒にすれば、それでいいの。」
「……そういう感じなんだ。」
少し安心したティアの口元に、照れくさい笑みが浮かぶ。
そうして学園の門に着くと、アーサーが待っていた。
「ティア、おはよう!
メリルもおはよう!」
アーサーは朝から快活な笑顔を見せる。
「おはよう。」
ティアは少し頬を赤らめて返事をした。
「アーサー。
ティアと付き合い始めたんだって?
よかったわね~。」
メリルがにやりと笑みを浮かべて覗き込む。
「うっ……そうだな。
素敵な人と付き合えることになって、本当に嬉しいよ。」
「それは私に感謝しないとね。
それに――ティアは恋愛経験ゼロらしいよ?」
メリルはからかうように二人を交互に見て笑った。
「も、もう! メリル!
恥ずかしいこと言わないで!」
ティアは真っ赤になって頬を膨らませる。
放課後。
生徒会の仕事を終えて帰ろうとしたティアの前に、アーサーが立っていた。
「お疲れさま。」
「え? アーサー、待っててくれたの?」
「ああ。
一緒に帰ろうと思ってさ。」
「ありがとう。
……じゃあ帰りましょう。」
ティアはその笑顔を見て、胸が温かくなるのを感じた。
――こういう何気ないことが、きっと恋愛の楽しさなんだろう。
「ティア。
このあと予定ある?」
アーサーは少し照れくさそうに頭を掻く。
「特にはないけど。」
「じゃあ……二人でミュウオケに行かないか?」
「うん、いいよ。」
ふたりでミュウオケに着くと、偶然にもクラスの男子たちが先に来ていて鉢合わせになった。
「あっ!」
「あっ!」
気まずい沈黙のあと、男子の一人が声を上げる。
「もしかして……ティアとアーサー、付き合ってるのか?」
あっという間にアーサーは男子たちに囲まれ、ティアは一人で部屋に入って歌うことになった。
しばらくして、ぐったりした様子のアーサーが戻ってくる。
「大丈夫?」
ソファに腰を下ろした彼は肩を落とし、項垂れた。
「……クラスの男子たちに囲まれてな。
言わないと帰してもらえそうになかったから……付き合ってるって、言っちゃった。」
「そうだったんだ。
別にいいよ。」
「えっ、本当に?」
「うん。
隠すことでもないでしょ?」
「……そうか。
でもティア、明日からちょっと大変かもしれないぞ。」
「え?
そうなの?」
よくわかっていないティアは、その後も気にせず歌い続けた。
「……あれ?
アーサーは歌わないの?」
その問いかけに、アーサーは急に姿勢を正し、ティアの肩に腕を回す。
「ティア!
俺が守るから!」
「ちょっ……!」
さらに彼は腰に手を添えて抱き寄せ、真っ直ぐに見つめてくる。
「キスしていいか?」
「えっ……ここで?」
ティアの返事を待つ間もなく、アーサーは優しく唇を重ねた。
「……っ」
熱を帯びた口づけは、ティアの舌に触れて絡み合う。
キスが終わると、ティアは顔を真っ赤にして抗議した。
「もう!
誰かに見られたらどうするのよ!」
「もうみんな知ってるから大丈夫さ。」
そう言ってアーサーは、再びティアに口づけをした。
翌朝。
ティアが学園の門をくぐると――
「ティア嬢! 少しお時間を頂きたい!」
正門脇にファンクラブの面々が横一列に整列しており、中心には真剣そのものの顔をした会長マクラレンが立っていた。
背後には「ティア嬢を守る会」の旗が誇らしげに翻っている。
「え、ええと……おはよう?」
ティアが恐る恐る挨拶すると、ファンクラブたちは一斉に直立して頭を下げた。
「おはようございます。
ティア嬢!」
「な、なにこれ……」
ティアは目をぱちぱちさせる。
マクラレンが一歩前へ進み出た。
「昨夜、ティア嬢とアーサー殿が“交際を開始した”という情報が我々の耳に入りました。
この件につきまして、ファンクラブとして正式に事情を確認させていただきたく!」
「じ、事情って……まるで私が容疑者みたいじゃない!」
ティアは頬を膨らませ、可愛らしく抗議した。
「容疑者ではありません!
崇拝対象でございます!」
「ますます意味わかんないわ!」
すると後ろの会員たちが一斉にノートを取り出し、ページをめくり始める。
「質問①:交際の経緯は?」
「質問②:どちらから告白したのか?」
「質問③:初デートの行き先は?」
「ちょ、ちょっと待って! 質問攻めやめなさい!」
ティアは必死に手を振るが、可愛らしい仕草になってしまい、むしろファンクラブの興奮を煽ってしまう。
「かわいい……!」
「怒ってるのに可愛い……!」
「これはアーサー殿、本当に相応しいのか徹底調査が必要だな!」
その場で一致団結した会員たちは――
「アーサー殿を、連行せよ!」
「え、ちょっ――!」
ティアの声も空しく、校舎の方で待っていたアーサーが会員に囲まれて引っ張られてきた。
学園裏庭。
臨時に設置された長机の上には「審問会場」と書かれた札。
アーサーはその中央に座らされ、左右にファンクラブ幹部たちが並んでいる。
「では――尋問を開始する!」
マクラレンが木槌を打ち下ろす。
「ア、アーサーだ。ティアと付き合ってることは……事実だ。」
「質問! ティア嬢の笑顔に対し、あなたはどれほどの覚悟で臨んでいるのですか!」
「質問! ティア嬢を泣かせた場合、どう責任を取るつもりか!」
「質問! ティア嬢のファンクラブ会員証を持つ覚悟はあるか!」
「な、なんだその最後のは!?」
アーサーは額に汗を浮かべながら、ひとつひとつ真剣に答えていった。
「俺は……ティアを誰よりも大切にする! 泣かせるつもりなんてない!
それに、彼女の隣に立てるよう全力で頑張る! それが俺の覚悟だ!」
静まり返る会員たち。
やがて――
マクラレンが静かに声を挙げる。
「ティア嬢を泣かせたら、丸坊主か去勢か。
君の覚悟を聞きたい!」
「何だ!去勢って!
俺は絶対に泣かせない!
どんな事があっても守り抜く覚悟はある!」
「こんな事はあってはならないが、我らがアイドルであるティア嬢を泣かせた場合は去勢されても構わないと言う程の覚悟があると言う事だな!」
「当たり前だ!
そんな事をお前達に言われる筋合いもない気がするが、覚悟はある。」
「……合格だ。」
マクラレンがゆっくりと頷いた。
「えっ……?」
ティアが目を丸くすると、ファンクラブ会員たちが一斉に立ち上がり、拍手を始める。
「ティア嬢にふさわしいと認めよう!」
「アーサー殿、我々は貴殿を全面的に応援する!」
「ティア嬢を頼んだぞ!」
「ちょ、ちょっと……大げさすぎるわよ!」
ティアは顔を真っ赤にして抗議するが、周囲の熱気に押されて可愛らしく小さく見えてしまう。
アーサーはそんなティアの手を取り、真剣に言った。
「……ありがとう。
ティアを必ず幸せにする。」
ファンクラブ一同は感涙しながら再び拍手喝采を送るのだった。
「何これ?」
ティアは小さく呟いた。
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